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Trademark Appeal Case

略称の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2003−35455(T2003−35455/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4652120号の指定役務中、第36類「インターネットサーバーの設置場所の提供」、第37類「電気通信機械器具(電話機・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機を除く。)の修理又は保守,電気通信機械器具(電話機・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機を除く。)の修理又は保守に関する助言・情報の提供,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守」、第38類「電話による通信,インターネットを利用した電子計算機端末による通信,その他の電子計算機端末による通信,電子計算機端末による通信の加入契約の媒介又は取次ぎ,電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供,電気通信・データ通信及び放送に関する助言・情報の提供,コンピュータネットワークの加入に関する情報の提供,ルーターの貸与」及び第42類「電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」についての登録を無効とする。
その余の指定役務についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4652120号商標(以下「本件商標」という。)は、平成13年6月22日に登録出願され、別掲のとおり、「iDC」の文字を標準文字とし、第36類、第37類、第38類及び第42類に属する役務を指定役務として、同14年12月25日に登録査定、同15年3月14日に設定登録されたものである。

第2 審判請求人の主張の要旨

審判請求人(以下「請求人」という。)は、本件商標の登録を無効とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第9号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 請求の理由

(1)本件商標「iDC」からなる欧文字3文字は、「internet Data Center」の頭文字をとった略称であり、その名前の下にコンピュータ関連の役務、及び、商品の売買が現実に行われているため、これに関連する業務について使用するときは、その役務の質を表し、商標法第3条第1項第3号に、又、それ以外の役務に使用した場合には、恰も、「internet Data Center」が関与した業務であるかのごとき誤認を生ずるものとして、同法第4条第1項第16号に該当するため、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にされるべきである。

(ア)「iDC」とは、その1

「iDC」(internet Data Center)は、本件商標の出願日である平成13年6月22日の6ヶ月後の同年12月に出版された「株式会社ネットベイン」の発行する「インターネットマガジン」特別編集の「インターネット/データセンタ−/完全ガイド2」(第9号証)によれば、記載されている各社(37社)の取り組み、及び、取材・編集等の時間経過を考慮すると、本件商標出願当時より以前から「iDC」の用語が一般社会に広範に知られた状況に至っていたものと十分推認できるところである。

そして、「iDC」の名称によりコンピュータ周りの「商品」販売から、全ての関連「役務」を行っているところで、甲第9号証に掲載された他の広告や記事中には、より広範な「役務」「物販」が各社の工夫により行われているところである。

(イ)「iDC」とは、その2

「iDC」又は「IDC」が「internet Data Cente

r」の略称であることを再度確認するため、インターネットの「Googl

e」で検索したところ、88,900件のヒットを得た。その内1〜300までを調べたところ、重複記載を含め、「IDC」又は「iDC」の用語が「internet Data Center」の略称として使用されている率は、「208/300件」の如く高率であり、かなり一般的に使用され、浸透していることが明らかとなっている(甲第1号証ないし同第5号証)。

(ウ)「iDC」の使用状況について

甲第9号証によれば、「現在日本国内で展開しているiDC業者は50社以上あり、それぞれがさまざまなサービスを提供している。その中から代表的な企業37社ほどピックアップし、サービス内容や設備、回線などについて徹底調査した。」と記載されているところ、この37社のサービス開始時期を見ると、1990年(平成2年)開設の2社に始まり2001年(平成13年)初頭にはすべて37社が開始されている状況で、本件商標の出願された平成13年6月22日には、各社の宣伝能力、顧客の存在を考えると、既に「iDC」が如何なる意味合いを持つか十分知れ渡っていること必定であり、登録査定時にはそれ以上の状況であったことが十分証明されているところである。又、同号証によれば、「現在日本国内で展開しているiDC業者は50社以上あり、それぞれがさまざまなサービスを提供している。」との記載の如く、コンピュータの絡むサービスは全て「iDC」の対象となるサービスになりうるものであり、現在において現実の提供がないとしても、質の誤認は当然に生じ得るところである。

