Trademark Appeal Case
ファスティングの識別力
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2002−4430(T2002−4430/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「ファスティング」の文字(標準文字による)を書してなり、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料,ビール製造用ホップエキス」及び第42類「飲食物の提供,美容,理容,入浴施設の提供,デザインの考案,栄養の指導」を指定商品及び指定役務として平成12年11月29日に登録出願された。その後、指定商品及び指定役務については、当審において、平成16年9月16日付け手続補正書をもって、第32類「飲料用野菜ジュース」及び第42類「飲食物の提供,栄養の指導」と補正されたものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『ファスティング』の文字を普通に用いられる方法により表してなるものであるが、『ファスティング』とは環境中に存在する化学物質と毒物から体を遠ざけることを本来の目的としている断食療法のことで、一定期間の断食を行う一方、必要最低限のエネルギーを摂るために、野菜の発酵ジュースや水などを飲みながら行われるものと知られていることから、これを本願指定商品・指定役務に使用しても、前記意味合いを有する食事療法であると理解するにすぎず、それに接する需要者は、何人かの業務に係る商品・役務であることを認識することができないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は、前記のとおり、「ファスティング」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成に係る「ファスティング」の文字は、例えば、「現代用語の基礎知識 2003年版」(株式会社自由国民社発行)によれば、「水とジュースなど最低限の栄養補給をして数日間過ごす健康法。その後3日間はおかゆなど消化のよい食事をして体内浄化する。専門の施設のあるホテルもできた。」と、「新修 広辞典 第5版」(発行所株式会社集英社 発行日2001年3月30日)の「だんじき(断食)」の項には、「ある期間、食物を食べないこと。」及びその英語表記として「fasting」並びに表音文字として仮名文字で「ファスティング」と、「新英和大辞典 第5版」(発行所株式会社研究社 発行日1998年)の「fasting」の項には「断食、絶食」と、それぞれ記載されていることが認められる。
更に、「ファスティング」の文字は、以下のとおり新聞紙上において、普通に使用されている。
(1)1996年1月14日付け日刊スポーツ3頁の「巨人 落合博満 合宿所でプールトレ発進 断食療法で5キロ減に成功」の見出しの下、その記事中に「実は昨年末に京都の杏林予防医学研究所を訪れ、体質チェックを行った上に60種類の栄養素から構成される酵素ドリンクを飲むファスティング(断食)療法を採用した。」との記載があること。
(2)2002年5月29日付け毎日新聞大阪版朝刊26頁の「[売れてます]スーパージュース『ファスティング・ダイエット』」の見出しの下、その記事中に「ファスティングとは『断食』の意味。3日間水以外の飲食を断ち、特殊な発酵野菜ジュースを飲み続けるとやせられるだけでなく、体内に蓄積された有害物質や老廃物を排出し、健康回復の効果も高いということから脚光を浴びている。」との記載があること。
(3)2002年6月28日付け朝日新聞東京版朝刊25頁の「断食でわかる私の体(満腹ニッポン 第1部・トレンドの断面:3)」の見出しの下、その記事中に「昨年、テレビやインターネットで『水とジュースなどで最低限の栄養補給をして数日過ごすと、胃腸が休まり、体にたまっている毒素が出る』と目にした。この方法はファスティングと呼ばれ、雑誌などにも載り、若い女性らの注目を集めている。」、「ファスティングでは、3日間専用のジュースで過ごし、その後3日間はおかゆなど消化のよい食事をした。」との記載があること。
(4)2003年1月5日付け日刊スポーツ東京日刊の「巨人 工藤、6日からの宮崎自主トレを前に2日間の断食に突入」の見出しの下、その記事中に「巨人工藤公康投手(39)が4日、明日6日からの宮崎自主トレを前に2日間の断食(ファスティング)に突入した。腸をきれいにすることで、栄養分の吸収を良くすることが目的。」との記載があること。
また、審判請求人(出願人)提出の物件に徴するに、以下の事実が認められる。
