結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2004−89121(T2004−89121/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4532974号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に表示した構成より、平成13年2月1日に登録出願、第25類「被服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」及び第28類「スノーボード用手袋,スノーボード用具,その他の運動用具」を指定商品として、平成13年12月28日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第2518962号商標(以下「引用商標1」という。)は、「SPD」の欧文字を横書きしてなり、平成2年2月3日に登録出願、第24類「玉突き用具、遊戯用器具、運動具、釣り具、楽器、演奏補助品、蓄音機(電気蓄音機を除く)レコード、これらの部品及び附属品」を指定商品として、平成5年3月31日に設定登録され、その後、平成15年7月2日に指定商品を第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第28類「運動用具,釣り具」とする指定商品の書換登録がされたものである。
同じく、登録第4439333号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲に表示した構成よりなり、平成12年1月26日に登録出願、第12類「自転車並びにその部品及び付属品」及び第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成12年12月8日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第66号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標は、図形と欧文字「SP−D」の二段構成からなり、図形と下段の欧文字との間に両者を結びつける要素は全くなく、両者を一体的にのみ把握すべき理由はなく、それぞれ独立して認識し得るものである。
上段の図形部分から特定の称呼や観念が生ずるとは考えられず、本件商標に接する取引者及び需要者は、その構成中、最も見易く読みやすい文字部分に着目して該文字部分により取引にあたるものと思料する。
してみれば、本件商標は、欧文字「SP」と「D」とをハイフン「−」で結合した文字部分より「エスピーデー」と一連に称呼されるものである。
一方、引用商標1はその欧文字に相応して「エスピーデー」の称呼が生じるものである。
また、引用商標2は、図形と文字を組み合わせたものであるが、図形部分から特定の称呼、観念を認識すると考えるのは無理がある。
同時に下段の「SHIMANO PEDALING DYNAMICS」の欧文字は、各文字が中段の「SPD」に比べて約4分の1程度の大きさしかなく、しかも、3つの語を並べたものであるため中段の「SPD」に比べて目立つ存在ではなく、引用商標2は、これに接する取引者等にとって最も目立つ部分である中段の「SPD」に着目して取引にあたると考えるのが極めて自然である。
実際に請求人は、自社のホームページに掲載した商品一覧(甲第4号証)から明らかなとおり、その指定商品「運動用特殊靴」に属する「自転車用シューズ」そのものに引用商標2の欧文字「SPD」を付して使用している事実があり、このことからも引用商標2は、「SPD」の部分のみを抽出して認識される場合があることを裏付けるものである。
してみれば、引用商標2もその中段の「SPD」から「エスピーデー」の称呼が生じ得ると考えるのが相当である。
以上により、本件商標と引用商標1及び2とは何れも「エスピーデー」の称呼を共通にする類似の商標であることは明らかである。
(イ)請求人は、引用商標1及び2と同様の構成文字「SPD」からなる商標を登録出願した事実がある(甲第5号証)。
しかるに、該登録出願に係る商標は、本件商標を引用して拒絶された(甲第6号証の1)。
そして、該登録出願に対する拒絶査定では、引用商標(本件商標)と本願商標とは、「エスピーデー」の称呼を同一または類似する称呼上類似する商標である、旨の判断をし、該出願商標「SPD」と本件商標の類似性を肯定した事実がある(甲第6号証の2)。
よって、本件商標は、その欧文字部分「SP−D」のみを注出して「エスピーデー」の称呼を生じるものであり、引用商標1及び2も「エスビーデー」の称呼を生じるものである以上、両商標が称呼を共通とする類似する商標であることは、該審査例からも肯定することができる。
(ウ)結論
以上により、本件商標と引用商標1及び2は類似する商標であり、その指定商品も同一または類似するものである。
(2) 商標法第4条第1項第15号について
(ア)商標「SPD」の周知・著名性
