結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2004−89017(T2004−89017/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4672110号商標(以下「本件商標」という。)は、「PICONE」の欧文字を横書きしてなり、平成14年3月29日に登録出願、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕,ビリヤードクロス,布製ラベル」を指定商品として、同15年5月16日に設定登録されたものである。
請求人が、本件商標の登録の無効の理由に引用する商標は、下記の(ア)ないし(ケ)のとおりである。
(ア)登録第1096501号商標(以下「引用商標1」という。)は、「PICON」の欧文字と「ピコン」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、昭和46年7月28日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同49年11月14日に設定登録されたものである。
(イ)登録第2216181号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、昭和62年9月7日に登録出願(パリ条約による優先権主張 1987年8月17日 アメリカ合衆国)、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成2年3月27日に設定登録されたものである。
(ウ)登録第693332号商標(以下「引用商標3」という。)は、「EVAN−PICONE」の欧文字を横書きしてなり、昭和39年3月13日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同40年12月21日に設定登録されたものである。
(エ)登録第2106196号商標(以下「引用商標4」という。)は、「EVAN−PICONE」の欧文字を横書きしてなり、昭和60年8月9日に登録出願、第25類「紙類、文房具類」を指定商品として、平成元年1月23日に設定登録されたものである。
(オ)登録第1298916号商標(以下「引用商標5」という。)は、「エバン・ピコン」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和45年7月28日に登録出願、第17類「スカ−ト、スラツクス、シヨ−ツ、ブラウス、スエ−タ−、シヤツ、ジヤケツト、ベスト、ス−ツ、コ−ト、その他の婦人用被服、その他本類に属する商品」を指定商品として、同52年9月12日に設定登録されたものである。
(カ)登録第2109909号商標(以下「引用商標6」という。)は、「エヴァン ピコン」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和60年9月11日に登録出願、第25類「紙類、文房具類」を指定商品として、平成元年1月23日に設定登録されたものである。
(キ)登録第2723875号商標(以下「引用商標7」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、平成3年1月8日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同9年12月26日に設定登録されたものである。
(ク)登録第2031842号商標(以下「引用商標8」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、昭和60年8月9日に登録出願、第25類「紙類、文房具類」を指定商品として、同63年3月30日に設定登されたものである。
(ケ)登録第2050604号商標(以下「引用商標9」という。)は、別掲(3)のとおりの構成よりなり、昭和60年8月9日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同63年5月26日に設定登されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第45号証(枝番を含む。)を提出した。
1.商標法第4条第1項第11号について
(1)引用商標1との関係について
本件商標は、同書・同大・同間隔で欧文字「PICONE」と書された商標であり、一方、引用商標1は、同書・同大・同間隔の欧文字「PICON」及び片仮名文字「ピコン」が上下二段に書された商標である。
