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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2004−35092(T2004−35092/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4491640号商標(以下「本件商標」という。)は、構成後掲のとおり左側に「龍馬の海援隊」の文字と、その右側に小さく「りょうまのかいえんたい」の文字を二行縦書きしてなり、平成12年5月8日に登録出願され、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同13年7月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番含む。)を提出した。

1.商標法第4条第1項第11号

(1)引用登録商標について

登録第2406289号商標(以下「引用登録商標」という。)は、「龍馬」の文字を縦書きしてなり、昭和58年9月14日に登録出願され、第28類「酒類」を指定商品として、平成4年4月30日に設定登録されたものである。

指定商品については、平成14年9月25日に第32類「ビール」及び第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」と書換登録された。

そして、引用登録商標は上記したとおりであるから、「リョウマ」の称呼及び「龍馬」の観念を生じる。

(2)本件商標について

本件商標は上記構成よりなるところ、構成中の「龍馬」が「坂本龍馬」の名であり特に世間における認知度が高いこと、強力な識別力を有する「龍馬」が語頭に配されていること、「リョウマノカイエンタイ」の称呼は冗長であること等が相俟って、本件商標は「龍馬」と「海援隊」とに分断して認識され得る。

さらに、例えば、「司牡丹」ブランドに関し「司牡丹 土佐錦」「金鳳 司牡丹」等、「黒松白鹿」ブランドに関し「黒松白鹿 喜十郎」「黒松白鹿 千年寿」等、「久保田」ブランドに関し「久保田 萬寿」「久保田 碧寿」「久保田 翠寿」等、及び「一ノ蔵」ブランドに関し「一ノ蔵 松山天」「一ノ蔵 玄昌」「一ノ蔵 大和伝」等、日本酒は原料、製法等により大吟醸酒、吟醸酒、純米酒、普通酒等の様々なランク付けがされており、同一の商標を冠した異なる商品群を用意するという戦略がしばしば採られ、本件商標「龍馬の海援隊」について検討すると、構成中の「龍馬」は、特定の酒造メーカーの特定銘柄を表すものと認識され得る。とすれば、本件商標「龍馬の海援隊」は全体として恰も「龍馬」ブランドの1系統を表すものとして一般需要者には認識され得ると思料する。

したがって、本件商標からは「リョウマノカイエンタイ」に加えて「リョウマ」の称呼及び「龍馬」の観念が独立して生じる。

(3)両商標の類似について

本件商標と引用登録商標の称呼を比較するに、両商標は「リョウマ」という同一の称呼を生じ称呼上類似し、観念においても類似する。また、本件商標の指定商品は引用登録商標の指定商品と同一又は類似するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。

2.商標法第4条第1項第10号

(1)商標「龍馬」及びその異字体「竜馬」の需要者等の間における認識性について

甲第3号証−1ないし甲第3号証−4に見られるように、請求人は引用登録商標「龍馬」及びその異字体である「竜馬」(以下「異字体商標「竜馬」」という。)を日本酒及び焼酎について、長年に亘って使用した結果、かかる商標は市場において広く認識されるに至っている。以下に請求人の引用登録商標「龍馬」及び異字体商標「竜馬」(以下、両商標を合わせて「請求人使用に係る商標」、又は「「龍馬」及び「竜馬」商標」という。)が需要者及び取引者の間に広く認識されていることを示す。

(ア)甲第4号証−1

1998年5月1日から2000年12月30日における請求人使用に係る「龍馬」及び「竜馬」商標が付された製品の販売量を示す資料である。

(イ)甲第4号証−2

1988年、1995年及び1996年の売上伝票写である。

かかる資料から明らかなように、引用登録商標「龍馬」及び異字体商標「竜馬」が付された請求人の製品は高知県のみならず、東京、大阪、徳島、北海道、千葉、埼玉、茨城、福岡、京都、広島、群馬、神奈川等に出荷されている。

