Trademark Appeal Case
著名略称の無断登録
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2004−90327(T2004−90327/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4756861号商標(以下「本件商標」という。)は、「ペイパル」の文字を横書きしてなり、平成14年11月28日に登録出願、第2類「塗料,染料,顔料,印刷インキ,絵の具」を指定商品として、同16年3月19日に設定登録されたものである。
2 本件商標に対する取消理由
当審において、本件商標の登録は取り消すべきものと認められるとして、通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る証拠によれば、米国のペイパル社は、1999年10月にオンライン上で個人及び法人が相互に送金できる「ペイパル」サービスを開始し、それ以降利用者が急激に増加していて(甲第3号証及び甲第4号証)、2001年11月27日付け「日経金融新聞」によれば「・・・ネット送金では最大手で独立系のペイパルが千百万人の登録利用者を抱えている・・・」と報じられていることが認められる。また、2001年2月16日付け「日本経済新聞」、「日経産業新聞」、「日経金融新聞」及び「朝日新聞」には、開業を目指しているインターネット専業銀行「イーバンク銀行」が米国の「ペイパル社(ペイパル)」と提携した旨が報じられ、その後も、2001年3月6日付け「日本経済新聞」、同3月7日付け「日経金融新聞」、同6月1日付け「毎日新聞」、同7月17日付け「日経産業新聞」、同8月3日付け「日経金融新聞」、同8月8日付け「日本経済新聞」などにも、同様に「ペイパル社」又は「ペイパル」と記載されて報じられていることが認められる。
以上の事実並びに本件登録異議申立ての理由及び証拠を総合すれば、申立人は、1999年10月以来、オンライン上で送金できるサービス(ネット送金)を行っている業界では米国最大手の会社であって、申立人の略称である「ペイパル社」あるいは「ペイパル」は、本件商標の登録出願の時には、取引者、需要者の間に広く知られ著名であったものと判断するのが相当である。
そして、インターネットの普及に伴い、インターネットを介した各種商品についての商取引も盛んに行われている状況に鑑みれば、その決済手段として利用されるオンライン上で送金できるサービス(ネット送金)と商品との関連性も否定し難いところである。
しかして、本件商標は、上記のとおり「ペイパル」の文字よりなるものであり、申立人の名称の略称として著名な「ペイパル」と同じ文字構成よりなるものである。
したがって、本件商標は、申立人の名称の著名な略称からなる商標であるにもかかわらず、申立人の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号の規定に違反して登録されたものである。
3 商標権者の意見
上記取消理由に対して、商標権者は、その意見を要旨次のように述べた。
(1)特許庁は、平成14年7月の時点で米国ペイパル社の著名性を把握した上で(乙第1号証)、同年9月から同16年2月にかけて「ペイパル」の文字よりなる商標について計12回登録査定している(乙第4号証ないし乙第15号証)。特に乙第15号証は最近のものであり、平成16年に入っても米国ペイパル社の承認は必要なしと判断したことは明白である。
(2)イーバンク銀行とペイパル社は2001年に提携したようだが、相互接続されていない。「ペイパル」というブランドの送金サービスを今まで提供していない(乙第16号証ないし乙第20号証)。しかし、ペイパル社は異議申立でペイパルの送金サービスの提供を行っていると虚偽の事実を述べている(乙第21号証)。
4 当審の判断
本件商標は、「ペイパル」の文字を書してなるところ、上記2の取消理由で示すとおり、申立人の名称の略称として著名な「ペイパル」と同じ文字構成よりなるものであり、しかも、同人の承諾を得ていないものである。したがって、商標法第4条第1項第8号の規定に違反するとの理由により、本件商標の登録を取り消すべきものとした先の取消理由(上記2)は妥当なものであって、これについて述べる商標権者の意見(上記3)は、以下の理由により採用することができない。
(1)商標権者は、「ペイパル」の文字よりなる商標について多数の登録査定を受けていることを指摘し、これらと本件取消理由との判断の齟齬について批難する。しかし、登録異議申立制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るというものであってみれば、審査における判断の過誤は、いわば当然の前提として、もとより法が予定していることである。そして、適式な登録異議の申立てを契機に、改めて登録処分の適否を審理した結果、取り消すべき理由が存すると認められるからには、商標権者に対し取消理由の通知が発せられることもまた法の定めるところである(商標法第43条の12)。この点に関する商標権者の主張は、先の取消理由(上記2)の認定判断を何ら覆すものではない。
(2)商標権者は、イーバンク銀行とペイパル社の提携関係とか、「ペイパル」というブランドの送金サービスの不実について述べるところあるが、両社の関係や「ペイパル」というブランドの送金サービスが、現在どうであるかは、本件商標がその取消理由で開示した米国ペイパル社の著名な略称に当たるか否かという判断に、直接影響を及ぼすものではない。
そして、このほか述べる商標権者の意見で上記認定判断を左右するに足りるものはない。
以上のとおりであって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号の規定に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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