Trademark Appeal Case
マルタ十字と図形の類似性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2004−90133(T2004−90133/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4731660号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成15年1月8日に登録出願され、第14類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として平成15年12月5日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立の理由(要点)
本件商標は、申立人の登録第457195号商標ほか2件の登録商標と商標が類似し、その指定商品も同一又は類似であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
スイス国所在のバセロン・コンスタンチン社は、1880年に「マルタ十字」を社標と決め、それ以降実に120年以上に亘って、このシンボル・マークを付した製品を、日本を含む世界各国に販売し続けてきており、その結果、世界的に「マルタ十字」といえば「バセロン・コンスタンチン社」というくらいに知れ渡り、広く認識され、著名になり、申立人は同社を企業買収によって傘下に収めたものであり、その使用する商標の名義人となっている。
このような経緯に照らせば、本件商標の指定商品のいずれであっても、「マルタ十字」マークと極めて紛らわしい図形部分を含む本件商標を付した商品が販売されるとなれば、需要者・取引者間において、その出所に関し混乱を生じ、「バセロン・コンスタンチン社」の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する。
さらに、「バセロン・コンスタンチン社」の「マルタ十字」マークは、全世界的に超一流ブランドとして広く認識されており、その名声に便乗して「ただ乗り」をして商品を販売しようとする商標権者の企図は明らかで、商標法第4条第1項第19号に該当する。
仮に上記条項に該当しなくとも、日本国の法秩序違反、すなわち公序違反となるから、同法第4条第1項第7号に該当する。
3 取消理由の通知
当審は、平成17年1月13日、商標権者に対し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与え、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものと認める旨通知した(通知書発送日同年同月21日)。理由の要旨は次のとおりである。
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る各甲号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人の傘下企業であるスイス国のバセロン・コンスタンチン社は、1755年にキャビノチェ、ジャンマルク・バセロンがジュネーブに時計工房を開設したことに始まる、ジュネーブを代表する2大高級時計会社の一つであり、1880年には、底辺が内側に窪んだ二等辺三角形を鋭角部で接するように上下左右に4個配置した十字の図形(別掲2参照。以下「マルタ十字」という。)を社章と決定してスイス国において商標登録し、それ以来現在に至るまで「マルタ十字」は時計に使用する商標として、また同社のシンボルマークとして使用されている。
(イ)バセロン・コンスタンチン社の製造・販売に係る時計には、文字盤の上部中央に、「BACHERON CONSTANTIN」の文字と共に「マルタ十字」が常に表示され、リュウズにも「マルタ十字」が刻印されている。
(ウ)バセロン・コンスタンチン社の製造・販売に係る時計は、19世紀から20世紀にかけて欧米各国の天文台精度コンクールや万国博覧会において数々の栄誉に浴したほか、1953年のエリザベス女王の戴冠式に使用されたり、1955年のジュネーブ平和会議において米、ソ、英、仏各国首脳への贈り物に選ばれるなど、ジュネーブを代表する時計となっていた。
(エ)バセロン・コンスタンチン社の製造・販売に係る時計は、我が国においても、高級時計として時計に関する雑誌や一流ブランド品を紹介する雑誌に多く取り上げられ、時計の写真と共に「BACHERON CONSTANTIN」及び「マルタ十字」の商標が掲載されており、「マルタ十字」はバセロン・コンスタンチン社のシンボルとしても紹介されている。
(2)以上の認定事実によれば、「マルタ十字」は、本件商標の登録出願時には既に、バセロン・コンスタンチン社が時計について使用する商標として、取引者、需要者間に広く認識されるに至っていたものと認められる。
(3)本件商標は、別掲1のとおり、図形(以下「本件図形」という。)と「Cuori」の文字とからなるものであるところ、本件図形と該文字とは常に一体不可分にのみ認識されるべき格別の理由は見出し難く、中央に顕著に表された本件図形は、それ自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものというべきである。
しかして、本件図形は、底辺が内側に窪んだ二等辺三角形を鋭角部で接するように上下左右に4個配置した十字という「マルタ十字」の特徴を備えており、子細にみれば十字の中央部分にハート形の図形が白抜きに表されていることが判別できるものの、このハート形の図形はかなり注意して観察しないと気が付かない程のものであるため、本件図形は全体として「マルタ十字」を表したものとして認識し把握されるものというべきである。そうすると、上記特徴を有する本件図形は、申立人が使用して周知著名な「マルタ十字」と外観において類似するものといわなければならない。
(4)本件商標の指定商品には、時計が含まれるほか、貴金属及びその製品、身飾品、宝玉及びその模造品等が含まれており、これらの商品と上記「マルタ十字」の商標が使用されている時計とは、いずれもファッションに係る商品であって密接な関係を有するものといえる。
(5)以上を総合勘案すると、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、本件商標中の本件図形に着目し、上記「マルタ十字」ないしはバセロン・コンスタンチン社を連想・想起し、該商品がバセロン・コンスタンチン社又は同社と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものといわざるを得ない。
4 商標権者の意見
上述した取消理由の通知に対し、商標権者は意見書を提出していない。
5 当審の判断
本件商標の登録は、上述した取消理由により、商標法第4条第1項第15号に違反してされたと認められるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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