(ウ)甲第5号証−1ないし甲第5号証−12

1995年夏から2002年冬にかけてのギフトカタログである。

当該カタログより請求人が現実に「龍馬」及び「竜馬」を継続的に使用していることが示されたと思料する。

(エ)甲第6号証−1及び2

請求人を紹介した記事として「純米吟醸酒「竜馬」がセブンイレブンのプライベートブランド(PB)に採用されるなど県外の販売を伸ばしている」と、及び請求人を紹介した書籍の関連頁に、請求人が「全国に販路を持つ清酒土佐菊水を送り出している酒蔵」との各掲載がされている。

(オ)甲第7号証−1及び2

商標「龍馬」を付した請求人の商品を紹介した記事に「土佐を代表するお酒」及び「広く県内外の方々に、愛飲されてます。また、全国新酒鑑評会等においても金賞などの各賞を受賞しております」との掲載がされている。

(2)小括

以上のように、本件商標は、請求人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用登録商標「龍馬」及び異字体商標「竜馬」に類似する商標であって、その指定商品又はこれらに類似する商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。

3.商標法第4条第1項第15号

上述したように、本件商標は、請求人の引用登録商標「龍馬」及び異字体商標「竜馬」と類似する商標であって、これらの商標は需要者及び取引者の間で広く認識されている商標である。そうすると、本件商標は他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4.商標法第4条第1項第19号

上述したとおり、請求人の製造・販売する「龍馬」及び「竜馬」は市場において高い評価を得ており、被請求人は請求人の商品の名声を利用し不正の利益を得る目的の下に請求人商標と類似する本件商標を請求人の商品と同一又は類似の商品である焼酎について登録及び使用したものと思料する。

請求人が旧第28類「酒類」について商標「よさこい」(甲第8号証)を所有してなるところ、被請求人は同じ「酒類」について商標「スーパーよさこい」(甲第9号証)を出願している。さらに、請求人は第33類において商標「土佐の香/ゆず酎」(甲第10号証)を所有してなるところ、被請求人は「土佐の/ゆず酎」なる商品を製造・販売している(甲第11号証)。

これらの事実から、被請求人はその内心において一般的に請求人の戦略・営業努力・知的財産等を利用して不正の利益をあげる目的を有することが推認され、かかる事実を総合的に判断すると、本件商標についても同様に請求人の商品「龍馬」及び「竜馬」の名声を利用し「不正の利益を得る目的」をもって出願及び登録されたものと確信することができるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

5.結語

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効にすべきである。

6.弁駁の理由

(1)商標法第4条第1項第11号について

被請求人は、「龍馬」及び「竜馬」を含んだ多種多様な商品が販売されている事情(乙第2号証)、同様に乙第3号証及び乙第4号証を挙げて「龍馬」の商標が付された「蒲鉾」等の商品が販売されている事情を述べているが、このことと本件商標「龍馬の海援隊」が「龍馬」と略称され得るかは何ら関連性がなく失当である。

さらに、被請求人は乙第5号証及び乙第6号証を挙げて「龍馬」又は「竜馬」の文字を含む登録商標が併存しているのでその識別性は薄まっている旨述べていが、請求人の「龍馬」及び「竜馬」商標の識別性が薄まっていることと、本件商標「龍馬の海援隊」が略称されるか否かは関連性がなくかかる主張は失当である。

そして、被請求人は「海援隊」と「龍馬」の語は、「坂本龍馬」といえば「海援隊」が、「海援隊」といえば「坂本龍馬」が連想されるほどに相互に密接に関連するものと述べ、また、格助詞「の」の性質を挙げて、本件商標「龍馬の海援隊」は全体として「龍馬が率いた海援隊」という特定の観念を生じさせるものであり、一体不可分の語と解すべきである旨主張する。

