結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2004−35067(T2004−35067/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4495368号商標(以下「本件商標」という。)は、「Esprit de nature」の欧文字を横書きしてなり、平成12年8月23日登録出願、第3類「薫料,その他の香料類,せっけん類,化粧品」を指定商品として、同13年8月3日に設定登録されたものである。
請求人が引用する登録商標は、以下(1)ないし(5)のとおりである。
(1)登録第3298421号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成5年6月30日登録出願、第3類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同9年4月25日に設定登録されたものである。
(2)登録第473625号商標(以下「引用商標2」という。)は、「エスプリ」の片仮名文字と「Esprit」の欧文字とを二段に横書きしてなり、昭和30年2月5日登録出願、第3類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同30年11月30日に設定登録され、その後、昭和52年10月3日、同61年2月19日及び平成8年10月30日の3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
(3)登録第2097119号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、昭和61年8月8日登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同63年11月30日に設定登録され、その後、平成11年1月5日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
(4)登録第653754号商標(以下「引用商標4」という。)は、「エスプリ」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和38年3月27日登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同39年9月21日に設定登録され、その後、昭和51年8月9日、同59年10月19日、平成6年12月21日及び同16年6月29日の4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
(5)登録第1558196号商標(以下「引用商標5」という。)は、「ESPRIT」の欧文字を横書きしてなり、昭和53年12月11日登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同57年12月24日に設定登録され、その後、平成6年1月28日及び同14年12月10日の2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
以下、これらをまとめていうときは、「引用商標」という。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第61号証を提出した。
引用商標は、請求人及び請求人を中心とするエスプリグループが、米国、欧州、アジア各国で、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等に長年使用している著名商標である。
エスプリグループは、1968年米国サンフランシスコでの創業以来、カジュアルウェアを主とするファッションメーカーとして著しい発展を遂げてきた。1974年には香港に生産拠点を確保しアジア進出、1970年代後半には、ヨーロッパ、スカンディナビア、オセアニアへの進出を果たした。80年代にはいると、アクセサリー、バッグ、靴等次々に品目を増やし、世界的なトータルファッションブランドとしての地位を不動のものにした(甲第7号証ないし甲第59号証)。
日本においては、1984年エスプリジャパン設立後、衣類、バッグ等の輸入販売を開始し、その後、日本有数の寝装具メーカーである株式会社内野と提携し、パジャマ、バスローブ、タオル、シーツ、ハンカチ等の販売を開始した。さらに、1994年には日本各地に直営店を開き、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等、非常に好調な売れ行きを呈している。
商標「ESPRIT」は、エスプリグループが1976年に衣類について使用して以来、カジュアルウェア、アクセサリー、バッグ、靴等に長年使用され、エスプリグループの商品を表示するものとして広く知られている。当該商標を付した商品は、日本を含め世界中で一流品としての信用が形成されており、数々の刊行物によって紹介されている(甲第7号証ないし甲第59号証)。
また、1970年以来、エスプリグループの各企業は、取引業者、新聞雑誌、消費者の間で、単に「ESPRIT」又は「エスプリ」と略称されてきており、「ESPRIT」又は「エスプリ」が申立人を含むエスプリグループの各構成企業を表す略称であることは広く知られている(甲第7号証ないし甲第59号証)。
さらに、第三者の登録商標に対する登録無効審判事件における審決理由において、少なくとも昭和61年(1986年)4月11日以前に、エスプリ社が世界的な大企業であって、その商標「≡SPRIT」の文字は、わが国において一般に広く認識されていたと認め得ると判断されている(甲第53号証)。近年の商標登録異議申立の決定理由においても、商標「≡SPRIT」が、著名商標であると判断されている(甲第54号証)。
以上より、引用商標は、本件商標の登録出願時である平成12年(2000年)8月23日当時において、エスプリグループの業務に係る商品を表示するものとして、また、エスプリグループの各構成企業を表す略称として、既に我が国において著名であったものと確信する。
本件商標は、その構成文字に相応して、「エスプリ」又は「エスプリドネーチャー」の称呼が生じ得る。これに対して、引用商標は、それぞれの構成文字に相応して「エスプリ」の称呼が生ずる。
ここで、本件商標と引用商標とは「Esprit/エスプリ」の語を有する点で共通する。一方、本件商標のうち「de nature」部分はフランス語の前置詞「de」とフランス語或いは英語の「nature」からなるものであり、全体として「自然の〜、自然でからなる〜、自然からできた〜」といった意味を有する。これを本件商標の指定商品との関係でみると、これらの多くの商品が自然の草・花などの植物等、自然界におけるものを原料としていることから、「de nature」部分は、これらの商品が「自然からできた、自然派の」ものであることを表示するにすぎず、かかる点から識別力がないと思料する。したがって、本件商標の識別力を有する要部は「Esprit」部分であると考えられ、この点で本件商標は「エスプリ」の称呼を有することとなり、「エスプリ」と称呼される引用商標と称呼上類似する。