請求人は、我が国のみならず世界を代表する自転車部品のメーカーとして広く知られており、「SPD」は、競技用自転車のペダル対応のシューズに使用する商標として1992年頃より使用を開始し、現在に至っている経緯がある。
そして、請求人は、「SPD」シューズの販売を開始した1992年から現在に至るまで継続して「販売店様用セールスマニュアル」若しくは「商品カタログ」を相当部数作成し、該カタログに「SPD」なる商標を使用した自転車用シューズも多数掲載している他(甲第7号ないし甲第17号証)、請求人のホームページは勿論のこと、雑誌等においても継続した宣伝広告活動を努めたことにより、この種、自転車の需要者や取扱者の間では欧文字「SPD」が請求人の商標として広く親しまれているに至っている。
特に、請求人の宣伝広告活動は自転車の部品会社としては類を見ない大規模なものであり、エイ出版社発行の月刊誌「BICYCLE CLUB 」(甲第18号証ないし甲第21号証)、八重洲出版発行の月刊誌「CYCLE SPORTS」(甲第22号証ないし甲第24号証)等に「SPD」シューズを掲載している事実がある。
しかも、最近の自転車競技の関心の高まり、例えば、世界最大の自転車レースであるツール・ド・フランスの人気とも相俟って競技用自転車が愛好家のみならず広く一般的にも知られるに至り「SPD」シューズも楽天市場(甲第25号証)や各種のネット販売(甲第26号証及び甲第27号証)等を通じて、広く一般需要者を対象として販売されている事実がある。
してみれば、商標「SPD」を付した自転車用シューズは、この種商品では同業他社には見られない驚異的な販売実績を誇るものとなり、請求人の最近5年間の商標「SPD」を付した自転車用シューズのみの売上実績(甲第28号証)によれば、少なくとも2000年以降は商標「SPD」がもはや自転車愛好家のみならず広く一般の需要者の間でも請求人の自転車ペダル及びこれに対応したシューズの商標として周知・著名に至っている。
(イ)商品の誤認・混同のおそれ
以上のとおり、商標「SPD」は、商品「自転車用シューズ」に関し1992年頃から使用を開始し、現在に至るまで大々的な宣伝広告活動を継続して行った結果、本件商標の登録出願時には、既にその販売規模を考慮しても周知・著名に至ったものであることは明らかである。
また、この種自転車競技において、「ツール・ド・フランス」等のレースであれば競技者自身も自己のユニホームやサングラス等機能性のみならず、ファッション性をも追求したものを着用しており、しかも該レースでは観客に対しレースに参加する自転車チームのTシャツや帽子等も販売しているのが一般的であり、自転車レースで使用する「自転車用シューズ」と商品「被服」とは密接な関係にある。
よって、「自転車用シューズ」が属する「運動用特殊靴」と「運動用具」や「運動用特殊衣服」とは同一又は類似する関係にあるため、被請求人が「運動用具、運動用特殊衣服,運動用特殊靴」は勿論のこと、「運動用特殊靴」とは非類似の関係にある「被服」に本件商標を使用しても、あたかも請求人の業務に係る商品であるかの如く誤認混同を生じさせるものであると考えるのが相当である。
(3) むすび
以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効にすべきである。
(1)商標法第4条第1項第11号について
被請求人は、審決例(乙第1号証ないし乙第14号証)等を示し、本件商標における「SP−D」の標章は識別力を有し得ないため、この部分から「エスピーデー」の称呼は生じないとし、本件商標と引用商標1及び2とが非類似であると主張する。
しかるに商標の類否は、多数の審査・審判及び裁判例で示されている通り、「対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決定すべきであり、その判断は商品に使用された商標の外観、観念、称呼によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきもの」である。
そこで、請求人は、被請求人による本件商標に関する商品の具体的な取引状況について調査をしたところ、スポーツ用品販売店「PRO SHOP RBS」のインターネットホームページにおける「取扱ブランド」の欄に欧文字「SP−D」が独立して表示され、被請求人の製造・販売に係る商品が掲載されている(甲第30号証)。また、スポーツ用品販売店「ザ・バリ」のインターネットホームページにも、「取扱ブランド」の欄に欧文字「S.P.D」のみが独立して表示され、実際に被請求人の製造・販売に係る商品が掲載されており(甲第31号証)、さらに、「ザ・バリ」の通信販売インターネットホームページにおいては、「当店はSPD(エスピーディー)の正規販売店ですので安心してご購入ください。」と表示されている(甲第32号証)。
