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Trademark Appeal Case

祭事名商標の公序良俗性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2001−11794(T2001−11794/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

1 本願商標

本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」を指定商品として、平成12年4月7日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定は、「本願商標は、毎年7月に大分県日田市の隈八坂神社、若宮神社、八坂社の3社で開催される行事である『日田祇園』の文字を表してなるものであるから、これを『日田祇園』と直接関係のない出願人が自己の商標として採択、使用することは穏当でない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。なお、出願人は、意見書において登録例をあげて種々述べているが、これら登録例と本願とは事案が異なるので参考にはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 請求人(出願人)の主張(要旨)

請求人(出願人)は、本願商標が登録されるべき理由を要旨以下のように述べた。

(1)請求人(出願人)と日田祇園との直接関係について

拒絶理由は「『日田祇園』と直接関係のない出願人が自己の商標として採択、使用することは穏当でない」と指摘するが、「直接」の関係に関しては何ら明らかにはされていない。

「日田祇園」については、当該祭事又は神事を主催する日田祇園山鉾振興会をはじめとして、各町内が有する山鉾を以て参加するものであり、祭事又は神事を取り仕切る神社及び振興会等に関わる人はもちろんのこと、地域住民も山鉾を担いだり、その実行の準備をするなどして関わっているものである。

請求人(出願人)は、日田市豆田町において「京橘」の屋号で製菓業を営んでいるものであって(甲第1号証の1及び2)、豆田町も町内会として日田祇園に参加しており、同町内会で営業をする請求人(出願人)は山鉾の担ぎ手として参加し、また、山鉾の製作のため町内会での積立をするなど、日田祇園に直接関係を有していることは明らかである。

(2)公平性について

(ア)「直接関係のない出願人が自己の商標として採択、使用することは穏当でない」という拒絶理由は、過去の審査実務と齟齬するばかりか、公平性を欠くものである。

本願商標と同様の指定商品について、ある地域の代表的な祭事又は神事である行事の名称を商標として採択されたものであって、出願人(権利者)が当該祭事又は神事に直接関係があるか否かは明かではないにも係わらず、審査で登録されている例として、登録第449496号外19件(甲第2号証ないし甲第21号証)ある。このことからも上記拒絶理由の指摘は当を得たものではないと思量される。

(イ)何ら根拠が明らかでない「事案が異なる」との理由をもって本願を拒絶するというのは、過去の審査実務との公平性を著しく欠くものである。

過去の登録例と本願商標とにおいて、どのような点で「事案が異なる」のかについては、何ら根拠や理由が明らかにされておらず、拒絶査定の理由として不明瞭であると思量される。

さらに、登録商標「中津祇園」(甲第16号証)は、本願商標「日田祇園」と並び大分県の三大祇園祭の一つと称される祭事又は神事の名称であるが、この「中津祇園」が登録された平成8年頃の商標の公序良俗を判断する際の社会情勢と今回の社会情勢に、事案を異ならしめる程に著しい変遷があったか否かは拒絶の理由においても何ら明確にされておらず、また、そのような著しい変遷があったとも思われない。

したがって、何ら根拠が明らかでない「事案が異なる」との理由をもって本願を拒絶するというのは、過去の審査実務との公平性を著しく欠くものであるというべきである。

(3)公序良俗について

本願商標は、上記(2)(ア)の過去の登録例(甲第2号証ないし甲第21号証)からも、祭事又は神事の名称を採択、使用した商標について独占権を付与しても、これらの商標の存在にかかわらず、当該祭事又は神事である行事については開催が阻害されることなく現在も継続していることから、社会公共の利益に反するものでもなく、また、社会一般の道徳観念に反するものでもないことは明らかである。したがって、仮に直接の関係が、神社の直接の関係者というように極めて狭く解釈され、また事案が異なるとしても、本願商標は公序良俗に反するものではない。

4 当審の判断

(1)商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、商標の構成自体が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれると解するのが相当である。

(2)そこで判断するに、本願商標は、別掲のとおり、「日田祇園」の文字(語)を毛筆書体で縦書きしてなるところ、該語は、毎年7月に大分県日田市で開催されている有名な夏祭りの名称と認められるものである。

