Trademark Appeal Case
著名商標と結合商標の混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成10年審判第3016号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「ヴァレンティノ ジーリ」及び「Valentino Gigli」の文字を上下二段に表してなり、第25類「被服」を指定商品として、平成8年5月8日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶理由の要旨
本願商標は、イタリア国ローマ市在住の「Valentino Garavani」(オランダ国在の関連企業「バレンチノ クローブ ベスローテン フェンノートシャップ社」)が「婦人・紳士物の衣料品」等に使用している著名な商標「Valentino」の文字を含むものであるから、これを出願人が指定商品に使用するときは、需要者は上記会社もしくは上記会社と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第15号に該当する旨、認定・判断して、本願を拒絶したものである。
3 審判請求の理由(要旨)
「Valentino」は本来人名であり、イタリア生まれのアメリカの映画俳優「Rudolph Valentino」の姓として著名となり、また、「Valentino」商標は、日本企業によって28年間使用されてきたものであって、「Valentino Garavani」関連企業の商標として著名なものではない。
本願商標は、「Valentino」をファーストネームとして使用しているが、セカンドネームの「Gigli/ジーリ」と一体化し、商標全体が姓名を表す結合商標として独自性及び識別性を有しているから、本願商標が「Valentino」の文字を含んでいるとしても、本願商標を付した商品が「Valentino Garavani」関連企業の商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれは全くないのである。
また、請求人は、本願商標と同一の商標を第18類、第24類、第25類(但し、「被服」を除く)及び第27類の各類にも登録出願し、何れも登録査定又は登録維持の決定がなされており、これらの査定又は決定は、本願においても十分尊重されるべきである。
4 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標について商標法第4条第1項第15号に該当するか否かに関して以下のとおりの証拠調べを行い、意見書を提出する相当の期間を指定して、平成13年11月8日付けで請求人に通知した。
(1)「世界の一流品大図鑑ライフカタログVOL.1」(昭和51年6月5日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ・ガラバーニ」が、「イタリアファッション界の旗手と呼ばれ、女性を最高に美しく見せるデザイナーとして高く評価されている。」こと、及びその経歴等を紹介する内容とともに「ブラウス、セーター、ネクタイ」の商品の写真が掲載されていること。
(2)「EUROPE一流ブランドの本(講談社MOOK第2巻)」(昭和52年12月1日株式会社講談社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」の所有する店舗の紹介と簡単な経歴が「婦人服」の商品と共に掲載されていること。
(3)「服飾辞典」(昭和54年3月5日第1刷文化出版局発行)の、ヴァレンティーノ ガラヴァーニ[Valentino Garabani、1932〜]の項に、「イタリア北部の都市(ヴォゲラ)に生まれる。17才でリセオ(中学)を中退、パリに行く。スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。1951年、ジャン・デッセ(オート・クチュール)のもとで5年間アシスタントとして仕事をする。その後2年間、ギ・ラローシュのアシスタントをし、1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世界的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクンョンは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判となり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。ヴァレンティ−ノの洋服に対する考えは、まず個性が第一で、彼のコレクションからは、デテールでなくそのエスプリをくみ取ってもらうことに重きをおく。ローマの高級住宅地、アッピア・アンティカに母親とたくさんの犬と暮らしている。仕事でパリとローマを行き来するが、世界中を旅行するなど忙しい日々である。物をつくる人は誰でも波があって、いつも傑作が続くとはかぎらないが、ヴァレンティーノは現在、ローマのオート・クチュール界で最も好調なデザイナーといえる。以前から東洋風なエキゾティシズムが好きで、時によってトルコ風、アラブ風の特色がみられるが、最近はキモノのセクシーさを1950年代のハリウッドの雰囲気に表現、あやしく美しいヴァレンティーノの世界をつくり出している。」との紹介記事が掲載されていること。
(4)「朝日新聞」(昭和57年11月20日夕刊第3頁)において、世界の服をリードする3人のうちの1人として「バレンチノ」の紹介記事が掲載されていること。
(5)「男の一流品大図鑑’85年版」(昭和59年12月1日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」の文字とともに、「スーツ、ブルゾン、シャツ、ネクタイ、ベルト及びバッグ」の商品が掲載されていること。