この点につき、請求人は「海援隊」と「龍馬」が密接に関連するものであればあるほど、「龍馬」と「海援隊」の著名度の差から「龍馬」が強く観念されると確信する。

(2)商標法第4条第1項第10号について

請求人の異字体商標「竜馬」は未登録商標であり、商標法第4条第1項第10号の適用が認められると確信する。

被請求人は日本酒の生産量に占める請求人の販売量が絶対数において少ないことを指摘して請求人の「龍馬」又は「竜馬」商標が広く知られていない旨主張しているが、日本酒のような嗜好品は絶対数が少なければ少ない程限定品として取引者、需要者の垂涎の的となることは自明の理であり、販売の絶対数と著名度は必ずしも正比例しないことは明らかである。

請求人の商標は大規模に販売されていないかもしれないが、著名であるという点につき請求人は証明したと考えるので、被請求人においてその点につき反証をすべきところ、有効な反証が提出されたとはいえない。

また、百貨店のカタログ等(甲第5号証)は、請求人の所在が高知県であったためたまたま入手及び保管がしやすかっただけのことであり、西武百貨店、大丸百貨店等が全国展開している百貨店であることは証明を要しない事実である。また、周知は全国的である必要はなく一地方におけるものでも充分である。

(3)商標法第4条第1項第15号について

被請求人は「海援隊」につき商標登録を取得し、使用しているので、請求人の商品との出所について混同を生じることはあり得ないと述べているが、問題とすべきは本件商標「龍馬の海援隊」と請求人の「龍馬」及び「竜馬」商標であり、この議論において「海援隊」が付された商品が販売された事実は何ら示すところがない。また、「龍馬の海援隊」の販売本数についても、乙第12号証「「海援隊」及び「龍馬の海援隊」の販売実績」と題する資料の数字からは読み取る術もない。そして、被請求人は乙第13号証を提出してテレビコマーシャルを行った旨主張するが、この資料においても「海援隊」、「土佐焼酎 海援隊アニメ」、「海援隊 時代はヒーローを待」、「海援隊・陸援隊」、「海援隊・深層水 土佐のゆず酎」、「龍馬の海援隊」全てについてのものであり、他の5本については本件審判とは全く関連性のないものである。また、乙第15号証の3、乙第16号証の2、乙第17号証の2は「海援隊」に関するものである。

本件商標の出願当時の平成12年には請求人の焼酎は高知県での酒造メーカーの出荷総量の約50%を占めその全てが「竜馬」商標にかかる焼酎であって、本件出願時から周知であった「竜馬」商標と被請求人の「龍馬の海援隊」とは類似であり、仮に非類似であるとしても、混同を生じるものである。

(6)商標法第4条第1項第19号について

不正の目的について、被請求人は「スーパーよさこい」はイベントの名称であり、来場者よりの声が寄せられたことを商標採択の理由として述べているが、何ら証拠を提出することなくただ思うところを述べているのみである。また、「土佐の/ゆず酎」について、商標登録出願を行っているか否かは関係がない。「土佐の/ゆず酎」を販売するにあたっても請求人が「土佐の香/ゆず酎」なる登録商標を有していることは容易に覚知しえたはずである。かかる状況下において「香」の一字を外した商標を付した商品を販売する行為は請求人の商品開発力に依拠したものといわざるを得ない。

さらに、被請求人は上述のように、「海援隊」なる商品を販売していたが、その後、請求人の商品「龍馬」及び「竜馬」の売上が好調なことを知り、「龍馬の海援隊」を開発及び販売している。甲第14号証は高知県香美郡に位置する「富士屋酒店」の開設するウェブサイト写であり、「焼酎竜馬が有名」との記載が見られ、その売れ行きにあやかろうとして「海援隊」に「龍馬の」を冠した本件商標を出願した被請求人の内心においては不正の目的があったと推定され得る。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第23号証(枝番含む。)を提出した。

