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Trademark Appeal Case

商標の周知性と先使用

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2003−90185(T2003−90185/J7)
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4635286号商標の指定商品中「干し柿,柿を用いた加工果実」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4635286号商標(以下「本件商標」という。)は、「柿日和」の文字を書してなり、平成13年11月26日に登録出願、第29類「干し柿,柿を用いた加工果実,冷凍した柿,柿を用いた豆乳」を指定商品として、平成15年1月10日に設定登録されたものである。

2 本件商標に対する取消理由

当審において、本件商標の登録は、その指定商品中「干し柿,柿を用いた加工果実,冷凍した柿」について取り消すべきものと認められるとして、通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出した甲第7号証ないし甲第9号証、甲第12号証ないし甲第41号証、甲第47号証及び甲第48号証並びに甲第53号証によれば、申立人は、「富有柿の皮をむいてスライスし、天日乾燥させた商品」(以下「申立人使用商品」という。)について、商標「柿日和」(以下「申立人使用商標」という。)を使用した結果、申立人使用商標は、本件商標の登録出願時までには需要者の間において広く認識されるに至り、その状況は、本件商標の登録出願について登録の査定がされた時まで継続していたものと認めることができる。

また、本件商標と申立人使用商標とは、同一の商標ということができるものであり、本件商標の指定商品中「干し柿,柿を用いた加工果実,冷凍した柿」は、申立人使用商品と同一又は類似する商品と認められる。

したがって、本件商標は、その指定商品中「干し柿,柿を用いた加工果実,冷凍した柿」について、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。

3 商標権者の意見

上記取消理由に対し、商標権者(株式会社パンドラファーム)(以下「商標権者」という。)が述べた意見は、要旨次のとおりである。

(1)本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではないから、その指定商品中「干し柿,柿を用いた加工果実,冷凍した柿」についての登録は、維持されるべきである。

商標法第4条第1項第10号の立法趣旨は、商品の出所の混同防止とともに、一定の信用を蓄積した未登録周知商標の既得の利益を保護するところにある。つまり、商標が商品に使用され、自己の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間において広く認識される程の信用を形成したときには、不正競争防止法による場合は別として、積極的に他人の使用を差し止めるまでの権利はないが、出願された商標の登録を阻止することができるというものである。

しかし、自己の商標を使用する前から、既に抵触する商標を他人が使用していることを知っていながら、他人による商標の登録がなされていないことを奇貨として、自己の商標を使用継続することにより、既成事実を作り上げた場合には、つまり、周知商標主に悪意かつ不正競争の目的がある場合には、その商標は保護されない。商標法の立法趣旨が商品の出所の混同防止であり、自らの手を汚す者を法律で保護することは信義に惇るためであり、通説も悪意の周知商標主は保護されないとしている(乙第1号証及び乙第2号証)。

(2)商標権者による本件商標の使用

(ア)平成3年以前の使用

商標権者のグループ会社である有限会社王隠堂農園は、申立人による申立人使用商標の使用開始時期(平成3年)より遙かに前から、本件商標「柿日和」を生柿や干し柿に使用している。

商標権者と有限会社王隠堂農園は、グループ関連会社であり、商標権者は、有限会社王隠堂農園の業務のほとんどを引き継いでいる(乙第3号証)。

有限会社王隠堂農園は、本件商標を昭和52年頃から、生柿や干し柿に使用しており、生柿や干し柿を箱詰めして出荷した当初から、乙第4号証のパンフレットを商品と併せて箱詰めしていた(乙第5号証)。その後、昭和55年頃から、乙第4号証のパンフレットと併せて、本件商標を有限会社王隠堂農園の代表取締役の身内の者が1枚ずつ手筆でしたためた短冊を商品と一緒に箱詰めしていた。よって、当該短冊については、印刷会社に印刷の依頼をすることはなく、客観的な証拠を提出することはできないが、本件商標は、上記の頃より継続使用していた(乙第6号証)。

