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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2002−35521(T2002−35521/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4232578号商標(以下「本件商標」という。)は、「ROYCE’」及び「ロイズ」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成8年6月5日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,酒かす」を指定商品として、平成11年1月22日に設定登録されたものである。

2 引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第4101309号商標(以下「引用商標」という。)は、「ろいず珈琲館」の文字を横書きしてなり、平成7年11月30日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,ウースターソース,ケチャップソース,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,サンドイッチ,ピザ,べんとう,菓子及びパン」を指定商品として、平成10年1月16日に設定登録されたものである。

3 請求人の主張

請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第17号証を提出した。

(1)請求の理由

(ア)商標法第4条第1項第10号について

請求人は昭和59年4月に会社を設立し(甲第3号証)、引用商標と同じ「ろいず珈琲館」なる喫茶店の営業を開始し、現在では北海道内において同名の店舗を計6店展開するに至っている(甲第4及び第5号証)。

「ろいず珈琲館」は、コーヒーそのもののおいしさだけではなく、文化百選にも選定されている旧小熊邸を喫茶店として復活させたり、身障者にも利用しやすい店舗を造る等して話題になっており、引用商標が北海道内外の需要者に知られた周知の商標であることは、甲第6ないし第8号証が示すとおりである。それぞれインターネットのホームページ内にて請求人の店「ろいず珈琲館」が紹介されている部分の抜粋であるが、まず甲第6号証は、「日本全国のこだわりの珈琲店」として同店が紹介されているものである。甲第7号証も同様に「おいしいと思った店」として取り上げられており、甲第8号証は、北海道の雑誌において旧小熊邸が紹介されている部分である。よって、北海道で珈琲店といえば「ろいず」といえるほどに、「ろいず珈琲館」は広く一般に知られた著名な商標であることは、紛れもない事実である。

なお、請求人は平成1年にその会社名を含む商標「ロイズコーヒーユニオン/LCU/LIOYD’S COFFEE UNION」の権利も取得している(甲第9号証)。

以上のとおり、引用商標は需要者の間に広く認識される周知著名商標である。したがって、本件商標登録は、商標法第4条第1項第10号の規定に違反してなされたものであるから、同法第46条の規定により無効とされるべきである。

(イ)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、上記の構成よりなり、その文字に相応して「ロイズ」の称呼を生ずるものである。

これに対し引用商標は、平仮名の「ろいず」及び漢字の「珈琲館」とを横書きしてなるものであるが、平仮名、漢字という文字の違いと、「珈琲館」の語の印象が弱く特段の識別力を見出せないことから、前半部分の「ろいず」のみを分離して観察される可能性が高い。その場合、その文字に相応して「ロイズ」の称呼が生じる。

例えば、一般需要者は「ろいず珈琲館」にてコーヒー豆を買った場合、「『ろいず珈琲館』で買ってきた」とは言わず、単に「『ろいず』で豆を買ってきた」というはずである。一般に、長い名前や、ましてそれが2つか3つの部分に分けて考えられる場合には、その中で最も識別機能を有していて要部となる部分のみを称呼するものであるから、引用商標から単に「ロイズ」との称呼を生ずるとみるべきである。また、実際に両者が「ロイズ」との同一の称呼を生ずるために、出所を混同されている事実も起きている。

甲第10及び第11号証は、請求人及び被請求人が販売するコーヒー豆のカタログであり、両者が同一の指定商品についてそれぞれ商標を使用している事実を示すものである。

以下に示すのは、引用商標と同様に後半部分にその指定商品を取り扱う製造販売業種名や会社の種類等を組み合わせてなる商標であるため、前半部分が要部であるとして、その前半部分と称呼を同一にする他の商標と類似するとされた審決の商標である。

「八千代麩本舗」×「八千代」(甲第12号証)

「八紘」×「八幸食品」(甲第13号証)

「日鐵建材株式会社」×「日鐵/NITTETSU」(甲第14号証)

「サム電子機械」×「SAM」(甲第15号証)