従って、このような役務に関し「IDC」又は「iDC」の語は、明らか

にその役務のために行われる行為の名称といえる標章であり、このような役

務の提供に関連して必然的に用いる「質」を表現する用語と言わざるを得な

い。

2 弁駁の理由の要旨

(1)iDCの基本的業務である「ハウジングサービス」「ホスティングサービス」は、基本とはいえ甲第9号証に照らして、全体のサービスから見れば僅かなサービスであり、各社の共通サービスは広範囲であって、今後ますます拡大されていくことは目に見えているところである。

未だ「黎明期」にある「iDC」業界は、「サーバー」を中心にコンピュータを利用するあらゆる業務に関係するものであって、「ブロードバンド」や「ユビキタス」がどの業務と密接に関連するかを問われるのと同様、どのようなサービスでも利用可能なシステムであり、「iDC」を標榜することにより、上記の如きシステムを利用している信頼感のおけるサービスの提供であるかのごとき印象を与えること、必定となるものである。

換言すれば、コンピュータを利用するサービスと、コンピュータを利用しないサービスに指定役務を分類せよと言うに等しく、その境界線は日々刻々変化している状況で、審査基準における識別力の判断の「具体的な質」にあっても、近い将来必然的なものを考慮するのは当然で、蓋然性で判断した場合、商標法第3条第1項第3号と同法第4条1第項第16号の境界線は漠然とせざるを得ないものである。

(2)被請求人の「iDC」の著名性について

(ア)被請求人は、「国際デジタル通信株式会社」として昭和61年11月17日設立され、平成1年4月1日の1、2 ヶ月前から、その英文名称「Internationa1 Degita1 Communications」の頭文字「iDC」を取り、「電話による通信のサービス」に使用を開始し、日本国内で著名となっていると主張し、乙第3号証ないし同第6号証を提出しているが、これら証拠を検討しても、何ら周知とか著名とかの評価を下し得る以前の証拠でしかない。

(イ)被請求人は、乙第1号証及び同第2号証の「iDC」に関する登録商標を現に保有している旨を述べている。

しかし、識別力は、権利者の意図及び活動に関係なく、社会的に変遷するものであり、これが、IT業界においては「ブロードバンド」や「ユビキタス」の如く、1〜2年の短期間であっても社会に浸透し、識別力を喪失する時代となっているのである。

従って、過去の保有権利の有無や、使用状況がどのようなものであったとしても、「iDC」が社会において現在どのようるこ認識されているか、又、今後どのような推移が予測されるかを中心に判断されるべきものと考える。

第3 被請求人の主張の要旨

被請求人は、本件商標の指定役務中、第36類「インターネットサーバーの設置場所の提供」を除き、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第6号証(枝番号を含む。)を提出している。

1 請求人の主張に対する反論

(1)「internet Date Center」とは何か。

(ア)請求人は、「『iDC』なる欧文字3文字は『internet Date Center』の頭文字をとった略称であり、その名前の下にコンピュータ関連の役務、及び、商品の売買が現実に行われているため、これに関連する業務について使用するときは、その役務の質を表し、商標法第3条第1項第3号に、又それ以外の役務に使用した場合には、恰も、『internet Date Center』が関与した業務であるかのごとき誤認を生ずるものとして、商標法第4条第1項第16号に該当する」と主張する。

言うまでもなく、商標法第3条第1項第3号の適用条件としては、当該商標が指定商品・役務との関係で、その商品・役務の品質・質等を直接的に表示しているか否か、という基準で判断しなければならないところ、請求人主張では、単に「これ(internet Data Center)に関連する業務について使用するときは」と暖味な表現で述べているに過ぎず、「internet Data Center」の名の下で行っている業務とは具体的にどういう業務であるのか、それは本件商標の指定役務中では具体的にどの役務を指すというのか、明確に言及していない。

たしかに、甲第9号証で3件の業者の宣伝広告記事が抜粋され、又、甲第7号証の1ないし4の各業者のカタログ等からも、個々の業者が行っているサービス内容については特定することはできる。しかしながら、こういった宣伝広告媒体において、基本となる一般的業務に加え、各社が独自のサービスを付加させ、他社との差別化・個別化を強調することはよく見られるところであり、これらの記載や証拠からは、「internet Data Center」の業務として、通常、一般的に行われている業務は何か、すなわち一般的に取引者・需要者が「internet Data Center」の業務として認識する業務は何か、ということは明確にはなっていない。

