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Trademark Appeal Case

著名地名と誤認混同

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2002−90289(T2002−90289/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4541033号商標の登録を取り消す。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4541033号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第14類「せっけん類,香料類,化粧品」を指定商品として、平成10年11月13日に登録出願、同13年12月14日に登録をすべき旨の審決、同14年2月1日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由要旨

1 商標法第4条第1項第7号について

本件商標は、「ボルドーシック/BORDEAUX CHIC」の文字からなるところ、その構成中「BORDEAUX」及び「ボルドー」の文字は、ワインの著名な原産地統制名称であって、その使用が厳格に管理・統制されている世界的に著名な地名である。

本件商標は、厳格に管理統制されている原産地統制名称として著名な標章「BORDEAUX」の高い名声・信用・評判にフリーライドし、前記原産地統制名称の高い名声・信用・評判の希釈化を引き起こすものであるところ、原産地とかけ離れた特定個人が自己の商標として登録し使用するに適さないというべきであり、また商取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序を害するものというべきである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

2 商標法第4条第1項第15号について

本件商標は、その構成中に、ワインの著名な原産地統制名称である「BORDEAUX」及び「ボルドー」の文字を含むものであり、取引者・需要者が本件商標の使用された商品に接する場合には、著名な原産地統制名称である「BORDEAUX」を容易に想起するものである。

加えて、原産地統制名称「BORDEAUX」は食品分野の取引者・需要者に限られることなく、高度な著名性を獲得している。また両者の使用される商品の取引者・需要者はかなりの割合で重なり合い共通しており、本件商標の指定商品と原産地統制名称「BORDEAUX」の対象となる商品は高い関連性を有している。

したがって、本件商標がその指定商品に使用されるときには、これに接する取引者・需要者は恰も原産地統制名称「BORDEAUX」の使用を許された者若しくはその者と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務にかかる商品であるかと誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 商標法第4条第1項第16号について

フランスは化粧品・香料類の本場として世界的に知られている。本件商標は、フランスの地方名称、特に酒類に関する原産地統制名称として世界的に著名な「BORDEAUX」及び「ボルドー」の文字をその構成中に有するものである。

したがって、本件商標をその指定商品中「BORDEAUX」産以外の商品に使用した場合には、該商品が恰も「BORDEAUX」産の商品であるかの如く需要者に商品の品質、産地、販売地等について誤認を生じさせるおそれがある。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当する。

4 結び

本件商標は商標法第4条第1項第7号、第15号及び第16号に該当するものであるから、本件商標の登録は、取り消されるべきものである。

第3 取消理由の通知

当審は、商標権者に対し、平成16年11月10日付けで、本件商標の登録を取り消すべき旨をその理由とともに意見を述べる期間を指定して、通知した(通知書発送日同年11月19日)。

その要旨は次のとおりである。

1 「ボルドー」「BORDEAUX」の著名性について

登録異議申立人の提出した甲各号証によれば、「ボルドー」「BORDEAUX」に関して、

(1)「広辞苑 第5版」(1998年11月11日株式会社岩波書店発行)によれば、2476頁には、「ボルドー」(Bordeaux)の見出しの下に「フランス南西部、ガロンヌ川に沿う港市。葡萄酒の集散地。・・・ボルドー地方から産出する葡萄酒。・・・」との記載があること(甲第2号証)、

(2)「コンサイス外国地名事典 改訂版」(1985年12月10日株式会社三省堂発行)によれば、977頁には、「ボルドー Bordeaux」の見出しの下に「フランス南西部、ジロンド県の県都、港湾・工業都市。・・・ボルドレーBordelais地方の中心地。航洋船の遡航限界点にあり、ブドウ酒の輸出港として有名。・・・」との記載があること(甲第3号証)、

