Trademark Appeal Case
称呼の類似性と要部抽出
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年異議第91490号 |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | other |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4130031号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙(1)に示すとおりの構成よりなり、平成8年12月13日に登録出願、第25類「履物」を指定商品として、同10年3月27日に設定の登録がされたものである。
2 取消理由の通知
平成11年1月11日付けで、商標権者に下記の取消理由を通知した。
登録異議申立人 アシェット フィリパキ プレス ソシエテ アノニム(以下「申立人」という。)の提出に係る証拠を総合勘案すれば、商標「ELLE」が本件商標の登録出願時には申立人の業務に係る商品「雑誌」の商標として取引者・需要者の間において広く認識されていたものと認められる。
そうとすれば、「ELLE」の文字を含む本件商標は、それをその指定商品に使用した場合、その商品が申立人又は申立人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 商標権者の意見
上記2の取消理由に対して、商標権者は、要旨つぎのように意見を述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第11号証を提出した。
(1) 本件商標の要部である「ELLE MARlNE」は、既に商標権者が商標登録第1874483号(以下「原登録商標」という。)を以て「ELLE MARlNE」の文字と「エレマリーン」の文字とを二段に併記した構成からなる商標を昭和55年12月25日に登録出願、第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品及び附属品」について現に所有しているもので、本件商標は原登録商標のひとつのバリエーションとして、いわゆる改正前商標法でいう「連合商標」と認められる商標として登録したものである。
原登録商標は、申立人の所有に係る登録第2193941号商標(「ELLE」と「エル」の文字を二段に併記してなる商標)の先願に係る商標で、現に両商標は互いに非類似の商標として併存している。
そして、商標権者は原登録商標を主にサンダル、靴類について現在に至るまで広く使用しており、当業界に於ては著名に至っているものである。
ひるがえって、申立人が世界的に使用して周知著名にしたというファッション雑誌「ELLE」の創刊年をみると、フランス国において、1945年11月号を以て創刊された以外、主要各国においては、全て1991年(平成3年)以後の創刊に係るもので、我が国に於ても「ELLE」誌は昭和57年4月発刊であり、原登録商標の使用時に周知著名に至っていたとは到底認められない。
言うまでもなく、商標の態様は時代の推移と共に少しづつ変化されつつ進むものであり、本件商標も原登録商標と基本を同じくする1バリエーションとして採択し登録されたもので、その出願時点のみをとって他の商標の周知との関係を云々することは許されるべきでない。
即ち、商標権者の営業努力で原登録商標の構成上のバリエーションとして登録した本件商標が該原登録商標の登録後に進出してきた申立人の雑誌名の商標により権利が規制されることは著しく法の公正及び均衡を欠くものである。
事実として、申立人が「靴」に関する商標の使用を開始したのは昭和63年(1988年)、被服類については昭和59年(1984年)であり、申立人の商標使用はいずれも商標権者の所有する原登録商標の出願日以降のものである。
してみると、もし商標権者の登録商標が申立人の使用商標と類似であると、申立人の使用は、商標権侵害となる筈である。そうすると、申立人のその後の「ELLE」商標使用は全てが違法であり、この違法行為が正当行為に転化することはあり得ないから、その使用は法律的に何等評価を受けることができないのみならず、むしろ排除されなければならないものである。
よって、この点から見ても申立人の理由が無いことは明らかである。
(2)そもそも、本件商標と引用商標「ELLE」とは、互いに非
類似の商標であり、根元的に商品の誤認・混同の問題は生じ得ない。
即ち、本件商標は、その英文字部分から一般的な英文の音訳表示に照らして「エレマリーン」の一連一語からなる自然的称呼を有する商標と認めるを至当とし、その称呼も格別冗長と言うべきものではなく、よどみなく「エレマリーン」と一連に称呼されるもので、他に構成中の「ELLE」の文字部分のみが独立して称呼されるべき特段の事情は全く見出せないところである。
一方、引用商標「ELLE」は、その単語の構成から推してフランス語で「彼女」を意味する「エル」と称呼観念されるものと認められる。
本件商標の英文字構成中にも「ELLE」の表示があるが、それにつづく「MARINE」の文字は「海」を意味する英語であり、強いてフランス語と英語を結合させて特定の意味を表すものとすることは一般に理解されているものと認められないから、本件商標は特定の意味を有しない造語であると認められる。
本件商標と引用商標との外観上の相違は前記のとおりの構成から互いに判然と彼我区別し得るものであることは他言を要さず明らかである。
以上に述べた通り、本件商標と引用商標とは、称呼上、観念上及び外観上いかなる観点からみても明らかに互いに非類似の商標であるから、引用商標「ELLE」が申立人の女性ファッション雑誌について使用した結果広く知られるに至ったとしても、本件商標をその指定商品である「履物」に使用するときに、商品の出所について誤認・混同を生じさせるおそれはあり得ず、他に混同を生ずるとすべきいかなる格別の事情も見出せないものである。