特定の一業者のみが僅かに使用しているにとどまる業務についてまで、「iDC」を使用した場合に「internet Data Center」を認識させ、役務の質を表すというのは明らかに拡大解釈であって論理の大きな飛躍である。「internet Data Center」の業務として、通常、一般的に行われ、大部分の取引者・需要者が「internet Data Center」の業務として認識している業務について「iDC」を使用した場合に、「internet Data Center」の略称と想起され、「internet Data Center」関連の役務との質を表すに過ぎないと考えるのが妥当である。

(イ)そこで、ある用語が一般的にどのような意味合いで認識され使用されているかは、用語集類、辞典等に記載されるのが常であるので、請求人自らが提出した甲第5号証の1『富山富士通 ASP用語辞典』を引用すると、「iDC」とは、「セキュリティ機能を備えた広大なスペースと高速なインターネット回線を用意し、顧客のサーバを収納、運用管理するサービスを提供します。サービスの代表格として、顧客のサーバや通信機器を預かるハウジングサービスやセンター内のサーバのディスクスペースを貸すホスティングサービスなどがあります。」と定義し、「internet Data Center」の主たる業務が、「顧客のサーバや通信機器を預かるハウジングサービス」及び「サーバのディスクスペースを貸すホスティングサービス」であることが分かる。

甲第5号証の2「@nifty デジタル用語辞典」及び甲第5号証の3「IT用語集」でも、「IDC」とは「EコマースやASP事業を行うためサーバのホスティング拠点。」(甲第5号証の2)として、「サーバのホスティング」を意味するとしており、また、「ビジネスにインターネットを活用するためには、Webサーバ、データベースサーバ、ルータなどの機器が不可欠となる。それらの機器を収納し、高速回線によるインターネット接続サービスを提供する施設、業者がIDCである。」(甲第5号証の3)として、やはり「サーバなどのインターネット機器を預かってこれを収納する施設」という程の意味で甲5号証の1や同2と同様に意義づけしている。

(ウ)以上のことから、「internet Data Center」とは、一つは、「顧客のサーバや通信機器を預かるハウジング」、即ち、顧客のインターネット用機器を預かって保管する場所,施設を指すし、その二は、「センター内のサーバのディスクスペースを貸すホスティング」、即ち、ディスクの記憶領域の貸与を指すことが分かる。

そして、甲号証で挙げられた業者は何れも「internet Data Center」と称して、それら「サーバやルータなどのインターネット用機器」を預かりこれを保管するための施設,場所を提供しており(甲7号証の2「ハウジングサービス」)、これは言わば「インターネット用機器の場所貸し」のサービスに該当し、また、二つ目は、同号証の「ストレージサービス」として顧客のデータを預かるホスティングサービスを提供していることが認められる。

従って、請求人が「コンピュータ関連の役務、及び、商品の売買が現実に行われている」と主張するその役務とは、正確には「インターネット用機器保管用の場所貸し」と、「ディスクの記憶領域の貸与」の役務であって、請求人提出の証拠からすると、その限りで「確かに現実に行われている」ことは認められる。

しかしながらその他の業務、すなわち請求人主張によると、「コンピュータに関連する業務」なるものについては、「internet Data Center」の定義からすると上記二つの業務とは無関係であって、使用の事実があっても単に特定の一業者のみが僅かに言わば勝手に使用しているにすぎないと言うべきで、「internet Data Center」の上記定義にも含まれないばかりか、広く一般に用いられているとの立証もなされていないので、「インターネット用機器の場所貸し」及び「ディスクの記憶領域の貸与」以外の業務については、その役務の質を表すなどとは、到底認められるべきではない。

