Trademark Appeal Case
著名商標の混同性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2001−16433(T2001−16433/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「SONIA VALENTINO」の欧文字を標準文字により書してなり、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,かばん金具,がま口口金,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具,愛玩動物用被服類」を指定商品として、平成12年9月18日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、イタリアのデザイナー『Valentino Garavani』がデザインした婦人服・紳士服等に使用して世界的に著名な商標である『VALENTINO』の文字を有してなるから、これをその指定商品に使用するときは、上記者又はその者と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
3 請求人の主張の要点
請求人は、本願商標は登録されるべきであるとして以下のように主張し、証拠方法として、資料1及び資料2を提出している。
(1)「VALENTINO(バレンチノ)」は、イタリアなどの諸国ではありふれた氏又は名であり、映画俳優の「ルドルフ・バレンチノ」、イタリア国のライダーの「バレンチノ・ロッシー」、ジャズギタリストの「ビニー・バレンチノ」など、我が国で知られている著名人だけでも「バレンチノ」氏は多い。
(2)一方、ファッション業界では、デザイナーが自己の氏名をブランドとして商品展開することは常に行われており、一般的な氏又は名である「VALENTINO」を含む登録商標は多数存在している。
そして、本願と同一類似群の商品でも、「VALENTINO」の登録商標は、実に300件以上にのぼり、それぞれの商標権者が業務を行っている現状では、「VALENTINO」の文字が即座に「Valentino Garavani」を意味しないものである。
すなわち、「VALENTINO」の文字に接したときは、「Garavani」を直接思い起こすのではなく、数ある「VALENTINO」の何れかであるとの認識を持つのが一般的な需要者の感覚である。
(3)現実に、前述のとおり「VALENTINO」を含む商標は、出所誤認のおそれがないものとして多数登録されている事実がある。たとえば、請求人は、商標「BV/Bianca Valentino」について登録を受けている(登録第4324044号)。これは、本願と同一の商品を指定しているものである。
(4)以上のとおり、本願商標は、これをその指定商品に使用しても商品の出所について誤認混同を生じることはあり得ないものであるから、登録されるべきである。
4 職権による証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かに関して職権により証拠調べを行い、その結果、以下の証拠を発見したので、その旨を請求人に通知し、相当の期間を指定して意見を述べる機会を与えた。
(1)「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」(昭和51年6月5日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ・ガラバーニ」が、「イタリアファッション界の旗手と呼ばれ、女性を最高に美しく見せるデザイナーとして高く評価されている。」こと、及びその経歴等を紹介する内容とともに「ブラウス、セーター、ネクタイ」の商品の写真が掲載されていること。
(2)「EUROPE一流ブランドの本(講談社MOOK第2巻)」(昭和52年12月1日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」の所有する店舗の紹介と簡単な経歴が「婦人服」の商品と共に掲載されていること。
(3)「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の、ヴァレンチィーノ ガラヴァーニ[Valentino Garabani、1932〜]の項に、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)に生まれる。17才でリセオ(中学)を中退、パリに行く。スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。1951年、ジャン・デッセ(オート・クチュール)のもとで5年間アシスタントとして仕事をする。その後2年間、ギ・ラローシュのアシスタントをし、1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世外的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクンョンは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判となり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具
、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。ヴァレンティ−ノの洋服に対する考えは、まず個性が第一で、彼のコレクションからは、デテールでなくそのエスプリをくみ取ってもらうことに重きをおく。ローマの高級住宅地、アッピア・アンティカに母親とたくさんの犬と暮らしている。仕事でパリとローマを行き来するが、世界中を旅行するなど忙しい日々である。物をつくる人は誰でも波があって、いつも傑作が続くとはかぎらないが、ヴァレンティーノは現在、ローマのオート・クチュール界で最も好調なデザイナーといえる。以前から東洋風なエキゾティシズムが好きで、時によってトルコ風、アラブ風の特色がみられるが、最近はキモノのセクシーさを1950年代のハリウッドの雰囲気に表現、あやしく美しいヴァレンティーノの世界をつくり出している。」との紹介記事が掲載されていること。
(4)「朝日新聞」(昭和57年11月20日夕刊第3頁)において、世界の服をリードする3人のうちの1人として「バレンチノ」の紹介記事が掲載されていること。
(5)「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の文字とともに、「スーツ、ブルゾン、シャツ、ネクタイ、ベルト及びバッグ」の商品が掲載されていること。
(6)雑誌「non-no」1989年 No23号(平成元年12月5日株式会社集英社発行)及び「marie claire」(1996年2月1日中央公論社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」が単に「ヴァレンティノ」と略称され、商品「婦人服」等と共に掲載されていること。
(7)「英和商品名辞典」(1990年株式会社研究社発行)[Valentino Garavani]の項において、「イタリア RomaのデザイナーValentino Garavani(1932−)のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など。Roma,Firenze,Milanoなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字で書くこともある)。・・・ 」との記事及びデザイナーとしての紹介記事が掲載されていること。
