Trademark Appeal Case
著名商標と結合商標の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90044号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4195914号商標(以下「本件商標」という。)は、「VALENTINOVALENTINE」の文字を横書きしてなり、平成9年3月7日に登録出願、第25類「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,ゴルフ靴,乗馬靴」を指定商品として、平成10年10月9日に設定登録されたものである。
2 本件商標に対する取消理由
当審が、平成13年9月28日付で商標権者に通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
(1)登録異議申立人である「バレンチノ グローブ ベスローテン フェンノートシャップ」(以下「申立人」という。)の主張の趣旨及び甲第7号証、甲第13号証ないし甲第62号証(枝番号を含む。)によれば、次の事実が認められる。
「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は、1932年(昭和7年)イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後、フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年(昭和34年)にローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年(昭和42年)には、デザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌等の著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来、同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローラン等と並んで世界三大デザイナーと呼ばれ、国際的なトップデザイナーとして知られるに至っている。
我が国においても、ヴァレンティノ ガラヴァーニの名前は、1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品は、「Vogue(ヴォーグ)」誌等により継続的に日本国内にも紹介されている。
昭和49年には、三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は、我が国のファッション雑誌や業界紙、一般新聞にもより数多く掲載されるようになり、同氏は、我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ ガラヴァーニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成9年3月当時には、既に、我が国においても著名であったものと認められる。
同氏の名前は、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば、同氏を指すものとして広く認識されるに至っているというべきである。
そして、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)がデザインした婦人服、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、ベルト、アクセサリー等のファッション関連商品は、「VALENTINO GARAVANI」「VALENTINO」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「ヴァレンティノ」の商標(以下、これらの商標を合わせて「引用商標」という。)をもって、我が国の取引者、需要者の間において広く認識されていたというべきである。
(2)さらに、当審において調査するに、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「VALENTINO GARAVANI」は、我が国においては、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代著同文書院1981年「服飾辞典」550頁、山田政美著(株)研究社1990年発行「英和商品辞典」447頁、金子雄司ほか著岩波書店1997年発行「世界人名辞典」84頁において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、例えば、「marie claire」(中央公論社)1996年2月1日号、「non−no」(集英社)1989年12月5日号等からも認められる。
(3)以上の事実よりすると、申立人は、引用商標を、婦人服をはじめとして、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、ベルト、アクセサリー、香水等のファッション関連の商品に使用しており、その結果、引用商標は、遅くとも本件商標の登録出願時には、既に、我が国において、取引者、需要者の間に広く認識されていたといえるものである。
(4)他方、本件商標は、その構成中に「VALENTINO」の文字を有するものであり、前記認定のとおり、「VALENTINO」「ヴァレンティノ」は周知なものであるから、本件商標において、「VALENTINO」の文字は、重要な意味を持つ言葉として認識される。
そして、本件商標の指定商品「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,ゴルフ靴,乗馬靴」は、引用商標が使用されている被服等の商品と密接な関係を有するファッション関連商品である。
(5)そうすると、本件商標を、商標権者が、その指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者が周知商標である引用商標を連想し、本件商標の付された商品を引用商標の一種ないし兄弟ブランド、ファミリーブランド等と誤認し、恰も上記デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号に該当する。