1.商標法第4条第1項第11号

(1)「龍馬」及びその使用状況について

「龍馬」は、歴史上の偉人である「坂本龍馬」を示すものとしてよく知られているから(乙第1号証)、その認知度の高さゆえ、同人にちなんで「龍馬」及びその異字体の「竜馬」が多くの商品に好んで使用される傾向がある。特に坂本龍馬の故郷である高知県において「坂本龍馬」は特別な存在であり、高知県において「龍馬」及び「龍馬」の名称は、ビル、店舗、展示場、温泉、高速バス及びツアー等の名称に多数用いられているほか、寿司、ラーメン等の日常の飲食物にも使用されているなど、極自然な形で暮らしに溶け込んでいる。また、各土産売場では、「龍馬」及び「竜馬」の名称を使用する多種多様な商品が販売されており、食品の分野だけでも多数の商品が存在する(乙第2号証)。

さらに最近では、高知空港がその愛称を「高知龍馬空港」とし(乙第3号証)、同空港の名店街には請求人及び被請求人も出店しているところ、これら2店舗以外にも、少なくとも3店舗において「龍馬」の商標が付された商品が販売されている(乙第4号証)。加えて、土佐の地酒の通信販売を行っている高知県所在の酒店のホームページによると、菊水酒造(請求人)の「竜馬ロイヤル」、司牡丹酒造の「龍馬からの伝言」及び土佐鶴酒造(被請求人)の「龍馬の海援隊」の詰合せが「龍馬(竜馬)づくしセット」として販売されている(乙第5号証、乙第6号証)。

また、請求人以外の者の所有に係る「龍馬」又は「竜馬」の文字を構成中に含む登録商標は、酒類の分野だけでも、多数の商標が存在する(乙第7号証)。

(2)本件商標構成中の「海援隊」の文字について

「海援隊」の文字は、「龍馬」と同様に、「幕末、土佐藩を脱藩した坂本竜馬らが長崎で設立した貿易会社」として有名であるため(乙第8号証)、「龍馬」と「海援隊」の文字との比較において、「龍馬」の文字部分の方がより強力な識別力を有するということもない。そして、「海援隊」と「龍馬」の語は、「坂本龍馬」といえば「海援隊」が、「海援隊」といえば「坂本龍馬」が連想される程に相互が密接に関連するものであるから、これらの語を格助詞の「の」によって連結する「龍馬の海援隊」は、全体として「龍馬が率いた海援隊」という特定の観念を生じさせる一体不可分の語と解すべきものであり、その称呼においても一連に称呼し得るものである。そうすると、本件商標は、「龍馬の海援隊」の文字全体が一体不可分のものとして需要者等に認識されるものであり、その構成要素中の「龍馬」と「海援隊」とに分断して認識されることはあり得ない。

(3)日本酒の銘柄表示について

請求人は、「日本酒は原料、製法等により大吟醸酒、吟醸酒、純米酒、普通酒等の様々なランク付けがされており、同一の商標を冠した異なる商品群を用意するという戦略がしばしば採られる」と主張し、「司牡丹」、「黒松白鹿」、「久保田」及び「一ノ蔵」のブランドを具体例として挙げている。

仮に請求人主張のとおりの事実が存在するとしても、これらは、いずれも「司牡丹 土佐錦」、「金鳳 司牡丹」等のようにハウスマーク的ブランド名とランク名とを明確に分離して表示するものであり、本件商標「龍馬の海援隊」のように、一般的な商標同士を格助詞の「の」によって連結しているものは、請求人の具体例には見受けられない。

(4)小括

以上のとおり、本件商標より生ずる称呼は「リョウマノカイエンタイ」のみであり、「リョウマ」の称呼は生じ得ないから、本件商標と引用登録商標とはその称呼において相紛れるところはなく、また、本件商標からは「坂本龍馬が率いた海援隊」という観念が生じ、「龍馬」の観念は生じ得ないから、本件商標と引用登録商標とはその観念においても相紛れることのない非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。

