Trademark Appeal Case
著名人名と商標の類否
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成11年異議第90613号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録4227771号に係る商標(以下「本件商標」という。)は、後掲のとおり、「ピアザバレンチノ」の片仮名文字及び「PIAZZAVALENTINO」の欧文字を2段に書してなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を指定商品として、平成8年1月12日登録出願、同11年1月8日に設定登録されたものである。
2 本件商標の取消理由
登録異議の申立てがあった結果、本件商標の登録を取り消すべきものとして商標権者に対して通知した取消理由(平成13年8月23日付取消理由通知書)は、要旨次のとおりである。
<取消理由>
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の主張の趣旨及び甲第7号証、甲第13号証ないし甲第62号証によれば、次の事実が認められる。
「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。
わが国においても、ヴァレンティノ ガラヴァーニの名前は1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。
昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成8年1月当時には、既に我が国においても著名であったものと認められる。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。そして、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)氏がデザインした婦人服、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、ベルト、アクセサリー等のファッション関連の商品は、「VALENTINO GARAVANI」「VALENTINO」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「ヴァレンチノ」の商標(以下、これらの商標をあわせて「引用商標」という。)をもってわが国の取引者、需要者の間に広く知られていた事実が認められる。
さらに、当審において調査するに、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「VALENTINO GARAVANI」は、我が国においては、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代「服飾辞典」同文書院1981年p550、山田政美「英和商品辞典」(株)研究社1990年p447、金子雄司外「世界人名辞典」岩波書店1997年p84)において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「marie claire」1996年2月1日号、「non-no」1989年 No23号等からも認められる。
以上の事実よりすると、請求人は、引用商標を婦人服を始めとし、紳士服、ネクタイ、バッグ、靴、ベルト、アクセサリー等のファッション関連の商品に使用しており、その結果、引用商標は、遅くとも本件商標の登録出願の時には、既に我が国において、取引者、需要者の間に広く認識されていたものである。
他方、本件商標は、その構成中に「VALENTINO」の文字を有するものであり、前記認定したとおり「VALENTINO」は周知なものであるから、本件商標おいて「VALENTINO」の文字は重要な意味を持つ言葉と認識される。そして、本件商標の指定商品「洋服」等は、引用商標が使用されている被服等の商品と関連のあるファッション関連の商品である。
そうすると、本件商標を商標権者がその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、周知商標である引用商標を連想させ、本件商標が付された商品が引用商標の一種ないし兄弟ブランド、ファミリーブランドであるなどと誤解し、あたかも上記デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)又は、同人と組織的・経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号に該当する。
3 商標権者の意見
上記の取消理由に対して、商標権者は、その意見を要旨次のように述べている。
(1)「VALENTINO」の語について