(エ)そこで、本権利の指定役務と、「顧客のインターネット用機器を預かるハウジング」及び「センター内のサーバのディスクスペース(記憶領域)を貸すホスティング」サービスとを対照すると、「顧客のインターネット用機器を預かるハウジングサービス」については、第36類「インターネットサーバーの設置場所の提供」とほぼ同内容を表すものと認められる。一方、「センター内のサーバのディスクスペースを貸すホスティングサービス」については、本権利の対象役務の中には、これに該当する役務は含まれていない。

(オ)よって、「第36類の指定役務『インターネットサーバーの設置場所の提供』に至っては、『iDC』そのものと考えられる役務である。」とする請求人主張はこの部分に限っては認め、本件商標の指定役務中、第36類「インターネットサーバーの設置場所の提供」については、被請求人は無用の争いを回避するため敢えて争わないこととし、商標法第3条第1項第3号の規定に該当するとの請求人主張を容認する。

しかしながら、「インターネットサーバーの設置場所の提供」以外の残りの指定役務については、上述したように、「internet Data Center」の業務として、通常、一般的に行われ、認識されている業務ではないことから、被請求人がそれらの役務に「iDC」を表示したところで、それによって、取引者・需要者に「internet Data Center」の略称と直ちに把握されることはあり得ない。特に、アルファベット3文字で構成される用語は、ある用語の頭文字をとった略称として極めて頻繁に採用されるものであり、実際、甲第1号証ないし同第3号証にも示されている通り、「iDC」も様々な用語の略語として多種多様な意味で使用されている。「インターネットサーバーの設置場所の提供」以外の本件商標の指定役務について「iDC」を表示した場合には、「internet Data Center」のみの意味合いが直ちに生じてくるものではなく、これら複数の意味観念が少なくとも同等程度以上に生じる可能性を有するものである。それ故、「インターネットサーバーの設置場所の提供」以外の残りの指定役務については、本件商標「iDC」は、「internet Data Center」の略称であると直感され役務の質を表示していると認識させるものではないので、商標法第3条第1項第3号に該当するものではなく、また、「internet Data Center」が関与した業務であるかのごとき誤認を生ずるものでもないので、同法第4条第1項第16号にも該当しないことは明白である。従って、「インターネットサーバーの設置場所の提供」以外の指定役務については、請求人が主張する無効理由は全く存在しない。

2 通信分野における被請求人商標「iDC」の著名性について

(1)被請求人は、昭和61年11月17日に国際デジタル通信株式会社として設立され、今日に至るまで、通信業を中心に、通信に関連するサービス、その他様々なサービスを提供してきている。

会社名「International Digital Communication(国際デジタル通信株式会社)」の頭文字をとった「iDC」の略称については、専用線サービスを開始した平成1年4月1日の1、2 ヶ月前より、専用線サービスを紹介したパンフレット等で使用し始め、その後、平成1年10月1日の電話サービス開始に伴い、電話による通信のサービスに関して、パンフレット・請求書・便箋・封筒・広告等において、「iDC」の名称を本格的に、広く全国的に使用するようになった。

「iDC」の名称を広く使用するに伴い、「iDC」の識別標識としての重要性も増してきたため、平成4年9月26日には、第37類「電話機の修理」と第38類「電話による通信,ファクシミリによる通信」について「iDC」を出願し、第37類の「iDC」は平成8年8月30日に、第38類の「iDC」は平成6年12月22日に登録となった後、今日に至るまで有効に存続している(乙第1号証及び同第2号証)。

被請求人は、平成11年8月3日に現在の「ケーブル・アンド・ワイヤレス・アイディーシー株式会社」に社名変更したものの、「iDC」の名称が長年使用され既に十分な識別機能を発揮して著名商標に至っていることに鑑み、社名変更後も「iDC」を引き続き使用し、同時に、例えば被請求人サイトにおいて、「iDCは日本国内におけるケーブルアンドワイヤレスIDCの登録商標です。」と明記するなど(乙3号証の1及び2)、その管理にも留意している。

また、被請求人の広告上の社名表示には、敢えて「アイディーシー」の部分を「iDC」と表記するようにしており(乙4号証の1ないし4)、報道機関が被請求人の名称を表示する際にも、「iDC」の表記が一般に用いられている(乙5号証の1ないし5)。

