結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2004−89085(T2004−89085/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
1.本件商標
本件登録第4332063号商標(以下「本件商標」という。)は、平成10年8月31日に登録出願され、「チェンジリテーナ」の文字を横書きしてなり、第7類「金属用金型」を指定商品として、平成11年11月5日に設定登録されたものである。
2.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。
請求の理由
(1)商標「チェンジリテーナ」について
(ア)「チェンジリテーナ」という言葉
本件商標は、「チェンジ」という言葉と「リテーナ」という言葉を結合したものであることは明らかである。そして、「リテーナ」は保持具を意味する普通名称であるところ、「チェンジリテーナ」という標章は「リテーナ」に「チェンジ」というパンチをパンチブロックの下面から突出させたり、引っ込ませたりすることができるという機能を表す言葉を冠したものである。 このことから「チェンジリテーナ」は、「パンチをパンチブロックの下面から突出させたり、引っ込ませたりすることができるパンチの保持具」という商品の機能を説明するものであって、当業者において、「チェンジリテーナ」といえばパンチを突出させたり引っ込めたりする機能を有するリテーナという意味で一般的に使用されている。
なお、当該商標が用いられる場合、商標を使用する者によって「チェンジリテーナー」と標記したり、「チェンジリテーナ」と標記したりしているが、「チェンジリテーナー」から語尾を伸ばす「ー」をとった「チェンジリテーナ」であっても変わりはない。
(イ)自動車メーカーの仕様書に見る普通名称化
仮に、「チェンジリテーナ」が被請求人の使用し始めた当時(昭和61年頃)において普通名称でなかったとしても、マツダ株式会社(以下「マツダ」という。)の仕様書(甲第3号証ないし甲第6号証)、日本デイトン・プログレス株式会社(以下「日本デイトン」という。)発行のカタログ(甲第7号証)、三菱自動車工業株式会社(以下「三菱自動車」という。)の仕様書(甲第8号証、甲第9号証)及びスズキ株式会社(以下「スズキ」という。)の技術規格書(甲第10号証、甲第11号証)からも、「チェンジリテーナ」が普通名称として認識されていた。
(ウ)特許明細書における使用よる普通名称化
特許出願の明細書においては、用語はその有する普通の意味で使用することが要求されている(特許法施行規則・様式29、甲第12号証)。この「チェンジリテーナー」に関しては、三浦工業株式会社(現在、株式会社キーレックス(甲第13号証)、以下「三浦工業」という。)ほか、数件の特許出願がされており、その明細書の中で「チェンジリテーナー」が普通名称として使用されている(甲第14号証ないし甲第16号証)。
(エ)本件商標「チェンジリテーナ」の明らかな普通名称化
「チェンジリテーナ」は、競業関係にある複数の企業(被請求人、日本デイトン、三浦工業、請求人)の分野において少なくとも本件商標の登録査定当時において商品の普通名称(パンチを突出させたり、引っ込ませたりする機能を有するパンチの保持具の名称)として使用されており、当業者間で普通名称化していることは明白である。
(2)裁判所の判断
(ア)本件商標に関する東京地方裁判所の判断
本件商標に関しては、請求人と被請求人との間に争いがあり、平成13年(ワ)第14488号実用新案権使用差止等請求事件として東京地方裁判所の判決(甲第17号証)が平成15年1月30日になされている。それによると、「『チェンジリテーナー』という標章は、複数の業者が製造しているある特定の用途・形態のプレス用パンチのりテーナー装置を表す普通名称ないし慣用表示として用いられていたものであって、これが『チェンジリテーナー』から語尾を伸ばす『ー』をとった『チェンジリテーナ』であっても変わりはないから、プレス用のパンチリテーナー装置の業界の取引者においては、本件商標の出願日(平成10年8月31日)当時、『チェンジリテーナー』のみならず『チェンジリテーナ』についても、パンチを突出させたり引っ込ませたりする機能を有するパンチの保持具、という意味で、一般に認識されており、普通名称ないし慣用表示となっていたものと認められる。そうすると、本件商標は、商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第46条第1項第1号所定の無効理由(商標法第3条第1項第1号)を有することが明らかである」旨説示している(甲第17号証)。
(イ)本件商標に関する東京高等裁判所の判断