本件商標のネーミングは、坂口允男氏(以下「坂口氏」という。)に柿の和歌を詠んでもらったことに由来しており(乙第6号証)、坂口氏の和歌は、王隠堂敦巳が催した柿狩りに参加したことで詠まれた(乙第7号証ないし乙第10号証)。後日、坂口氏から王隠堂敦巳宛に柿狩りに招待され、お世話になったことへの礼状が送られてきたが、それに和歌が添えられており、その和歌が「今日も亦遠き山家の柿日和ひとひらの雲湯塩の道」というものであった。乙第4号証のパンフレットの「今日も亦遠き山家の柿日和」は、上記和歌の上の句である。有限会社王隠堂農園では、昭和50年頃から、生柿や干し柿の生産及び販売を本格的に始めるに際し、商標が必要であろうということで、上記和歌を利用することを思いついた。ただ、和歌の全てを掲載すると余りに長いため、上の句のみを乙第4号証のパンフレットに掲載した。昭和55年頃からは、本件商標のみを上述の短冊に筆書きするようになった。昭和64年頃には、手書きの短冊を廃止し、ようやく印刷会社に依頼して、商品説明書を作成するようになった(乙第11号証)。それは現在も継続して使用しており、乙第11号証には、明確に本件商標が表示されている。それは生柿のみの説明のようになっているが、生柿と干し柿の両方を詰め合わせた商品にもこの商品説明書を使用していた。この説明書は、平成元年頃から平成14年までに34,000部印刷された(乙第12号証)。

平成元年頃からは、別の印刷会社にも商品説明書の作成を依頼した(乙第13号証及び乙第14号証)。乙第13号証は、乙第11号証と同じく生柿と干し柿の詰め合わせ商品に使用されていた。乙第14号証のリーフレットの作成日は、平成3年10月7日となっているが、これに先立ち、有限会社王隠堂農園では、ポスタック株式会社に対し、王隠堂図形のデザインの作成依頼を行っており、その際、有限会社王隠堂農園の情報を提供し、互いに打ち合せを繰り返していたので、ポスタック株式会社では、少なくとも、有限会社王隠堂農園が平成元年頃から本件商標を使用していたことを知っていた。

乙第15号証(証明書)は、柿の加工品であるゆず巻き柿を有限会社王隠堂農園が昭和63年頃から製造した事実を示している。同農園では、この頃、生柿とゆず巻き柿をセットにして販売しており、このゆず巻き柿にも乙第11号証及び乙第13号証の商品説明書を使用していた。

以上のとおり、有限会社王隠堂農園が平成3年よりも遙かに前から、本件商標を商品「干し柿,柿を用いた加工果実」に使用継続していたことは明らかである。

乙第16号証及び乙第17号証の各パンフレットには、「柿日和の由来」(乙第6号証)に名が挙がっている坂口氏の上の句が再掲載されており、この頃、有限会社王隠堂農園の取り扱い商品は、生柿から干し柿、冷凍柿等にまで拡大した。乙第16号証及び乙第17号証の各パンフレットは、共同精版印刷株式会社(奈良市三条大路2丁目2番6号)に作成を依頼した。

乙第18号証ないし乙第22号証中、乙第18号証のリストに記載の商品案内パンフレットとは、乙第16号証のことを指し、乙第19号証ないし乙第22号証のリストに記載のリーフレット又はパンフレットとは、乙第17号証のことを指している。

乙第18号証ないし乙第22号証(売掛金元帳[写])の左上には、昭和62年から平成2年までの日付けが確認でき、当該日付の横には、担当者名があり、蔵之上潔の名刺(写)(乙第23号証)によって、同人が共同精版印刷株式会社の者であると確認できる。

乙第3号証ないし乙第23号証(有限会社王隠堂農園の関係者による証明書)により、有限会社王隠堂農園が本件商標を申立人よりも遙かに前から使用していたことは明らかである。ただ、相当に古い時代から使用しているので、証拠のほとんどは破棄もしくは紛失して手元に残っていない。

しかし、本件商標が有限会社王隠堂農園によって確実に使用されていたことは、取引者の多くが認識しており、商標権者は、この事実を立証すべく証明書を提出する(乙第24号証ないし乙第30号証)。

