Trademark Appeal Case
地名・品質表示と識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2002−25274(T2002−25274/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「西京白味噌」の文字を横書きしてなり、第31類「白味噌」を指定商品として平成12年3月17日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶理由の要点
原査定は、「本願商標は、米を原料にこうじを多く食塩を少なく仕込んだ白味噌であることを認識させる『西京白味噌』の文字を表してなるところ、例えば、株式会社真珠書院発行『調味料 新・食品事典7』の『西京みそ』の項に『米みその一種。帯黄白色で光沢があり、みかけの上から白みそといわれている。各種のみそのうちコウジの使用量がもっとも多く、そのため甘味や香りがよい。しかし、米コウジが多く食塩濃度が低いため変敗しやすく、貯蔵することができない。主として京都産のものがよいとされているが、香川・広島・山口など西日本で広く醸造されている。』と記載されているほか、社団法人全国調理師養成施設協会発行『調理用語辞典』の『西京味噌』の項の記載、株式会社小学館発行『日本国語大辞典』の『さいきょうみそ[西京味噌]』の項の記載からして、本願商標をその指定商品に使用するときは、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものといわざるを得ない。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。出願人は、『西京白味噌』の商標が出願人の永年の使用の結果出願人の商品を表示するものとして国内において周知になっているとして、乙第1ないし第1062号証を提出しているが、使用されている商標はいずれもマル内に丹の文字を表すなど本願商標とは構成・態様が異なるものであるから、本願商標が出願人の永年の使用の結果、出願人の商品を表示するものとして国内において周知になっているということはできない。」旨認定、判断して本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)本願商標は、前記のとおり「西京白味噌」の文字を横書きしてなるところ、構成中の「西京」の文字は、一般的な国語辞典の「西京」の項において、例えば、岩波書店発行「広辞苑第5版」では「西の都。京都の異称。」と、三省堂発行「大辞林」では「西の方にある都。東京に対して、京都をいうことが多い。」と、小学館発行「国語大辞典(新装版)」では「西のみやこ。西都。特に、東京に対して京都をいう。」とそれぞれ記載されていることからすれば、特定の行政区画や地域の名称とまではいえないとしても、西の方にある都を意味する語であり、東京に対して京都を指すことが多いものと認識されている語と認められる。
また、上記辞典において「西京味噌」の語は、「京都産の白味噌」、「京都地方でつくられる白味噌」、「都風の甘味の強い白みそで、京都に産する。」と記載されているほか、原査定において掲げた真珠書院発行「調味料 新・食品事典7」の「西京みそ」の項や全国調理師養成施設協会発行「調理用語辞典」の「西京味噌」の項における記述をはじめ、味噌や料理に関する雑誌、論文等の記載やインターネットホームページ上の記載等からすれば、「西京味噌」は、主に京都地方でつくられる大豆に対して米麹が多く甘味の強い白味噌を指すものとして一般に広く認識されているものと認められる。 さらに、「西京味噌」に魚の切り身などを漬けたものが「西京漬け」として、「西京味噌」に漬け込んだ魚の切り身などを焼いた料理が「西京焼き」として、いずれも世上広く認識されているものと認められるが、「西京味噌」が請求人の製造販売する白味噌を指すとの解説は見当たらない。
そして、上記のような一般的な辞書、辞典類における多数の記載により形成された社会的認識は、本願商標の指定商品である「白味噌」に関する全国の消費者・需要者のみならず取引者における認識でもあるものといわなければならない。
そうすると、何ら特徴のない「西京白味噌」の文字を書してなる本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は単に商品の品質を表示したものとして認識するに止まり、自他商品の識別標識としては認識し得ないものというのが相当である。
(2)請求人(出願人)は、本願商標は請求人が商品「白味噌」について長年に亘り広く盛大に独占して継続使用してきた結果、出願時には既に著名商標となり、取引者、需要者間に請求人の商標として通用しており、他人の商品との間の識別性を具備している旨主張し、証拠を提出している。
また、請求人は、上記の辞典類等の「西京味噌」の記載に関し、その発行元の編集者に対して、「西京味噌」の掲載削除等の善処を要求し、その発行元の編集部は、次刷の際には、改訂等しかるべく対処する旨の回答していることから、「西京」の文字は商品の品質及び産地表示には当たらない旨主張している。
確かに、請求人の提出に係る甲第104ないし第106及び第145ないし第147号証によれば、請求人の申し入れに対し、上記辞典類の発行元の編集部から、今後の改訂や印刷の際に、当該項目を削除ないし訂正や、その掲載の継続を検討する旨の回答があったことが認められる。
しかしながら、これらの回答は、いずれも平成12年以降のことであり、請求人からの申し入れによって、上記の出版社が今後当該項目を削除ないし訂正等するとしても、その削除ないし訂正等がなされるまでの間は、上記の出版物に接する広範な一般の読者は、「西京味噌」、「西京漬け」、「西京焼き」について上記解説のとおり理解するものというべきである。また、既に絶版となった出版物についても、同様に、これらが書店や図書館等において入手ないし閲読することが困難になるまでは、一般の読者に対して上記の理解を及ぼすものと認められる。