引用商標1の欧文字部分に注目すると、本件商標と引用商標1との違いは、6文字目の「E」の文字の有無のみであるから、本件商標と引用商標1とは外観上類似の商標である。また、本件商標からは「ピコーン」あるいは「ピコン」の称呼が生じ、引用商標1については、「ピコン」の片仮名文字が下段に配置されているが、欧文字「PICON」の部分から、需要者・取引者は、「ピコン」あるいは「ピコーン」と称呼して取引に当たることも少なくないといえる。
したがって、本件商標と引用商標1とは、称呼においても類似する商標であり、両商標の指定商品は、同一又は類似のものである。
(2)引用商標2ないし9との関係について
本件商標からは、「ピコーン」あるいは「ピコン」の称呼が生じる。
一方、引用商標2ないし9の文字部分は、その構成からみて、「EVAN」若しくは「Evan」又は「エヴァン」若しくは「エバン」と「PICONE」若しくは「Picone」又は「ピコン」の2語が結合したものであることは明らかであり、全体として特定の意味を有しないものであるから、常に一体不可分のものとして把握されるべき特段の事情は存せず、「EVAN」若しくは「Evan」又は「エヴァン」若しくは「エバン」と「PICONE」若しくは「Picone」又は「ピコン」の部分に分離して観察され称呼され得るものである。このことは、甲第11号証ないし同第24号証の審決例からも裏付けられるものである。
そうとすれば、引用商標2ないし9からは、「エバンピコーン」、「エバンピコン」、「ピコーン」あるいは「ピコン」の称呼が生じる。
以上から、本件商標と引用商標2ないし9とは、称呼上類似する商標であり、指定商品も同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2.商標法第4条第1項第10号について
(1)「EVAN−PICONE」の商標は、請求人であるアメリカ合衆国デラウエア州のジョーンズ インベストメント カンパニー インコーポレイテッド(Jones Investment Co.,Inc.)に係るものであり、婦人服業界における商品を指定商品として、各国において商標登録出願され、登録されており(甲第25号証)、日本においても多数の登録商標を有し(甲第26号証)、一番早いものでは、1964年3月13日に出願され、1965年12月21日に登録されている。そして、現在においては、「EVAN−PICONE」の商標は、日本の婦人服業界における需要者及び取引者の間において、請求人の商品を表示するものとして、広く認識されるものとなっている。
請求人会社における販売実績等は、以下の甲各号証のとおりである。
甲第27号証は、1993年から2003年9月までの日本におけるTORAY(東レ株式会社)の「EVAN−PICONE」についての販売実績とそれによる請求人への使用料の支払い額の支払予定であり、10年間で約45億円の売上げ実績があることが記載されている。
甲第28号証は、三越デパートにおける「エヴァンピコン」の広告及びインターネット上の売場案内図であり、三越においては、全国13店舗で「エヴァンピコン」を扱っている。
甲第29号証は、「EVAN−PICONE」の製品サンプル及びデザインの詳細であり、1996年、2001年、2002年及び2003年の各季節ごとの商品ライン及び注文書が記載されている。
甲第30号証は、WIPOの仲裁センターの決定であり、同決定において、「EVAN−PICONE」の標章は、米国内外を問わず周知であることが記載されている。
甲第31号証は、2002年度のノートン報告書であり、1998年から2001年の「EVAN−PICONE」の純利益が記載されている。
甲第32号証は、2001年9月24日から同12月16日までのイベント商品販売報告書であり、イベントにおける「EVAN−PICONE」商品の販売数、販売額が記載されている。
甲第33号証は、「EVAN−PICONE」の各誌への広告提携用請求書であり、2002年10月15日及び同11月4日で約44000ドルの広告費用がかかったことが記載されている。
甲第34号証は、アメリカ合衆国内の店舗及びデパートの「EVAN−PICONE」商品の注文書である。
甲第35号証は、インターネット上の「EVAN−PICONE」商品の通信販売ページであり、多数のホームページ上で「EVAN−PICONE」の商品が取引されている。
甲第36号証は、請求人が属するジョーンズ アパレル グループ社に対する写真撮影、広告掲載の費用請求書であり、2002年12月6日から2003年6月19日にかけての請求額が記載されている。
甲第37号証は、1999年2月17日の「WWD」の新聞記事であり、同新聞記事によると、ジョーンズ アパレル グループの「EVAN−PICONE」に係る販売数は、1970年代後半には2億5千万ドル以上に達したと記載されている。
甲第38号証は、「EVAN−PICONE」が掲載されているカタログや雑誌である。