2.商標法第4条第1項第10号

請求人は、登録商標を引用して本件商標の登録について商標法第4条第1項第10号違反を主張しているが、同号は未登録周知商標を引用した場合にのみ適用があるものである。仮に、同号の規定が登録商標を引用した場合にも適用があるとしても、本件商標は、同号に違反して登録されたものではない。

(1)引用登録商標「龍馬」及び異字体商標「竜馬」の需要者間における認識性について

請求人の主張及びその提出に係る甲第4号証ないし甲第7号証からは、引用登録商標「龍馬」及び異字体商標「竜馬」は広く知られているとはいえない。

(ア)甲第4号証

請求人は、引用登録商標「龍馬」及び異字体商標「竜馬」が付された請求人の製品の販売数は、1998(平成10)年5月1日から同年12月30日までで約16万6千本、1999(平成11)年1月5日から同年12月30日までで約20万3千本、2000(平成12)年1月5日から同年12月30日までで約20万7千本と述べているが、甲第4号証−1及び2では数量が示されておらず販売本数は不明である。

仮に、前記販売数量が事実であったとしても、我が国に存在する日本酒の銘柄は極めて多数に上り、日本酒造組合中央会のホームページによれば、全国には、清酒で約2千2百、焼酎乙種で約9百の製造場が存在し(乙第9号証)、その各製造場では複数の銘柄が製造されているため、その銘柄数は、清酒で1万種以上、焼酎で5千種以上に及ぶとされている。そして、国税庁課税部酒税課発行の「酒税課税状況表」によれば、平成12(2000)年度の日本全国における清酒及び焼酎乙種の課税数量の合計は約135万キロリットルに上る(乙第10号証)。

請求人は、平成12年度の年間販売数量は約20万7千本であると主張しているところ、その販売推定量は約149キロリットルであり、これは,平成12年度の日本全国における清酒及び焼酎乙種の販売総量である約135万キロリットルの僅か0.01パーセントに過ぎない。

また、請求人の商品が高知県以外の地域に出荷されている事実が存在するとしても、酒類を取り扱う販売店の数は多く、また、特定の地酒等広範に取り揃える販売店も存在するから、単に他県に販売した実績が認められるとしても、請求人の商品が大規模に販売されているとはいえない。

(イ)甲第5号証

請求人提出の百貨店ギフトカタログ(甲第5号証−1ないし12)はいずれも高知県に所在する百貨店等のものに限られているうえ、その発行部数や実際の販売数量も不明であり、かつ、多岐に亘る商品を網羅的に掲載するものに過ぎない。

(ウ)甲第6号証及び甲第7号証

新聞記事(甲第6号証−1)には日付がない。また、酒類に関しては、多種多様な雑誌その他の刊行物に酒、焼酎の銘柄の紹介記事がが多数掲載されている実情において、単に書籍「焼酎全蔵元全銘柄」(甲第6号証−2)に紹介記事が掲載されているに過ぎない。及びインターネットの情報(甲第7号証−2)は請求人である「菊水酒造株式会社」が受賞者であることを紹介する記載に過ぎないから、請求人の「龍馬」及び「竜馬」商標が広く知られているとはいえない。

(2)小括

以上より、「龍馬」及び「竜馬」商標は、請求人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っているものではなく、また、本件商標と非類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。

3.商標法第4条第1項第15号

前記1で述べたとおり、本件商標と引用登録商標「龍馬」及び異字体商標「竜馬」とは別異の商標であり、また「龍馬」及び「竜馬」の語は多数の者によってかなり広範に種々の商品に商標として使用されているものである。そして、前記2で述べたとおり、請求人使用に係る商標は需要者及び取引者の間で広く知られている商標ではないから、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれのないものである。

そして、被請求人は、「海援隊」(商標登録第1845637号、旧第28類「酒類」昭和61年2月28日設定登録:乙第11号証)又は「龍馬の海援隊」を付した焼酎を販売している(乙第12号証)。また、これら商品についてのテレビコマーシャル、新聞広告等(乙第13号証ないし乙第18号証)をしており、本件商標は、被請求人に係る商標として需要者及び取引者の間で広く知られたものとなっているから、被請求人の商品と請求人の商品との出所について誤認混同が生じることはあり得ず、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