(2)このように、被請求人は、「iDC」の文字からなる商標を、約15年もの間継続して使用し、この商標のもとで円滑な取引が行われ、実績を積み上げて今日に至っている。このように継続的な使用し続けた結果、既に、例えば現代日常語を集めた「知恵蔵 2002」にも「IDC」とは「International Digital Communication」の略語で国際デジタル通信株式会社を指すと掲載されているように(乙6号証)、少なくとも「通信業務」及び「電話機の修理」については既に著名な商標として認識されているものである。

本件商標の指定役務中には、第37類に「電話機の修理又は保守」が、第38類には各種通信業務が含まれており、特にこれらの役務については、上述のように、被請求人が商標権を取得すると共に、長年継続して使用し、現に商標としての識別力を発揮していることからしても、顕著性を有しないとして商標法第3条第1項第3号に該当する、との無効理由は全く成り立ちえないものと確信する。

3 結 論

以上述べたように、本件商標「iDC」は、第36類「インターネット サーバーの設置場所の提供」以外の指定役務に使用した場合において、十分識別力を備えており、商標法第3条第1項第3号に該当するものでは決してなく、また、品質の誤認が生じるほど、具体的に何らかの品質を示しているものでもないから、商標法第4条第1項第16号に該当するものでもないことは明白である。

第4 請求人に対する審尋及びその回答

1 当合議体は、請求人に対し、平成16年9月17日付けで要旨次のような審尋をした。

(審尋)

本件商標は、その指定役務中「コンピュータ関連の役務」について商標法第3条第1項第3号に該当し、それ以外の役務について同法第4条第1項第16号に該当する旨主張しているが、前記指定役務の記載は、極めて抽象的であるから、具体的に役務を特定し、かつ、適用条文を併せて記載されたい。

2 請求人は、平成16年10月27日付けで審尋に対する要旨次のような回答をした。

(回答)

(ア)商標法第3条第1項第第3号に該当する指定役務

第36類「インターネットサーバーの設置場所の提供」

第37類「電気通信機械器具(電話機・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機を除く。)の修理又は保守,電気通信機械器具(電話機・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機を除く。)の修理又は保守に関する助言・情報の提供,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守」

第38類「電話による通信,インターネットを利用した電子計算機端末による通信,その他の電子計算機端末による通信,電子計算機端末による通信の加入契約の媒介又は取次ぎ,電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供,電気通信・データ通信及び放送に関する助言・情報の提供,コンピュータネットワークの加入に関する情報の提供,ルーターの貸与」

第42類「電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」

(イ)商標法第4条第1項第第16号に該当する指定役務

前記(ア)に挙げた役務以外の役務

第5 当審の判断

1 本件商標は、「iDC」の文字を標準文字で表してなるところ、請求人は、本件商標は商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当するから、同法第46条第1項第1号によりその登録を無効とする旨主張している。

2 そこで、検討するに、先ず、商標法第3条第1項第3号の立法趣旨をみるに、「商標法3条1項3号として掲げる商標が、登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として、なんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに一般に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである。」(昭和54年4月10日判決 最高裁昭和53年(行ツ)129号 判例時報927号233頁参照)としている。

そして、この趣旨に照らせば、登録査定時において、当該商標が指定役務の提供の場所、質等を表すものと、取引者、需要者に広く認識される場合はもとより、将来を含め、取引者、需要者にその役務の提供場所、質等を表すものと認識される可能性があり、これを特定人に独占使用させることが公益上適当でないと判断されるときは、その商標は、同号に該当するものと解するのが相当である(平成17年1月20日判決 東京高裁平成16年(行ケ)189号最高裁ホームページ参照)。

3 これを本件についてみるに、請求人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。

(1)用語の説明

(ア)「ASP用語辞典」(富山富士通のサイト)(甲第5号証の1)によれば、「IDC」は、「セキュリティ機能を備えた広大なスペースと高速なインターネット回線を用意し、顧客のサーバーを収納、運用するサービスを提供します。サービスの代表格として、顧客のサーバーや通信機器を預かるハウジングサービスやセンター内のサーバーのディスクスペースを貸すホスティングサービスなどがあります。」との表示があること。