3 商標権者の意見
(1)本件商標は、「VALENTINOVALENTINE」の一体文字からなり、第25類の「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,ゴルフ靴,乗馬靴」を指定商品とするものである。従来の特許庁の見解は、「VALENTINO」が「靴類,かばん類,袋物」の商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたとは認めておらず(乙第1号証)、この見解に基づき、ハンドバッグを指定商品とする「SUPER MONTANA VALENTINO」の登録は維持され、靴類では「RUDOLPH VALENTINO」が登録されている。これらの商標は、「VALENTINO」を含んでいるが、この商標が付された商品は、消費者がバレンチノガラバーニと関係のある商品と混同を生じるおそれがないものと判断し、登録が維持され(登録第1504659号商標)、これに対する無効審判も却下されている。したがって、服飾類以外の商品については、「VALENTINO」は、著名といえないというのが確立された特許庁の見解である。
しかるに、「VALENTINO」及び「VALENTINO GARAVANI」が、靴類を表示するものとして著名商標であると認めたうえで、本件商標が略記商標又は申立人商標を想起し、出所の混同を来すおそれがあると認定している。
しかしながら、靴類において、「VALENTINO」及び「VALENTINO GARAVANI」が著名商標であると認めることはできない。常識的に判断しても、本件指定商品に関して、需要者が本件商標を使用した商品と「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商品との間に出所の混同を来すおそれは全くないものと思料する。
また、「VALENTINO」は、日本でいえば、太郎又は一郎に相当し、それ自体、イタリアではありふれた男性の名前を表示するものである。
しかるに、バレンチノ・ガラバーニという服飾ファッションデザイナーの姓名は、世界的に著名なため、「VALENTINO」を単独で使用すれば、バレンチノ・ガラバーニの略称として上記デザイナー名を連想するであろうが、「VALENTINOVALENTINE」と商品に付してあれば、これがバレンチノ・ガラバーニに関係するものと異なるということは、上記デザイナーのガラバーニの名称が著名であるがゆえに、一目瞭然である。
「VALENTINO」が他の文字と結合した場合、結合した文字が商標の要部であり、「VALENTINO」は、商標の要部を構成しないことは「VALENTINO」が上述の如く、それ自体、イタリアではありふれた男性の名前を表示するものであることから明らかである。
(2)以上の理由により、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者が「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商標を容易に想起するものではなく、その商品が恰も申立人会社ないしはその関連会社の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を来すおそれがある商標とは認めることができないので、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではなく、その登録は維持されるべきである。
4 当審の判断
(1)本件商標は、「VALENTINOVALENTINE」の文字を横書きしてなり、その構成中に「VALENTINO」の文字を有するものである。
しかして、申立人主張の趣旨及び甲第7号証、甲第13号証ないし甲第62号証(枝番号を含む。)によれば、「VALENTINO」は、イタリアの著名な服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)のデザイナーズ・ブランドとして、婦人服、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、ベルト、アクセサリー、香水等のファッション関連商品の分野において広範に使用され、少なくとも本件商標の登録出願時、既に、我が国の取引者、需要者間に広く認識されていたものであり、また、その状況は本件商標の登録査定時である平成10年8月6日を含む現在に至るまでの間も引き続き同様とみて差し支えないものと認められる。
そして、本件商標の指定商品「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,ゴルフ靴,乗馬靴」は、引用商標が使用されている被服等の商品と密接な関係を有するファッション関連商品である。
そうすると、商標権者が、本件商標を、その指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、周知商標である引用商標を連想・想起し、本件商標の付された商品を、引用商標の一種又は兄弟ブランドあるいはファミリーブランド等に係る商品であると誤認し、恰も上記デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又はそれと組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとの理由により、本件商標の登録を取り消すべきものとした先の取消理由(上記3)は妥当なものである。
なお、これについて種々述べる商標権者の意見(上記4)は、以下の理由により、採用することができない。
(2)商標権者の意見について
(ア)商標権者は、本件商標が「VALENTINOVALENTINE」の一体文字からなるので、その構成中の「VALENTINO」の文字部分が分離して認識されるおそれはなく、引用商標と誤認混同される余地はない旨主張するとともに、本件商標「VALENTINOVALENTINE」のような場合には、バレンチノ・ガラバーニ(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)に関係する商標と異なることが一目瞭然である。また、「VALENTINO」が他の文字と結合した場合、結合した文字がその要部であり、「VALENTINO」は、商標の要部を構成しない旨主張している。
