Trademark Appeal Case
称呼の類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成9年異議第90024号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | other |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4000110号商標(以下、「本件商標」という。)は、別紙(1)に示す構成よりなり、平成6年11月1日登録出願、第3類「シャンプー,その他のせっけん類,頭髪用化粧品,その他の化粧品」を指定商品として、同9年5月2日に設定の登録がされたものである。
2 引用商標
登録異議の申立があった結果、本件商標を商標法第4条第1項第11号に該当するものとしてその取消理由に引用した登録第1533381号商標(以下、「引用商標イ」という。)は、「COIFFURE」の欧文字よりなり、昭和45年9月17日登録出願、(旧)第4類「化粧品、その他本類に属する商品」を指定商品として、同57年8月27日に設定の登録がされ、該商標権は現に有効に存続するものである。同じく、登録第2503753号商標(以下、「引用商標ロ」という。)は、「コワフュール」の文字よりなり、平成2年7月9日登録出願、(旧)第4類「化粧品、その他本類に属する商品」を指定商品として同5年2月26日に設定の登録がされ、該商標権は現に有効に存続するものである。
3 本件商標の取消理由
本件商標についてした取消理由通知は、要旨以下のとおりである。
〈取消理由通知(要旨)〉
本件商標と引用各商標との類否についてみるに、本件商標は、その構成前記のとおり、「LE COIFFEUR」の文字よりなるところ、これを構成する冒頭の「LE」は、仏語の定冠詞「LE」(ル)を表し、同じく、後半の「COIFFEUR」は「理髪師」の意味合いを有し「コワフール」と読まれる仏語と認められる。そして、定冠詞「LE」はそれ自体に格別意味はなく単独に自他商品の識別機能を発揮するものとはいえないから、本件商標にあって、自他商品の識別機能を有する部分は「COIFFEUR」にあり、これより単に「コワフール」の称呼も生ずるものといわなければならない。
他方、引用商標イは、前記のとおり「COIFFURE」の文字よりなるところ、該文字は「帽子、髪型、理髪」を意味し、「コワフュール」と読まれる仏語と認められ、また、引用商標ロはその構成文字に相応して「コワフュール」の称呼を生ずるものであるから、結局、引用各商標からは、ともに「コワフュール」の称呼を生ずるといえるものである。そして、この称呼にあって、中間の「フュ」の音は元来日本語の表記法になく、必ずしも一定の方式で発せられる音でないとしても、通常の場合、「フユ」(fuyu)又は「フィウ」(fiu)のごとく発声されるものと認められる。
そこで、本件商標より生ずる「コワフール」の称呼と引用各商標より生ずる「コワフュール」の称呼とを比較するに、両者は中間音において「フ」と「フュ」の音を異にするほか、他の音構成をすべて同じくするものである。しかして、後者の「フュ」の音は前記したとおり、「フユ」(fuyu)又は「フィウ」(fiu)のごとく発せられる音であって、いずれも子音「f」と母音「u」を基調に発せられる音といえるから、この点において前者の音「fu」と極めて近接した音といえるものである。そして、これら差異音はともに長音を伴うため、母音の響きがより強い音として聴取される一方、前音の子音又は母音の響きは該母音に吸収されて弱められるという点において共通性が認められる。
そうすると、前記音の差異が全体の称呼に及ぼす影響は決して大きいものとはいえないから、両称呼をそれぞれ一連に称呼した場合、両者は全体の語調・音感が近似し、彼此紛れ得るものといわざるを得ない。
さらに、本件商標と引用商標イは、前記した如く、観念において関連性を有する語であり、また、外観においても主要部の欧文字構成(「COIFFEUR」と「COIFFURE」)において紛らわしいものといえる。
以上、外観・観念の点も考慮して総合勘案するに、本件商標と引用各商標とは互いに紛らわしく両者は類似のものといわなければならない。そして、両者は指定商品においても同一又は類似のものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものといわざるを得ない。
4 商標権者の意見
(1)仏語の全ての名詞は男性名詞か女性名詞かに区別され、それにより付される定冠詞が決まり、男性名詞の場合は「LE」、女性名詞の場合は「LA」が用いられることは周知のとおりである、したがって、仏語において定冠詞は、他の言語例えば英語等とは異なり、特別重要な意味を有し、付される定冠詞により全く違う意味の名詞となる場合もあるため、定冠詞は決して省略されるべきものではない。
このように、本件商標は、常に全体としてのみ捉えられ、したがって、その自然の称呼は「ルクワフヒヨール」であり、「理髪師」の観念を生ずる。さらに、本件商標は、同じ書体(クーリエ書体)により全体がまとまりよく表わされているから、外観上も一個の単語として容易に看取できる。
(2)他方、引用商標イは、仏語の女性名詞として「かぶり物、帽子、髪の型、結髪、理髪」等の観念を有し、「コワフュール」と称呼される。したがって、定冠詞が付されてはいないが、女性名詞として本来「LA」が付されるべき単語であり、その意味も自ずと女性的なものとなる。なお、引用商標イを構成する欧文字は、アライアル書体によるから、本件商標とは異なる外観を呈しているといえる。