(イ)「デジタル用語辞典」(@niftyのサイト)(甲第5号証の2)によれば、「IDC」は、「Internet Date Center」として、「EコマースやASP事業を行なうためサーバのホスティング拠点。物理的な堅牢性とセキュリティを備えたサーバルームと広帯域なバックボーン回線が必要とされる。通常、火災や地震などの耐障害性に優れ、二重化電源設備が、施されたビル内のサーバルームにラックが設置されていおり、その中にサーバを設置される。また、サーバルームは集中コンソールにおいて24時間365日体制で監視が行われ、生体認証などを用いて入出力も厳しくチェックされる。一方で、プロバイダ同士を相互接続し、トラフィックの交換を行うピアリングポイントとしてもその存在は重要になっている。」との表示があること。

(ウ)「IT用語集INDEX」(甲第5号証の3)によれば、「IDC」は、「Internet Date Center」として、「ビジネスにインターネットを活用するためには、Webサーバ、データベースサーバ、ルータなどの機器が不可欠になる。それららの機器を収容し、高速回線によるインターネット接続サービスを提供する施設、業者がIDC(インターネットデータセンター)である。単にデーターセンターともいう。さらに、データーセンターでは24時間365日、サーバや回線の監視体制を持ち、つねに最適なシステムの運営管理をおこなう。」との表示があること。

(2)IDC事業者のサービス内容の現在と将来

(ア)甲第6号証によれば、富士通株式会社は、「IDCアウトソーシングサービス」として、アウトソーシング全体のサービス管理とお客様への報告・改善提案を内容とする「マネージト機能」、お客様固有のアプリケーションにおける運用・保守・メンテナンスを内容とする「アプリケーション運用機能」、お客様のサーバの稼働監視をはじめ、お客様固有の業務運用の代行、インターネットサーバのメンテナンスを内容とする「オペレーション機能」、お客様それぞれのシステムに合わせて、ハード/ソフト環境を提供し、お客様がご用意したハード/ソフト環境の運用にも対応できる内容とする「システムリソース機能」、設置スペースの提供とともに、災害およびセキュリティ対策を施したさまざまな運用環境を提供する「ファシリティソース機能」、高速バックボーンに直結したインターネット接続環境およびDNS/NTP機能等を内容とする「インターネット接続機能」、「お客様のセキュリティポリシーに応じて、インターネット環境に必要となる各種セキュリティ機能を内容とする「IDCセキュリティ機能」、又、「IDCハウジングサービス」として、お客様サーバに対して、PING監視、トラブル時の通報/リブート対応などの基本的な監視・運用を内容とする「エコノミーオペレーション機能」、高度な災害対策を備えたセンター内に、お客様システムの設置環境を内容とする「ファシリティリソース機能」、高速バックボーンに直結したインターネット接続環境およびDNS/NPT機能等を内容とする「インターネット接続機能」、お客様システムのセキュリティ監視/監査を行い、不正アクセスやホームページの改ざんなどを防止する内容とする「IDCセキュリティ機能」との表示があること。

(イ)甲第7号証の1によれば、CSKネットワークシステムズ株式会社は、「コンサルティング/設計」の下、「ビジネス・コンサルティング・サービス」として、「ビジネス・プラン策定サポート」「市場動向調査/分析サポート」「受発注管理、決済、認証手法、顧客DB管理手法」、又、「システム・コンサルティング・サービス」として、「キャパシティ・プラニング」「トラフック調査/分析」「セキュリティ」「ネットワーク・システム/DBデザイン」、「構築/導入」の下、「アプリケーションサービス」として、「EC ASP」「WebーEDI Service」「Mobili APS」「決済、認証、サービス」、又、「ネットワーク・システム構築サービス」として、「サーバー短期構築サービス」「アプリケーション設計/開発サービス」「コンフィクレーション設計」「DBチューニング」、「運用/評価」の下、「バックオフィス業務サービス」として、「受発注管理、顧客DB管理」「eCMR Service」 「データ分析サービス」「Help Desk」、又、「ネットワーク・システム監視/管理サービス」として、「シスアテム・オペレイション・サービス」「ネットワーク監視サービス」「セキュリティ・サービス」「サーバー機器管理/保守サービス」「トラフィック、キャパシティ分析/評価サービス」、「システム・リソース」の下、「センター資源利用サービス」として、「ハウジング・サービス」、又、「サーバー・システム資源利用サービス」として、「Webホスティング・サービス」「DBホスティング・サービス」「ロード・バランシング・サービス」「FireWallサービス」「データ・ストレージ・サービス」、「ネットワーク資源利用サービス」として「バックボーン提供サービス」「キャッシング・ネットワーク・サービス」「ブロード・バンド・サービス」との記載があること。