また、「Esprit」部分を要部とする本件商標と引用商標を比較するに、外観、観念においても本件商標は引用商標と類似するといえる。
以上より、本件商標と引用商標を比較するに、称呼、外観、観念において両商標は類似のものである。
さらに、本件商標の指定商品は引用商標1及び引用商標2の指定商品と同一又は類似である。
エスプリグループの各構成企業を表示するものとして著名な引用商標3ないし引用商標5と類似する本件商標がその指定商品に使用された場合、取引者・需要者をして、その商品がエスプリグループの提供にかかわるものであるかのように、あるいは、エスプリグループと何等かの経済的・組織的関連があるかのように認識され、出所混同を生ぜしめるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
登録異議申立事件における決定理由において、請求人の商標が著名商標であるということを判断されている事実は明らかであり(甲第60号証)、請求人が英国で出願された同一・類似商標に対する情報提供資料として提出した宣誓書を参考資料として提出する(甲第61号証)。
以上、述べたところの理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に該当するものであるから、その登録は同法第46条第1項第1号により無効にされるべきものである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
(1)本件商標は「Esprit de nature」の欧文字よりなるものであり、そしてかかる構成態様であることから、全体の文字に相応して「自然の精」の如き意味合いを観念させるフランス語である。したがって、本件商標を殊更各文字に分離して観察すべき特段の理由はないものである。
また、後半の「de nature」の文字部分が、請求人の主張するように商品の品質を表示したものと認識、理解されるとはいい難く、品質を表示するものとして使用されている証拠もないものである。
これらのことから、本件商標は、その構成文字に相応し「エスプリドナチュール」の称呼のみを生ずるものである。
(2)引用商標1は、語頭の文字が漢字の「三」を図案化した同じ長さの三本線からなり、これに続いて「SPRIT」と表されており、称呼としては「サンスプリット」或いは「三本線・スプリット」「スプリット」の称呼を生ずるものであり、これからは自然には「エスプリ」の称呼は生じ得ない。なお、「SPRIT」は「帆を張り出す小円材」の観念を有するものである。
また、引用商標2は、「エスプリ」及び「Esprit」の文字からなるものであるから、引用商標1及び引用商標2はいずれも「エスプリ」の称呼を生じ、かつ単に「精、霊」等の観念を生ずるものである。
(3)そこで、本件商標と引用商標1及び引用商標2とを対比すると、称呼の点において本件商標から生ずる「エスプリドナチュール」の称呼と、引用商標1及び引用商標2から生ずる「サンスプリット」「三本線・スプリット」「スプリット」及び「エスプリ」の称呼とは、「ドナチュール」の音の有無という差異を有することと相俟って明確に聴別し得るものである。
また、本件商標は、「Esprit de nature」の欧文字を横書きしてなるものであるのに対して、引用商標1は「三」の文字を図案化して同じ長さの三本線で表し、これに続いて大文字で「SPRIT」と横書きし、また引用商標2は「エスプリ」の片仮名文字と「Esprit」の欧文字を二段に横書きしてなるものである。
これらの構成からして、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、外観の点において互いに明確に区別し得るものである。
また、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、観念の点においても、上記のとおり本件商標が「自然の精」の観念を生ずるのに対して、引用商標1からは「帆を張り出す小円材」、引用商標2からは単に「精、霊」等の観念を生ずるにすぎないものであることから、相紛れるおそれがないことは明らかである。
(4)以上のとおりであるから、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標であることは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
本件商標は、上記のとおり引用商標1及び2とは、その称呼、外観、観念のいずれにおいても非類似の商標であるから、たとえ引用商標1及び引用商標2が周知であったとしても、商標法第4条第1項第10号には該当しないものである。
甲各号証によれば、請求人及び請求人の関連企業が、商品「被服、アクセサリー、バッグ」等に引用商標3ないし引用商標5を使用した結果、これらが本件商標の登録出願時に我が国において広く知られていたことが認められるとしても、上記のとおり、本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否の判断と同様に、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても非類似の商標であり、別異の商標と認識、理解されるものであって、引用商標3ないし引用商標5を想起するとはいえないから、本件商標をその指定商品に使用したとしても、請求人又は請求人と経済的、組織的に関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものとはいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号には該当しないものである。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号には該当しないものである。
また、本件商標に対して本件審判請求の理由と同様の理由及び証拠をもって請求人がなした商標登録異議申立についての決定(乙第1号証)においても、被請求人の主張と全く同一の認定がなされており、被請求人の上記主張は正当である。