乙第24号証ないし乙第30号証には、本件商標が平成になる以前から、既に有限会社王隠堂農園の取り扱う商品の出所を表示する商標として使用されていたことの証明がされており、これらの証明者の記憶に、本件商標が昭和52年(又は昭和55年)頃から使用されていたとの認識があれば、これらの証明書は、証拠として充分に客観性を有する。商標は、無体財産であるから、需要者の記憶に存する商標である以上、他社との差別化のために充分に機能し得る。

(イ)平成3年以降の使用

商標権者(又は有限会社王隠堂農園)は、平成3年から今日に至るまで本件商標を継続して使用している(乙第11号証及び乙第13号証)。念のために、有限会社王隠堂農園のグループ会社である有限会社大紀コーポファームによる本件商標の最近の使用状況を一部提出する(乙第31号証ないし乙第34号証)。

(3)申立人が悪意かつ不正競争の目的を有する周知商標主であること

商標権者は、有限会社王隠堂農園のグループ会社として、平成11年に設立され、有限会社王隠堂農園による昭和52年頃からの本件商標の使用を継続し、今日まで営業している。それゆえ、本件商標は、昭和52年から約30年近く継続して使用されている。ただし、本件商標に係る登録出願は、平成13年に行った。

申立人は、本件商標の登録に対し、異議を申し立てたが、前記のとおり、有限会社王隠堂農園は、申立人による申立人使用商標の使用開始時期(平成3年)より10年以上も前の昭和52年から本件商標を使用している。申立人は、商標権者(又は有限会社王隠堂農園)と同じ村に所在する同業者であり、生産者や取引者の重なる可能性が高く、しかも、商標権者(又は有限会社王隠堂農園)が10年以上にわたり、本件商標を継続して使用してきた状況に鑑みれば、申立人は、本件商標を知らなかった筈がなく、悪意であった蓋然性が極めて高い。

申立人は、商標権者が申立人の申立人使用商標を僭称したかのように主張しているが、本件商標を僭称しているのは、申立人のほうである。このように狭い地域において、申立人が商標権者(又は有限会社王隠堂農園)の本件商標を僭称するのは、悪意のみならず不正競争の目的以外の何物でもない。

商標法第4条第1項第10号は、悪意かつ不正競争の目的を有する周知商標主の場合には除外されるというのが通説であり、まさに、申立人は、悪意かつ不正競争の目的を有する周知商標主であるから、同号は適用されるべきでない。

商標権者は、有限会社王隠堂農園の業務をほとんど承継しており、有限会社王隠堂農園の商標の使用を援用しても、何ら不自然ではなく、本件商標を登録してしかるべき者であり、悪意かつ不正競争の目的を有する申立人により、本件商標が取り消されるべきいわれはない。申立人は、不正競争の目的で使用した事実を積み上げ、甲各号証を提出しているが、それらの証拠は、所詮悪意かつ不誠実な行為による産物にすぎず、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するとの申立人の主張を立証する証拠足り得ない。

(4)むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品中「干し柿,柿を用いた加工果実,冷凍した柿」について、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではないから、本件商標の登録は維持されるべきである。

4 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第10号該当について

申立人主張の全趣旨及び提出に係る甲第7号証ないし甲第9号証、甲第12号証ないし甲第41号証、甲第47号証及び甲第48号証並びに甲第53号証によれば、申立人は、申立人使用商標(柿日和)をその業務に係る申立人使用商品(富有柿の皮をむいてスライスし、天日乾燥させた商品)(以下「柿の加工品」ともいう。)に平成3年以降継続して使用しており、申立人使用商品は、数々の賞を受賞(甲第12号証、甲第39号証及び甲第40号証)し、多数の新聞や雑誌に掲載され、広く紹介されたことで、地域地場振興センターや全国商工連合会及び郵趣会等とも連携して奈良県の土産品の一つとして積極的にPRされてきた。そのほかにも、インターネットのホームページに展示・掲載(甲第43号証ないし甲第45号証)し、全国からの注文に応じる体制をとっている。その結果、申立人使用商標を使用した申立人使用商品の売上は、平成3年以降平成13年まで年々上昇し、平成13年だけでも2千4百万円余に及んでいたことが認められる(甲第11号証)。

