Trademark Appeal Case
称呼類似と周知商標の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2003−90740(T2003−90740/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4699785号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示した構成よりなり、平成12年2月4日に登録出願、第1類「工業用黒鉛」、第4類「ベンジン,内燃機関用燃料,燃料油,ディーゼル油,液体燃料,気体燃料,燃料ガス,発生炉ガス,ガス油,ガソリン,灯油,原動機用燃料,ナフサ,石油(精製されたものであるかないかを問わない。)」及び第39類「エネルギーの供給,船舶の保管,パイプラインによる輸送」を指定商品及び指定役務として、平成15年8月15日に設定登録されたものである。
2 登録異議申立ての理由
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は取り消されるべきである。
3 本件商標に対する取消理由の要旨
当審において、平成16年10月22日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る甲第1号証、甲第2号証及び甲第6号証ないし甲第15号証によれば、別掲に表示した登録第4656162号商標(以下「引用商標」という。)は、「オリックス」と称呼され、申立人及び申立人のグループ企業が船舶、航空機リース事業、不動産ファイナンス事業、クレジットサービス事業、プロ野球球団の経営などの業務に使用した結果、我が国において、本件商標の登録出願時を経て登録査定時に至るまで継続して、取引者、需要者の間に広く認識されていたことが認められる。また、近年においては、省エネサービス事業、電力事業などの業務も行っていることが認められる。
そこで、本件商標をみると、本件商標は、別掲に表示したとおりであって、欧文字「ORYX」の文字を図案化してなるものと容易に看取、認識されるものである。
してみれば、本件商標は、「ORYX」の文字に相応し「オリックス」の称呼を生ずるものである。
そうしてみると、本件商標の指定商品及び指定役務はエネルギー関連事業に関する商品及び役務であり、これらの商品及び役務は、申立人及び申立人のグループ企業の業務の一つであるエネルギー関連事業と密接な関係にあるから、本件商標と引用商標の外観の相違を考慮するとしても、引用商標と称呼を共通にする本件商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合は、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想、想起し、申立人又は申立人グループ企業の業務に係る商品及び役務、もしくは申立人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかの如く、その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
4 商標権者の意見の要点
上記3の取消理由通知に対する商標権者の意見は、要旨次のとおりである。
(1)本件に係る商標権については、商標権分割登録申請書を提出する予定である。
(2)本件商標権の分割に係る商標権(以下「分割商標権」という。)は、第39類「石油化学エネルギーの供給」を指定役務とするものである。このように、本件商標に係る指定商品及び分割商標権に係る指定役務は、何れも石油化学エネルギーに関連するものであり、また、本件商標に係る指定役務は、石油化学エネルギーの流通サービスに深く関連するものである。
一方、引用商標は、アルファベットの「O,R,I,X」を横書きに書し、その上方に、横じま様の図形を配置してなるものである。
ここで、本件の商標権者による、本件商標の指定商品及び役務についての使用が、申立人若しくは申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務についての商標の使用であると誤認混同する可能性があるか否かについて検討するに、本件商標と引用商標との類否の如何は別として、本件商標に係る指定商品、指定役務及び本件分割商標権に係る指定役務に鑑みれば、以下のことより、上記のような商標の使用についての誤認、混同は生じないものである。
(3)すなわち、申立人が提出した甲第2号証には、申立人の会社概要が記載されており、その会社の目的欄には、「発電及び電気の供給」と明記されている。また、甲第6号証の1ないし甲第13号証の2には、申立人が資本出資を行っている、電力事業に関する関連会社の概要が記載されております。これらによれば、申立人が、エネルギー事業のうち、電力事業の分野に資本参加の形で事業参入している事実が認められる。
ここで、申立人の事業に関して、「近年においては、省エネサービス事業、電力事業などの業務も行っていることが認められる。」と認定した上で、「本件商標の指定商品及び指定役務はエネルギー関連事業に関する商品及び役務であり、これらの商品及び役務は、申立人及び申立人のグループ企業の業務の一つであるエネルギー関連事業と密接な関係にあるから、本件商標と引用商標の外観の相違を考慮するとしても、引用商標と称呼を共通にする本件商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合は、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想、想起し、申立人又は申立人グループ企業の業務に係る商品及び役務、若しくは申立人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかの如く、その商品または役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるというのが相当である。」と指摘しているが、かかる商標法第4条1項15号に該当するか否かの判断に関し、公表されている商標審査基準の4条1項15号の解説には、「他人の業務にかかる商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるかどうかの認定に当たっては、取引の実情等個々の実態を充分考慮するものとする。」旨が記載されている。また、商標法第4条3項によれば、商標法第4条1項15号に該当する商標であっても、商標登録出願の時に商標法第4条1項15号に該当しない場合は、その規定を適用しない旨が定められている。
