sokuhyo

Trademark Appeal Case

著名商標と称呼の多義性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成10年異議第92214号
審判種別異議
結論other

結論テキスト

登録第4175260号商標の登録を取消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4175260号商標(以下「本件商標」という。)は、平成4年7月13日登録出願され、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第39類「貨物自動車による輸送,寄託を受けた物品の倉庫における保管,貨物の輸送の媒介」を指定役務として、平成10年8月7日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

本件商標は、大正14年1月19日に登録出願され、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、大正14年12月2日に設定登録された登録第175840号商標(以下「引用A商標」という。)、昭和59年3月12日に登録出願され、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第23類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和62年11月20日に設定登録された登録第1997405号商標(引用B商標)、昭和13年3月19日に登録出願され、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和13年12月7日に設定登録された登録第309572号商標(引用C商標)、昭和57年7月2日に登録出願され、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和61年1月24日に設定登録された登録第1836401号商標(引用D商標)及び昭和59年3月8日に登録出願され、別紙に表示したとおりの構成よりなり、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和61年9月29日に設定登録された登録第1895381号商標(引用E商標)と類似する商標であり、かつ、引用A商標ないし引用E商標は、登録異議申立人(以下「申立人」という。)の取り扱いに係る商品・役務「時計、眼鏡、宝飾品、不動産業」等を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されている著名な商標であるから、本件商標をその指定役務に使用するときは、申立人又は申立人と何らかの関係にある者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。

したがって、本件商標の登録は取り消されるべきである。

3 本件商標に対する取消しの理由

本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標を商標法第4条第1項第第15号に該当するものとして商標権者に対して通知した取消しの理由は、つぎのとおりである。

〈取消理由〉

本件商標は、申立人である「セイコー株式会社」が商品「時計」の商標として永年使用し、本件商標出願前より、我が国においても取引者、需要者間において広く知られているものと認め得る「SEIKO」の文字よりなるものである。

してみれば、本件商標をその指定役務について使用するときは、該役務が恰も申立人若しくは申立人と何らかの関係を有する者の役務であるかの如く、需要者がその出所について混同を生ずるおそれがあるものとみるのが相当である。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見

(1) 本件商標は、色彩を施した欧文字「SEIKO」と図形との組み合わせよりなるものであって、その構成中の文字部分はやや図案化されているものであるから、たとえ該文字部分が「SEIKO」を表したものと理解されるとしても、引用A商標とは、その構成において外観上顕著な差異を有するものである。

一方、「SEIKO」もしくは「セイコー」の文字よりなる商標は、申立人の取扱いに係る商品「時計」等を表示するためのものとして、本件商標の登録出願前より、需要者間に広く認識されていたものである。

しかしながら、「SEIKO」、「セイコー」または「セイコウ」の文字はストロングマークではなく、通常・日常生活または取引社会において、頻繁に使用されているものである。

例えば、1991年11月15日株式会社岩波書店第4版第1刷発行の「広辞苑」には、「せいこう」の項として、「正孔」、「正行」、「正鵠」、「生光」、「生硬」、「成功」、「成稿」、「西郊」、「西康」、「征行」、「性交」、「性向」、「性行」、「政綱」、「星行」、「清光」、「清香」、「清康」、「盛行」、「晴好」、「聖皇」、「精工」、「精巧」、「精甲」、「精光」、「精好」、「精鉱」、「製鋼」等が掲載されており、その全部が一般に使用されていないとしても、比較的一般に用いられている機種のワードプロセッサーを用いて「せいこう」を漢字に変換してみると、「成功」、「性交」、「精巧」、「性向」、「性行」、「精鋼」、「西郊」、「晴好」、「晴耕」、「西高」、「正攻」、「精工」、「精鉱」及び「製鋼」等20近くの語が、直ちに出てくるものである。

そして、平成11年3月、日本電信電話株式会社電話帳事業推進部発行の「ハローページ東京都23区企業名全区版・上巻」には、「セイコウ」若しくは「セイコー」の文字を自他名称又は自他商号を識別するための主たる部分とするセイコー株式会社と無関係のものが、3頁にわたって極めて多数掲載されている。「ハローページ」が希望者の電話番号のみを掲載する性格に鑑みると、これより多くのものが存在することは、容易に考えうるところであり、全国規模においては、さらに相当多数のものが実在することは、想像に難くないところである。

さらに、例えば「セイコ」、「せいこ」を漢字にした文字は、「聖子」、「正子」、「誠子」、「勢以子」、「清子」、「青子」、「静子」、「成子」、「盛子」、「星子」、「制子」など、日本の女性の名前として盛んに使用されている。

このように「SEIKO」は多数のアイテムの名称や人名に使用されているから、ストロングマークではなく、これをサービスマークとして使用しても出所の混同を生ずるおそれはないというべきである。