(3)「世界の酒事典 新版」(1982年5月20日株式会社柴田書店発行)によれば、449頁には、「ボルドー」(Bordeaux)の見出しの下に「フランスの代表的なぶどう酒の産地。・・・行政的にジロンド県産のものにかぎってゆるされる名称で、ジロンド県は最上級のぶどう酒を生産するメドック、グラーブ、ソーテルヌ、サン・テミリヨンの四地区と、これにつぐポムロール、アントル、ドゥ・メール、コート、バリュスなどの地区に分かれている。・・・フランスのぶどう酒産出地域は、大きくボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュの三地方に分けられるが、なかでもボルドー地方は量質ともに第1位で、フランス総生産量の3分の2を占め、年産約8,000万ガロンを産出している。この地方のぶどう酒は、ブケ(発酵と熟成過程でうまれる香り)、アロマ(ぶどうの品種による香り)、パルフュム(口にふくんだときの香り)がよく、酒質も色もひじょうにすぐれている。そのぶどう栽培地の土壌は、表面が粘土質で、その下に小石や砂の層があり、農作物の作付けにはむかないが、ぶどうの栽培には最適の条件を備えている。」との記載があること(甲第5号証)、

(4)「洋酒小事典」(昭和56年6月15日株式会社柴田書店発行)によれば、177頁には、「ボルドー Bordeaux」」の見出しの下に「フランス西部にある世界的に有名なワインの産地。」との記載があること(甲第6号証)、

(5)「ワインの女王」(1996年3月31日早川書房発行)によれば、その表紙には「ワイン生産地としてボルドー最大の特色は『シャトー・ワイン』が特有の制度として確立している点にある。・・・肝心かなめの点は、シャトーの持主がシャトー周辺の自己所有畑で、自らぶどう栽培に当たり、建物附属の醸造所でワインを造り、樽貯蔵し、自ら瓶詰めしたワインに限って、そのシャトー名を冠せるところにある。」「ボルドーを知らずしてワインを語るなかれ」「繊細な香りと豊かなコク。酒の王にしてワインの女王。ボルドーワインに乾杯」などの記載があり、47頁ないし49頁並びに69頁ないし73頁には、「名酒となるはずのワインに他の地方のワインや質のおちるブドウからつくつたワインを混ぜるなどまがいものやいかがわしいワインを名酒のようにごまかして売ることを防ぐため、フランスではアペラシオン・コントローレ(略してAOC又はAC)制度が生まれた。我が国では『原産地名統制呼称』とか『原産地名管理呼称』と訳されている。この制度は、あるワイン生産地域で、ワイン造りに一定の条件をきめ、この条件を満たしたものだけに、その地域名を名乗ることを認めるものである。AC地域に指定され、その条件を守って造られたワインは、ラベルにACの表示と地名を刷れる。これをボルドーでみると、まずAC『ボルドー・ワイン』がある。これはボルドー市を中心としたジロンド県内の広大な地域である。」旨の記載があること(甲第7号証)、

(6)「世界のワインカタログ1999by Suntory」(1998年12月1日サントリー株式会社発行)によれば、「ボルドー」の見出しの下に「ボルドーの葡萄園は、ジロンド河の両岸とガロンヌ河、ドルドーニュ河の両岸に広がっており、銘醸地がひしめくフランスの中でも、質・量とも群を抜いて名高い地域です。ボルドーワインは恵まれた自然風土の中で育まれた複数の葡萄品種の組み合わせから生まれ、長い熟成期間を経て、繊細な風味と香りを身につけています。文字どおり、『ワインの女王』にふさわしい優雅な個性です。・・・ボルドーのワインは、原産地呼称統制ワイン−AOCが多く、フランス全体のAOC生産量の2割強を占めています。世界の産地の中で最も名高いボルドーといわれるゆえんです。」との記載があり、ボルドーのAOCワインを生産している代表的ワインの地区として、メドック地区、グラーヴ地区、ソーテルヌ地区、サンテミリオン地区、ポムロール地区、フロンサック地区及びアントル・ドゥー・メール地区が紹介されていること(甲第8号証)、

(7)「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(1996年9月30日日本経済新聞社発行)によれば、PART3「ボルドー BORDEAUX」の見出しの下に「ボルドーのワインについて語るならば、シャトーについて触れなくてはならない。ボルドーのシャトーは、文字どおりの絢爛豪華な城館もあるが、ごく普通のワイン農家といった建物もあり、醸造所と考えた方がいい。シャトーが所有する畑から穫れたぶどうを自分のシャトーでワインにする。すなわちシャトー元詰めがボルドーワインの基本的考え方だ。」との記載があり、シャトー・ラフィット・ロートシルト、シャトー・マルゴー、シャトー・ムートン・ロートシルト、シャトー・ラグランジュ及びシャトー・ベイシュヴェルが紹介されていること(甲第9号証)、