ところで、「日田祇園」といえば、(ア)疫病や風水害を払い、安泰を祈念する勇壮な夏の祭りとして、300年以上の歴史を持つ伝統ある祭礼行事であること、(イ)現在、その主催者は日田祇園山鉾振興会であること、(ウ)昭和59年3月に大分県無形民俗文化財の指定を受け、さらに、平成8年12月20日には本祭の曳山行事が国の重要無形民俗文化財の指定も受けていること、(エ)その歴史的伝統文化の保存と祭の振興を図るために建設された日田祇園山鉾会館も日田市の観光スポットの一つとなっていることは、日田市のホームページ(http://www.city.hita.oita.jp/maturi/maturi_7.html)や社団法人日田観光協会のホームページ(http://www.hita.ne.jp/~kanko/)等によっても容易に確認することができる。

そして、一般に、祭礼においては、土産物屋等の物産店が出店されること、特に、有名な祭礼においては、年間を通じて常時開店していること、また、それら各店を含む地域周辺の業者においては、それぞれの祭礼にちなんだ記念商品や限定商品等を販売する場合があることが通例である。例えば、本願の指定商品に含まれている「菓子」も、その代表例の一つといえる。このように、それぞれの祭礼にちなんだ各種商品が販売されるのは、それによって、祭礼の参加者や見物人等需要者の購買意欲も高まり、結果として、売り上げにも好影響をもたらすことが期待されるからである。

そうすると、当該「日田祇園」においても、祭が開催される時期や通年を通して、その地域周辺の業者においては、誰もが自己の商品に「日田祇園」の標章の使用を欲するものと思われるところ、請求人(出願人)の主張からも明らかなように、請求人(出願人)自身は、当該「日田祇園」の主催者でもなく、単に地元町内会を通じて祭に参加する一参加者にすぎないのであるから、そのような者に「日田祇園」の標章の独占的使用権限を取得させることは、その地域周辺の競合業者による「日田祇園」の標章の使用を不可能又は困難とするだけでなく、商標権を巡る争いなど無用の混乱をも招くおそれがあり適当でないというべきである。

(3)してみれば、本願商標は、毎年7月に大分県日田市で開催される有名な夏祭りである「日田祇園」名称による利益の独占を図る意図で登録出願されたものといわざるを得ず、公正な競合秩序を害するおそれがあるから、これは社会公共の利益に反し、また、社会の一般的道徳観念に反するものというのが相当である。

(4)請求人(出願人)は、本願商標は登録すべきものであるとして、上記3のとおり、その理由を種々述べているが、これら請求人(出願人)の主張については、次のとおりいずれも採用することはできない。

(ア)請求人(出願人)は、当該「日田祇園」の主催者でもなく、単に地元町内会を通じて祭に参加する一参加者にすぎないのであり、それ故、本願商標を自己の商標として採択、使用しても何ら問題等を生じるおそれがないとまではいうことができないものであることは、前示のとおりであるから、請求人(出願人)のこの点に関する主張は採用できない。

(イ)商標登録の適否は、当該商標の全体の構成に基づいて個々の商標ごとに個別的に検討、判断されるべきものであり、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かについての判断が、他の登録例に拘束されるべき理由はない。また、登録された商標が、事後に、登録異議の申立てによる取消決定あるいは審決によって無効とされることもあり得るのであるから、請求人(出願人)主張のような登録例があることをもって、本願商標の登録を拒絶することが公平性を欠くことになるということもできない。

したがって、請求人(出願人)のこの点の主張も採用できない。

(ウ)祭事又は神事の名称からなる登録商標があるということと、それにより、当該祭事又は神事の開催が阻害されるかどうかということとは別異のことである。そして、請求人(出願人)以外にもその使用を欲するものといえる本願商標を、その指定商品の範囲とはいえ、請求人(出願人)のみが使用することは、社会公共の利益に反し、また、社会の一般的道徳観念に反するものというのが相当であることも、前示のとおりであるから、請求人(出願人)のこの点の主張も採用できない。

(エ)請求人(出願人)主張の登録例に対して、原査定が単に「事案が異なる」としか理由を付さなかった点については、上記(イ)のとおり、請求人(出願人)主張のような登録例があることをもって、本願商標の登録を拒絶することが公平性を欠くことになるということもできないのであるから、この点に関する請求人(出願人)の主張も採用できない。

(5)以上とおり、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことができない。

よって、結論のとおり審決する。

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