その上、本件商標の指定役務である「貨物自動車による輸送,寄託を受けた物品の倉庫における保管,貨物の輸送の媒介」と、商品「時計」とは全く異質の業種に属するものである。本件の指定役務が、もし「時計の修理」であれば、商品「時計」との問は類似関係又は出所の混同の現象が生ずるかもしれないが、本件の指定役務と商品「時計」との間には販売部門・製造部門の点において、全く無関係であるから、出所の誤認混同を生ずるおそれはないというべきである。

(2) 商標権者の上記理由の正当性を立証すべく、本件商標と同じ商標でセイコー株式会社と出所の混同を争点とした、特許庁における平成6年審判第3433号(平成10年4月22日登録異議の決定)について、商標権者は、これを自己の主張理由に有利に援用する。

(3) 以上のとおり、本件商標は、これをその指定役務について使用した場合において、これに接する取引者、需要者が、該役務が申立人もしくはその関連会社によって提供された役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものではなく、商標法第43条の3第2項の規定に基づいて取消されるべきものではない。

5 当審の判断

申立人の提出に係る証拠によれば、申立人である「セイコー株式会社」は、1881年(明治14年)の創業に係り、1892年(明治25年)に時計製造工場として、「精工舎」を設立し、以来、時計類の研究・開発に努め、柱時計の製造・販売を開始し、その後、1895年に懐中時計の製造、初めての時計の輸出を行い、それ以降、目覚まし時計、置時計、オルゴール時計を製造し、1913年(大正2年)に国産初の腕時計の製造を始めたことが認められる。

そして、申立人は1917年に会社組織に改め、「株式会社服部時計店」とした後、1924年に製造・販売に係る時計類の名称に「SEIKO」「セイコー」の文字の使用を開始し、翌1925年(大正14年)1月には、引用A商標を登録出願し、同商標は同年12月に設定登録されていることが認められる。さらに、引用A商標には、現在、本件商標の指定役務である第39類を含む49件の防護標章登録がなされており、「SEIKO」及び「セイコー」の商標は、永年にわたりテレビ、新聞、雑誌等を介して広告、宣伝されてきたことにより、取引者・需要者間に広く知られ、著名になっているものと認められるものである。

また、申立人は1949年(昭和24)年に、東京証券取引所に上場し、「時計」をはじめとする自己の事業に関連する分野に進出して、多角経営やライセンス事業を行い、「時計」などの商品については、国内を始め世界100カ国以上に及ぶ販売網をもち、又、そのグループ会社で製造された、「眼鏡、電気シェーバー、宝飾品、ゴルフクラブ、情報関連機器(コンピューター、プリンター、テレビジョン受像器等)、スポーツ・レジャー用品、音響機器」などの商品の販売及び不動産業などの役務に関連する事業を行っているものである。

しかして、本件商標は別紙のとおり「SEIKO」の文字と認められる文字部分の上半分が薄い青色の長方形上に白抜きに表されており、該文字の下半分は長方形と同じ薄い青色により描かれてなるものであるところ、商標中の「SEIKO」の文字と認められる部分はその図形と一体となって特別の称呼を生ずるとか、また、意味を表すとかの事情は認められない。そして、前記認定のとおり申立人の使用する「SEIKO」の商標が著名なものであることよりすれば、本件商標の「SEIKO」の文字部分がその著名商標と同一の綴り字であることから、申立人の著名な商標「SEIKO」を連想、想起させるものと認められるものである。

ところで、商標権者は前記4の意見書において、参考資料を添付して、申立人の商標「SEIKO」から生ずると認められる「セイコー」または「セイコウ」の称呼と同音異義の熟語が「広辞苑」に多数存在すること、同じく「セイコウ」若しくは「セイコー」の文字を名称又は商号の主たる部分とする企業等が「ハローページ東京都23区企業名全区版・上巻」に多数掲載されていることなどを挙げ、「SEIKO」から想起される語は一般世人にとって馴染みのある言葉であり、特異な言葉として印象付けられるものではないなどと述べている。

しかしながら、本件商標は、前記したとおり「SEIKO」の欧文字と認められる文字を表してなるものであって、前記認定のとおりその欧文字は申立人の著名商標と同一の綴り字よりなるものであり、その事情を異にするものであるから、この点の商標権者の主張は採用することができない。

また商標権者は、本件商標の指定役務と申立人の業務に係る商品「時計」とは、全く異質の業種に属するものであるから、出所の混同は生じないと述べる。

しかしながら、前記認定のとおり、申立人は商品「時計」について1881年(明治14年)から100年以上にわたって製造販売を行っているものであることのほか、申立人もしくは申立人と関連する会社が、「眼鏡、電気シェーバー、コンピューター、プリンター」などの商品を取り扱い、不動産業などの役務に関連する事業も行っている企業の経営の多角化の点をも考慮すれば、単純に「時計」の事業の関連のみを述べ、役務の出所について混同を生ずるおそれはないとの主張は採用しがたい。

以上のとおりであるから、請求人が本件商標をその指定役務について使用するときは、取引者・需要者は、前記実情よりして、本件商標の「SEIKO」の文字部分に着目して、その役務が申立人又は申立人と何らかの関係のある者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。