(1)平成12年4月15日付け発行の「予防医学ニュース」で、「Q1 ファスティングって何?」「A もともと『ファースト(fast)』とういのは断食のことで、朝食をブレックファーストと言うのも前夜からの断食を破る(ブレイク)という意味から来ています。当研究所が推奨する『ファスティング』は完全絶食とは異なり、ビタミンやミネラル、酵素をたっぷり含んだジュースを飲みながら補います。」との記載があること。
(2)1998年3月2日付け発行と推認できる「さわやか元気」の84頁に、「断食の一種であるファスティングを実行するには、苦しいのではないかと不安を感じる方もいると思うのですが?」「山田 基本的なルールを守ればそれほどつらいものではありません。実際に食べ物を断つのは三日間だけですが、ファスティングは大きく分けて三つの期間に分かれます。.........ファスティングは、いわゆる完全断食ではないので、普通の生活をしながら行うことができます。」との記載があること。
(3)1997年4月号「大丈夫」27頁に、「ファスティングを直訳すると『断食』ですが、一般的な断食とは異なります。ファスティングは、3日間、通常の食事をストップし、そのかわり1日4回、ビタミンやミネラルをたっぷり含んだ野菜ジュースで必須栄養素を補うというダイエット法。」との記載があること。
(4)「ビタミン・ミネラル革命」(著者山田豊文 発行所総合法令出版株式会社 初版発行日1998年3月2日)113頁中「ファスティング(断食療法)とは」の小見出しの下、「ファスティングは、分子矯正医学で代謝機能の低下の原因の一つとする有害物質の害を取り除き、現代人の体を健康にするための重要なノウハウの一つです。ファスティングは『断食療法』あるいは『絶食療法』と訳されていますが、減量の手段ではなく、環境中に存在する化学物質の毒素から体を遠ざけることを本来の目的としています。」との記載があること。
以上認定した事実を総合勘案すると、「ファスティング」は、原審説示のとおり、「環境中に存在する化学物質と毒物から体を遠ざけることを本来の目的としている断食療法のことであって、ある一定期間の断食を行う一方、必要最低限のエネルギーを摂るために野菜の発酵ジュースや水などを飲みながら行われるもの。」或いは、少なくとも「断食療法、絶食療法」と知られている実情を鑑みると、本願商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合、本願商標に接する取引者、需要者は、「断食療法に対応した飲料用野菜ジュース」、「断食療法に対応した飲食物の提供」、「断食療法に対応した栄養の指導」程の意味合いを把握、理解するに止まり自他商品、役務識別機能を果たし得ないものとみるのが相当である。
してみれば、普通に用いられる方法で「ファスティング」とのみ書してなる本願商標は、その指定商品及び指定役務に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標といわなければならない。
なお、審判請求人(出願人)は、「本願商標は、使用による識別性を獲得しているから、商標法第3条第2項の要件を具備している。」旨述べ、証拠としてファスティングに関する記事掲載の新聞、雑誌、書籍、及び同人が出演したテレビ番組を集めたビデオ等を提出している。
そこで検討するに、同人が提出された各証拠は、どれも「『ジュース断食療法』を確立(提唱)した山田豊文先生」、「断食ダイエット」、「ファスティング ダイエツト」、「医学的な絶食療法」等の記事内容及び「ファスティング」に関してのテレビ放映で、審判請求人(出願人)である山田豊文氏が紹介されているにすぎないものであって、結局のところ、商品「飲料用野菜ジュース」及び役務「飲食物の提供,栄養の指導」について商標「ファスティング」を使用している事実は見当たらない。
してみれば、例え、昨今話題の「ファスティング」を提唱し、指導した初めての者が審判請求人(出願人)であったとしても、提出された上記の証拠をもってしては、前述のとおり、「ファスティング」の文字よりなる本願商標が、需要者をして特定の者の業務に係る商品又は役務であることを認識させるに至ったものとは認められない。
したがって、本願商標を商標法第3条第1項第6号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当なものであって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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