以上の実際の取引の実情に鑑みれば、本件商標の文字部分「SP−D」が独立して自他商品識別標識としての機能を果たしていることは明らかであり、被請求人の本件商標における「SP−D」の標章は識別力を有し得ないため、この部分から「エスピーデー」の称呼が生じない旨の主張は、実際の取引の実情と矛盾しており失当である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)甲第33号証ないし甲第47号証は、請求人の宣伝広告活動を表すものであって、月刊誌「BICYCLE CLUB」、月刊誌「CYCLE SPORTS」、「MTBパーツカタログ2000」等に「SPD」シューズを掲載している。
甲第48号証ないし甲第58号証は、1992年から現在まで継続して「SPD」シューズを請求人の「商品カタログ」に掲載している事実を表すものであり、甲第59号証に示すとおり相当部数作成され、自転車ショー、自転車販売店等を通じて需要者等に大々的に配布されている。
また、「販売店様用セールスマニュアル」(甲第7号証ないし甲第16号証)は、甲第60号証に示す通り、相当部数作成され請求人から全国の自転車販売店等に配布されている。
以上より、本件商標の出願前から現在まで継続して宣伝広告活動がなされている事実は明らかであり、「SPD」の周知・著名性を疑う余地がない。
(イ)商品の誤認・混同のおそれ
被請求人は、請求人以外の者が「被服」について「SPD」の標章を使用したところで、何人も、請求人の製造・販売に係る商品と結びつけて、何らかの関連があるかのように誤認・混同することはない、旨主張する。
しかるに、請求人は、商標「SPD」を使用したTシャツの販売を行なっていた事実があり、また、Tシャツ、トレーナー、サイクリングウェア等の製造・販売等を行なっている(甲第61号証ないし甲第63号証)。
さらに、例えば、楽天市場のインターネットホームページに示すとおり、請求人の「SPD」シューズと「被服」が同時に掲載され実際に販売されている事実がある(甲第64号証)。
以上の事実関係からすれば、「自転車用シューズ」と商品「被服」とは、製造・販売する業者、流通経路、需要者等を同じくする密接な関係にある商品であることは明らかである。
請求人のみならず株式会社パールイズミも「自転車用シュ一ズ」と「被服」との両商品について、製造・販売等を行なっている事実からも請求人の主張の正当性を裏付けることができる(甲第65号証及び甲第66号証)。
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標1及び2の称呼について検討するに、本件商標中「SP−D」の記号混じりの文字列は、商品の規格、品番等を表すための記号又は符号にすぎず、識別力を有することがないから、この部分から「エスピーデー」の称呼は生じないものとして扱われるべきであり、引用商標1及び2と類似しない。
よって、本件商標と引用商標1及び2とは、称呼において非類似の商標である。
次に、本件商標と引用商標1及び2との外観について検討するに、本件商標は「S」をモチーフとした幾何図形を表してなるものである。
一方、引用商標1は「SPD」の文字列からなるものであり、本件商標とは図形の有無において顕著な差異を有するものである。
また、引用商標2は、図形と欧文字の「SPD」、「SHIMANO PEDALING DYNAMICS」の文字列を表してなるものであるが、本件商標とは図形の構成が全く異なり、その他の構成要素についても何ら共通するところが無い。
よって、本件商標と引用商標1及び2とは、外観においても明らかに非類似の商標である。
そして、本件商標と引用商標1及び2との観念について検討するに、本件商標は、何ら特定の観念を生じない。
一方、引用商標1は、欧文字の「SPD」の文字列からなるものであるが、やはり特定の観念を生ずるものではない。
引用商標2は、図形部分及び「SPD」の文字部分からは何ら特定の観念を生ずることがなく、残る「SHIMANO PEDALING DYNAMICS」の部分より、「シマノ社のペダルを踏み込む力」という観念を生ずる程度である。
よって、本件商標と引用商標1及び2とは、観念においても非類似の商標である。
したがって、本件商標と引用商標1及び2とは、称呼・外観・観念の全てにおいて何ら共通する要素を有していない。
請求人は、本件商標からは「SP−D」の部分が独立して認識し得るから、本件商標が引用商標1及び2と類似すると主張するが、欧文字の2文字と欧文字の1文字とをハイフンで結んだ標章には識別力を認められることがないため、本件商標が引用商標1及び2と類似することもない。このことは、審決例からも明らかである(乙第1号証ないし乙第14号証)。
現に請求人自身も、自己の製造・販売に係る各種商品について、商品の規格・品番等を表すための記号又は符号として欧文字の2文字と欧文字の1文字とをハイフンで結んだ標章を使用している(甲第4号証及び甲第7号証ないし甲第16号証)。
このような表示方法は、請求人が独自に採用しているものではなく、商品の管理上又は取引上の利便性から、製造業では広く普通に採択使用されているものである。
したがって、本件商標がその商標中に「SP−D」の標章を含むとしても、取引者、需要者においては単に商品の規格・品番等を表すための記号又は符号の一つとして認識するに止まり、自他商品の識別標識とは認識し得ないのである。