しかしながら、「VALENTINO」がバレンチノ・ガラバーニ(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の周知又は著名な略称であり、単独でも用いられ、かつ、そのデザイナーズ・ブランドの1としても我が国において、取引者、需要者の間において広く認識されるに至っていることは、先の取消理由(上記3)に認定したとおりであり、また、本件商標は、アルファベットの大文字18字を同書、同大、等間隔に横書きしてなるところ、左端の「V」から右端の「E」まで極めて長く配列された欧文字に接する取引者、需要者は、その構成文字の全体を常に一連一体不可分のものとして把握し、認識するというよりは、むしろ、当該構成中、称呼し易く比較的目につき易い前半の「VALENTINO」の文字部分に着目し、その部分を自他商品識別標識としての機能を果たす主要部として容易に認識するものと解するのはごく自然であるから、商標権者の主張は採用することができない。
(イ)商標権者は、本件商標の指定商品が第25類「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,ゴルフ靴,乗馬靴」であるところ、ハンドバッグを指定商品とする「SUPER MONTANA VALENTINO」の登録が維持されたので、「VALENTINO」は、「靴類,かばん類,袋物」について取引者、需要者の間において広く認識されているものではない(乙第1号証)とか、商品「靴類」について「RUDOLPH VALENTINO」の登録が維持されたから、「VALENTINO」及び「VALENTINO GARAVANI」は、かばん類について著名商標と認めることができず、需要者が、これらをヴァレンティノ ガラヴァーニの商品であると、その出所について混同を生ずるおそれはなく、服飾類以外の商品について「VALENTINO」は、著名ということができない旨主張している。
しかしながら、過去の登録や審査例等は個別・具体的な判断が示されているものであって、必ずしも確立された統一的な基準によっているものとはいえず、仮に、その中に矛盾や誤りがあるとしても、具体的事案の判断においては、過去の審査例等の一部の判断に拘束されることなく検討されるべきものであるから、本件に関する上記判断を左右するものではない。
また、本件商標の指定商品である第25類「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,ゴルフ靴,乗馬靴」がファッション関連商品であることは多論を要しないところであり、しかも、「VALENTINO」の文字を含む商標の登録が存在するからといって、我が国におけるファッション関連商品の分野において、「VALENTINO」が「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)のデザイナーズ・ブランドの1であって、その周知又は著名な略称であるという取引者、需要者の認識が成立し得ないというわけでもなく、むしろ、その商品を表示するものとして、取引者、需要者の間において広く認識されていたと認め得ることの妨げとなるものではない。
なお、「VALENTINO」の周知性について認定した判決として、東京高裁平成14年(行ケ)第421号及び同16年(行ケ)第335号等がある。
そして、実際、本件に係る各証拠よりすれば、先の取消理由(上記3)のとおり、「VALENTINO GARAVANI」について、「VALENTINO」(ヴァレンティノ)との表示が使用されてきた事実が存在し、我が国において、「VALENTINO」(ヴァレンティノ)といえば、イタリアの服飾デザイナーの「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又はそのデザインに係る商品群に使用されるデザイナーズ・ブランドの「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)商標ないしはその略称「VALENTINO」(ヴァレンティノ又はバレンチノ)を表示するものとして取引者、需要者の間において広く認識されていたことを認め得るから、商標権者の上記主張は採用することができない。
(ウ)商標権者は、「VALENTINO」の文字が日本でいえば、太郎又は一郎に相当し、それ自体、イタリアではありふれた男性の名前を表示するものであると主張するとともに、「VALENTINO」を単独で使用すれば、バレンチノ・ガラバーニ(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の略称として、当該デザイナー名を連想することがあるとしても、本件商標のような一体文字からなる場合は、異なることが一目瞭然である旨述べている。
しかしながら、「VALENTINO」がイタリアにおいてありふれた男性の名前であるからといって、そのことが、そのまま必ず我が国でよく知られているということになるものではない。
むしろ、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)というファッション・デザイナーの名前が世界的に著名であるがゆえに、我が国におけるファッション関連商品の分野において、上記のとおり、その略称「VALENTINO」(ヴァレンティノ)もまた、ありふれたイタリアの男性の名前とは認識されず、却って、前記「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の著名なデザイナーズ・ブランドの1として認識される場合が多いというのが相当である。
それに加え、本件商標の指定商品及び申立人のブランドに係る商品に共通するファッション関連商品の取引者、需要者は、外観及び称呼の比較的長い商標については、著名なデザイナーの氏名の略称等により簡易迅速に表記ないし呼称することが少なからずあるというのが取引の実情であるから、このような取引者、需要者においては、上記「VALENTINO」の部分に着目することが充分にあるものといわなければならない。
したがって、商標権者の上記主張も採用することができない。
(3)以上のとおりであって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
次の一手につながるサービス
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。