これらはいずれも商標としての要部は前半部分にあり、そこだけを分離して称呼することが相当であると判断されており、引用商標もこれらの範疇に属するものと思料する。(特に甲第15号証中の「サム電子機械」については、片仮名部分と漢字部分とがあり、両者が「常に一体のものとしてみなければならない観念的な結びつきがあるものとも認め難い」との審決内容で、本件に近い内容であるといえる。)

よって、引用商標の前半部分「ろいず」からはその文字に相応して「ロイズ」の称呼が、本件商標からはその文字に相応して同様に「ロイズ」の称呼が生じるから、両者は称呼を共通にする商標である。また、両者は共に特段の観念を想起させるものではないから、観念上も同一であるといえる。

以上のとおり、本件商標と引用商標は、類似する商標であり、かつ、その指定商品も同一又は類似のものである。したがって、本件商標登録は商標法第4条第1項第11号の規定に違反してなされたものであるから、同法第46条の規定により無効とされるべきである。

(2)弁駁の理由

(ア)類似性について

被請求人は、請求人が自ら提出した甲号証の使用実例によれば、引用商標がいずれも「ろいず珈琲館」と一連に使用されており、請求人が自らその商標が一連一体に称呼されることを期待し、これを世間に主張していると述べている。

しかしながら、請求人が有する商標は「ろいず珈琲館」であるから、これを出願人が広告等において一連に「ろいず珈琲館」として使用することはもちろん、請求人の営業する該商標よりなる飲食店に関する紹介、感想を掲載する雑誌、ホームページ等の書き込みにおいて、他社が該商標を同様に一連にて使用することは、全く当然のことであり、登録商標の使用形態からそうでなければならないものであると思料する。しかしながら、商標の使用形態とその商標のどの部分が要部であるかは別問題であって、ここで論じなければならないことは、「ろいず珈琲館」なる商標が、取引者、需要者の間において、「ろいず」と「珈琲館」とに分離して観察されるかどうか、そしてそれにより要部の「ろいず」のみが抽出されて取引されるかどうかにあるはずであるから、上記の被請求人の指摘は本件審判事件の趣旨からはずれたものである。

そこで、請求人は再度「珈琲館」なる語が識別機能を有するかどうかについて考察するに、被請求人は引用商標について、「喫茶店」等と異なる「ろいず珈琲館」なる特異な屋号的印象を有する商標としているが、実際のところ「珈琲館」なる語は「特異な屋号」と捉えられるであろうか。これは、一度も耳にしたことのないような独創的な造語というわけでもなく、ごく一般に使用され慣れ親しんでいる「珈琲」と、「館」という語の組み合わせでしかないものである。そして組み合わせも別段変わっているわけではない。引用商標は飲食物を提供する店において取り扱われる「コーヒー及びココア,コーヒー豆」等を指定商品としているものであるが、この店というのは、先の審判請求書にて添付した会社の紹介資料にもあるように、コーヒーを主とした飲食物を提供する場所である。とすると、コーヒー等を提供する場所について、「珈琲館」なる商標を用いたとしても、それは役務の用に供する物を表示するものであるから、この部分だけでは識別機能を有するはずがないのである。引用商標が登録になっているということは、前半の「ろいず」の部分に識別力が認められたからこそであるといえる。よって、識別機能を有するのは「ろいず」の部分であり、この部分が引用商標の要部であるといえる。

(イ)過去の意見書について

被請求人は、出願人が過去に提出した平成11年商標登録願第32662号(後に、商標登録第4507845号として登録された。)拒絶理由に対する意見書で述べた事柄を取り上げ、「禁反言行為」としているが、この商標は「ろいず珈琲館」の文字を含むものの、他の文字及び文字を取り囲む図形を含むものであって、外観上の大きな差異を有するものであるから、本件審判事件の判断に影響するものではないと思料する。

しかしながら、上記意見書にて本件とは異なる見解を示していることはこれを認めるにやぶさかではないところ、そもそも請求人が本件のような審判請求をせざるを得なくなった理由を以下に詳述しておきたい。