そして、「西京味噌」の語が本願商標の指定商品の取引者、需要者によって上記意味合いで理解し認識されている以上、その取引者、需要者の現実の認識を前提として「西京味噌」の語の意味を理解し、これに基づいて本願商標の自他商品識別性を判断すべきである。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
(3)さらに、請求人は、京都で製造・販売される白味噌は「京都白味噌」と称されており、「西京白味噌」とは称されていないとして、京都産の白味噌に関して「西京味噌」が表示されていない証拠を多数提出しているが、「西京味噌」が主に京都地方でつくられる白味噌を指すことは、上記認定のとおりであり、京都産の白味噌の説明に際し、常に「西京(白)味噌」の名称が使用されなければならないものではないから、請求人の主張は採用することができない。
また、請求人は、京都で製造・販売される白味噌が「西京白味噌」と称されないのは、本願商標及び「西京」を商品「白味噌」に採択使用するのは請求人のみであり、他にこれを使用する者は皆無であるとし、それは請求人の所有に係る登録商標であるからである旨主張している。
しかしながら、後述のとおり、請求人の所有に係る登録商標は、円輪郭内に「丹」の文字を書してなる標章(以下「マルタン標章」という。)と「西京白味噌」又は「西京(さいきょう)」の文字からなるものであって、本願商標とは構成態様を異にするものであり、該登録商標に接する取引者、需要者が「西京白味噌」又は「西京(さいきょう)」の文字部分をもって登録商標として認識していたかどうかは甚だ疑問であるばかりでなく、上記認定に照らし、請求人の主張は採用することができない。
(4)請求人は、本願商標は請求人によって商品「白味噌」について長年に亘り広く盛大に独占して継続使用してきた結果、出願時には既に著名商標となり、他人の商品との間の識別性を具有している旨主張し、証拠を提出している。
確かに、請求人の提出に係る証拠によれば、請求人の所有に係る、マルタン標章の下部に「西京白味噌」の文字を右横書きしてなる登録375707号商標(別掲1)、又は二重輪郭線の長方形内にマルタン標章と「西京(さいきょう)」の文字を配してなる登録第1662528号(別掲2)商標と社会通念上同一といい得る商標が白味噌について使用されていることが認められる。
しかしながら、上記証拠において、マルタン標章が付されていない「西京白味噌」ないしは「西京」の文字のみからなる商標が使用されていることを示すものはわずかであり、実際に請求人が作成した商品ラベル、パッケージ等においてもマルタン標章が付されたものが大部分であって、使用されている商標の殆どは、本願商標とは構成態様を異にするものといわざるを得ない。そして、上記(1)で述べた本願商標ないしは「西京」に対する取引者、需要者の認識からすれば、使用されている商標の「西京白味噌」ないしは「西京」の文字部分は、商品の品質を表したものとして理解し認識されているとみるのが自然である。上記商品ラベル、パッケージ等の表示からすれば、請求人自身も、「西京」の部分を自他商品識別の機能を有する標章として扱っていなかったことが窺える。
また、請求人は各種雑誌、書籍、新聞記事等において「西京」、「西京白味噌」、「西京白みそ」が請求人固有の商標ないし銘柄として紹介されている旨主張しているが、「西京白味噌」が請求人の固有の商標ないしは銘柄であるかのように紹介するものはわずかであり、上記雑誌、書籍、新聞記事等により上記認定が左右されるものではない。
さらに、請求人は、関西地方を中心にした取引者、需要者等が作成したとする「証明書」を多数提出している(甲第151ないし第964号証)が、これらは請求人作成の定型文面に各自が署名又は記名(押印)したものである上に、その内容も、請求人が古くからの味噌販売業者であり、現在、全国的に有数のシェアを占めている点はともかくとして、請求人の前身である初代丹波屋茂助が「西京」の商標を使用していたことや昭和25年7月の請求人会社の設立時には「西京」の商標が全国的に有名になったことなども記載されているのであって、上記取引者等の中で昭和25年以前から請求人との間で取引をしていた者は極めて少数である上、これらの者でも到底知り得ないと思われる上記商標に関する事実を証明することについては、信用性を欠くものといわざるを得ない。
また、請求人は、銘柄「西京白味噌」が「全国味噌鑑評会」において多数回受賞しており、全国的に周知になっている旨主張しているが、その受賞の事実のみによって本願商標が請求人の使用に係る商標として取引者、需要者間に広く認識されているものと認めることはできない。
その他、本願商標が商品「白味噌」について使用された結果、請求人に係る商標として取引者、需要者間に広く認識されていることを認めるに足る証拠はない。
したがって、請求人の上記主張は採用することができない。
なお、前述した各種辞書類に掲載された「西京味噌」は、味噌の品質(京都地方((関西地方)の白味噌)を表し、請求人の固有の白みそを表すものとは認識されないこと及び「西京」の文字が自他商品の識別機能を有する標章とは認められないこと等の認定については、請求人が原告である平成14年(行ケ)第169号審決取消請求事件(無効審判2000−35554号)判決言い渡し平成15年10月6日においても、これと同旨の認定がなされている。
(5)以上のとおり、本願商標は、これをその指定商品に使用しても自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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