(8)「ザ・ワールドアトラス・オブ・ワイン」(1991年5月27日第一刷、発行日不明、日本映像出版株式会社発行)によれば、81頁には、「Bordeaux ボルドー」の見出しの下に「ボルドーはこの世で最大の上質ワイン産出区域だ。ジロンド県全体がワインづくりにかかわり、全部がボルドーなのだ。産出量はブルゴーニュをはるかにしのぎ、1983年には5億1,000万リットルを産した」旨の記載があり、82頁には、「ボルドー 品質決定要因」の見出しの下に「ぶどう栽培・ワイン醸造にとってボルドー地方がもっている利点を数え上げるのは簡単だ。海に近く、河川が縫うように走っているため、気候が温和で安定し、大西洋側に森林があって強い潮風を遮り、降雨が少なく、基盤岩が豊富に無機物を含んでいる反面、表土は全般に全くやせており、多くの場合、非常に分厚い。」との記載があること(甲第10号証)、

(9)「世界の名酒事典」別冊「世界の名ワイン事典」(昭和63年5月17日株式会社講談社発行)によれば、31頁ないし37頁には、「世界のワインの指標 ボルドーとブルゴーニュ」の見出しの下にワイン大国フランスで昔から銘醸の地として名高い、ボルドーとブルゴーニュを取り上げ、両地方の歴史から、気候風土の違い、そして銘酒選びまでを紹介しており、32頁には「なぜボルドーとブルゴーニュか」の見出しの下に「このようなワインの王国でも、その代表格となると、やはり、ボルドーとブルゴーニュになってしまうのである。この二つの地方は、世界のワインの最高峰と目される極上物を頂点に、中級から下級に至るワインを産出しているが、・・・これらの二つの地方はその赤ワインのタイプが際立った対象をなしていて、『ワイン』そのものの指標的存在となっているということである。また、白ワインも同様にブルゴーニュは辛口、ボルドーは甘口が世界の模範的存在になっている。」との記載があること(甲第12号証)、

(10)「世界の名酒事典’80改訂版」(昭和55年5月30日株式会社講談社発行)によれば、160頁には、「Bordeaux ボルドーのワイン」の見出しの下に「ボルドー・ワインとは、ジロンド県内の13のぶどう栽培地域のいずれかで、A・O・Cの規定にもとづいてつくられたワインをいう。・・・13のぶどう栽培地域は、メドック、グラーヴ、ソーテルヌ、サンテミリオン、ポムロール、・・・である。中でも冒頭に掲げた5地域が優秀で、ボルドーが世界に誇るワインのほとんどは、ここで生産される。・・・ワインづくりの特徴は、何種類かのぶどうを混醸することで、豊かな個性をつくり出している。」旨の記載があり、次頁には、メドック地区のワイン、サンテステーフ村のワイン、格付け特選銘柄の一覧表及び具体的製品の紹介が記載されていること(甲第13号証)、また、「世界の名酒事典」の’82−’83年度版、’84−’85年度版、’87−’88 年版、’90年版ないし2000年版及び2002年版においても、ボルドーワインの特質として「もう一つ、忘れてならないのはシャトーの格付けだ、1855年メドック地区とソーテルヌ地区に、その後一世紀たってグラーブ地区とサンテミリオン地区に格付けがなされた。そして、この格付けは、今も商業上の目安となっている。」との記載があるほか、ほぼ同内容の記載がされていること(甲第14号証ないし甲第28号証)、

(11)登録異議申立人の提供するインターネット上のホームページ「BORDEAUX」(http://japon.vins-bordeaux.fr/)よれば、最新ニュース、イベント&プロモーション、ボルドーワインの知識及びデータベースが掲載され、「最新ニュース ボルドーワイン2001年の輸出動向」の見出しの下に「輸出先7位の日本(13万hl)は、97年に急増したあと、98年に急減。2000年からは安定した伸びを示し、2001は数量ベースで8%の増となった。」との掲載があること(甲第29号証)、