先ず、請求人は過去に「LCU/COFFEE GUIDE HOME/ろいず珈琲館(図形)」(商標登録第2165591号)(甲第16号証)なる商標権を有していたが、存続期間満了時に更新をしなかった。その後この商標を多少変化させた「COFFEE GUIDE HOME/ろいず珈琲館/LCU(図形)」(商標登録第4507845号)(甲第17号証)なる商標を出願したものの、本件商標等と類似するとして、拒絶理由を受けてしまった。本件商標は、甲第16号証の商標権が消滅して1年が経過する前に登録になっている、ということは、本件商標は甲第16号証の商標とは類似しないと判断されたことになる。この2件は類似しないのに、甲第16号証の商標をわずかにアレンジした甲第17号証の商標と本件商標とは類似する、とは明らかに矛盾する判断であるというしかない。請求人は、以前から使用している「ろいず」を含む商標が登録にならなければ営業上支障を来たす、とのことで、甲第17号証の商標についてかかる内容の意見書を提出することとなった次第である。したがって、「禁反言行為」云々ではなく、請求人と被請求人の有する本件審判事件に係る各商標が類似するものであるかどうかを考察すべきである。

なお、被請求人は、「ROYCE’CAFE/ロイズカフェ」なる商標を平成13年に出願しているが、これについては請求人の有する本件引用商標等と類似するとして拒絶理由が出されている。しかしながら、被請求人はこれに対して意見書にて意見を述べる等の手続をしていなかったということは、両者が類似するとの判断を承服したためと思われる。

(ウ)周知性について

被請求人は、請求人が示した各資料は周知性を示すものではないとしているが、例えば甲第6及び第7号証は、他人のホームページ上において請求人に係る店「ろいず珈琲館」が、他の珈琲店、飲食店と並んで取り上げられているもので、甲第8号証は雑誌の中でおすすめの店として紹介されているものであり、そもそもある程度の周知性がなければこのように取り上げられることもないはずであるから、これらの証拠資料は、引用商標の周知性を証明するのに有効なものであるといえる。

4 被請求人の答弁

被請求人は、結論掲記のとおりの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第3号証を提出した。

(1)両商標の類似性

請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当する旨主張しているが、いずれの規定も両商標が類似することを前提とするものであるため、本件商標と引用商標との類似性につき検討を行う。

(ア)先ず、両商標は、外観上の共通性を何等見出すことができないものであり、また、本件商標の「ROYCE’/ロイズ」が辞書にも見当たらない造語であって、引用商標「ろいず珈琲館」が全体として屋号の如き印象を受ける一連一体の名称的造語と考えられるため、外観及び観念は比較しようのない非類似のものと考えられる。

(イ)次に、称呼上の類否に付き検討を行うに、請求人が主張する如く本件商標から「ロイズ」の称呼が生ずることは、被請求人もこれを認めるところである。

これに対し、引用商標は、「ロイズコウヒイカン」又は表音表記上「ロイズコーヒーカン」の称呼が生ずる商標である。

(ウ)請求人は、「ろいず」の平仮名と「珈琲館」の漢字の結合であるため字形が相違すること及び「珈琲館」の語の印象が弱く、特段の識別力を見出せないことから、前半部の「ろいず」のみ分断して観察される可能性が高い、と主張している。

然るに、「喫茶店」や「ティールーム」の如き語であっても、「○○喫茶店」、「○○ティールーム」となって、一連一体の名称商標と認識され、そのような組織体が販売する商品であろうと認識するのが通常である。

そこにおいて、「喫茶店」等と異なる「珈琲館」なる語を用い、「ろいず」を語頭に冠することによって「ろいず珈琲館」なる特異な屋号的印象を有する一連一体の商標を採択したのである。

(エ)このことは、請求人が自ら提出した甲第4ないし第8号証及び甲第10号証の使用実例を参考にしても、請求人の商号の略称「ロイズコーヒーユニオン」の片仮名5例及びこの英文表記と考えられる「Lloyd’s Coffee/Union」の1例以外は、全て「ろいず珈琲館」の19例の如く、一連一体の屋号を採択し、使用していることを標榜しているところで、「ロイズ」、「ろいず」等の単独使用は全く見当たらない。