本件商標に関する東京地方裁判所の判決に対しては、被請求人が控訴し、東京高等裁判所(控訴審)において平成15年(ネ)第1127号実用新案権使用差止等請求控訴事件として、平成15年12月25日に東京高等裁判所で判決が言い渡されている(甲第18号証)。この控訴審判決において、「三浦工業が特許出願の明細書において『チェンジリテーナー』を使用していることについて、『何らの注記もなく本件標章を用いること自体、本件標章を普通名称ないし慣用表示として用いるものであり、そうなることに寄与するものである。』・・・『本件商標の登録には、商標法第46条第1項第1号、同法第3条第1項第1号の無効理由があることが明らかであり、また、控訴人(被請求人)による本件標章の使用には、同法第26条第1項第2号により商標権の効力が及ばないとした原判決の判断に、誤りはない。」旨説示している。そして、この東京高等裁判所の判決に対しては、被請求人が上告及び上告受理申立を行い、平成16年(ネオ)54号 実用新案権使用差止等請求上告提起事件として審理され、平成16年3月25日に上告を却下する旨の決定がされ(甲第19号証)、また、上告受理申立については、平成16年(受)第711号として審理され、平成16年6月8日に上告審として受理しない旨の決定がされている(甲第20号証)。
(3)本件商標の無効理由
(ア)商標法第3条第1項第1号
以上のように、本件商標「チェンジリテーナ」は、保持具を意味する普通名称である「リテーナ」に「チェンジ」というパンチをパンチブロックの下面から突出させたり、引っ込ませたりすることができるという機能を表す言葉を冠したもので、商品の普通名称(パンチを突出させたり、引っ込ませたりする機能を有するパンチの保持具の名称)である。遅くとも本件商標の登録査定当時において、自動車メーカーが仕様書を作成するに当たって、パンチを突出させたり、引っ込ませたりする機能を有するパンチの保持具を「チェンジリテーナ」と記載したのは、「チェンジリテーナ」という名称が当業者間で広く一般に用いられている普通名称であると認識していたことによるものである。
したがって、本件商標は、その登録審査時(平成11年8月31日)において、商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であったことが明らかであり、商標法第3条第1項第1号に違反して登録されたものである。
(イ)商標法第4条第1項第16号
本件商標「チェンジリテーナ」は、上述のとおり「パンチを突出させたり、引っ込ませたりする機能を有するパンチの保持具」を表しているものであるから、本件商標をこれ以外のものに使用する場合は、商品の品質の誤認を生じる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
3.被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。
答弁の理由
(1)請求人は、商標「チェンジリテーナ」について種々に述べているが、被請求人としては到底承服できないので、以下にその理由について述べる。
(ア)「チェンジリテーナ」という言葉について
「チェンジ」について、広辞苑(岩波書店)で調べると変化・変更・交替・両替等の意味とある。
また、「リテーナ」については、英単語「Retainer」から取ったもので、和英すると家来・従者等の意味を有する。
つまり、「チェンジリテーナ」は、請求人の主張する商品の機能を説明しているものでなく、変化する家来等の造語としてネーミングしたものであり、新しい言葉である。
(イ)普通名称であること
普通名称であることについても、上記と同様に、造語としてネーミングしたものであり、普通名称ではない。
(ウ)自動車メーカーの仕様書に見る普通名称化
請求人が甲第3号証ないし甲第6号証で述べているマツダの仕様書においては、被請求人の乙第1号証の陳述書に明記してあるように、株式会社プレスセンターが製作し、日本デイトンが販売しているもので(商標の使用権を与えている。)、「チェンジリテーナ」といえばデイトン製(プレスセンター製)と分かるものと明言されている。
また、請求人が甲第7号証で述べている日本デイトンのパンフレットにおいて、「チェンジリテーナ」以外の5つの表示が普通名称であり、並び称される「チェンジリテーナ」が普通名称でないということは不自然である。と述べているが、これは請求人の主観であり、普通名称とオリジナルネーミングを並列表示することはメーカーの自由である。
さらに、請求人の甲第8号証・甲第9号証の三菱自動車における仕様書及び甲第10号証・甲第11号証のスズキの技術企画書においても、上記被請求人の乙第1号証と同様の理由である。
(エ)特許明細書における使用による普通名称化
請求人が甲第12号証ないし甲第16号証で述べている三浦工業が特許出願した発明の名称において「チェンジリテーナ」という名称を使用していると述べているが、これは、被請求人の乙第2号証の陳述書に明記してあるように、当社(被請求人の大下社長)により、そのネーミングの使用を許可したものであり、普通名称として使用されたものではなく、「チェンジリテーナ」と言えば被請求人製と認知している。
(オ)東京地方裁判所・東京高等裁判所・最高裁判所の判断
請求人は「チェンジリテーナ」が普通名称化していると述べているが、被請求人の乙第4号証にあるように、広島商工会議所より「チェンジリテーナ」は取引者及び需要者間において、直ちに被請求人の製品であることを認識し得るほど周知となっている。との証明書をもらっており、「チェンジリテーナ」は被請求人が使用する固有のネーミングであることは明白である。
(カ)無効理由
各裁判所の判断においては、周知性ないし著名性が具備されているかどうかが判断基準となるものと思われるが、各裁判時において、上記の証明書を発行してもらってはおらず、この点が敗訴となった大きな理由と考えられる。