そして、甲第1号証ないし甲第48号証を総合すると、申立人が申立人使用商品に使用している申立人使用商標は、少なくとも、平成3年以降、本件商標の登録出願前ないし登録査定時には、我が国において、柿の加工品に使用される商標として、取引者、需要者の間において広く知られていたことが認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。

しかして、本件商標と申立人使用商標とは、同一の構成文字である「柿日和」からなるものであり、また、本件商標の指定商品中、本件登録異議の申立により登録の取消しが求められている商品のうちの「干し柿,柿を用いた加工果実」と申立人使用商品とは同一又は類似するものである。

そうすると、商標権者が本件商標を指定商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、当該商品が申立人又はそれと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。

(2)商標権者提出の乙各号証について

(ア)乙第3号証における農業生産法人有限会社王隠堂農園の代表取締役は、王隠堂誠海となっているが、同法人の登記簿謄本(甲第50号証)には王隠堂誠海の名は見当たらない。

(イ)乙第4号証のパンフレットにおいて、商標権者が本件商標「柿日和」の使用であるとしているのは、坂口氏の詠んだ和歌「今日も亦遠き山家の柿日和ひとひらの雲湯塩の道」の上の句「今日も亦遠き山家の柿日和」における「柿日和」のことを指しているところ(乙第16号証及び乙第17号証も同様)、当該「柿日和」は、上記句の他の表示と一連一体のものであって、全体の構成文字中に埋没して、不可分一体のものと化しているから、単に「柿日和」が構成中に含まれているからといって、それが本件商標「柿日和」と同一の商標と認められるというものではなく、また、上記句の他の表示から分離して、「柿日和」のみが独立して自他商品識別力を発揮する商標法上の商標であるということもできない。

商標権者は、意見書3頁(又は8頁)において、昭和50年(又は昭和52年)頃から(因みに、乙第24号証ないし乙第28号証の証明書においては、昭和52年、同55年又は同58年頃から)、有限会社王隠堂農園が本件商標「柿日和」を生柿や干し柿に使用しているとしているが、同農園が昭和59年4月12日に設立されたこと(甲第50号証:登記簿謄本)に照らせば、商標権者の上記主張及び前記証明は、いずれも前提を欠くものというべきである。

また、乙第4号証のパンフレットには日付がなく、しかも、上述のとおり、同パンフレットに掲載されている「今日も亦遠き山家の柿日和」という句は、本件商標「柿日和」の使用とはいえず、本件商標「柿日和」が本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に使用されていたことを客観的に裏付ける証拠の提出もない。

それ以外にも、商標権者は、意見書の3頁及び4頁において、「商品『生柿』と『干し柿』を一緒に箱詰めしていた。」「当初は乙第4号証のパンフレットのみを当該商品と併せて箱詰めしていた。」「昭和55年頃からは、乙第4号証のパンフレットと併せて、有限会社王隠堂農園の代表取締役の身内の者が本件商標『柿日和』を1枚ずつ毛筆で書いた短冊を当該商品に箱詰めしていた。」「昭和64年頃に手書きの短冊を廃止し、印刷会社に依頼して商品説明書(乙第11号証)を作成した。商品説明書(乙第11号証)は、現在でも継続して使用している。」「乙第11号証の商品説明書は、生柿のみの説明となっているが、生柿と干し柿の両方を詰め合わせた商品にも使用していた。」としているが、本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」について、本件商標「柿日和」が商標権者の上記主張のとおりに使用されていたことを客観的に裏付ける的確な証拠はない。

(ウ)有限会社王隠堂農園は、既述のとおり、昭和59年4月12日に設立されたことに照らせば、乙第5号証の証明者(双栄印刷社 代表 中西守)は、同農園が昭和50年頃に本件商標を本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿」に使用していたことを如何なる根拠資料に基づき証明し得たのか不明であるだけでなく、その証明内容が事実であることを客観的に示す証拠も見いだせない。乙第24号証ないし乙第28号証の各証明書も同じ理由で認めることができない。

(エ)乙第6号証は、農業生産法人有限会社王隠堂農園の代表取締役である王隠堂政見(商標権者の代表取締役を兼任:甲第49号証)と商標権者の代表取締役である和田宗隆とが商標権者の代表としての立場から作成した文書にすぎず、商標権者又は有限会社王隠堂農園が、そこに記載されたとおりの時期に、その内容のとおり、本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に本件商標「柿日和」を使用し、販売していたことを客観的に裏付ける証拠というものではない。