(6)雑誌「non・no」1989年 No23号(平成元年12月5日株式会社集英社発行)及び「marie claire」(1996年2月1日中央公論社発行)において、「ヴァレンティノ ガラバーニ」が単に「ヴァレンティノ」と略称され、商品「婦人服」等と共に掲載されていること。
(7)「英和商品名辞典」(1990年株式会社研究社発行)[Valentino Garavani]の項において、「イタリア RomaのデザイナーValentino Garavani(1932− )のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー・婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など。Roma,Firenze,Milanoなどにあるその店の名称はValentino(vは小文字でかくこともある)。・・・ 」との記事及びデザイナーとしての紹介記事が掲載されていること。
(8)「世界の一流品大図鑑’93年版」(平成5年5月20日株式会社講談社発行)において、「VALENTINO」ブランドの香水が掲載されていること。
(9)「岩波=ケンブリッジ世界人名辞典」(1997年11月21日株式会社岩波書店発行)の[ガラヴァーニ]の項において「ヴァレンティノ Garavani,Valentino 通称ヴァレンティノ Valentino(伊 1933− )服飾デザイナー・・・・」との紹介記事が掲載されていること。
同じく、[ヴァレンティノ Valentino]の項において、「ガラヴァーニ,ヴァレンティノ」を見よとの表示があること。
5 請求人の意見
請求人は、当審における証拠調べ通知に対し、「VALENTINO」(甲第5号証)及び「VALENTINO GARAVANI」(甲第59号証)の商標登録例をあげ、要旨以下のとおり、意見を述べている。
本願商標出願当時は、ヴァレンティノ・ガラバーニ氏ないしその関連企業は、我が国において婦人・紳士物の衣料品等に、商標「VALENTINO GARAVANI」は使用していたが、商標「VALENTINO」を使用していないので、本願商標出願時、ヴァレンティノ・ガラバーニ氏ないしその関連企業の婦人服・紳士服等の商品が「VALENTINO」の商標をもって我が国の取引者、需要者の間に広く知られていたということはあり得ない。
また、我が国において、商標「VALENTINO」は、日本企業によって昭和43年6月に旧第17類「被服」等を指定商品として登録出願、同45年4月に登録され(登録第852071号)、その後、平成8年5月8日にフェンノートシャップ社へ譲渡されるまで、日本企業により使用されていたのであり、当時、商標「VALENTINO」と商標「Valentino Garavani」とは、別異の商標とされていた。
したがって、本願商標出願当時、請求人(出願人)が本願商標を使用しても、ヴァレンティノ・ガラバーニ氏ないしその関連企業の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれもないものである。
6 当審の判断
(1)「VALENTINO」標章の著名性について
前記証拠調べのとおり、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)は、1967年にモードのオスカー賞を受賞し、以来、同人のデザインに係る紳士服、婦人服等の商品を製造、販売して、その商品に「VALENTINO GARAVANI」、「VALENTINO」の文字よりなる標章(以下、これらを「VALENTINO標章」という。)を使用しているものである。
そして、本願商標の出願時である平成8年5月8日には、VALENTINO標章は、「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標として、またデザイナーのヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)も「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と呼ばれて、紳士服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができ、さらに、該「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の著名性は現在においても継続しているものと認められるものである。
なお、請求人は、他人の登録商標「VALENTINO」が存在し、これがフェンノートシャップ社へ譲渡されるまでは、日本企業の商標として存在していたのであるから、本願商標の出願前に、「Valentino」がヴァレンティノ・ガラバーニ或いは同氏の関連企業の著名な商標として認識されていなかった旨主張している。
しかしながら、たとえ、他人の登録商標「VALENTINO」が存在していたとしても、当該商標の使用の実態・規模等も明らかでないばかりでなく、商標「Valentino Garavani」が使用され、本願商標の出願前にその略称である「Valentino」が著名となっていたこと前記のとおりであるから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(2)出所混同のおそれについて
本願商標は、前記のとおり、「ヴァレンティノ ジーリ」及び「Valentino Gigli」文字を書してなるところ、これより外国人の氏名であるかの如くに理解される場合のあることを必ずしも否定するものでない。しかし、請求人(出願人)提出に係る証拠を徴しても、これが我が国の需要者間に特定の外国人氏名であり、かつ、よく知られているとの事情は認め得ないところである。
また、「ヴァレンティノ」、「Valentino」と「ジーリ」、「Gigli」の文字の間に半字程度の間隔があるため、両文字は視覚上分離して把握され、かつ、全体で特定の意味合いを有する語とも言えないものであるからこれらを常に一体不可分のものとして看取しなければならない理由もない。