(12)「The一流品 決定版」(1986年4月17日読売新聞社発行)によれば、250頁には、「フランスワイン」「ボルドー地区」の見出しの下に「ボルドー地区は、大西洋に面した南西フランスに位置し、世界で最も広大なぶどう栽培地帯である。ジロンド河、ガロンヌ河、ドルドーニュ河の両岸に広がっており、ここでできる赤ワインは『クラレット』と呼ばれるワインの女王と称賛される。鮮やかな紅色が特徴。ボルドーワインで登場するのがシャトー。城というより、ぶどう園全体を指している。1855年に地域、畑(シャトー)別に格付けが決められ今日に至っている。」との記載があり、以下に各シャトーのワインが紹介されていること(甲第44号証)、同誌PART2(1987年4月20日発行)、PART3(1988年5月6日発行)及びPART4(1989年6月16日発行)にも同様の趣旨の記載があること(甲第45号証ないし甲第47号証)の各事実が認められる。

これらの認定事実によれば、「BORDEAUX」「ボルドー」の語は、フランス南西部の地名であり、フランスの代表的なぶどう酒の産地であって同地で作られるぶどう酒をも意味する語であること、生産地域、製法、生産量など所定の条件を備えたぶどう酒についてだけ使用できるフランスの原産地統制名称であること、ぶどう酒について世界的に著名であること、我が国において数多くの辞書、辞典、事典、書籍及び雑誌などにおいてボルドーについての説明がなされていること、世界の名酒事典及び一流品を紹介する雑誌などにおいてボルドー産の具体的製品が紹介されていること、我が国の2001年における「ボルドー地方で作られるぶどう酒」の輸入量が世界第7位で13万hlと多いことなどが認められ、これらを総合すると、我が国において、本件商標の登録出願当時(平成10年(1998年)11月13日)はもとより登録をすべき旨の審決時(同13年(2001年)12月14日)を含むその後においても、「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味するものとして一般需要者の間に広く知られているというのが相当である。

2 商標法第4条第1項第7号の該当性について

フランスにおける「BORDEAUX」「ボルドー」の名称の保護に関しては、前記認定事実のほか、「フランスのワインとスピリッツ」(1987年フランス食品振興会発行)によれば、18頁ないし20頁 には、EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブルワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれに2分され、(1)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)(2)V.D.Q.S.(上質指定ワイン)(3)ヴァン・ド・ペイ(地酒)(4)ヴァン・ド・ペイを除いたテーブルワインの4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質指定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって厳しく規制されたものに限られ、製造の条件は法令化されていること、A.O.C(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.Sワインに適用される規制より更に厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法及び場合によっては熟成条件などの基準が決定されていること、原産地域がV.D.Q.Sワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、その名称を使用することができるためには、様々な基準に合うように製造され、さらに鑑定試飲会の検査に合格しなければならないことなどが記載されていること、20頁には、産地別A.O.C.ワイン一覧表中に「フランス西南部(ボルドーを含む)」が記載されている(甲第4号証)こと、フランスでは、1935年に原産地統制名称法を制定し、INAOは原産地統制名称のぶどう酒が満たすべき生産地域、ぶどうの品種、収穫量、最低アルコール純度、栽培方法、醸造方法などの条件を定めることができ、またフランス国内及び国外で原産地統制名称を保護することができる旨などを規定していること(甲第11号証及び甲第31号証)、INAOは申立人などとともにフランス国内及び国外で原産地統制名称の保護の活動をしていること(甲第11号証及び甲第30号証)の各事実が認められる。

以上によれば、本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、これを一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情を発見し得ず、むしろ構成中の「ボルドー」「BORDEAUX」の語が「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味するものとして登録出願時はもとよりその後においても我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること並びにフランスボルドー地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者が永年その土地の気候、風土を利用して優れた品質のぶどう酒の生産に努めてきたこと及びフランスが国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、該語よりなる表示の著名性が獲得されたものであることを併せ考慮すれば、これを指定商品に使用するときは、著名な「BORDEAUX」「ボルドー」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、ボルドー地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。

したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるものであるというのが相当ある。

3 結論

よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

第4 商標権者の意見要旨

商標権者は、上述した取消理由通知に対し、意見の要旨を次のとおり主張し、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。以下同じ。)を提出した。

1 本件商標は、出願人が造り出した特定の語義を有さない造語であり、また著名な「BORDEAUX」「ボルドー」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせ、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものではない。