以上のことから、本件商標における「SP−D」の標章は識別力を有し得ないため、この部分より「エスピーデー」の称呼を生ずることはない。また、本件商標において識別力を発揮する「S」をモチーフとした幾何図形についても、引用商標1及び2とは何ら類似するものではない。
よって、本件商標と引用商標1及び2とは、称呼・外観・観念のいずれもが異なり、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
なお、請求人は、請求人の出願商標「SPD」が、本件商標を引用して商標登録を拒絶されたことに着目し、本件商標が不適法な登録商標であると主張している。
しかし、欧文字の2文字と欧文字の1文字とをハイフンで結んだ標章は、商品の型式、品番、種別、規格を表す極めて簡単かつありふれた記号、符号の一つにすぎず、自他商品の識別標識として認識されないものであるから、本件商標と、請求人の出願商標とが類似することなどない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、自転車の需要者や取扱者の間では「SPD」が請求人の商標として周知・著名であると主張する。
しかしながら、請求人がその主張を裏付ける資料として提出した甲第4号証及び甲第15号証ないし甲第27号証は、いずれも本件商標の出願日以降の事実に関するもので、請求人の主張を裏付ける資料としては、採用することのできないものである。
そこで、他の甲第7号証ないし甲第14号証及び甲第28号証について、これらの主張の妥当性を検証する。
甲第7号証ないし甲第14号証は、請求人が1992年から競技自転車用のシューズを含む自転車用品の総称として、商標「SPD」を使用し始めたことを示しているにすぎず、請求人商標の周知性・著名性を示すものではない。
これらの資料は、商標「SPD」に係る自転車用シューズのシェアや販売実績に関するものではなく、自転車用品の販売店用のサービスマニュアルである。
このサービスマニュアルは、ごく限られた対象である自転車用品の販売店に配布されたものであるから、このような露出性の低い資料を示したところで、「SPD」が周知・著名であるということにはならない。
また、配布対象が極めて限定的であるということは、このサービスマニュアルが、「被服」の需要者である、広く一般の消費者の目に触れる機会は殆どないといえる。
よって、このような資料を示したところで、被服の需要者が、本件商標を付した被服と、請求人の販売する自転車用シューズに係る商標「SPD」とを結び付けて、請求人の商品であると誤認・混同することは決してない。
さらに、これらの資料における「SPD」の使用例を見ると、「SPD(シマノ・ペダリング・ダイナミクス)」「SPDペダル」「SPD対応ロードモデル」「対応ペダル SPDタイプ」「SPDシステム」「SPDのメカニズム」「SPDのメリット」「SPD対応ソールパッチ」など数多く、シューズ以外の言葉と結合された表現が、「SPDシューズ」と混在して使用されていることがわかる。
このような一貫性のない表現で「SPD」を使用すれば、個々の商品との結び付きや訴求力は弱まり、消費者においてはその殆どが、「SPD」が具体的に何を指しているのか認識し得ないといえる。
したがって、一般的な消費者は「SPD」を特定商品のブランドとして直ちに認識するということができないと考えるのが自然であるから、「SPD」が「自転車用シューズ」の商標として周知・著名であるという請求人の主張には理由がない。
よって、甲第7号証ないし甲第14号証もまた、請求人の主張を裏付ける資料としては採用することができない。
また、甲第28号証は、商標「SPD」を使用した自転車用シューズの販売数量及び売上額に関するものであるが、この内、2003年、2004年の資料については、本件商標の出願日以降の事実に関するものであるから、請求人の主張を裏付ける資料として採用することはできない。
そこで、2000年の販売数量及び売上額に関する資料を見ると、単に販売の事実を示すだけで、自転車関連用品のカテゴリーで商標「SPD」に係る商品がどの程度のシェアを占めているのか、また、需要者にどの程度認知されているのかを示すものではない。
よって、この資料をもって引用商標1及び2の周知性・著名性を推し量ることはできない。
なお、自転車競技(ロードレース・BMXなど)の競技総人口について、正確な人数は定かでないが、遠泳・自転車・マラソンの3種目からなるトライアスロンの競技人口について言えば、現在30万人にも上ると言われている。
その競技人口と「SPD」の販売数量を比較すれば、「SPD」がまだまだ広く認知されていないことは想像に難くない。
ましてや、他の自転車競技の競技人口を加算すれば、さらに請求人の商標の認知度が低くなるのは明らかであるから、「SPD」が周知・著名であるという請求人の主張には、根拠がない。
以上から、請求人の示す資料は、本件商標の出願当時に請求人の商標が周知・著名であったことを証明するものではない。
商品の誤認・混同のおそれについて、請求人は「自転車用シューズ」と「被服」とが密接な関係にあると主張するが、これも根拠がない。