(8)「世界の一流品大図鑑’93年版」(平成5年5月20日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO」ブランドの香水が掲載されていること。
(9)「岩波=ケンブリッジ世界人名辞典」(1997年11月21日株式会社岩波書店発行)の[ガラヴァーニ]の項において「ヴァレンティノ Garavani,Valentino通称ヴァレンティノ Valentino(伊 1933−)服飾デザイナー・・・・」との紹介記事が掲載されていること。
同じく、[ヴァレンティノ Valentino]の項において、「ガラヴァーニ、ヴァレンティノ」を見よとの表示があること。
5 証拠調べ通知に対する請求人の意見
請求人は、当審における上記証拠調べ通知に対し、以下のとおり意見を述べている。
(1)証拠調べ通知で示された書籍、新聞に「Valentino Garavani」の記載があることは反論しないが、広大なファッション業界におけるほんの一部を示すにすぎず、出所の混同を生じることはない。
(2)「VALENTINO」を含む登録商標は、実に633件あり、このような状況のもとでは、ある「VALENTINO」は他の「VALENTINO」とは互いに区別されて認識されている。現に大々的に使用され活動している多数の既存商標がかえりみられず、「Garavani」のみに過大な保護を与えることは、非常に合理性を欠くものである。
(3)したがって、「VALENTINO」の商標と出所の混同を生ずることはなく、本願は登録されてしかるべきと思料する。
6 当審の判断
そこで、請求人が本願商標をその指定商品について使用した場合、「VALENTINO GARAVANI」(バレンチノ ガラヴァーニ)又は同人と関係のある者の業務に係る商品と出所について混同を生ずるおそれがあるか否かについて、以下、判断する。
(1)VALENTINO標章の著名性について
前記「4 職権による証拠調べ通知」に示したとおり、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)は、1967年にファッションオスカーを受賞し、以来、同人のデザインに係る紳士服、婦人服等の商品を製造、販売して、その商品に「VALENTINO GARAVANI」「VALENTINO」の文字よりなる標章(以下、これらを「VALENTINO標章」という。)を使用しているものである。
そして、本願商標の出願時である平成12年9月18日までには、VALENTINO標章は、「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標として、また、デザイナーのヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)も「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と呼ばれて、紳士服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができ、さらに、該「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の著名性は 、現在においても継続していると認められるものである。
(2)出所の混同について
本願商標は、前記のとおり、標準文字により「SONIA VALENTINO」の欧文字よりなるものである。
そして、「SONIA」と「VALENTINO」の文字の間に1字程度の間隔があるため、両文字は視覚上分離して把握され、かつ、全体で特定の熟語的意味合いを有する語とも言えないものであるから、これらを常に一体不可分のものとして看取しなければならない理由もない。
してみれば、本願商標は、「SONIA」と「VALENTINO」の欧文字を結合してなるものと容易に理解し把握されるとみるのが相当である。
そして、前記(1)のとおり、本願商標の登録出願時には、既に、VALENTINO標章が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標と、また、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」とも呼ばれて、紳士服、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として著名であったことを認めることができる。
そうすると、VALENTINO標章が付される商品「紳士服、婦人服」等と本願商標の指定商品「かばん類、袋物」等は、共にファッション関連の商品であって、密接な関連性がある商品といい得るものであること等を併せ考えれば、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者・需要者は、その構成中の「VALENTINO」の文字のみを捉え、著名なVALENTINO標章を連想、想起し、それが「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
また、この混同を生ずるおそれは、本願商標の登録出願時はもとより、現在においても継続しているものと認められる。
なお、請求人(出願人)は、「VALENTINO」、「Valentino」の文字を含む商標の登録例を挙げ、本願商標も登録されるべきである旨主張している。
しかしながら、該登録例のなかには、その後、登録異議申立て又は登録無効審判請求により、Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の業務に係る商品と出所の混同を生ずるとして登録取消の決定又は登録無効の審決がなされ、同決定・審決が確定したものも含まれるし、また、本願商標と構成態様を異にする商標も多数含まれるものである。
してみれば、本願商標については、前記のとおりに判断するのが相当であって、「VALENTINO」等を含む他の登録商標が存在することのみをもって、本願商標を登録すべきであるとする請求人の主張は採用できない。 また、「VALENTINO」、「Valentino」の文字を含む他の登録商標について、本願商標の指定商品とは異なるが、これを旧第17類「被服等」又は旧第22類「履物、かさ、つえ等」に使用した場合、Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるとし、これを無効とした審決を支持した東京高等裁判所の以下の判決がある。
(ア)平成14年(行ケ)第201号 判決言渡日 平成15年9月30日
(イ)平成14年(行ケ)第354号 同
(ウ)平成14年(行ケ)第405号 判決言渡日 平成15年6月19日
(エ)平成14年(行ケ)第421号 同
さらに、最近の判決例としては、商標の構成中に「VALENTINO」の文字を含み、第3類「せっけん類、歯磨き等」を指定商品とする商標登録を取り消す旨の異議決定に対する取消訴訟事件(平成16年行ケ第335号)においても、上記(ア)ないし(エ)と同旨の判決がなされている(判決言渡日 平成17年2月24日)。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって取り消すべきかぎりでない。
よって、結論のとおり審決する。
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