2 「ボルドー」「BORDEAUX」の著名性について

(1)異議申立人が挙げた多数の証拠にもあるように、「ボルドー」「BORDEAUX」の語が、指定商品「葡萄酒」において「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味するものとして一般需要者の間に広く知られていることについては異議がない。しかしながら、そのことをもって、全ての指定商品について直ちに「ボルドー」「BORDEAUX」の語が、「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」と結び付くものではなく、指定商品により個別に判断をしなければならない。例えば、甲第2号証の「広辞苑 第5版」中にも、「ボルドー」の語にはフランスの地名や葡萄酒名の他、色目の名や酸性染料の意味があるとの記載があるため、指定商品によっては、フランスの地名や葡萄酒名よりも色目の名や酸性染料など他の語義とただちに結び付くものがある場合が考えられる。

(2)ここで、本件商標が登録されている指定商品「せっけん類,化粧品,香料類」を取り扱う業界において、「ボルドー」「BORDEAUX」の語が、どのように認識されているかを検討する。

「ニュアンスボルドー/NUANCE BORDEAUX」不服審判2000−1769(乙第1号証)及び「ボルドーシック/BORDEAUX CHIC」不服審判2000−1770(乙第2号証)の審決中には、「その指定商品中、色彩・色調が主な要素となる『口紅、アイシャドー』等の化粧品との関係からみて、『赤紫色、ボルドーカラー』等の意が看取される『BORDEAUX』及びその片仮名表記『ボルドー』の文字」とあり、審査においては「ボルドー」及び「BORDEAUX」の語は化粧品との関係において、「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」ではなく、「赤紫色、ボルドーカラー」として認識されている。

さらに、本件商標の拒絶査定中にもコンサイス仏和辞典(159頁)によれば、「BORDEAUX」は「赤紫色の」とあり、指定商品の一つである化粧品を取り扱う業界においては、口紅やマスカラの色を表示する際に「ボルドー」「ボルドー系」の語を普通に使用している事実が、インターネットのホームページ中の宣伝・販売記事中に見受けられる、との判断がなされている(乙第3号証)。以上より、審決や査定の判断中では、本件商標が登録されている指定商品を取り扱う業界において、「ボルドー」「BORDEAUX」の語が「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」と結び付くものではなく、色目の名として認識されていることが明らかである。

(3)また、商標権者がインターネットや雑誌において調べたところによると、「ボルドー」の語が色名を表す語として、化粧品関係の商品に多数使用されている(乙第4号証ないし乙第5号証)。

(4)以上より、本件商標が登録されている指定商品「せっけん類,化粧品,香料類」を取り扱う業界において、「ボルドー」「BORDEAUX」の語は、「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」ではなく、色目の名として一般的に認識されるものであることが明らかである。したがって、異議申立人の主張するところの「ボルドー」「BORDEAUX」の著名性は、本件商標が登録されている化粧品の分野には及ばないものと思料される。

(5)異議申立人は、「BORDEAUX」と並ぶ著名な原産地統制名称をその構成中に有する商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして、数件異議決定例を挙げ、厳格に統制されている原産地統制名称に関しては、これが食品分野と異なる指定商品又は指定役務に使用される場合であっても、原産地統制名称に化体した高い名声・信用・評判の希釈化を引き起こす恐れがあると述べている。しかしながら、「BORDEAUX」の場合は、たとえその語を構成中に含む商標を化粧品関係の商品に使用しても、原産地統制名称としてではなく色目の名として一般的に認識されるものであるため、原産地統制名称の希釈化を引き起こすものではなく、またフリーライドするものにもならない。

3 商標法第4条第1項第7号の該当性について

(1)取消理由通知書において、「本件商標は、後掲のとおりの構成よりなるところ、これを一体不可分のものとして把握しなければならない特段の事情を発見し得ず」と述べているが、前掲審決不服2000−1770(乙第2号証)中にあるように、「ボルドー」と「シック」それぞれに意味がある語の結合の結果、特定の語義もしくは意味合いを有しない造語としての本件商標が認められているため、一連一体の商標として把握する必要がある。また、例え「ボルドー」と「シック」に分断されたとしても、化粧品関係の指定商品においての「ボルドー」の語は色目の名であることは前記審決中でも明らかであるため、同通知書に述べているように「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味することはなく、そのため、「BORDEAUX」「ボルドー」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれはないものである。