取消理由において、a)新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられている。b)「服飾辞典」、「英和商品辞典」及び「世界人名辞典」において「ヴアレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されている。c)雑誌「marie c1aire」及び「non−no」においても略されて表現されていることから、「VALENTINO」及び「ヴァレンチノ」の商標が「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンテイノ ガラヴァーニ」の略称を示す商標として周知であると認定している。しかしながら、上記のa)ないしc)の内、a)及びc)にある新聞、雑誌の記事の一部については、申立人等が出版社・新聞社に掲載を依頼した原稿をそのまま掲載したにすぎないものであり、その記事中に「VALENTINO」あるいは「ヴァレンチノ」なる表示があるとしても、そのことは単に申立人が出版社等に提供した原稿が不正確に表現されていたことを示すにとどまるものであり、またa)及びc)にあるその他の新聞、雑誌の記事及びb)の辞典類については、それらに「VALENTINO」あるいは「ヴァレンチノ」なる表示が見出されるとしても、我が国において「VALENINO」あるいは「ヴァレンチノ」なる名又は姓を有するイタリアの服飾デザイナーとしては、「VALENTINO GARAVANI」の他に「MARIO VALENTINO」等が知られているから、このような不正確な表現は、単にその原稿を書いた記者、編集者等の認識不足を示すにとどまるものである。
なお、「コンサイス外国人名事典」(三省堂発行:乙第1号証)においては、「ヴァレンティノ(Valentino)」がアメリカの映画俳優の故「Rudolph Valentleo」(ルドルフヴァレンテイノ)について掲載されている。
そもそも「VALENTINO」の語は、「伊和中辞典」(小学館発行:乙第2号証)にもあるとおり、「聖ヴァレンティーノ(ローマのキリスト教殉職者)」あるいは「男子の名」を意味するイタリア語であるところ、特に「男子の名」としては、我が国における「太郎」、「次郎」等と同様にありふれており、また姓としてもありふれたものであるから、この「VALENTINO」なる名又は姓の人は多数存在するものである。
我が国においても、前述のとおり「MARIO VALENTINO」等が服飾デザイナーとして知られており、この他にも「VALENTINO」を含むデザイナー名と思しきブランドは多数存在している実状があり(「ファッション・ブランド年鑑98年版」チャネラー発行:乙第3号証、「アパレル名鑑98」商業界発行:乙第4号証)、これらの者は、その共通する「VALENTINO」によっては区別し得ないため、これらの氏名又はこれよりなる商標は簡略化して単に「VALENTINO」「ヴァレンチノ」と略称されることはなく、必ずその全体によって「ヴァレンチノガラヴァーニ」、「マリオヴァレンチノ」、「ルドルフヴァレンチノ」等と称呼して指称されているものである。
したがって、「VALENTINO GARAVANI」及び「ヴァレンティノガラヴァーニ」が著名な氏名であり、著名な商標であるとしても、一部の雑誌、新聞及び辞典に記載があるからといって、これをもって「VALENTINO」、「ヴァレンチノ」なる商標が、「VALENTINO GARAVANI」「ヴアレンテイノガラヴァーニ」の略称を示す商標として周知であるとした認定は不当なものと考える。
(2)本件商標について
本件商標は、「ピアザバレンチノ」の片仮名文字と「PIAZZAVALENTINO」の欧文字を二段に横書きしてなる商標で、指定商品は、第25類に属する上記1に示すとおりのものである。
ところで、近時我が国において海外旅行者が増加し、イタリアもその渡航先として人気の高い国の一つに挙げられるため、我が国でもイタリアの街角で見かける「ピアザ○○○」「PIAZZA○○○」との表示の「ピアザ」「PIAZZA」の語が「広場」を意味する語であると理解する者が決して少なくないものである(前出「伊和中辞典」)。そのため、本件商標「ピアザバレンチノ」「PIAZZAVALENTINO」に接した者は、全体として「聖バレンティノ広場」なる一つの意味を有するイタリア語として容易に理解するものであり、また、本件商標の構成文字に相応して生じる「ピアザバレンチノ」の称呼も決して冗長なものではなく、澱みなく一連に称呼し得るものであるから、本件商標を常に一体不可分のものとして認識するものである。
したがって、本件商標の構成中、(1)で述べたとおり、イタリア人のありふれた名又は姓である「バレンチノ」、「VALENTINO」の部分を殊更分離して認識、称呼されることはあり得ない。
(3)さらに付言すると、本件商標と同様に「VALENTINO」の語を含む商標が登録されている例は枚挙に暇ないものであり、本件商標の出願日以降に出願された商標が登録されている(商標公報:乙第8号証ないし乙第104号証)。
(4)以上のとおり、「VALENTINO」の語は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノガラヴァーニ」の略称を示す商標として周知なものではなく、単にありふれたイタリア人の名又は姓であり、かつ本件商標は常に一体不可分のものとして認識されるものであるから、本件商標をその指定商品のいずれに使用しても、商品の出所について混同を生じるおそれのないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではないと考える。
4 当審の判断
(1)本件商標を、商標権者がその指定商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、引用商標(「VALENTINO GARAVANI」「VALENTINO」「ヴアレンティノ ガラヴァーニ」「ヴァレンティノ」)を連想させ、本件商標が付された商品が引用商標の一種ないし兄弟ブランド、ファミリーブランドであるなどと誤解し、あたかも上記デザイナーである「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンテイノ・ガラヴァーニ)又は、同人と組織的・経済的に何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである旨の上記2の取消理由は妥当であって、本件商標は他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
