Trademark Appeal Case
漢字商標の称呼認定
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年異議第90659号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | other |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4084192号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成7年6月29日に登録出願され、別紙に示すとおりの構成よりなり、第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、平成9年11月21日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立ての理由
登録異議申立人(以下、「申立人」という。)の所有に係る商標、すなわち、平成4年9月30日に登録出願され、別紙に示すとおりの構成よりなり、第42類「宿泊施設の提供,飲食物の提供」を指定役務として、平成8年5月31日に設定登録された登録第3154032号商標(以下、「引用商標」という。)は、申立人の業務に係る商品「べんとう,和菓子」及び日本料理(京料理)を主とする飲食物の提供」を表示するものとして取引者・需要者の間において広く認識されている商標であるところ、本件商標はこれに類似する商標であり、かつ、本件商標をその指定役務に使用するときは、申立人の業務に係る商品若しくは役務と類似するから、本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当する。したがって、本件商標の登録は取り消されるべきである。
3 取消理由通知
前記2の登録異議の申立てがあった結果、当審において、商標権者に対して通知した本件商標の取消理由は、要旨つぎのとおりである。
〈取消理由〉
本件商標は、「いまじん」の文字よりなるものであり、平成7年6月29日登録出願されたものであるところ、これより先出願の「伊真沁」の文字よりなる引用商標と称呼上類似し、その指定役務も同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標権者の意見
前記3の取消理由通知に対し、商標権者は、意見書においてその意見をつぎのように述べている。
(1)本件商標は、平仮名の肉太筆文字「いまじん」を上下に振れた状態で左横書きしてなるのに対して、引用商標は、漢字の筆文字「伊真沁」を隷書体のように左横書きしてなり、一見して容易な可読性が与えられた文字とはいえない個性を有するもので本件商標と引用商標とは、この外観態様の相違点のみをもって、彼我商標は相紛れることはない。
(2)本件商標は、古語「今人」を平仮名読みしたものである。一方、引用商標は特定の意味を直観されない。ただ、申立人は、「ジョン・レノン」の名曲「イマジン」に由来すると主張されるも、引用商標の外観からは、このようなことは何ら直観されない。よって、本件商標と引用商標とは観念の点において相紛れることのない非類似の商標である。
(3)本件商標は、前記外観に即応して「いまじん」の称呼が生ずるが、引用商標からは特定の称呼は生じ難いので、称呼の点において相紛れることのない非類似の商標である。
申立人又は取消理由は、引用商標からは「いましん」の称呼を生ずるとされるが、引用商標の外観を見てみれば明らかなように、漢字のみの態様であることから「イシンシン」と称呼される可能性はある。つまり、漢字を称呼する場合には、音読み統一で全てを称呼することが自然だからである。もし、漢字に対して音読みと訓読みを入り混ぜて称呼しうるのであれば、引用商標からは、「イマシン」なる称呼が生じると同時に「イマピ」や「イシンピ」の称呼をも発生しうるものである。しかるに、何故に、「イマシン」の称呼のみが生じると断定されるのか明確でない。
このことは、申立人提出の甲号証において、引用商標に対してわざわざ平仮名もしくは片仮名のルビを振って居られることから、引用商標が通常の可読性のない当て字であるため、一般需要者や取引者が称呼に抵抗を覚えるための配慮であろうと思料される。しかも、この甲各号証においては、申立人が主張される引用商標に対する称呼とも異なる称呼が付されている。
いずれにしても、商標は出願時の商標態様に基づいて議論すべきであり、彼我商標の称呼を比照すべきである。そして、漢字に対する称呼は一般需要者や取引者が通常する方法に応じて、つまり音読み統一に従って称呼することが何より自然である。よって、引用商標の第二文字「真」に対して「マ」の音を充てて、全体を「いましん」と称呼されると主張されるも、申立人自身の行為、つまり、ルビをあえて付されることにより、引用商標から特定の称呼が取り出される蓋然性が極めて低いものと思料される。
以上から、引用商標に対しては「イシンシン」と称呼されるか若しくは特定の称呼は生じないものと理解するのが相当であろうと思料する。
そうなれば、本件商標と引用商標とは称呼の点において相紛れることのない非類似の商標なのである。
(4)商標の称呼が4音構成において濁音と清音の相違であっても称呼の点において非類似となる場合が多いことに関し、申立人の主張又は取消理由の判断が当然に成立しない証左として過去の審決例(16事例・・・掲載省略)を援用する。
(5)前述のとおり、本件商標と引用商標とは外観、観念、称呼のいずれの点においても相紛れることのない非類似の商標である。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に基づきその登録は取り消されるべきでない。
5 当審の判断