甲第39号証は、1983年から2003年6月にかけて婦人服の「エバンピコン」についての新聞記事であり、1983年には、「エバンピコン」のブランドが日本において販売されていたことが記載されている。
(2)婦人服等の服飾業界においては、例えば、「LUIS VUITTON」(「ルイヴィトン」)を単に「VUITTON」(「ヴィトン」)、「HUGO BOSS」(「ヒューゴボス」)を単に「BOSS」(「ボス」)、「Christian Dior」(「クリスチャン ディオール」)を単に「Dior」(「ディオール」)、「GIORGIO ARMANI」(「ジョルジオアルマー二」)を単に「ARMANI」(「アルマー二」)等とも需要者は認識し、称呼する。そして、請求人の周知・著名な商標「EVAN−PICONE」についても、これらと同様に単に「PICONE」と認識し「ピコン」と称呼されるものである。
したがって、本件商標「PICONE」は、請求人の「EVAN−PICONE」と同一の称呼を生じるものであり、本件商標に係る指定商品は、請求人の婦人服産業に係る商品又は役務と類似の商品又は役務を含むものである。
(3)また、本件商標「PICONE」が出願された平成14年(2002年)3月29日には、既に、商標「EVAN−PICONE」は、請求人の業務に係る商品(役務)を示すものとして、需要者・取引者の間に広く認識されている商標となっていた。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
3.商標法第4条第1項第15号について
商標「EVAN−PICONE」は、日本国内及び外国において、周知・著名なものであるから、婦人服業界に係る商品又は役務の分野において、請求人以外の者が同商標と同一又は類似の商標を使用した場合、請求人に係る商品又は役務と混同を生じることは必至である。
本件商標「PICONE」に係る商品又は役務の需要者は、該商品又は役務が請求人に係るものであると誤認するものであるから、本件商標は、該商品及び役務の出所について混同を生じるものであるといえる。また、本件商標に係る商品又は役務の需要者は、該商品又は役務が請求人と経済的又は組織的に何等かの関係があるものの業務に係る商品又は役務であると誤認する可能性もあり、その意味においても、本件商標は、該商品又は役務の出所について混同を生じるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4.商標法第4条第1項第19号について
被請求人は、2002年3月29日に、「PICONE」及び「PICONE/CLUB」の商標登録出願を計6件行っており(甲第40号証ないし同第45号証)、これらの出願は、請求人によって実際に提供される商品又は役務に関連する商品又は役務を複数の区分において指定したものである。
被請求人の上記行為は、請求人の信用及び名声を毀損し又は請求人の周知・著名な「EVAN−PICONE」の商標のもつ出所表示機能を希釈化させることにより、請求人に損害を与える蓋然性があり、これらの事実からも、本件商標の出願における被請求人の不正の目的が窺えるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第29号証を提出した。
1.本件商標と引用各商標について
(1)本件商標「PICONE」の称呼について
請求人は、本件商標から「ピコン」の称呼が生ずると主張しているが、本件商標より「ピコン」なる称呼が生ずる可能性はない。
本件商標は、欧文字「PICONE」を横書きした構成からなるところ、各音毎に母音を伴うイタリア語特有の構成から、これをイタリア語読みして、「ピッコーネ」と発音されるものである。
我が国服飾業界において、イタリアファッションは一大潮流であって、実際の市場において、イタリア語からなる商標も多数使用されており、その発音であるローマ字の発音は、我が国においても一般的になっている。
請求人のいうように、引用商標「PICON/ピコン」中の欧文字は、併記された片仮名文字のとおり、「ピコン」と発音されることは当然であるが、本件商標にあっては、末尾の文字は、「N」ではなく「NE」であって、この点において、本件商標と引用商標は根本的に相違する。
本件商標「PICONE」の語尾部分「NE」は、これをローマ字読みして「ネ」、あるいは無理に英語風に発音するとしてもせいぜい「ニ」と発音されるものであって、全体で6文字という欧文字商標としては短い構成からなる本件商標について、顕著に印象づけられる語尾に配された「E」の文字を捨象して発音が決定されることはない。