(2)商標権者は「VALENTINO」の語は、「聖ヴァレンティーノ(ローマのキリスト教殉職者)」あるいは「男子の名」を意味するイタリア語であって、名又は姓としてもありふれたものである。また、我が国においても、前述のとおり「MARIO VALENTINO」等が服飾デザイナーとして知られており、この他にも「VALENTINO」を含むデザイナー名と思しきブランドは多数存在している実状がある旨述べているが、我が国においては、ファッション関連からみれば、上述のとおり国際的なトップデザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)によるデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起するものであり、これ以外の「VALENTINO」をその氏名の一部にするデザイナーないしそのブランドが、引用商標を越えて単に「VALENTINO」、「Valentino」又は「ヴァレンティノ(バレンチノ)」と略されている状況は見出せないし、かつ、商標権者の主張及びその提出に係る証拠(「ファッション・ブランド年鑑98年版」、「アパレル名鑑98」)、からしては、かかる取引きの実状は、不明というほかなく、むしろ、デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)と何らかの関連性のあるものと誤解している可能性も否定できないというべきである。
(3)そして、本件商標の指定商品が属する第25類において、その構成中に「VALENTINO」、「Valentino」「ヴァレンティノ(バレンチノ)」の文字を有する商標等の商標登録の存在は認めるとしても、それらの商標がデザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァーニ)との関係で混同を惹起させるものかどうかは、個別・具体的に決せられるものであって、本件における混同可能性を否定する根拠とするのは適切でなく、前記認定を左右するに足りない。
なお、「VALENTINO」の文字をその構成中に有する登録商標に関して、本件と同様に審決又は異議決定をしたものに対する東京高等裁判所における行政訴訟事件において、判決されていることは先の手続中止解除通知書で示したところである。
(4)本件商標は、「ピアザバレンチノ」及び「PIAZZAVALENTINO」の文字を書してなるところ、イタリアの街角で「ピアザ○○○」や「PIAZZA○○○」との表示を見かけること、及び「ピアザ」「PIAZZA」の語が「広場」を意味する語であると理解される場合のあることを必ずしも否定するものでない。しかし、商標権者の提出に係る証拠を徴しても、これが我が国の需要者間に「聖バレンティノ広場」なる一つの意味を有するイタリア語として容易に理解するものとの事情は不明というほかなく、かかる仮名文字又は欧文字を一体のものとしてのみ印象付けて記憶するものとするような格別の事情に乏しい状況にあってみれば、これに接する需要者はその構成中の「ピアザ」「PIAZZA」又は「バレンチノ」「VALENTINO」の各文字のうち記憶、印象し易い文字部分により取引に資する場合も決して少なくないものというべきである。また、本件商標の指定商品は、ファッション関連商品といえるものを含み、その需要者層は老若男女を問わないばかりか、いわゆるブランド品に詳しい者ばかりでなく、イタリアをその渡航先とした海外旅行者に限定されるものでもないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、上述した状況からしてその構成中の「バレンチノ」「VALENTINO」の文字部分に着目し、強く印象づけられ、これと本件商標の登録出願時には既に我が国においてその取引者、需要者の間に広く認識されていた国際的なトップデザイナー「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)」又は「VALENTINO GARAVANI」及びその片仮名表記である「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」によるデザイナーズブランドないしはその作品群を容易に想起する「VALENTINO(ヴァレンティノ)」とを関連付けて取引に資する場合があるというべきである。
(5)以上のとおり、本件については、商標自体とそのほか諸般の事情、すなわち、本件商標の指定商品の分野における需要者一般の注意力の程度、申立人商標又は略記商標の著名・周知性ほか取引の実情を総合判断するに、前記認定を相当とするから、商標権者の述べる意見は採用することができない。このほか、商標権者の述べる意見はいずれも妥当性を欠くものであって、採用の限りでない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべく、その登録は、同法第43条の3第2項により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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