自転車レースの会場において、参加チームにちなんだTシャツや帽子等が販売されているとしても、「自転車用シューズ」と「被服」とが密接な関係にあるとはいえない。
レース場の販売ブースで売られている「レーシングチームのグッズ」とレース競技に使用される自転車に使われている「部品」や「自転車用シューズ」とは何も関連性がない。
これらの商品は、製造・販売する業者、流通経路、需要者、用途・用法が大きく異なり、明らかに別異の商品である。
よって、請求人以外の者が「被服」について「SPD」の標章を使用したところで、何人も、請求人の製造・販売に係る商品と結び付けて、何らかの関連があるかのように誤認・混同することはない。
ましてや、本件商標の一部分に表示される標章は、商品の規格・品番等を表すための記号又は符号の「SP−D」であり、もとより識別力を有し得ないものであるから、本件商標を「被服」について使用したところで、請求人の製造・販売に係る商品と誤認・混同を生ずることはない。
以上のことから、引用商標1及び2は周知・著名と言えず、本件商標と引用商標1及び2とは非類似の商標であるから、本件商標と引用商標1及び2とは商品の出所の混同を生ずるおそれはない。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、別掲に表示したとおり、特定の称呼、観念を生ずるものとは認められない図形の下部に「SP−D」の文字を横書きしてなるものである。
ところで、ローマ文字の2文字と1文字をハイフンで連結した構成は、商品の規格、品番等を表示するための記号、符号として、普通一般に類型的に使用されていることは、当庁において顕著の事実である。このことは、被請求人の提出に係る審決例からも明らかである(乙第1号証ないし乙第14号証)。
そうしてみると、本件商標を構成する「SP−D」のローマ文字部分は、商品の規格、品番等を表すための記号、符号と看取、認識されるものであり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
さらに、本件商標の図形部分よりは、特定の称呼、観念を生ずるものとは認められないものである。
他方、引用商標1は、「SPD」の欧文字に相応し「エスピーデー」の称呼を生ずるものである。また、引用商標2は、図形の下部に「SPD」の欧文字を書し、その下部に該文字に比し小さく「SHIMANO PEDALING DYNAMICS」の文字を書してなるものであるから、顕著に書された「SPD」の文字に相応し「エスピーデー」の称呼を生ずるものである。また、引用商標2の図形部分よりは、特定の称呼、観念を生ずるものとは認められないものである。
そうとすれば、引用商標1及び2は、いずれも「SPD」の文字に相応し「エスピーデー」の称呼を生ずるとしても、本件商標を構成する「SP−D」の文字部分は、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないから、該文字部分のみを捉えて取引に資されることはないものとみるのが相当であるので、本願商標と引用商標1及び2とは、称呼上類似の商標ということはできない。
また、本件商標の図形部分よりは、特定の称呼、観念を生ずるものとは認められないものであるから、他に、称呼、観念において類似する点は見あたらないし、外観においても互いに区別し得る差異を有するものである。
したがって、本件商標と引用商標1及び2とは、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても、非類似の商標というべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人の提出に係る甲第各号証によれば、請求人は、商品「自転車用シューズ」に「SPD」の文字を使用していることが認められる。
さらに、請求人は、商品「自転車用シューズ」に「SPD」の文字を付し、販売を開始した1992年頃から現在に至るまで継続して「販売店様用セールスマニュアル」、「商品カタログ」を相当部数作成していること、該カタログに「SPD」商標を使用した自転車用シューズを多数掲載していること、請求人のホームページ、各種雑誌等においても継続し宣伝広告していることが認められる(甲第4号証、甲第7号証ないし甲第27号証、甲第33号証ないし甲第58号証及び甲第64号証)。
しかしながら、本件商標を構成する「SP−D」のローマ文字部分は、前記(1)のとおり、商品の規格、品番等を表示すための記号、符号と看取、認識されるものであり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、本件商標は、その構成中に「SP−D」を有することをもって、請求人の業務に係る商品と出所の混同を生じさせるおそれがあるものということはできない。
(3)結語
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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