イタリア語においては、「Leoneレオーネ」(ライオンを意味する、スバルレオーネなどで日本語化している)、「Limoneリモーネ」(レモンから作られるイタリアの酒)、あるいは、「Collezioneコレツィオーネ」(コレクション)、「simoneシモーネ」(女性の名前)などの用語にあるように、「・・・NE」は必ず「・・・ネ」と発音されるところである。ちなみに、「picone」なる英語はなく、これが英語読みはできないことは勿論である。
本件商標の我が国市場における現実の使用例についてみても、本件商標「PICONE」に関する商品広告、取引書類などにおいて、これを「ピッコーネ」と片仮名表記し、「PICONE」とその発音である「ピッコーネ」は、我が国市場においても周知、著名なものとなっている(乙第5号証ないし同第23号証)。後述するとおり、実際の市場において、本件商標の称呼は「ピッコーネ」として取引者・需要者に通用しており、本件商標の称呼が「ピッコーネ」であることは、ローマ字からなる構成上の理由及び我が国市場において通用している実際の呼称より明白である。
(2)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標の称呼「ピッコーネ」と引用商標1の称呼「ピコン」について検討すると、両者はいずれも3音より構成されるとはいえ、語尾音「ネ」と「ン」の差異を有するばかりでなく、第1音においても「ピッ」と「ピ」、第2音においても「コー」と「コ」の相違をも有し、3音からなる構成各音の全てにおいて相違するものであって、全体としての語韻語調において著しく相違するものである。
よって、本件のごとく、極めて短い音構成からなる商標にあって、その相違は顕著に印象づけられるところであって、本件商標と引用商標1の称呼が非類似であることは明白である。
(3)本件商標と引用商標2ないし9との類否について
上記引用各商標の構成についてみると、欧文字「EVANーPICONE」又は「EvanーPicone」、片仮名文字「エバン・ピコン」又は「エヴァンピコン」の全体を、共通の書体、同一の大きさで、一体かつ一連に表わしてなるものであって、これが全体で一個の商標を構成することはその外観から明らかである。
その発音からみても、引用各商標の称呼「エヴァンピコン」又は「エバンピコン」は、全体でも6音という比較的短い音構成からなるもので、不自然に冗長なものではなく、その全体が淀みなく滑らかに発音され、これが一個の商標としてまとまった印象を与えるものであって、引用各商標は、その語義及び発音からしても常に一体不可分のものとして認識、記憶され、これからは常に「エヴァンピコン」又は「エバンピコン」の称呼のみを生じ、これが「ピコン」のみで略称されることはない。
加えて、「EVANーPICONE」(「Evan−Picone」)は、請求人自ら言及するとおり、一体となって、請求人創設者の氏名なる特定の意味を有するものであり、「EVAN」は、男性名であって、それ自体商品識別力を有する顕著な用語であり、また、現実の市場において、引用各商標は「エヴァンピコン」(「エバンピコン」)と発音され、常に「EVANーPICONE」(「EvanーPicone」)及び「エヴァンピコン」(「エバンピコン」)と一体不可分に表わされているものであって、略称されていないことが明らかである。
よって、「ピッコーネ」の称呼が生ずる本件商標と「エヴァンピコン」又は「エバンピコン」の称呼が生ずる上記引用各商標の称呼とは、その構成音数において著しく相違するものであって、両者の称呼上の相違は明白である。
なお、本件商標は、旧分類において登録されていた登録第2720443号「PICONE」旧第17類(乙第1号証)の登録商標について、国際分類の採用に伴い、新規出願を行ったものである。
その他、被請求人は、被服分野において、登録第2581624号「PICONE」、登録第1223732号「Studio Picone Roma」、登録第4219647号「PICONE/CLUB」など多数の「PICONE」関係商標の登録を取得しており(乙第2号証ないし同第4号証)、被請求人は、これらの登録を基礎に本件商標を広く使用しているところであって、上記各登録と同様に、その既得権を基礎としての登録であって、本件商標の登録も当然に認められるべきである。
(4)引用商標の周知・著名性について
請求人は、引用商標の周知・著名性の根拠を、甲第25号証ないし同第39号証として多数提出している。
これらの資料は、甲第28号証、甲第39号証を除き、我が国市場に関するものではない。請求人提出の証拠資料をもって、我が国における引用商標の周知・著名性を認定することはできない。甲第27号証中に一部、我が国市場に関係するが如き資料もみられるものの、これが我が国において流通していることを直接に示すものでもない。我が国における販売額の年度別合計、宣伝広告費についても示されていない。