4.商標法第4条第1項第19号

(1)「スーパーよさこい」について

「よさこい」は土佐の祭りである「よさこい祭り」の略語として知られるものであるところ(乙第19号証、乙第20号証)、平成13年から毎年8月に、東京原宿・表参道において、イベント名称を「スーパーよさこい」とする「よさこい踊り」のイベントが開催され(乙第21号証ないし乙第23号証)、被請求人は、高知県の酒造メーカーとして唯一これに参加したことから、2年目のイベント終了後、「スーパーよさこい」なる商標を出願したものである。

(2)「土佐の/ゆず酎」について

当該商品に使用される「土佐の/ゆず酎」は、その商品の産地が「土佐」であることを意味する「土佐の」の語と商品の一般名称である「ゆず酎」とより構成されるに過ぎず、商標登録を受けることができないものであると、被請求人は考えており、そのような判断の下に「土佐の/ゆず酎」の文字については商標登録出願を行っていない。

(3)小括

「スーパーよさこい」なる商標を出願したこと、及び「土佐の/ゆず酎」の文字を使用していることにつき「不正の目的」は存在しないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。

第5 当審の判断

本件商標は、構成上記のとおり「龍馬の海援隊」と「りょうまのかいえんたい」の文字よりなり、その指定商品を第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」とするものである。

これに対し請求人は、大旨、a)本件商標は構成中の「龍馬」が「坂本龍馬」の名であり特に世間における認知度が高いこと等、「龍馬」と「海援隊」とに分断して認識されるから、引用登録商標「龍馬」とは称呼を共通にし、観念においても類似する。また、両商標はその指定商品も同一又は類似するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。b)本件商標は需要者の間に広く認識されている異字体商標「竜馬」に類似し、その指定商品又はこれらに類似するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。c)本件商標は「龍馬」及び「竜馬」商標と類似し、これらは需要者間に広く認識されているものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。d)本件商標は請求人の商品「龍馬」及び「竜馬」の名声を利用し「不正の利益を得る目的」をもって出願及び登録されたものといえるから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する、として本件商標の登録の無効を求めている。以下、本件商標が各条項号に該当するものであるか否かについて判断する。

1.「龍馬」「竜馬」及び「龍馬の海援隊」について

「竜馬」の文字(語)については、「りゅうま」又は「りゅうめ」の読みをもって、「極めてすぐれた馬。将棋で角の成ったもの。」等の意味を有する語であるけれども、我が国の一般世人の認識においては、「龍馬」又は「竜馬」の文字は、「りょうま」と読まれ、幕末の志士である土佐の「坂本竜馬」を容易に想起させるものといえる。

そして、本件商標構成中の「龍馬の海援隊」の文字は、「龍馬」の文字部分が上述したことと同様に「坂本竜馬」を、また、「海援隊」の文字は土佐藩を脱藩した坂本竜馬らが長崎で創立した貿易商社「海援隊」を想起させるものであって、これら語を格助詞「の」を介在させて表したものと看取させるものであるから、全体として「(坂本)竜馬の率いた海援隊」の意味合いを想起させるとみて差し支えないものである。