なお、被請求人の提出した乙第1号証及び乙第2号証は裁判で使用した陳述書の写しである。
また、乙第3号証は、平成1年より被請求人が日本デイトンに「チェンジリテーナ」を納品した納品書の控であり、品名ARAはチェンジリテーナの略称で請求人の甲第7号証の2ページ目右上に明記してある。
(2)結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第1号、及び商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではない。
4.当審の判断
(1)本件商標は、前記のとおり「チェンジリテーナ」の文字よりなるところ、提出された証拠(甲第2号証ないし甲第6号証、甲第8号証ないし甲第11号証、甲第14号証、甲第15号証)によれば、次の事実が認められる。
(ア)マツダの仕様書(’86年12月1日制定、昭和60年7月1日制定 昭和61年12月1日訂正)には、その表題部に「丸パンチ用チェンジリテーナー(シリンダー式)」、「異形パンチ用チェンジリテーナー(シリンダー式)」と記載されている(甲第3号証、甲第4号証)。
また、同仕様書(’86年12月1日制定、昭和60年7月1日制定 昭和61年12月1日訂正)には、その表題部に「異形パンチ用チェンジリテーナ(シリンダー式)」と記載されている(甲第5号証、甲第6号証)。
(イ)三菱自動車の仕様書(1988年1月31日設定)には、その名称欄に、「チェンジリテーナ取付構造」、「チェンジリテーナ(A)」、「チェンジリテーナ(B)」と記載されている(甲第8号証、甲第9号証)。
(ウ)スズキのスズキ技術規格には、「2.種類、購入メーカー等」の欄に、「構造 ツバ付(チェンジリテーナー用)、購入メーカー「デイトン」、「構造 ジェクター付(チェンジリテーナー用)、購入メーカー「デイトン」、「構造 ツバ付(チェンジリテーナー用)、購入メーカー「ミスミ」と記載されている(甲第10号証、甲第11号証)。
(エ)三浦工業を出願人とする公開特許公報(特許公開平10−244329 平成10年9月14日公開、特許公開平10−258329 平成10年9月29日公開)は、発明の名称として「プレス機械のチェンジリテーナー」とされた上、各特許請求の範囲、発明の詳細な説明の欄に、「チェンジリテーナー」との語が使用されている(甲第14号証、甲第15号証)。
(2)上述の(ア)ないし(エ)によれば、「チェンジリテーナー」という語は、マツダ、三菱自動車、スズキといった我が国の大手自動車会社の仕様書等に、通常は一般的な名称を記載する表題部、名称欄に「チェンジリテーナー」「チェンジリテーナ」と記載されていて、特定企業の固有商品を示すものとしては記載されていない。また、一般に公開された特許公報における発明の名称、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明欄に、「チェンジリテーナー」との言葉を多数記載している(三浦工業)。このような「チェンジリテーナー」又は「チェンジリテーナ」の語の使用状況からみると、「チェンジリテーナー」という語は、特定企業の商品を示す出所標識として用いられておらず、むしろ、複数の業者が製造している特定の用途・形態のプレス用パンチのリテーナー装置を表す普通名称として用いられているものというのが相当である。
また、「チェンジリテーナ」は取引者及び需要者間において、直ちに被請求人の製品であることを認識し得るほど周知となっているとの広島商工会議所よりの証明書(乙第4号証)は、如何なる事実に基づいて証明されたかは不明であって、上述した普通名称として用いられているとの点を越えて、特定企業の商品の出所を示すものとして、周知・著名性を獲得していたということもできない。その他、この点に関しその周知・著名性を確証させるものは見出せない。
(3)そうすると、「チェンジリテーナー」という標章は、複数の当業者によって、特定の用途・形態のプレス用パンチのリテーナー装置を表す普通名称として用いられていたといえるものであって、これが「チェンジリテーナー」から長音記号「ー」をとった略同一の表記「チェンジリテーナ」であっても変わりはないから、プレス用のパンチリテーナー装置の業界の取引者においては、本件商標の出願日(平成10年8月31日)当時、「チェンジリテーナー」のみならず「チェンジリテーナ」についても、パンチを突出させたり引っ込ませたりする機能を有するパンチの保持具という意味で、一般に認識されており、普通名称となっていたものとしなければならない。
(4)以上のとおり、「チェンジリテーナ」の文字よりなる本件商標は、商品「パンチを突出させたり引っ込ませたりする機能を有するパンチの保持具」については、商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといわなければならない。
また、本件商標を前記商品(パンチを突出させたり引っ込ませたりする機能を有するパンチの保持具)以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第1号及び同第4条第1項第16号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
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