仮に、引用商標の著名性を主張するのであれば、それが日本国内でどの様に使用されたかを詳細に説明し、業界紙、一般紙などの新聞・雑誌の記事、広告などの客観的な資料を充分に提出しなければならない。甲各号証は、その分量は多いものの、その資料に示す取引の内容やこれが資料の示す事情についての説明もない。この程度の資料で、引用商標が周知・著名性を獲得した商標となっているとは認められないし、登録された権利を取り消し得る根拠となり得るものではない。
そもそも、甲各号証に示される引用商標の使用例は、全て「EVANーPICONE」及び「エヴァンピコン」であって、これが「ピコン」「PICONE」のみで略称されている例は全くない。
2.商標法第4条第1項第11号について
上記のとおり、本件商標から生じる称呼は「ピッコーネ」であって、これが引用商標1の称呼「ピコン」と類似するものではなく、引用商標2ないし9の称呼「エヴァンピコン」、「エバンピコン」と非類似であることも明白である。
また、本件商標と引用各商標とは、外観上も相違することは明白であり、
さらに、格別の意味をもたない本件商標と引用各商標との観念上の相違も明白であって、本件商標は引用各商標と類似するものではなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
3.商標法第4条第1項第10号について
(1)前述したとおり、提出された証拠資料を基礎に引用商標が我が国において周知・著名であることは認められないばかりでなく、甲各号証に示される引用商標の使用例は、全て「EVANーPICONE」及び「エヴァンピコン」であって、これが「ピコン」あるいは「PICONE」のみで略称されている例は全くない。甲各号証が示すとおり、引用各商標は、常に一体不可分に「EVANーPICONE」として、使用され認識されていることを示すにすぎない。
(2)被請求人の「PICONE」の歴史及び概要
PICONE(ピッコーネ)は、ナポリの陶芸家GIUSEPPE PICONE(ジュゼッペ・ピッコーネ 1926年ナポリ生まれ)が自己の陶芸作品にペイントした創作キャラクター「ARCHIVIO」(アルチビオ=イタリアの司祭を表す「ARCIVESCO」アルチベスコから作った造語)を衣料、雑貨に拡大したブランドである。
ジュゼッペは、陶芸の才能に加えてイラストレーターとしての才覚もあり、自己の陶芸作品に前述のアルチビオをモチーフとした図案をペイントした作品のオリジナリティを高めることを考案、1940年代にはイタリア陶芸界では既にジュゼッべ=アルチビオとして高い評価を受けていた。
1960年に、ジュゼッペはショップ「PICONE」(ピッコーネ)をローマスペイン広場近くにオープン、陶器に加え、アルチビオを描いたTシャツ等の軽衣料、バッグ類も販売し、店は大反響となり、アルチビオのマークは「PICONE」(ピッコーネ)のロゴとともに世界中の人々に認識された。
1981年、欧州からの輸入品卸・小売商である株式会社サン・フレール(被請求人)は、欧州で評判の「PICONE」(ピッコーネ)の独占輸入契約をジュゼッペが主宰する会社イタリア国STUDIO PICONE(スタジオ・ピッコーネ社)と締結することに成功、日本市場で輸入商品であるPICONE(ピッコーネ)の販売が開始された。日本市場での販売に際し、PICONEの発音を「ピッコーネ」と現地イタリアでの呼称をそのままカタカナ表記した。イタリアのみならず、欧州、英国、米国等英語圏においても、本ブランドの呼称はピッコーネであり、この呼称が世界的に統一されている事実があり、日本においてもそれを踏襲し、現在に至っている。
1988年、ピッコーネ社は、日本でのライセンス生産を開始、1990年、生産面、販売面を更に強化するため、生産・販売を株式会社サン・フレールの子会社であり国産商品の生産・販売にノウハウを持つ株式会社ビキジャパンに移行(サブ・ライセンス)、1999年にはPICONE(ピッコーネ)は売上高60億円、全国取扱い店舗981件を数えるほどのビッグ・ブランドとなった(乙第5号証)。
我が国における概要及び販売店舗については乙第5号証、年度別販売額は乙第6号証、我が国における実際の広告、パブリシティなど各種の販売促進活動の一例は乙第8号証ないし同第23号証に示すとおりであり、これらは、被請求人が有する資料のごく一部であって、必要な場合には、さらに多量の資料を提出する容易がある。
PICONE(ピッコーネ)は、現在も活躍中のGUISSEPE PICONE(ジュゼッペ・ピッコーネ)が少なくとも1960年に自己のショップをローマに開設した時点でショップ及び商品に付しており、40年余の歴史的事実があり、被請求人株式会社サン・フレールが輸入商品としてPICONE(ピッコーネ)を日本市場に紹介したのは1981年であり、その後、販売元は株式会社ビキジャパンとなるも1981年以来、現在に至るまで23年間一切販売を中断せずに日本市場で展開しているものである。
