sokuhyo

Trademark Appeal Case

地名と形容詞の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2003−90707(T2003−90707/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4694861号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4694861号商標(以下「本件商標」という。)は、「おいしい北海道」の文字を標準文字により表してなり、平成14年11月25日に登録出願、第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,調味料,香辛料,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」を指定商品として平成15年7月25日に設定登録されたものである。

2 本件商標に対する取消理由

当審において、本件商標の登録は取り消すべきものと認められるとして、通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件商標の構成中の「おいしい」の文字は、例えば岩波書店発行「広辞苑第5版」によれば、「(『いしい』に接頭語『お』が付いてできた語)美味である。『うまい』より上品な語。都合がよい、もうけになる、の意でも用いる。」を意味する語であり、また、「北海道」は 「日本の最北端、宗谷海峡を隔てて樺太に対する一大島、北海道本島とその属島の総称」とされ、海産物、農産物、乳製品等を初めとする種々の美味な商品の産地・販売地として知られているものである。そして、登録異議申立人の提出に係る証拠によれば、北海道の産品の取引に際し、その産品が美味であることを誇示し販売促進を図るためのキャッチフレーズないしは標語として、「おいしい北海道」の語句が普通に使用されていることが認められる。

そうすると、何ら特徴のない「おいしい北海道」の文字を普通に用いられる方法で表してなる本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は商品の販売促進のための一種の標語を表したものと認識するに止まり、自他商品の識別標識として認識することはないというべきである。また、このような語句は、北海道の産品を取り扱う者が取引に際し何人も使用を欲するものであり、特定人によるその独占的使用を認めることは公益上適当でないといえる。

したがって、本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標といわなければならないから、その登録は商標法第3条第1項第6号の規定に違反してされたものである。

3 商標権者の意見

上記取消理由に対して、商標権者は、その意見を要旨次のとおり述べた。

(1)本件商標は、「おいしい」と「北海道」と2語がまとまりよく左横書きされた態様であるため、一連で認識されるものである。称呼した場合も冗長でなく、また、「おいしい」と「北海道」の語で分離すべき特段の事由もないため、本件商標に接した看者は、「おいしい北海道」と一連で認識することが自然である。

一方、「おいしい」の文字と地名を表す「北海道」の文字は、通常結びつく語同士ではないため、本件商標「おいしい北海道」に接した看者は、直ちにその意味を認識することができない。すなわち、「おいしい」と「地名」を組み合わせた語は、国語的に疑問視されるものである。

したがって、「北海道」という地名と「おいしい」が結びつく本件商標は、極めてユニークな商標で、本件商標に接した看者が直ちに意味を認識できない。各人がその観念を想像できる点に面白さがあり、充分識別力を有するものと思料する。

(2)「おいしい山形」(商標登録第4516799号)、「図形+おいしい新潟」(商標登録第4314334号)、「図形+DyDo+おいしい北海道」(商標登録第4501890号)、「図形+DyDo+おいしい北海道」(商標登録第4501891号)などの登録例が存在することは、いずれも公益性に反しないと判断された結果であり、本件商標「おいしい北海道」も公益上、何の問題もないと思料する。

(3)本件商標の指定商品の一部である「菓子及びパン」についていえば、登録異議申立人の提出資料やインターネットにおいて、「菓子及びパン」について使用されている事実を探すのに苦労する。この点から、北海道と一口に言っても、海産物や農産物等と比べると、菓子やパンは、北海道の特色を有する商品が存在しないことが理解できる。

しかも、「菓子及びパン」について全国に目を向けても、その地域の特性を表す土産品として「菓子及びパン」が非常に有名であるものは1品ないし2品程度であり、むしろその商品の地域性を表現するよりも、個々の特定商品名が強調、広告されている。

ゆえに、「菓子及びパン」について、「おいしい北海道」を使用しても、一種の造語と認識されるのみで、取引者、需要者は商品の販売促進のための標語を表したにすぎないとはいえないし、公益上適当でないとはいえないと思料する。

4 当審の判断

本件商標は、「おいしい北海道」の文字からなるものであり、「おいしい」は美味であること、「北海道」は海産物、農産物、乳製品等の産地、販売地としていずれもよく知られる語であるから、該文字に接する取引者、需要者は、北海道ゆかりの産品についてそれが美味であることを表現した言葉として理解するというのが一般的である。そして、北海道の産品の取引に際し、その産品が美味であることを誇示し販売促進を図るためのキャッチフレーズないしは標語として、「おいしい北海道」の語句が一般的に使用されていることも認め得るところである。

ところで、商標法第3条第1項各号列挙のいわゆる自他商品又は役務の識別機能を有しない商標について商標登録できないこととするのは、それらは通常、商品又は役務を流通過程又は取引過程に置く場合に必要な表示であるから何人も使用をする必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものだから一私人に独占を認めることは妥当でないこと、また、多くの場合にすでに一般的に使用されているものであるから、そのようなものに自他商品又は役務の識別力を認めることはできないことによると解される(社団法人発明協会発行 特許庁編「工業所有権法逐条解説(第16版)」参照)。

そうすると、本件商標は、上記のとおり、販売促進を図るためのキャッチフレーズないしは標語として一般的に使用されている「おいしい北海道」の文字からなり、北海道ゆかりの産品についてそれが美味であることを表現した言葉として理解されるにとどまるといえるから、これをその指定商品について使用しても、取引者、需要者は、自他商品を識別する標識とは認識し得ないものと判断するのが相当であり、一私人に独占を認めるには妥当でないものというべきである。

したがって、商標法第3条第1項第6号の規定に違反するとの理由により、本件商標の登録を取り消すべきものとした先の取消理由(上記2)は妥当なものであって、これについて述べる商標権者の意見(上記3)は、以下の理由により、採用することができない。

(1)商標権者は、「おいしい」と「北海道」は、通常結びつく語同士ではないので、本件商標「おいしい北海道」に接した看者は、直ちにその意味を認識することができない旨主張するが、「おいしい」も「北海道」も前記したとおりいずれも食品と関連づけられる語であることと、本件商標を使用しようとする商品が機械や雑貨などの工業製品ではなく食品関係であることからすれば、「おいしい北海道」の文字に接する者がこれを食品と関連づけて前記認定のように北海道ゆかりの産品についてそれが美味であることを表現した言葉として理解するのに特段の困難性があるとは認められない。

(2)また、商標権者は、本件商標を登録しても、公益上、何の問題もないと主張、その根拠に「おいしい山形」(商標登録第4516799号)ほかの登録例を挙げるが、そもそも、商標の識別性の判断は、各商標につき、それぞれの判断時における、取引の実情、取引者・需要者の認識などを勘案し、個別具体的に判断されるべき性質のものであるばかりでなく、請求人の挙げる登録例は、いずれも、本件商標とはその構成態様を異にするものというべきであるから、本件商標の識別性の判断の参考として採用することはできない。

(3)さらに、商標権者は、本件商標の指定商品の一部である「菓子及びパン」について特記し、当該商品について、「おいしい北海道」を使用しても、一種の造語と認識されるのみで、商品の販売促進のための標語を表したにすぎないとはいえないし、公益上適当でないとはいえない旨主張する。しかしながら、本件商標の構成文字からは、上述のとおり、食品との関係が普通に観念されるのであって、その観念は食品全般にわたるというべきものである。そして、「菓子及びパン」といえども、地域の特産品として製造、販売されることは十分予想されるところであり、これら商品を上記判断から除外すべき必然的理由は見当たらない。

以上のとおりであって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第6号の規定に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。