(オ)乙第7号証ないし乙第10号証は、本件商標が本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品に使用された証拠というものではない。

(カ)乙第11号証(“柿日和”が表面に表示された商品説明書)には日付がなく(乙第13号証も同様)、これが本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に使用されたことを客観的に裏付ける証拠もない。

乙第12号証の証明者(高本印刷所 署名者 高本敬一:乙第29号証の証明者と同一人)は、「有限会社王隠堂農園の依頼を受けて」「商標『柿日和』を付した」「・・・干し柿(の)・・」「商品説明書を平成元年頃から平成14年に至るまで」「34,000部印刷した・・・ということを証明する。」としているが、上述のとおり、乙第12号証の添付別紙(乙第11号証と同一内容)には日付がなく、その添付別紙が本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に使用されたことを客観的に裏付ける証拠もない以上、この証明者は、如何なる根拠資料に基づき、その証明をなし得たのか不明である。

(キ)乙第13号証(“柿日和”が裏面に表示された商品説明書)には日付がなく、それが本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に使用されたことを客観的に裏付ける証拠もない。

(ク)乙第14号証の証明者(ポスタック株式会社:意見書5頁)は、「平成元年に有限会社王隠堂農園から依頼を受け、」「『柿日和』リーフレット(乙第13号証)を作成し、」「平成3年10月7日に3,000部納品し、」「同農園が富有柿若しくはこれを加工した干し柿の商品表示として、本件商標『柿日和』を平成元年頃から使用していたことを証明する。」としているが、上述のとおり、乙第13号証には日付がなく、それが本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に使用されたことを客観的に裏付ける証拠もないので、証明者は、如何なる根拠資料に基づき、その証明をなし得たのか不明である。

(ケ)商標権者は、意見書の5頁において、「有限会社王隠堂農園が柿の加工品であるゆず巻き柿を昭和63年頃から製造し、生柿とセットにして販売してきたこと及び当該ゆず巻き柿には、乙第11号証及び乙第13号証を使用していた。」としており、乙第15号証(五鈴タテグ店 署名者 鈴木茂夫)の証明者は、「有限会社王隠堂農園が柿の加工品を製造していたことを証明する。」としているが、乙第15号証には、本件商標の記載がなく、かつ、柿の加工品が販売された証明はなされておらず、しかも、既述のとおり、乙第11号証及び乙第13号証の商品説明書には日付がないから、本件商標「柿日和」が本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に使用され、現実に販売されていたことを客観的に裏付ける証拠とみることはできない。

(コ)乙第16号証及び乙第17号証については前記(イ)で既述したとおり。

(サ)意見書の5頁の記載と乙第17号証ないし乙第22号証とを比較検討すれば、乙第18号証は、乙第16号証の、同じく、乙第19号証ないし乙第22号証は、乙第17号証のいずれも根拠という意味合いで提出されたものであり、乙第18号証ないし乙第22号証は、いずれも売掛金元帳(写)という表題よりなるものである。

しかしながら、乙第18号証ないし乙第22号証には、本件商標「柿日和」が見いだせず、上述(イ)及び(コ)のとおり、乙第16号証及び乙第17号証のいずれにも「柿日和」が商標法上の商標として表示されていない。

また、乙第18号証ないし乙第22号証中の○○パンフレット(又は○○リーフレット)という文字の記載されている欄には、上述のとおり、本件商標「柿日和」の記載がなく、それらのパンフレット(又はリーフレット)が本件登録異議の申立により登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に使用されていたことを客観的に裏付ける証拠も見いだせない。