他方、引用商標「EVANーPICONE」の日本市場での展開は1994年からと思われるが、日本市場においては被請求人のPICONE(ピッコーネ)の方が10年以上早くから販売している。
そもそも、引用された「EVANーPICONE」は、三越百貨店10数店舗のみの販売で売上高も多くはない。これに対し、本件商標にかかるPICONE(ピッコーネ)は、直営・百貨店・FCと自主編集売場だけでも33店舗、一般卸の専門店も加えると全国約1008ヶ所で販売しており、「EVANーPICONE」よりはるかに高い認識度を有している。
(3)以上詳述したとおり、本件商標と、常に一体不可分である引用各商標「EVANーPICONE」、「エヴァンピコン」等とは、その称呼、観念及び外観のいずれにおいても類似するものではなく、引用商標の我が国における使用があるとしても、周知にはなっていない。他方、本件商標は、被請求人の商標として周知・著名となっており、本件商標の方がはるかに高く認知されている。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
4.商標法第4条第1項第15号及び第19号について
前述したとおり、引用商標の周知・著名性は認められないし、その使用する商標は、不可分一体に構成された「EVANーPICONE」、「エヴァンピコン」であって、本件商標との相違は明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当するものではない。
1.商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記のとおり、「PICONE」の欧文字を書してなるところ、親しまれた英語の成語とは認められないことから(仏語、独語、伊語にも成語としては見当たらない。)、直ちに、一定の称呼をもって認識されるものとはいえず、「PICONE」の綴り字のみから判断した場合には、英語風の読みに従い「ピコ(ー)ン」の如き称呼を生ずる場合もあり、ローマ字風の読みに従って「ピコネ」の如き称呼を生ずる場合も否定できない。
しかして、商標は使用することによってこそ、その商標に業務上の信用が蓄積されるものであることに鑑みれば、長年に亘って使用されている商標については、その商標が現実に使用されている実情を離れて、その称呼を判断することは適切なこととはいえない。
そこで、被請求人の提出に係る乙各号証をみるに、「PICONE」は、ナポリの陶芸家GIUSEPPE PICONE(ジュゼッペ・ピッコーネ)が1960年にローマにショップ「PICONE」を開設して、Tシャツ等の軽衣料やバッグ類等の商標として使用したことに始まり、我が国においては、1981年に、被請求人である株式会社サン・フレールにより、「PICONE」製品の輸入販売が開始され、1988年には、イタリア国PICONE社が日本でのライセンス生産を開始し、1990年には、生産面、販売面を強化するため、生産・販売を被請求人の子会社である株式会社ビキジャパンに移行したものであり(サブ・ライセンス)、1999年には、PICONE製品の小売り売上高は60億円、全国取扱店舗は981店を数えるまでになっていたことを認めることができる(乙第5号証ないし同第7号証)。
そして、乙第5号証(株式会社サン・フレール取締役 小森滋の報告書)によれば、「PICONE」の商標は、本国のイタリアのみならず、欧州、英国、米国等の英語圏においても「ピッコーネ」と称呼されている旨記載されており、我が国における取引の実情をみても、乙第8号証(デパートにおけるコーナーの写真、各デパートにおける配置図)には、「池袋東武百貨店/ピッコーネ・ショップ」、「ピッコーネ/赤坂サンローゼ店」、「ピッコーネ/レディス・メンズファッション・雑貨」等と記載されており、乙第9号証(百貨店販売用PICONE説明書)には、「GIUSEPPE PICONE/ジュゼッペ・ピッコーネの魅力」の表題のもとに、「ピッコーネの世界、・・・ピッコーネブランドの魅力を探る・・・」等の紹介記事が掲載されており、乙第10号証(1998年 PICONE[ピッコ−ネ]の展示会案内)には、「横浜高島屋2Fサロン・ル・シックにピッコ−ネをオープンする運びとなり・・・ピッコーネがお届けする真夏のコレクションを・・・」等と記載されており、乙第11号証(PICONE[ピッコ−ネ]ダイレクトメール)には、「<ピッコーネ>コート、ピッコーネのカジュアルコーディネイト」等と記載されており、乙第12号証(H16.2.2付繊研新聞掲載の記事)には、「JR名古屋高島屋・・・ピッコーネを導入する。