(2)また、以下に「ボルドー」又は「BORDEAUX」の語を含む商標が登録されている例として、「ボルドーショック/BORDEAUX SHOCK」商標登録第4319609号 (乙第6号証)、「バーニングボルドー」商標登録第4369950号 (乙第7号証)及び「ガンメタボルドー」商標登録第4652432号 (乙第8号証)がある。

以上の商標は、構成中に「ボルドー」又は「BORDEAUX」を含むものでありながら原産地の限定などの指定商品を減縮させることなく登録されているものである。また、「バーニングボルドー」と「ガンメタボルドー」については、その商標を使用した商品も販売されている(乙第9号証及び乙第10号証)。

本件商標と同様に解すれば、これらの商標も「ボルドー」を含む語を特定の個人が登録しているため、「公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるもの」ということになるが、現在まで適法に登録が継続しており、また商標の商品への使用もなされている。

(3) さらに、前掲の商標権者がインターネットや雑誌において調べた「ボルドー」の化粧品分野での使用状況(乙第4号証ないし乙第5号証)中にも、「ボルドー」の表示を使用した商品が多数存在することが明らかである。そのため、本件について述べられたとおりだとすればそれらも全て、「公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあるもの」であることになるが、化粧品分野において「ボルドー」は、一般的に色名として認識されていると考えれば、公正な表示の使用方法として許容されているものとなり矛盾は生じなくなる。

(4)逆に、「ボルドー」「BORDEAUX」の語を「フランスのボルドー地方産」の化粧品等にのみ使用することが可能であるとするならば、それは従来慣用されている色名として「ボルドー」「BORDEAUX」の表示を使用してきた日本の化粧品業界の取引秩序を乱すものになり、混乱を生じることになる。

(5)したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当せず、またその使用についても、「公の秩序を害するおそれがあるもの」ではないため認められるものである。

4 結論

以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第7号には該当せず、本件商標の登録は維持されるものであると確信する。

第5 当審の判断

商標権者は、(1)本件商標は商標権者が造り出した特定の語義を有さない造語であるから一連一体のものとして把握すべきこと、(2)本件商標の指定商品を取り扱う業界において「ボルドー」「BORDEAUX」の語は色目の名として一般的に認識されていること及び(3)「ボルドー」又は「BORDEAUX」の語を有する商標が多数登録されていることを理由として、本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に違反してされたものではない旨を主張している。

そこで、商標権者の前記各主張理由について検討する。

1 本件商標が一連一体としてのみ認識されるか否かについて

本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、商標権者は、本件商標は出願人が造り出した特定の語義を有さない造語であり一連一体のものとして把握すべきである旨主張するが、常にこれを一連一体の語として認識しなければならないとする事実の存在について、何ら証拠を提出しておらず、これを認めるに足りる証拠はない。かえって、商標権者は「本件商標は『ボルドー』と『シック』それぞれに意味がある語の結合」(意見書3頁13行ないし14行)であるとも主張しており、「ボルドー」「BORDEAUX」の語が「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」を意味するものとして我が国の一般需要者の間に広く知られているものであること等及び「シック」「CHIC」の語が「粋、上品」等の意味を有する外来語及び仏語として広く知られていることからすれば、「ボルドー」「BORDEAUX」の語と「シック」「CHIC」の語との結合商標と認められるものであり、本件商標を常に一連一体のものとして把握しなければならないとすべき理由はない。

したがって、この点に関する商標権者の主張は採用することができない。

2 「ボルドー」「BORDEAUX」の語が色目の名としてのみ認識されるか否かについて

商標権者は、本件商標の指定商品「せっけん類,化粧品,香料類」を取り扱う業界において、「ボルドー」「BORDEAUX」の語は、「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」ではなく、色目の名として一般的に認識されるものである旨主張している。