(ウ)甲第9号証(「インターネットマガジン」発行:株式会社インプレス 発売日:2001年7月1日)の109頁によれば、「iDCカタログの見方」の見出しの下、「・・・現在日本国内で展開しているiDC事業者は50社以上あり、それぞれがさまざまなサービスを提供している。その中から代表的な企業を37社ほどピックアップし、サービス内容や設備、回線などについて徹底調査をした。・・・」との記載の下に、提供されるサービスの種別として、「運用管理」「セキュリティ」「SI、コンサルティング」「サイト構築」「コンテンツ配信インフラ」「ホスティング」「ECコンポーネント」「ストレージ」「機材調達」を挙げ、これらのサービスについて調査がされている。

(エ)甲第9号証の152頁によれば、「企業ネットワークから考える米国の最新iDC事情」の見出しの下、「企業システムとIDCビジネスの発展段階」の図表で、「第1段階」として「コロケーション、ホスティング代行」、「第2段階」として「決済機能付きEC、サーバー単純管理」、「第3段階」として「高度なECシステム、レガシーとの連携」、「第4段階」として「バックエンド統合SCM、ASP対応レガシー排除」と、及び、「厳しい局面が続く日本のiDC」の小見出しの下、「日本の企業はこの「段階別分類」でいえば、一部は第3段階に入っているが、多くは第2段階に留まっている状況だろう。」と、記載があること。

以上の認定した事実を総合勘案すると、「iDC」の語は、遅くとも本件商標の登録査定時(平成14年12月25日)以前に「Internet Data Center」(インターネットデーターセンター)の略語として、少なくとも情報通信分野(IT分野)において、取引者、需要者の間で認識、使用されていたと認めることができる。

そして、iDC事業者の多くは、堅牢な施設に、高品質な回線と24時間365日の管理をセットして提供し、信頼性の高いサーバーを置き、インターネットビジネスなどのために提供しているが、iDC事業者の事業背景(通信事業者系、システムプロバイダー系、海外事業者系)によってサービス内容の個性化、差別化が認められるところ、最も基本的なサービスとして、顧客のサーバーシステムを預かり運用・管理する「ハウジングサービス」とiDC事業者のシステム資源を顧客に提供する「ホスティングサービス」であることが認められる。

さらに、わが国において、1990年に始まったiDC事業の目指すべき事業内容の到達点は、先行する米国事情からみると、企業間の電子取引(B to B)や受発注・資材調達・在庫管理・製品配送をコンピュータを用いて総合的に管理する「サプライチェーンマネジメント(supply chain management)」であることが推認し得るところである。

しかして、「iDC」の文字を普通に用いられる方法で表してなる本件商標は、インターネットを利用する企業はもとより、インターネット利用者が急激に増えた昨今の高度情報通信ネットワーク社会において、前記実情を合わせ考えれば、これに接する需要者・取引者をして、「インターネットデータセンター」の意味を把握、理解するものとみのが相当である。

そして、iDC事業者の提供するサービス内容は、インターネットサーバーの設置場所の提供をする「ハウジングサービス」及び「ホスティングサービス」の基本的なサービスをはじめとして、電子商取引を中核とした「eーbusiness(イービジネス)」体制を構築するためのコンピューターシステムのあらゆる周辺業務に亘ってのサービス展開が可能というべきである。