・・・」等と記載されており、乙第13号証ないし同第15号証(ヴァンテーヌ平成7年12月号、平成9年3月号及び平成10年9月号掲載の広告)、乙第16号証ないし同第18号証(ヴェリイ平成8年9月号、平成9年12月号及び平成10年9月号掲載の広告)、乙第19号証(エッセ平成8年2月号掲載の広告)、乙第20号証(ミス家庭画報平成8年6月号掲載の広告)、乙第21号証(ヴイバーチェ平成11年夏号掲載の広告)には、「コート(ピッコーネ/ビキジャパン)」、「ピッコーネでは、クリスマスに向けて・・・」、「ピッコーネ/PICONE キャラクターが可愛い大人の女性向けブランド・・・」等々と記載されており、乙第22号証(株式会社ビキジャパンのホームページ)には、「ピッコーネ(STUDIO PICONE&PICONE CLUB)」の表題のもとに取扱いブランドの紹介記事が記載されており、乙第23号証(株式会社ビキジャパン発行「PICONE」のカタログ)によれば、「PICONE」ブランドの各種衣料品が掲載されている。
以上の乙各号証によれば、被請求人の使用に係る「PICONE」の商標は、イタリアをはじめ、欧州、米国において、「ピッコーネ」と称呼されているばかりでなく、我が国においても、「ピッコーネ」と称呼され、既に、取引者・需要者の間において定着しているものということができる。
そうとすれば、本件商標「PICONE」からは「ピッコーネ」の称呼のみを生ずるものというのが相当である。
一方、引用商標1は、前記のとおり、「PICON」の欧文字と「ピコン」の片仮名文字を二段に書してなるものであるから、その構成文字に相応して「ピコン」の称呼を生ずるものと認められる。
また、引用商標2ないし9は、前記及び別掲のとおりの構成よりなるところ、その構成中の「EVAN PICONE」、「EVANーPICONE」、「Evan−Picone」あるいは「エバン・ピコン」、「エヴァンピコン」の各文字は、それぞれ、外観上まとまりよく一体的に表現されており、これらより生ずる「エバンピコン(エヴァンピコン)」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものである。そして、上記引用各商標が我が国において広く知られているものであるとして、請求人が提出している甲第28号証(三越デパートにおける「エヴァンピコン」の広告等)及び同第39号証の1ないし12(1983年から2003年6月にかけての新聞記事)によれば、そのいずれにおいても、「EVAN PICONE」、「エバンピコン」あるいは「エヴァンピコン」の一連の文字をもって表示されており、「PICONE」あるいは「ピコン」の文字のみの表示は見当たらない。そうとすれば、引用商標2ないし9は、その構成中の「PICONE」、「Picone」あるいは「ピコン」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情はないものというべきであるから、該構成各文字全体に相応して、「エバンピコン」ないしは「エヴァンピコン」の称呼のみを生ずるものといわなければならない。
そこで、本件商標から生ずる「ピッコーネ」の称呼と引用商標1から生ずる「ピコン」及び引用商標2ないし9から生ずる「エバンピコン」ないしは「エヴァンピコン」の称呼とを比較するに、これらの各称呼は、その音数及び音構成に明らかな差異が認められるものであるから、称呼上互いに紛れるおそれのないものである。
また、外観についても、本件商標「PICONE」と引用商標1「PICON/ピコン」の欧文字部分とは、いずれも比較的短い文字構成において、語尾部分とはいえ、「E」の文字の有無の差異を有するものであるから、称呼における明らかな差異とも相俟って、通常の注意力をもってすれば、これを見誤ることはないものというべきであり、また、本件商標とその他の引用各商標とは、上記記載のとおりのものであるから、外観においても明らかな差異を有するものというべきである。さらに、本件商標と引用各商標とは、いずれも特定の意味合いを有しない造語と認められるものであるから、観念については比較すべくもないものである。
してみれば、本件商標と引用商標1ないし9とは、その外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
なお、請求人は、審決例を挙げて主張しているが、それらの審決で争われている商標と本件商標とは商標の構成を異にするばかりでなく、そもそも、商標の類否の判断は、各商標につき個別具体的に、取引の実情等をも含めて総合的に判断されるべき性質のものであるから、請求人が主張するような事例があるからといって、本件商標と引用各商標との類否の判断を左右することにはならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2.商標法第4条第1項第10号について