広辞苑第五版(甲第2号証)によれば、「ボルドー」(Bordeaux)の見出しの下に、取消理由の通知に示す「1.フランス南西部、ガロンヌ川に沿う港市。葡萄酒の集散地。・・・2.ボルドー地方から産出する葡萄酒。赤葡萄酒はクラレットとも呼ぶ。」との記載の外、「3.色目の名。赤葡萄酒のような色。4.酸性染料の一。絹や毛を葡萄色に染めるのに用いる。」との記載がある。そうすると、「ボルドー」「BORDEAUX」の語は、「色目の名。赤葡萄酒のような色。」の語義を有するものと認められるが、同語義が「ボルドー地方から産出する葡萄酒」の意味を語源としていると解されるものであり、本件商標の商標法第4条第1項第7号の該当性についての判断基準時である平成13年12月14日当時、この語源となる「ボルドー地方から産出する葡萄酒」や葡萄酒の集散地としての「地名」の語義を上回るほど一般によく知られていたとの事実を認めるに足りる証左はない。また、本件指定商品を取り扱う業界においても、判断基準当時、その事実を認めるに足りる証左はない。なお、商標権者は、「ボルドー」の語が色名を表す語として化粧品関係の商品に多数使用されている事実を立証するものとして乙第4号証及び乙第5号証を提出しているが、これらはいずれも判断基準時以後の2005(平成17)年1月元旦ないし同月4日ころに使用されたものであり、前記事実を立証するものとしては適切でない。

さらに、商標権者は、審決や査定の判断中では、本件商標が登録されている指定商品を取り扱う業界において、「ボルドー」「BORDEAUX」の語が「フランスのボルドー地方で作られるぶどう酒」と結び付くものではなく、色目の名として認識されていることが明らかである(乙第1号証ないし乙第3号証)旨主張しているが、商標権者の引用する不服2000−1769審決、不服2000−1770審決及び商願平10−97875拒絶査定の事例は、「ボルドー」「BORDEAUX」の語と他の語との結合商標について識別性又は品質の誤認の有無が争点とされた事案であって、化粧品を取り扱う業界において、「ボルドー」「BORDEAUX」の語が「赤紫色、ボルドーカラー」等の語義を有すること及びその語義として使用されている例があることを認定したものであり、「ボルドー」「BORDEAUX」の語が「ボルドー地方から産出する葡萄酒」の語義を有することを否定したり、「赤紫色、ボルドーカラー」の語義のみを有するとして取り扱われたとまでは認められない。

以上によれば、「ボルドー」「BORDEAUX」の語は、前記広辞苑に記載されているような語義を有する語であるが、この語がいかなる語義として使用され、理解されるかは、その使用状況や文脈等によって決定されるが、このような特段の事情が認められない場合には、一般に広く知られた語義において理解される傾向にあるとみるのが自然である。そうすると、「ボルドー」「BORDEAUX」の語を本件商標の指定商品に商品の色を表示するものと理解できる箇所、色を表す説明文の文脈又は「カラー」「color」の文字とともに表示する場合には、「色目の名。赤葡萄酒のような色。」を表すものとして需要者に理解されると解されるが、本件商標を指定商品にその出所を表示するものとして使用する場合には、多くの需要者は本件商標構成中の「ボルドー」「BORDEAUX」の語を一般に広く知られている「ボルドー地方から産出する葡萄酒」や葡萄酒の集散地としての「地名」の語義を想起、連想するというのが相当である。

したがって、ぶどう酒の原産地名称としての「ボルドー」「BORDEAUX」の著名性は本件商標が登録されている化粧品の分野には及ばない旨の商標権者の主張は採用することができない。

3 「ボルドー」「BORDEAUX」の語を含む商標の登録例について

商標権者は、「ボルドー」又は「BORDEAUX」の語を構成中に含む商標が登録されている例として商標登録第4319609号(乙第6号証)、同第4369950号(乙第7号証)及び同第4652432号(乙第8号証)並びに同第4369950号及び同第4652432号の使用例(乙第9号証及び乙第10号証)を引用して、取消理由の違法を主張するが、登録異議の申立てに係る商標登録に取り消すべき理由があるか否かの判断は、個別具体的に行われるべきものであり、商標権者の引用する前記各登録例及びその使用例は本件商標と事案を異にするものであるから、本件商標の登録に取消理由があるか否かの判断に影響を及ぼすものではない。

4 結論

以上のとおり、本件商標の登録は、商標権者の主張がいずれも上述した取消理由を覆すに足りず、同取消理由のとおり商標法第4条第1項第7号の規定に違反してされたと認められるから、その余の登録異議の申立て理由について判断するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する

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