(4)そこで、以下、本件商標の出願時におけるエネルギー関連分野の取引の実情を考慮した上で、本件商標が、他人の業務にかかる商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるものであるか否かについて検討するに、本件商標に係る指定商品は、上述のように、石油化学エネルギーに関するものであり、市場においては、商標が付された輸送用あるいは商品販売用の容器に封入された形で、取引者を介して流通するものであります。また、分割商標権に係る役務である、石油化学エネルギーの供給は、例えば、ガソリンスタンドにおけるガソリンの販売のように、広く市場全般において行われるものであります。これに対して、電気エネルギーの供給は、特定の電力供給事業者から、大掛りで特殊な送電設備を介して直接需要者に対して行われるものであり、市場において取引者を介して行われるものではありません。つまり、石油化学エネルギー分野と、電気エネルギー分野とでは、扱う商品の取引者、取引場所、あるいは流通経路等が明らかに異なる。
また、申立人が参入している電気事業の分野においては、平成12年3月に、電力小売の自由化を認めた電気事業法(平成11年5月改正)が施行され、これにより、電力会社以外の事業者が電気の小売を行うことが認められるようになった。しかしながら、本件商標の出願時、すなわち、当該改正法の施行前においては、電気の供給は、電力会社による完全地域独占という形で行われていたため、石油化学エネルギーの分野に携わる事業者が電気エネルギーの提供を行うことは認められていない。つまり、本件商標の出願当時、石油化学エネルギーの提供を行う事業者は数多く存在していたのに対し、電気エネルギーの供給を行う事業者は限られた者のみであり、エネルギー関連の商品を扱う取引者は、石油化学エネルギーを扱う事業者と、電気エネルギーを扱う事業者とを、明確に区別して認識していた。
(5)以上のように、石油化学エネルギー分野と電気エネルギー分野とでは、扱う商品の性質や取引形態が明らかに異なるものであり、また、本件商標の出願時においては、石油化学エネルギー関連の事業者と電気エネルギー関連の事業者とは、明確に区別して認識されていたことに鑑みれば、本件商標権者が、本件商標をその指定商品、指定役務、及び分割商標権に係る指定役務に使用した場合、エネルギー事業に係る取引者、及び需要者が、本件商標が使用される商品又は役務を、申立人若しくは申立人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であると混同することはないものである。
5 当審の判断
本件商標についてした先の取消理由は妥当なものであって、本件商標と引用商標の外観の相違を考慮するとしても、著名な引用商標と称呼を共通にする類似の商標であり、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合は、これに接する取引者、需要者をして、引用商標を連想、想起し、申立人又は申立人グループ企業の業務に係る商品及び役務、もしくは申立人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかの如く、その商品又は役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものというべきである。
(1)商標権者は、石油化学エネルギー分野と、電気エネルギー分野とでは、扱う商品の取引者、取引場所、あるいは流通経路等が明らかに異なるものであり、また、本件商標の出願当時、石油化学エネルギーの提供を行う事業者は数多く存在していたのに対し、電気エネルギーの供給を行う事業者は限られた者のみであり、エネルギー関連の商品を扱う取引者は、石油化学エネルギーを扱う事業者と、電気エネルギーを扱う事業者とを、明確に区別して認識していた旨述べている。
しかしながら、電気エネルギーは、石油、石炭、風力等によって、発電して電力を供給されることから、石油化学エネルギー分野と電気エネルギー分野とは、大変密接に関連する業務であるといって差し支えないものである。 そして、申立人は、本件商標登録出願前に、すでに発電事業に進出しており( 甲第6号の1、2ないし甲第8号証、甲第13号証の1、2)、さらに、申立人は、会社の目的欄に「(18)発電及び電気の供給」(甲第2号証)が明記され、また、電力の自由化に備えて準備をし、他社と合弁会社を設立して電力事業に積極的に参入していることが認められる(甲第9号証ないし甲第11号証の1,2)。
そうとすれば、前記認定のとおり、本件商標の指定商品及び指定役務はエネルギー関連事業に関する商品及び役務であり、これらの商品及び役務は、申立人及び申立人のグループ企業の業務の一つであるエネルギー関連事業と密接な関係にあるといえる。
(2)商標権者は、本件指定商品及び指定役務を第39類「石油化学エネルギー」を指定役務とする、商標権分割登録申請書を提出する旨主張している。
しかしながら、本件商標は、上記の認定のとおり、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、仮に、商標権者が商標権分割登録申請書を提出したとしても、本件の判断に影響を及ぼすものではない。
したがって、商標権者の意見は、いずれも採用できない。
(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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