そうとすれば、本件商標「iDC」をその指定役務中、コンピュータと密接に関係する役務、即ち、第36類「インターネットサーバーの設置場所の提供」、第37類「電気通信機械器具(電話機・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機を除く。)の修理又は保守,電気通信機械器具(電話機・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機を除く。)の修理又は保守に関する助言・情報の提供,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守」、第38類「電話による通信,インターネットを利用した電子計算機端末による通信,その他の電子計算機端末による通信,電子計算機端末による通信の加入契約の媒介又は取次ぎ,電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供,電気通信・データ通信及び放送に関する助言・情報の提供,コンピュータネットワークの加入に関する情報の提供,ルーターの貸与」及び第42類「電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」の役務に使用するときは、該役務が「インターネットデータセンターの提供に係る役務」であることを記述したにすぎず、単に役務の提供の場所或いは役務の質を端的に表示するに止まり、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものと認められる。

加えて、iDC事業者は、少なくとも、「iDC」の欧文字からなる標章を取引に際し必要適切な表示として、その使用を欲するものと認められるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものといわなければならない。

しかしながら、前記役務以外の役務について、請求人は、単に、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当する旨の主張のみで、その具体的立証がなされていない。また、職権をもって調査するも、役務の質等について誤認を生ずると認められる役務は発見し得ない。

なお、被請求人は、「昭和61年11月17日に国際デジタル通信株式会社(International Digital Communication)を設立し、その頭文字をとった『iDC』は、平成11年8月3日に『ケーブル・アンド・ワイヤレス・アイディーシー株式会社』に社名変更後においても商標の管理に留意している。そして、継続的な使用を続けた結果、『iDC』は、少なくとも『通信業務』及び『電話機の修理』については既に著名な商標として認識されている。」旨主張し、証拠として乙第3号証ないし同第6号証(枝番号を含む。)を提出している。

しかし、被請求人が提出した乙第3号証(枝番号を含む。)によれば、同人ホームページ上で、「iDCは、日本国内におけるケーブル・アンド・ワイヤレスIDCの登録商標です。」との記載があるものの、乙第4号証及び同第5号証(枝番号を含む。)(新聞・雑誌の写し)を精査するに、「ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC株式会社」、「ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC」、「C&WIDC」と一連一体に記載されているものであり、「iDC」単独の記載は見当たらない。したがって、これらの証拠によっては、「iDC」の著名性を立証すべき証左とはならない。また、「知恵蔵2002年版」(乙第6号証)によれば、「IDC」は「国際デジタル通信株式会社」との記載がなされているが、その一事をもって直ちに、「iDC」が「通信業務」「電話機の修理」に著名な商標であると根拠付けることはできない(念のために、被請求人の社名は、前述のとおり、1999年(平成11年)8月3日に「ケーブル・アンド・ワイヤレス・アイディーシー株式会社」に変更されている。)。

してみれば、「iDC」は、被請求人が提出した証拠を総合勘案しても、「通信業務」「電話機の修理」を含む本件商標の指定役務について周知・著名性を獲得したものと認めることができない。

また、乙第1号証及び同第2号証(いずれも「iDC」に関する登録商標 )によれば、前者の登録査定日は平成8年8月30日であり、後者の登録査定日は平成6年12月22日であることから、本件商標の登録査定日(平成14年12月25日)と大きく異なり、日進月歩するIT産業の実情を踏まえれば、両者を同列に判断し得ない別事案というべきである。

以上のことから、本件商標は、その指定役務中、第36類「インターネットサーバーの設置場所の提供」、第37類「電気通信機械器具(電話機・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機を除く。)の修理又は保守,電気通信機械器具(電話機・ラジオ受信機及びテレビジョン受信機を除く。)の修理又は保守に関する助言・情報の提供,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の周辺機器を含む。)の修理又は保守」、第38類「電話による通信,インターネットを利用した電子計算機端末による通信,その他の電子計算機端末による通信,電

子計算機端末による通信の加入契約の媒介又は取次ぎ,電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供,電気通信・データ通信及び放送に関する助言・情報の提供,コンピュータネットワークの加入に関する情報の提供,ルーターの貸与」及び第42類「電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明」については、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきである。

しかしながら、本件商標の指定役務中前記役務を除くその余の役務については、無効とすることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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