してみれば、本願商標は、「ヴァレンティノ」、「Valentino」と「ジーリ」、「Gigli」の文字とを結合してなるものと容易に理解し把握されるとみるのが相当である。
そして、前記(1)のとおり、本願商標の登録出願時には、既に、VALENTINO標章が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標と、また、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」とも呼ばれて、紳士服、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として著名であったことを認めることができる。
そうすると、VALENTINO標章が付される商品「紳士服、婦人服」等と本願商標の指定商品「被服」は、同一または類似の商品であるから、本願商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「ヴァレンティノ」、「Valentino」の文字部分のみを捉え、著名なVALENTINO標章を連想、想起し、それが「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
また、この混同を生ずるおそれは、本願商標の登録出願時はもとより、現在においても継続しているものと認められる。
なお、請求人は、本願商標と同一の商標を第18類、第24類、第25類(但し、「被服」を除く)及び第27類の各類にも登録出願し、何れも登録されているから、本件においてもこれらが十分尊重されるべきである旨主張している。
しかしながら、出願商標の使用が他人(Valentino Garavani)の業務に係る商品と出所の混同を生ずるおそれがあるか否かの判断については、その指定商品との関係において、個別具体的に判断されるべきである。
したがって、商品を異にする第27類において、本願商標と同一の態様の商標が登録されているからといって、本願商標についても同様の判断がなされるとは限らず、よって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
また、上記のうち、第18類、第24類及び第25類(但し、「被服」を除く)に属する商品を指定商品とする3件の商標登録については、現在、異議申立がなされ審理中であり、未だ登録維持の決定がなされていないものでから、本件の参考とはならないというべきである。
さらに、「Valentino」、「VALENTINO」の文字をその構成中に有する登録商標に関して、前記の認定、判断と同様の審決又は異議決定をした案件に対する東京高等裁判所等における行政訴訟事件において、次のとおり判決されているところである。
(a)平成14年(行ケ)第201号事件(審判番号07-07234 商標登録第2699605号 商標「GIANNI VALENTINO」 指定商品第19類「台所用品、日用品」)は、平成15年9月30日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(b)平成14年(行ケ)第354号事件(審判番号09-20430 商標登録第2614322号 商標「GIANNI VALENTINO」 指定商品第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」)は、平成15年9月30日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(c)平成14年(行ケ)第405号事件(審判番号11-35033 商標登録第2629700号 商標「valentino /orlandi」 指定商品第17類「被服、布製身回品、寝具類」)は、平成15年6月19日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(d)平成14年(行ケ)第421号事件(審判番号10-35465 商標登録第2582891号 商標「valentino /orlandi」 指定商品第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」)は、平成15年6月19日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(e)平成16年(行ケ)第335号事件(異議番号2003-90376 商標登録第4658091号 商標「『SとV』のモノグラム図形/SILVIO VALENTINO」 指定商品第3類「せっけん類,薫料,つけづめ,つけまつ毛,歯磨き,靴クリーム,靴墨」)において、平成17年2月24日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。
(f)平成15年(行ヒ)353号事件(平成14年(行ケ)第370号請求棄却に対する上告事件) 審判番号08-20103 商標登録第2357409号 商標「RUDOLPH VALENTINO」 指定商品第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く) 」)は、平成17年7月11日に上告を棄却する旨の判決が言い渡された。
(g)平成15年(行ツ)334号事件(平成14年(行ケ)402号請求棄却に対する上告事件) 審判番号09-02833 商標登録第2715313号 商標「Rudolph Valentino/『V』図形」 指定商品第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く) 」)は、平成17年7月11日に上告を棄却する旨の決定がされた。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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