この点については、商標権者所有の「ELLE MARINE及びE花図形」よりなる登録第4090070号商標、「ELLERESORT」と「エレリゾート」との文字よりなる登録第3369485号商標外何件もの「ELLE」の文字を含む商標が引用商標「ELLE」と非類似の商標であり、商品について出所の誤認・混同を生ずるおそれはないとして登録されている。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当せざる商標であり、その登録は維持されるべきものである。
4 当審の判断
そこで判断するに、申立人の提出した甲第5号証(フランク チュノ作成の供述書)、同第6号証(HACHETTE FILIPACCHI JAPAN 発行のチラシ)、同第26号証(「日英仏独対照 服飾辞典」1972年2月1日株式会社ダヴィッド社発行)、同第27号証(「服飾辞典」文化出版局発行54.4.21東京都立中央図書館受入)、同第28号証(「増補版 服装大百科事典」昭和54年7月20日文化出版局 発行)及び申立人の主張を総合すれば、申立人は、1945年に、別紙(2)に示すとおりの構成よりなる「ELLE」の文字を要部とする商標(以下、「引用商標」という。)を附した「女性向けファッション雑誌」を創刊以来、世界各国において雑誌「ELLE」を発行し続けてきたものであること、我が国においても、昭和45年3月に雑誌「アンアン(an.an)」を日本語版「ELLE」誌と位置付けて創刊し、以来、昭和57年に至るまで、「アンアン」には毎号、本国版「ELLE」誌の記事を一部そのまま掲載するなど「ELLE」ファッションの紹介、普及を図り、その表紙には必ず「ELLE JAPON」の商標を付してきたものであること、そして、昭和57年に株式会社マガジンハウスが雑誌「ELLE」の日本語版を発行し、その後、株式会社タイムアシェト ジャパンがこれを承継して現在に至っていることを認めることができる。
また、甲第8号証ないし同第16号証(申立人等の商品カタログ)、同第17号証(川辺株式会社のカタログ)、同第18号証(ムーンバット株式会社のカタログ)、同第19号証(アルプス カワムラ株式会社のカタログ)、同第20号証(株式会社岸田のカタログ)、同第21号証及び同第36号証ないし同第39号証(世界長株式会社のカタログ)、同第22号証(イトキン株式会社のカタログ)、同第23号証(雑誌「LES GANTS’89−’90AUTUMN&WINTER」 SUN−ACE CO.,LTD)、同第24号証(ファッション雑誌「フットウェア・プレス」1987年7月号)及び同第25号証(「ELLE DECO」1994年6月号)によれば、申立人は、引用商標を「女性向けファッション雑誌」の商標として使用しているばかりでなく、日本の各社に対して、引用商標について使用権を設定し、「洋服、スカーフ、ハンカチ類、エプロン、寝装寝具類、手袋、かさ、子供靴、婦人靴」等の各種商品についてライセンス事業を行ってきたものであることを認めることができる。
以上の事実に照らしてみれば、引用商標は、少なくとも、本件商標の登録出願時である平成8年12月13日以前には、「女性向けファッション雑誌」の商標として、我が国における取引者・需要者間に広く認識されていたものであり、また、本件商標の指定商品である「履物」をはじめ、「洋服、スカーフ、ハンカチ類、エプロン、寝装寝具類、手袋、かさ」等々の各種商品の商標としても、取引者・需要者間に相当程度知られていたものといわなければならない。
しかして、本件商標は、別紙(1)に示すとおりの構成よりなるところ、「ELLE MARINE」の語が特定の意味を有するものとして一般に知られ親しまれているものとは認め難く、また、「エレマリーン」と称呼され、取引者・需要者間に広く知られているとも認められないものであるから、これよりは容易に「ELLE」の文字と「MARINE」の文字よりなるものと把握されるものである。そして、該構成中の「ELLE」の文字部分は、看者の注意を惹く前半部分に位置し、視覚的にも「ELLE」の文字部分が分離して看取されるばかりでなく、引用商標とその綴り字を同じくし、しかも、その構成も引用商標と同じく、縦長の欧文字で表し、各欧文字の横線の右端部分に縦方向に拡大されたひげを配するという著名な引用商標と共通の特徴を有するものである。
してみれば、前記した事情のもとにあって、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者は、本件商標がその構成中に引用商標と共通の構成からなる「ELLE」の文字を有するものであるところから、容易に著名な引用商標を想起し、その商品が申立人又は申立人と関係のある者あるいはその承諾を得た者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
なお、商標権者は、本件商標は商標権者の所有する原登録商標(「ELLE MARINE」と「エレマリーン」の文字よりなる商標)のひとつのバリエーションとして英文字部分の「ELLE MARINE」を登録出願し、登録されたもので、原登録商標と申立人所有の「ELLE」と「エル」の文字とを二段に併記してなる商標とは、非類似の商標として互いに登録を受けていること、また、原登録商標は靴類について使用され著名になっていた旨述べている。
しかしながら、当該先登録に係る原登録商標は、その構成からみて、「エレマリーン」の仮名文字部分が欧文字部分の読みを特定する役目を果たすものとして認識されるところから「エレマリーン」の称呼を生ずるもので、「ELLE」あるいは「ELLE」の文字と「エル」の文字とを二段に併記した(ともに「エル」の称呼を生ずる)商標とは、外観、称呼及び観念において類似しない商標と判断されたものというべきである。また、商標権者が靴類について使用していたとする商標は、乙第3号証の1ないし13(商標権者による原登録商標の使用を証するカタログ、写真及び納品書写し)によれば、「エレマリーン」の仮名文字部分を欠き、しかも、欧文字部分の書体をも異にするものであって、原登録商標とはその構成態様を著しく異にし、原登録商標の使用とはいい難いものであり、かつ、著名とも認められないものであるから、これらの点についての商標権者の主張はいずれも採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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