つまり、請求人は、わざわざ一連一体の商標を採択し、一体にのみ称呼されることを期待して、これを世間に主張し続けていること明らかで、省略称呼される可能性はないといわざるを得ないところである。

(オ)なお、このような屋号的な語を語尾に有し、これに冠されていた語頭部分との類否に関する審決例は、乙第1号証の如く多々存在し、上記理由を十分に証明するものである。

また、本件商標登録後に請求人が再度商標登録出願した「ろいず珈琲館」を含むラベル状の商標(乙第2号証)に対し、本件商標を含めて「ロイズ」の称呼を含む商標16件が引用され、拒絶理由通知を受けたが、その意見書(乙第3号証)において、「本願商標は『ロイズコーヒーカン』の称呼を生じ、引用された登録第4232578号商標外の商標はいずれも『ロイズ』の称呼を生じるので、両者は、聴別しうる差異を有するものであって、称呼非同一又は非類似の商標である。」旨主張し、この主張が認められ登録に至っているところである。

したがって、本件請求は、全くの「禁反言」行為であるが、それはさておき、本件商標の登録時の判断及び乙第2号証の登録時における「請求人」、「商標権者」及び「判断者」(審査・審判)の三者がそろって、同一事案の類否につき非類似を認めている事件であり、日本人の聴覚がここ数年で変化している実態が証明されない限り、称呼における類否判断の時代による変遷はあり得ず、現在でも両者が非類似であることを確信するところである。

(2)周知・著名性について

請求人は、商標法第4条第1項第10号をも主張するものであるが、商標において非類似であり、その前提を欠くものである。

また、請求人が周知・著名を主張するため提出した証拠をみても、たった6店舗の「喫茶店」を営業していることは認められるが、ここ数年のことであり、甲第6及び第7号証も本人の希望で掲載され、単に紹介されているにすぎず、甲第8号証も「眺めが良い」ことで掲載されたことがある程度であって、何等周知性を証明するものではない。

5 当審の判断

本件商標と引用商標との類否について検討するに、それぞれの構成文字に相応して、本件商標は「ロイズ」の称呼を生じ、引用商標は「ロイズコーヒーカン」の称呼を生ずるものである。

この点に関し、請求人は、引用商標は平仮名と漢字という文字の違い及び「珈琲館」の語の印象が弱く識別力がないことから「ろいず」の文字部分のみが分離して称呼され、単に「ロイズ」のみの称呼をも生ずるとした上で、本件商標と引用商標とが称呼上類似するものである旨主張している。

しかしながら、引用商標は、平仮名と漢字の組み合わせからなるとしても、そのことのみをもって「ろいず」の文字部分のみが分離して観察されるというべきではないし、「珈琲館」の文字部分が自他商品の識別力を有しないとすべき理由及び証拠も見出せないところである。むしろ、特定の施設等の名称ないし屋号等を示すために、特定の文字と「館」の文字を結合し、「○○館」として一般に用いられている実情があることからすれば、引用商標は、全体として一連一体の名称ないしは屋号を表したものと認識し把握されるというのが自然である。そして、引用商標全体から生ずる「ロイズコーヒーカン」の称呼もよどみなく一気一連に称呼し得るものである。

そうすると、引用商標は一連一体の「ロイズコーヒーカン」の称呼のみを生ずるというべきであるから、引用商標から「ロイズ」の称呼が生ずることを前提に、本件商標と引用商標とが称呼上類似するものであるとする請求人の主張は理由がないことになる。

また、両商標は、それぞれの構成に照らし、外観上区別し得る差異を有しており、いずれも親しまれた既成の観念を有する語を表したものともいえないから、観念上両者を比較すべくもない。

してみれば、引用商標の周知性について検討するまでもなく、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号のいずれの規定にも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。

よって、結論のとおり審決する。

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