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Trademark Appeal Case

金属元素名の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年異議第90079号
審判種別異議
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

登録第4195038号商標の指定商品中「点火栓」についての登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての登録を維持する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4195038号商標(以下、「本件商標」という。)は、「IRIDIUM」の文字を書してなり、平成8年12月24日に登録出願、第7類「鉱山機械器具,土木機械器具,荷役機械器具,化学機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,包装用機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のものを除く。),風水力機械器具,農業用機械器具,漁業用機械器具,ミシン,ガラス器製造機械,靴製造機械,製革機械,たばこ製造機械,機械式の接着テープディスペンサー,自動スタンプ打ち器,芝刈機,修繕用機械器具,電動式カーテン引き装置,陶工用ろくろ,塗装機械器具,機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」を指定商品として、同10年10月2日に設定の登録がされたものである。

2 登録異議申立の理由

これに対して、2件の登録異議の申立がなされた。

(1)本件商標は、金属元素を表し、電気接点、電極等に用いられるものであるから、これを「イリジウムを電極材とする点火栓」について使用しても、単に商品の品質を表示するに過ぎず、該商品以外の点火栓について使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。

(2)「IRIDIUM」及び「イリジウム」の文字よりなる商標(以下「引用商標」という。)は、申立人の業務に係る「全世界規模の衛星移動体通信ネットワークシステム」を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されている商標であるから、商標権者が、本件商標をその指定商品に使用するときは、申立人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれがある。また、本件商標は、著名な引用商標にフリーライドし、公の秩序を害するおそれがある商標である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第7号に該当する。

3 取消理由の通知

平成11年7月14日付けで、上記2(1)と同趣旨の取消理由を商標権者に通知した。

4 商標権者の意見

上記3の取消理由に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べている。

一般に商品の品質とは、商品の「良し悪し」を指すものであり、例えば「スーパー、デラックス、ゴールデン、ソフト、ニュー、高性能、長寿命」等の用語がこれに該当するものである。

しかるに、本件商標は、金属元素のイリジウムと同義語ではあるが、上記のような商品の良し悪しを指すものではなく、本来的に商品の品質を表わす用語ではない。因みに、内燃機関用スパークプラグにおける品質とは、乙第1号証(JIS B 8031)において規定される「性能」、例えば、絶縁抵抗、耐衝撃性、気密性等に相当する用語であり、本件商標はこれらの「性能」に該当せず、全く異質の概念であることは明白である。

また、イリジウムという金属元素は金や銀のような金属元素とは異なり一般的にはほとんど知られていないので、「イリジウムプラグ」や「イリジウム合金」といった、他の語句を付加し商品等を説明するような表記をした場合、これらの表記の方法は自他商品の識別力が低いと考えられるものの、「イリジウム」というように特に印象の強い部分のみを抜き出し、さらに、その部分を英文字で「IRIDIUM」と表記した場合には十分な識別力が生じ、何人の業務に係る商品であるか十分に識別できるものである。

更に、仮に本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであったとしても、本件商標は、乙第2号証(商品の写真)、同第3号証(包装箱の写し)及び同第4号証(販売実績)に示すとおり、スパークプラグのセラミック碍子部分に本件商標を表示して使用し、その販売数量が1997年4月の販売開始以来2年あまりの間に300万本近くに達しており、本件商標は、商標権者のスパークプラグを示すものとして需要者・取引者の間に広く認識されているものであるから、同法第3条第2項の適用を受け、商標登録を受けることのできるものである。