(3)日本人の一般的な仏語の知識からして本件商標と引用商標イとは観念上明確に区別できるものである。また、両商標の定冠詞の有無により語頭音「ル」が聴者に対し強い聴覚的印象を与え、全体の構成音も5音と7音のと差異があるため、両商標は称呼上明確に識別可能である。さらに、外観上もその文字構成の相違、書体の相違により明らかに区別できる商標である。したがって、両商標は外観、称呼、観念いずれにおいても混同するおそれは全くない。
また、本件商標と引用商標ロとは外観上一見して明確に区別され得る。そして、引用商標ロからは、引用商標イと同様の称呼・観念が生ずるから、両商標は外観、称呼、観念において容易に区別でき、両者が混同することは取引上考えにくく、両商標は、取引者・需要者間において明瞭に区別される非類似の商標というべきである。
(4)以上のとおり、本件商標は、引用商標イ及び引用商標ロのいずれとも混同を生ずるおそれのない非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
5 当審の判断
本件商標は、その構成別紙(1)に示すとおり、「LE COIFFEUR」の文字よりなり、第3類「シャンプー,その他のせっけん類,頭髪用化粧品,その他の化粧品」を指定商品とするものである。
ところで、一般に、香水等の化粧品を取り扱う取引者、需要者間においては、英語、仏語等の外国語に慣れ親しむ傾向が強い取引事情にあること顕著な事実であって、商品イメージを重視する商標の採択等に関し、これら外国文字を選択、使用する傾向はより強いというのが実情である。
しかして、本件商標と引用各商標とは称呼において紛れ得るものであり、また、外観、観念の点も考慮して総合判断するに両商標を類似のものと判断し、本件商標の登録を取り消すべきものとした先の取消理由は妥当なものであって、両商標が類似するものでない旨述べる商標権者の主張は、以下の理由よりして採用することができない。
(1)商標権者は、定冠詞(「LE」)は仏語特有の意義を有する故をもって、本件商標は常に全体としてのみ捉えられ、その自然の称呼は「ルクワフヒヨール」である旨述べているが、本件商標の指定商品とする化粧品等の商品分野において、仏語が屡々用いられる取引事情にあること前示のとおりであって、仏語の定冠詞(「LE」)が仏語特有のものであること商標権者の述べるとおりであるとしても、本件商標に接する取引者、需要者が常に仏語の原義ないしはその用法等を正確に理解し又は使い分けることが可能かどうかの点は甚だ疑問であって、仏語特有の定冠詞の意味合いを常に正確に理解し把握するというよりは、むしろ、わが国において最もその普及度の著しい外国語といえる英語の用法・用例に倣い、一般的な英語の定冠詞と同様に理解し認識するとみるのが取引の経験に照らし相当である。
そうすると、商標権者の述べる理由をもって本件商標が常に一体のものとして把握され一連の称呼のみをもって取引に資されるとする合理的な根拠は見出せないから、本件商標にあって、商品の出所を識別するための標識は後半の「COIFFEUR」にあり、これより生ずる「コワフール」の称呼をもって取引に資される場合も決して少なくないとした先の認定を覆すことはできない。
(2)商標権者は、本件商標はクーリエ書体をもって一体的に表されているのに対し、引用商標イを構成する欧文字はアライアル書体でまとまりよく表わされているから、構成文字の相違、書体の相違により両者は外観上判然と区別される旨述べているが、本件商標にあって、商品の出所を識別するための標識は後半の「COIFFEUR」にあること前示のとおりであって、これと引用商標イ(「COIFFURE」)とでは、全8文字中の前5文字を同じくし、かつ、後3文字は同じアルファベット3文字を前後並べ換えて表してなるものであるから、全体として両者から受ける外観印象は極めて近似したものというべきであって、両者の書体上における差異は微差といえるものである。したがって、この点について述べる商標権者の主張は採用の限りでない。
(3)商標権者は、日本人の一般的な仏語の知識からして本件商標と引用商標イとは観念上明確に区別できる旨述べているが、現今のわが国における仏語事情(仏語の普及度、理解度等)は未だ一般的に用いられる状況にないというのが平均的な国内事情といえるから、わが国の化粧品の商品分野において仏語の使用頻度が高いといえる事情を考慮するとしても、本件商標より「理髪師」の意味を、引用商標イより「かぶり物、帽子、髪の型、結髪、理髪」の意味をそれぞれ容易に理解し識別するとみるのは妥当でなく、したがって、この点において、両者が観念上明確に区別される旨述べる商標権者の主張は採用することができない。
この点に関し、「(両者が)観念において関連性を有する語である」旨言及した先の取消理由は、両商標の類否判定を総合判断するうえで、両者が観念上類似するとまではいえないとしても、両語(商標)が意味上において関連性を有する点を考慮する旨述べたものである。
(4)上記(1)乃至(3)に述べたとおり、本件商標と引用各商標とが外観、称呼及び観念のいずれにおいても混同のおそれのない非類似の商標である旨述べる商標権者の主張は、本件商標の指定商品の分野における取引事情に照らし、採用することができない。その他、商標権者の主張を認めるに足りる証左はなく、ほかに、本件商標と引用各商標とが類似しないとする理由は見出せない。
以上述べたとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、これを取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
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