請求人の使用に係る商標「EVAN−PICONE」は、上記第5 1.において認定したとおり、我が国において、一連一体の商標として使用されており、「エバンピコン」ないしは「エヴァンピコン」と表示されているばかりでなく、アメリカ合衆国等における使用の状態を示すその他の甲各号証によるも、「EVAN−PICONE」の一連一体の商標として使用されているものであって、「PICONE」のみの表示をもって使用されている事実を見出すことはできない。
そうとすれば、請求人の使用に係る商標「EVAN−PICONE」は、我が国の内外を問わず、一連一体の商標として認識され、「エバンピコン」ないしは「エヴァンピコン」の称呼のみを生ずるものというべきである。
してみれば、前記のとおり、「ピッコーネ」の称呼を生ずる本件商標と請求人の使用に係る商標「EVAN−PICONE」とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
したがって、その余の要件について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3.商標法第4条第1項第15号について
上記第5 1.において認定したとおり、本件商標「PICONE」は、GIUSEPPE PICONE(ジュゼッペ・ピッコーネ)が1960年にローマにショップ「PICONE」を開設したことにはじまり、我が国においては、1981年には既に、被請求人により、「PICONE」ブランドの被服、バッグ類、雑貨等の輸入・販売が開始され、1990年には、被請求人の子会社である株式会社ビキジャパンによる「PICONE」製品の我が国における生産も開始され、1999年におけるPICONE製品の小売り売上高は60億円、全国取扱店舗は981店を数えるまでになっており、各種雑誌等にも盛んに宣伝広告がなされていたいた事実が認められ、専ら「ピッコーネ」の称呼をもって取引されていたものと認められる。
他方、請求人の使用に係る「EVAN−PICONE」の商標は、アメリカ合衆国において、1949年に創設されたEVAN−PICONE社のブ
ランドとして使用されたことに始まり、甲第37号証によれば、請求人が属するジョーンズ アパレル グループの「EVAN−PICONE」に係る販売額は、1970年代後半には2億5千万ドル以上に達しており、甲第39号証(新聞記事)によれば、1983年には、「EVAN−PICONE」ブランドの婦人服が我が国においても販売され、甲第27号証によれば、1993年から2003年9月までの日本における東レ株式会社による「EVAN−PICONE」製品の販売実績は、10年間で約45億円であったことが認められ、「EVAN−PICONE」の商標は、専ら「エバンピコン」の称呼をもって取引されていたものと認められる。
そうとすれば、前記認定のとおり、本件商標と請求人の使用に係る商標「EVAN−PICONE」とは、「ピッコーネ」と「エバンピコン」の称呼において、互いに紛れるおそれのない別異の商標ともいい得るものであるばかりでなく、請求人の使用に係る商標「EVAN−PICONE」が婦人服の商標として、我が国における取引者・需要者の間において広く知られていたものであるとしても、乙各号証に照らしてみれば、本件商標も被服等の商標として、少なくとも、請求人の使用に係る商標「EVAN−PICONE」に劣ることのない程度に、我が国における取引者・需要者の間において知られていたものとみるのが相当である。
してみれば、上記の如き取引の実情に徴すれば、被請求人が本件商標を被服等との関連性もあり、取引者・需要者にも共通性を有する本件指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして請求人の使用に係る商標「EVAN−PICONE」及び引用各商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4.商標法第4条第1項第19号について
本件商標と請求人の使用に係る商標「EVAN−PICONE」及び引用各商標との関係は、上記のとおりに理解されるものであるから、本件商標は、請求人の信用及び名声を毀損させたり、請求人の使用に係る商標及び引用各商標の出所表示機能を希釈化させるなど不正の目的をもって出願されたものとは認められず、他に、これを裏付けるに足りる証左も見出せないところである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5.むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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