5 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について

本件商標は、上記のとおりの構成よりなるものであるところ、申立人の提出に係る甲号各証によれば、次の事実を認めることができる。

甲第2号証(日刊工業新聞社発行「マグローヒル 科学技術用語大辞典第2版」)によれば、「iridium」は、金属元素を表し、少なくとも電気接点、電極に用いられるものであること、同第3号証ないし同第13号証(特許出願公開昭57−180886、同昭58−34151、同昭59−91681、同昭60−72182、同昭61−135080、同昭63−257193、同平2−242577、同平5−101869、同平6−60959、同平7−50192、同平8−222351)の各公報によれば、明細書においては、「イリジウム」が点火栓の電極材として用いられていることを「イリジウム」の文字あるいは「Iridium」の略語である「Ir」の記号をもって表していること、同第14号証(社団法人 自動車技術会発行「学術講演会前刷集9241992−10」)、同第15号証(社団法人 自動車技術会発行「研究論文(5)Vol.24,No.4,October1993.)及び同第17号証(雑誌「環境研究1995.No.99」)の各論文によれば、「イリジウム」が点火栓の電極材或いは触媒として普通に用いられていることが記述されていること、同第18号証(1996年4月5日発行「中日新聞」及び1996年4月12日発行「日経産業新聞」)によれば、商品の紹介記事として、プラグ(点火栓)の中心電極にイリジウム合金が使用されている旨の記載がされていたこと、同第19号証ないし同第21号証(日本特殊陶業株式会社発行のパンフレット)、同第22号証(社団法人 自動車技術会主催の「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展’96」に関するリーフレット、カタログ)及び同第23号証(株式会社 宮田自動車商会主催の「感謝創業75周年フェア(1996年7月12日〜13日)」に関するパンフレット、カタログ)によれば、これらのパンフレット、カタログ類においてもイリジウムが点火栓の電極材として普通に採用されていたものであり、甲第22号証の4のカタログには「Iridium Plug」の文字が用いられていたこと、及び同第24号証ないし同第28号証(1996年4月から1997年10月までの「イリジウムプラグ」の日本特殊陶業株式会社の販売実績表)によれば、日本特殊陶業株式会社は1996年4月から1997年10月までの間に「イリジウムプラグ」を数多く販売していたものであること。

以上の認定事実によれば、動力機械器具を取り扱う業界においては、放電電圧を下げ着火性を向上させることを目的として点火栓(スパークプラグ)の極細電極に「Iridium合金」(イリジウム合金)を普通に用いていたものであること、そして、その表示として「イリジウム」あるいは「Iridium」の略語である「Ir」の語が普通一般に用いられていたものであることが認められる。

してみれば、本件商標は、「イリジウム」の英文字表記と容易に理解・認識される「IRIDIUM」の文字を普通に用いられる方法で表示してなるにすぎないものであり、これをその指定商品中の「イリジウム(1ridium)を電極材とする点火栓(スパークプラグ)」に使用した場合、前記した実情から、これに接する取引者・需要者は、その商品の品質を表示するための語として認識するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであり、また、本件商標をその指定商品中の上記以外の「点火栓」について使用した場合には、その商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。

なお、商標権者は、本件商標は商標法第3条第2項の適用を受け得るものである旨主張しているが、乙第2号証(商品の写真)及び同第3号証(包装箱の写し)の使用態様からは、単に、「IRIDIUM」を使用したスパークプラグであることを認識させるにすぎないものというべきであるから、販売数量からみて、直ちに使用による識別力を備えていたものということはできない。

したがって、本件商標の指定商品中の「点火栓」については、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。

(2)商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第7号について

申立人の提出に係る証拠を検討したが、引用商標が本件商標の登録出願時には申立人の業務に係る「全世界規模の衛星移動体通信ネットワークシステム」の商標として取引者・需要者の間に広く認識されていたものとは認められないから、本件商標を指定商品に使用した場合、その商品が申立人又は申立人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそのないものである。また、いわゆるフリーライド行為に基づくものであることを客観的に示す証左もなく、国際的な信義則及び社会公共の利益に反するものともいえない。

なお、申立人は、本件商標を登録することは商願平3−127689号に係る異議決定の判断に反するものである旨主張しているが、該異議決定は、当該出願の指定商品に含まれている「ロケット」との関係においてなされた判断であって、本件とは事案を異にするものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第7号に違反して登録されたものではない。

(3)したがって、本件商標の指定商品中「点火栓」についての登録は、商標法第43条の3第2項の規定により取り消すべきものであり、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については、取り消すべき理由がないから、同第4項の規定により登録を維持する。

よって、結論のとおり決定する。

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