してみると、「龍馬」、「竜馬」及び「龍馬の海援隊」の文字については、高知県民はもとより、我が国の一般世人においても、上述したのとおりの観念を生じるものといえる。

2.「龍馬」及び「竜馬」の商標等としての採択・使用状況について

請求人提出に係る証拠によれば、「龍馬」及び「竜馬」商標については、「四国の企業」と題して請求人を紹介する四国の地方紙(甲第6号証−1)とみられる記事中に地ビールに関し「・・・販売は南国市を中心にした地元に限定するほか、商品名も「竜馬」「南国」「まほろば」など地域色を鮮明に打ち出す。・・・」「・・・純米吟醸酒「竜馬」がセブンイレブンのプライベートブランド(BP)に採用されるなど県外の販売を伸ばしている。・・・」との掲載、「焼酎全蔵元全銘柄」を題号とする書籍(主婦と生活社 昭和59年12月15日4版発行:甲第6号証−2)において、高知県の項に銘柄を「竜馬 りょうま」として「維新の英雄、土佐の坂本竜馬にあやかって名付けられた麦焼酎。・・・」との紹介記事の掲載、及び「【楽天市場】高知大丸楽天市場ショップ」と題するインターネット上の商品情報の記載(甲第7号証−1)において「<菊水酒造株式会社> / ・・・今回の商品は土佐の偉人坂本龍馬にちなんだ・・・本格焼酎「龍馬」(写真掲載の同貼りに「龍馬」の表示がある当該4合瓶は、他のギフトカタログ等の甲各号証における掲載写真からして「純米吟醸酒」と認められる。)・・・」との掲載がそれぞれ認められる。

また、「龍馬」及び「竜馬」の文字は、高知県の土産等の各種食品(乙第2号証、乙第4号証)や高知空港の愛称(乙第3号証)等にも採択・使用されていることを窺わせるところである。

そうすると、「龍馬」又は「竜馬」或いはこれを含む標章は、格別の事情がない限り、その採択・使用の意図が「坂本竜馬」にちなむものと認識され、その出身地である高知県(旧国名土佐)とを関連づけて取引する場合も決して少なくないというべきであって、自ずと自他商品の識別標識としての機能はさほど強いものではなく、「坂本竜馬」の名声にあやからんとするものと推察できるところであり、少なくともその出身地である高知県(旧国名土佐)の事業者であれば、その使用を欲するとみて差し支えないものである。

3.請求人使用に係る商標の周知・著名性について

請求人は、引用登録商標「龍馬」及びその異字体である「竜馬」を日本酒及び焼酎について、長年に亘って使用した結果、かかる商標は市場において広く認識されるに至っているとして、甲第3号証ないし甲第7号証を提出している。

確かに、「商品のご案内/菊水酒造」と題する商品カタログ(甲第3号証−1ないし3)、価格表(菊水酒造株式会社 平成15年6月16日現在:甲第3号証−4)、1998年ないし2000年の各年における「龍馬」及び「竜馬」商標が付された請求人の製品の販売量を示す資料とする「龍馬・竜馬売上」(甲第4号証−1)、菊水酒造合資会社の売上伝票(甲第4号証−2)、及び百貨店ギフトカタログ(甲第5号証−1ないし12)に見られるように、請求人は、「龍馬」の文字を使用する場合については専ら「清酒」に、焼酎については「竜馬」を使用していることが認められる(但し、「龍馬・竜馬売上」表においては、僅かに「上撰/志士 竜馬 徳利」の記載がある。)。

そうしてみると、「清酒」も「焼酎」も商標法施行規則別表においては、いずれも日本酒の範疇になるものであるとしても、請求人使用に係る商品は、専ら、「龍馬」商標については「清酒」に使用し、また、「竜馬」商標については「焼酎」に使用しているものであって、両商標は、使用される商品及び文字書体を異にし、請求人使用に係る「龍馬」商標とその異字体商標「竜馬」とを同列に考慮することはできない。

また、商品カタログ(甲第3号証−1ないし3)、及び百貨店ギフトカタログ(甲第5号証−1ないし12)には、「清酒」に使用される「龍馬」商標又は焼酎に使用される「竜馬」商標にかかる商品に限られるものでなく、多種多数のギフト商品と共に掲載されており、請求人の当該商品が百貨店ギフトカタログ、請求人を紹介した新聞記事(甲第6号証−1)や焼酎の全蔵元全銘柄(昭和59年12月15日発行:甲第6号証−2)、及びインターネット上での情報(甲第7号証−1、2)等において見出せるとしても、「龍馬」の付された「清酒」又は「竜馬」の付された焼酎についてのみ格別に喧伝されているとの状況は認め難いものである。