本件商標と引用商標1及び引用商標2との類否について検討するに、本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるところ、本件商標の指定商品、特に化粧品やせっけん類を取り扱う分野においては、商品名や商標等にフランス語が比較的使用されている実情にあることからすれば、本件商標に接する者が、その綴り字からして、フランス語の単語により一つのまとまった成句を表したものと認識し把握する場合も少なくないものといえる。そして、例えばフランス語で「esprit de bois」が「木精」と、「esprit de vin」が「酒精」とそれぞれ訳されている(三省堂「コンサイス仏和辞典」)ことから、本件商標は全体として「自然の精」の如き意味合いを有するものとして認識し把握されるとみても不自然ではないし、全体から生ずると認められるフランス語読み風の「エスプリドナチュール」の称呼もそれ程冗長でもなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そうすると、本件商標は、「エスプリドナチュール」の一連の称呼のみを生ずるというべきである。
この点に関し、請求人は、本件商標のうち「de nature」の文字部分は商品が「自然からできた、自然派の」ものであることを表示するにすぎず、自他商品の識別力がなく、本件商標は「Esprit」の文字部分が著名商標である引用商標3ないし引用商標5と同一文字であるから、分離抽出されて、単に「エスプリ」の称呼を生ずる旨主張するが、下記2(1)のとおり、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、継続して使用されていたとする証左もなく、上記判断を相当とするから、請求人の主張は採用することができない。
一方、引用商標1は、やや図案化されているものの、全体構成からみて「ESPRIT」の文字を表したものと認識されるものであって、「エスプリ」の称呼を生ずるものといえる。また、引用商標2は、その構成文字に照らし、「エスプリ」の称呼を生ずること明らかである。
そして、本件商標から生ずる「エスプリドナチュール」の称呼と引用商標1及び引用商標2から生ずると認められる「エスプリ」の称呼とは、「ドナチュール」の音の有無により明瞭に区別できるものである。
また、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、それぞれの構成に照らし、外観上、明確に区別し得る差異を有するものである。
さらに、本件商標は、上記のとおり、「自然の精」の如き意味合いを看取せしめるのに対し、引用商標1及び引用商標2は「精、霊」の意味を有するものといえるから、観念上も両者は区別できるものである。
してみれば、本件商標と引用商標1及び引用商標2とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、本件商標と引用商標1及び引用商標2とが非類似のものである以上、引用商標1及び引用商標2の周知性について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当するものではない。
(1)引用商標の著名性について
商標法第4条第1項第15号の適用との関係において、引用商標が周知著名となっているか否かは、本件商標の登録出願時及び登録査定時の双方の時点において判断されるべきことは同法第4条第3項の規定からも明らかである。そこで、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において周知著名となっていたか否かについて検討する。
甲第11号証ないし甲第52号証(各種雑誌・新聞等の抜粋写し)によれば、請求人を中心とするエスプリグループが、被服、アクセサリー、バッグ等のファッション関連商品について引用商標、とりわけ引用商標1及び引用商標3と同一の構成態様からなる商標を使用し、相当程度広告宣伝を行い、各種雑誌等でも取り上げられていたことが認められる。
しかしながら、甲第10号証(エスプリ会社案内抜粋写し)によれば、「インターナショナル・セールス・オペレーション」と題する表には、日本について「STORES」、「FRANCHISES」、「SHOP−IN−SHOP」及び「SHOWROOM」がいずれもゼロとなっているほか、我が国における取引量等の具体的な状況が必ずしも明らかでない。しかも、上記各甲号証は、いずれも1983年から1995年の間に発行された雑誌、新聞等の写しのみであり、本件商標の登録出願時である平成12年(2000年)8月及び登録査定時である平成13年(2001年)6月の時点よりもかなり前のものである。また、請求人の商標が著名であると判断された例として、登録異議申立事件における異議の決定(甲第60号証)及び請求人が英国で情報提供資料として提出した宣誓書(甲第61号証)を提出しているが、本件商標とは事案を異にするものであるし、外国で提出された宣誓書に拘束される必要はないことは明らかである。他に、本件商標の登録出願時及び登録査定時において引用商標が使用されていることを立証する証拠はない。
そして、昨今の世界や日本の経済情勢、社会情況等の盛衰・変動や変化の速さ等を考慮すると、数年前の情況をもって現在を語ることができないというべきであるから、上記各甲号証からして、引用商標が一時期ある程度知られていたことは推認できるとしても、本件商標の登録査定時における使用事実を立証する証拠がない以上、その知られている状態が本件商標の登録査定時にまで継続していたものと認めることはできない。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものということはできない。
(2)商標の類似性について
引用商標3ないし引用商標5は、上記第2のとおりの構成からなるものであって、引用商標1及び引用商標2と同一の称呼及び観念を生ずるものであるから、本件商標は、上記1のとおり、引用商標1及び引用商標2と類似しないものであると同時に、引用商標3ないし引用商標5とも類似しないものといえる。
結局、本件商標は、引用商標のいずれとも類似しないものである。
(3)混同のおそれについて
上記(1)のとおり、引用商標が取引者・需要者間に広く認識されているものとはいえないことに加え、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、商標として別異のものであることからすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者が引用商標ないしは請求人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該商品が請求人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのようにその出所について混同を生ずるおそれはないものというのが相当である。
(4)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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