本件商標は、その構成別紙に示すとおり、「いまじん」の平仮名文字よりなるところ、該文字からは、「イマジン」と読まれ、「想像する、想起する」の意味合いをもって一般に親しまれている英語の「imagine」を連想する場合があると認められるほか、他の事物等を何ら想起し得ないものといえるから、本件商標は、該構成文字に相応して生ずる「イマジン」の称呼をもって取引に資されるものと認められる。
他方、引用商標は、その構成別紙に示すとおり、「伊真沁」の文字(漢字)よりなるところ、該文字からは、直ちに特定の意味合いを看取し得ない一種の造語とみられるものである。
そして、構成中の「真」の漢字は、一般に、「しん」と読まれるほか、「真水(まみず)」、「真新しい(まあたらしい)」及び「真南(まみなみ)」等の各語をそれぞれ「ま・・・」と読む用例に倣い、これを「ま」と読む場合も決して少なくないといえるものであり、また、構成中の「沁」の文字は、一般に、「シン」と読まれ、「ひたす、しみこむ(滲)」の意味合いを有する漢字であって、該漢字は擁えば、「春霞」(ハルガスミ)、「肝心」(カンジン)又は「花火」(ハナビ)等の各語における後半の「霞」、「心」及び「火」の漢字がそれぞれ「ガスミ」、「ジン」及び「ビ」と読まれる音声現象(連濁)も合わせ考慮するに、これを「ジン」と読む場合を否定し得ないから、引用商標に接する取引者、需要者は、全体として「イマシン」又は「イマジン」の読みを当て、それら称呼をもって取引に資する場合も決して少なくないといわなければならない。
ところで、申立人提出の甲各号証によれば、引用商標「伊真沁」は、申立人会社(「株式会社ホリプロ」)の実質的運営に係り、昭和63年6月に東京・赤坂に開店した料理店の名称(呼称名:「いまじん」)であって、同店は、いわゆる芸能プロダクションが経営する始めての料理店として新聞報道されるなど話題となり(甲第1号証乃至甲第5号証)、その後、現在に至るまでの間、男性向け又は女性向け大衆誌、ビジネス誌又は経済誌、その他の雑誌及び東京都下の大衆新聞、さらには百貨店パンフレット等において、しばしば広告又は特集記事として取りあげられ(甲第6号証乃至甲第24号証)、それら印刷物には一様に、該名称(「伊真沁」)を「いまじん」と呼称する旨紹介されている状況が認められるから、これら事情に照らし、該料理店は、特に東京都下及び近郊各県を中心に、「いまじん」の呼称名をもって各界各層の不特定多数の者に相当程度に認識せられていたことを推測するのに十分である。
そうすると、一般的にみて、「イマシン」又は「イマジン」の称呼を生ずる引用商標は、前記取引事情よりすれば、むしろ、「イマジン」をもって当該店舗の名称ないしは取引上の呼称名として用いられ、かつ、不特定多数の需要者間においても、その旨認識せられていたものとみて差し支えないものと認められる。
そこで、本件商標より生ずる「イマジン」又は「イマシン」の称呼と引用商標より生ずる「イマジン」の称呼とを比較するに、両者は「イマジン」の称呼を共通にするものであり、また、「イマジン」と「イマシン」の称呼を対比した場合においても両称呼は極めて近似するものといわざるを得ないから、結局、両商標は、称呼において互いに相紛らわしいものといわなければならない。
商標権者は、引用商標からは特定の称呼は生ぜず、仮に、生ずるとすれば、音読み統一にて「イシンシン」の称呼を自然とするものであるから、「イマシン」(又は「イマジン」)の称呼を生ずることを前提とする取消理由は妥当でなく、また、申立人提出の甲号証にみられるとおり、同人がわざわざ引用商標(「伊真沁」)に平仮名もしくは片仮名のルビを振って使用していることは、引用商標が通常の可読性のない当て字である故に一般需要者や取引者が該称呼に抵抗を覚えるための配慮であろうと思料される旨主張する。
しかしながら、一般に、漢字より構成される商標にあっては、音読み、訓読み、湯桶読み(又は重箱読み)等により適宜称呼される場合があることは商取引の場において屡々経験するところであって、商標権者の述べる如く「伊真沁」より「イシンシン」と読まれる場合があるとしても、前記認定のとおり、該文字を「イマシン」又は「イマジン」と読むとするのは現今の邦語事情よりしてさほど不自然なものとは思われず、しかも、前述料理店の名称に係る取引事情を考慮すれば、もはや、「イシンシン」をその自然的称呼とみることは困難であり、いわんや、引用商標より特定の称呼が生じないということはできないから、この点について述べる申立人主張は採用の限りでない。
また、商標権者は、本件商標(「いまじん」)は古語の「今人」の読みである旨主張しているが、該語は、むしろ現代においては「イマヒト」と読まれ、「今の人、現在生きている人」を意味する語とみるのが相当であって(国語辞典参照)、本件商標より直ちに「今人」に通じ或いは該語を想起させるということはできないから、その主張は採用することができない。
加えて、本件商標の指定役務とする飲食物の提供に係る役務の分野において、特に店舗名称を表彰する商標にあっては、電話等口頭による商取引は日常的に行われるところであって、商標より生ずる称呼を取引指標とすることは極めて一般的な取引事情といわなければならない。
以上によれば、本件商標と引用商標とは、外観、観念の差異を考慮するとしても、なお、その出所について混同を生ずるおそれのある類似の商標とみるのが相当であり、かつ、両者はその指定役務も同一又は類似の役務について使用するものと認められる。
してみれば、本件商標を商標法第4条第1項第11号に該当するものとし、その登録を取り消すべきものとした先の取消理由は妥当なものであって、その認定の誤りを述べる商標権者の意見はいずれも採用することができない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第2項の規定により、これを取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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