そうすると、請求人提出に係る甲各号証からは、「龍馬」商標又は「竜馬」商標を付した商品「清酒」又は「焼酎」の各々の販売地域、取り扱い数量、宣伝・広告の程度は必ずしも明らかなものといい得ず、それぞれの商品についての一定程度の使用ないし取引事実は認められるとしても、引用登録商標「龍馬」及び異字体商標「竜馬」がそれぞれ「清酒」又は「焼酎」に使用された結果、需要者、取引者の間で広く認識されている商標であるとの点、すなわち、その周知、著名性を認めるには十分とはいえないものといわざるを得ない。

4.商標法第4条第1項第11号の該当性について

本件商標は、上記のとおり「龍馬の海援隊」の文字に、その振り仮名的表示といえる「りょうまのかいえんたい」の文字とにより構成されてなるところ、視覚上においては、二行に縦書きされたそれぞれの文字は一体に看取させるものであって、本件商標構成中から「龍馬」の文字部分を捉えてみれば、幕末の志士である土佐の「坂本竜馬」を、同じく「海援隊」の文字部分は「坂本竜馬らが長崎で創立した貿易商社」を容易に想起させること上述したとおりであり、これらの文字間に格助詞「の」を介在させた全体からは、「(坂本)竜馬の率いた海援隊」の意味合いを容易に認識させる一連一体の商標というべきである。

また、「龍馬の海援隊」の文字と仮名部分から生じる「リョウマノカイエンタイ」の称呼も一気一連に無理なく称呼し得るものといえる。

そして、殊更、本件商標中の「龍馬」の文字部分を分離・抽出して、これを、例えば、「司牡丹」、「黒松白鹿」、「久保田」及び「一ノ蔵」の各酒造メーカーの特定清酒の銘柄と同列であるとするような事情は、請求人の主張及びその提出に係る甲各号証からは認め難く、かつ、構成中「龍馬」の文字が幕末の志士である土佐の「坂本竜馬」の観念を超えて、請求人の引用登録商標であると想起するような事情も認め難いところである。

その他、本件商標「龍馬の海援隊」の構成から、「龍馬」の文字部分を独立した商標として把握しなければならないような格別の事情は見出せない。

してみれば、本件商標と引用登録商標は、「リョウマ」の称呼及び「龍馬」の観念において類似する旨の請求人の主張は、その前提を欠くものであり、本件商標と引用登録商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても、彼此相紛れるおそれのない非類似の別異な商標であるというべきである。

5.商標法第4条第1項第10号及び同第15号の該当性について

「龍馬」及び「竜馬」商標は、請求人によりそれぞれ「清酒」又は「焼酎」に使用されている事実を認め得るとしても、請求人提出に係る甲各号証からは、それらが周知性ないしは著名性を有しないことは上述したとおりであり、また、本件商標と引用登録商標とが、商標において類似しない別異のものであることも上述したとおりである。

してみれば、本件商標をその指定商品に使用しても、請求人の業務に係る商品「清酒」又は「焼酎」にそれぞれ使用される「龍馬」又は「竜馬」商標を連想又は想起し、請求人若しくは請求人と関係のある者の業務に係る商品であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。

6.商標法第4条第1項第19号の該当性について

「龍馬」及び「竜馬」商標は、その周知性ないしは著名性を有しないことは上述したとおりであり、また、本件商標と引用登録商標とが、商標において類似しないものであることも上述したとおりである。

そして、請求人の主張及びその提出に係る甲各号証からは、被請求人が本件商標を採択使用する行為に不正の目的があったものとは到底認め得ないところである。

7.結論

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものと判断できないから、同法第46条第1項により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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