(シ)乙第24号証ないし乙第28号証については、前記(ウ)で既述したとおり。

(ス)乙第29号証の証明者(高本印刷所 署名者 高本敬一:乙第12号証の証明者に同じ)及び乙第30号証の証明者(共同精版印刷株式会社 署名者 近東宏光)は、いずれも「有限会社王隠堂農園が」「・・・加工した干し柿等の商品の表示として・・・」「商標『柿日和』を」「昭和64年頃から」又は「昭和62年頃から」「使用していた。」ということを証明するとしているが、上述のとおり、乙第29号証の根拠たる添付別紙(乙第11号証と同一内容)には日付がなく、乙第29号証及び乙第30号証のいずれにおいても、本件商標「柿日和」が本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に使用され、現実に販売されていたことを客観的に裏付ける証拠は見いだせず、乙第29号証及び乙第30号証の証明者は、証明日(平成15年10月21日)より14年前の昭和64年頃から、又は証明日(平成15年10月20日)より16年前の昭和62年頃から、証明日までのことを如何なる根拠資料に基づき、証明し得たのか不明である。

(セ)乙第31号証の広告チラシは、本件商標の出願日(平成13年11月26日)の前年のものであり、乙第32号証は、出願日の直前若しくは直後のものであり、乙第33号証は、出願後のものである。

そして、乙第34号証は、出願後のものであるだけでなく、本件登録異議の申立ての登録後のものであるから、いずれも、申立人が申立人使用商標(柿日和)を申立人使用商品に使用する前から、商標権者により本件商標が使用されていたことの証拠になるというものではない。

(ソ)以上を総合すると、商標権者提出の乙各号証中には、坂口氏の詠んだ和歌の上の句「今日も亦遠き山家の柿日和」に「柿日和」の文字が含まれていることを否定するものではないが、それらをもっては、申立人が申立人使用商標(柿日和)を申立人使用商品に使用する前から、商標権者(又は有限会社王隠堂農園)が本件商標「柿日和」を本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」に自他商品識別力を有する商標法上の商標としての態様で使用していたことを認めることができないばかりでなく、申立人が申立人使用商品に申立人使用商標(柿日和)の使用を開始した時期から今日に至るまで、当該期間中を通じて、商標権者の本件商標「柿日和」の認知度が申立人使用商標(柿日和)を凌ぐ程に、取引者、需要者の間において広く認識されるに至っていたことを示す客観的な証拠も見当たらない。

また、例えば、昭和43年8月10日株式会社大泉書店再版発行「新編 歳時記(編者 水原秋桜子)」(別紙参照)の425頁には、「今日も亦遠き山家の柿日和 たかし」という俳句が掲載されており、この「たかし」とは、水原秋桜子と同様に高浜虚子に師事し、句集「笛」を創刊した松本たかし(明治39年〜昭和31年)のことであり、その再版発行日が上記のとおり少なくとも坂口氏が和歌を詠んだ日(昭和46年10月31日の柿狩りの日)よりも遙かに前であることからすれば、我が国において、和歌や俳句に「柿日和」の語を最初に使用したのが坂口氏であったというわけのものでもない。

してみると、申立人が申立人使用商標(柿日和)を採択・使用するについて、悪意かつ不正競争の目的を有していたとの商標権者の主張は、前提を欠いており、妥当ではなく、そのように解釈しなければならない的確な証拠も見いだせない。

他方、平成3年以降、申立人が申立人使用商品に継続して使用してきた申立人使用商標(柿日和)は、「柿日和」の文字のみを単独で使用する態様よりなるものであり、自他商品識別力を発揮する商標法上の商標として充分に機能していたものと認められる。

そうとすれば、上記(1)において、既述したとおり、申立人は、申立人使用商標(柿日和)を、商標権者の本件商標「柿日和」が登録出願されるより前(平成3年頃)から、申立人の業務に係る申立人使用商品(富有柿の皮をむいてスライスし、天日乾燥させた商品)に継続して使用してきたことで、申立人使用商標(柿日和)は、柿の加工品の商標として、取引者、需要者の間において広く認識されていたと認められ、しかも、申立人使用商品(富有柿の皮をむいてスライスし、天日乾燥させた商品)は、本件登録異議の申立てにより登録の取消しの求められている商品中の「干し柿,柿を用いた加工果実」と同一又は類似のものであることも上記(1)のとおりである。

したがって、本件商標は、その指定商品中「干し柿,柿を用いた加工果実」については、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、商標法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。

しかしながら、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品は、申立人使用商品と同一又は類似の商品とは認められず、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものとはいい得ないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持する。

よって、結論のとおり決定する。

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