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Trademark Appeal Case

地名と品質表示の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号不服2003−22360(T2003−22360/J1)
審判種別不服
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

第1 本願商標

本願商標は、「江戸甘口」の文字を標準文字で書してなり、第30類「調味料」を指定商品として、平成15年3月3日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要旨)

原査定は、「本願商標は、『江戸甘口』の文字を書してなるところ、指定商品中の『みそ』との関係においては、『東京およびその付近が主産地であり、米みそで甘みその一種』を『江戸みそ』と表示するものであり、『甘口』の語は『酒・味噌・醤油などの口あたりの甘いもの』の意を有する語であることからすれば、『口当たりの甘い、江戸みそ』を理解するものであり、単に商品の品質を表したにすぎないものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審における判断

1 本願商標は、前記のとおり、「江戸甘口」の文字よりなるところ、構成前半部の「江戸」の文字は、一般に「東京」の旧名称として直ちに理解されるものである。

そして、本願指定商品中に含まれる「みそ」等の古くからの伝統的な食品の分野においては、例えば、「越後みそ」「加賀みそ」「讃岐みそ」のように、その商品の産地を表す際に、産地として旧国名を用いている事例も少なくない。

2 本願商標の構成後半部の「甘口」の文字は、その指定商品との関係において、「酒・味噌・醤油などの口あたりの甘いもの」(「広辞苑」第五版 74頁)の意味で一般に用いられており、特に、「みそ」の分類方法においては、原料により、「米みそ」、「麦みそ」、「豆みそ」に分けられ、さらに、甘辛味によって、「米みそ」は、「甘みそ」、「甘口みそ」、「辛口みそ」のように、「麦みそ」は、「甘口みそ」、「辛口みそ」のように分類され、また、色調によっても細分化されている(「食品知識ミニブックスシリーズ 味噌・醤油入門」27〜28頁 (社)日本セルフ・サービス協会 日本食糧新聞社発行)。

3 ところで、「江戸みそ」又は「江戸甘みそ」については、食品辞典等で、以下のような記載が認められる。

(1)「江戸みそ−米みその一種。甘味に富んでいる。名前のとおり東京およびその付近が主産地である。・・・」(「食品大事典」112頁 株式会社真珠書院発行)との記述。

(2)「江戸みそ−江戸で伝統的につくられてきた赤色甘みそ。濃い赤味を呈し、塩分6%前後、糖分15%以上、特有の甘い香りがある。・・・みそ汁、加工みその素材として用いる。塩分が少ないので、みそ汁の場合は他の辛口みそと合わせて用いることが多い。」(「丸善 食品総合辞典」139頁 丸善株式会社発行)との記述。

(3)「江戸みそ−米みそで甘みその一種。名前のとおり東京およびその付近が主産地である。・・・古くは江戸のみその60%を占めていたといわれるが、第二次世界大戦中原料関係で醸造が禁じられたため、一時はほとんど忘れ去られてしまった。現在は大部分が加工用(鉄火みそなど)として用いられている。・・・」(「新・食品事典7 調味料」162頁 株式会社真珠書院発行)との記述。

(4)「江戸甘味噌−〔主産地〕東京である。米麹の使用量が多く塩分は少ない。短期間に熟成する〈甘味噌〉で、色沢は赤褐色である。・・・」(「総合食品事典第六版」107頁 同文書院発行)との記述。

(5)「江戸甘みそ−江戸でつくられていた独特の色調と香りを有する赤色甘みそである。・・・戦時中、みそが統制品として製造規格が設けられたときはずされ、製造を中止したために、消費者から忘れられた。戦後、復活したが戦前のような普及はみていない。伝統的な江戸甘みそは色調があまりにも濃く特色があるので、最近は色調を淡く、今日の嗜好に合わせたものも出回っている。用途は加工みそ用が多い。」(「食品知識ミニブックシリーズ 味噌・醤油入門」54頁 (社)日本セルフ・サービス協会 日本食糧新聞社発行)との記述。

(6)「甘みそは食塩濃度が5〜7%と低いので、保存期間も夏期1週間、冬期1ヵ月位である。関西の白みそ、東京の江戸甘みそが代表的銘柄である。」(「新編 日本食品事典」154頁 医歯薬出版株式会社発行)との記述。

4 さらに、前記3に関して、新聞記事、インターネット等で、次のような記載が認められる。

(1)「コンビニで地元の味、おにぎり、みそ汁・・・、人気の限定品拡充。」の見出しのもと、「大手コンビニエンスストアがおにぎり、みそ汁などで地域限定品を拡充している。・・・ローソンは今月発売したみそ汁『おにぎり屋のみそ汁』では、全国八地域で違う味の商品をそろえた。関西では塩分控えめの『西京みそ』を採用。関東は江戸甘みそと信州コメみそとの合わせみそを使った。・・・」(2003年11月29日付け日本経済新聞夕刊)との記述。

(2)「各地のみそ紹介 みそあっての日本。全国各地にお国自慢のみそがあります。」の項目のもと、「江戸甘みそ」(http://www.miso.or.jp/dictionary/local/local.html)の記述。

(3)「味噌について」の項目のもと、「Q 種類によって造り方やできるまでの期間は違いますか?」「A 基本的な造り方は麹の種類が同じであれば共通ですが、醸造法や期間によってでき上がりが変わるため、銘柄によって微妙に製法や製造の期間が異なります。以下が主な味噌の銘柄ごとの違いです。・・・江戸甘みそ(米みそ・赤色甘口) 米は普通の味噌と同じように麹とします。大豆は蒸し、蒸気吹き抜け後7・8時間焚き、蒸し終わってから保温して翌日まで放置します。この間に蒸し大豆は十分に軟らかくなるとともに、著しく光沢を有し、褐色に変わって特有の色と芳香を得るうえ貯蔵性が増します。仕込は白みそとほぼ同じですが、熟成期間は夏期で10日くらい冬季は1カ月くらいです。白みそと同じで、酵母や乳酸菌の発酵は見られません。」(http://www.anew.co.jp/voices/qa_05_001.html)との記述。

(4)「江戸甘味噌」の項目のもと、「江戸甘味噌は大豆の香りとこうじの甘みが調和し、とろみと光沢のある独特な風味のあるお味噌です。こうじをふんだんに使用しているため、味噌汁にはちょっと甘いので辛口味噌との調合をおすすめします。一般に料理用として用いられ田楽、どじょう汁、鯉こく、土手鍋等によく合います。夏場は10日ほど、冬場は1ヶ月ほどの熟成期間で製造されます。」(http://www.rakuten.co.jp/ikimiso/820358/820361/485207/)との記述。

(5)「江戸甘口味噌入りです」の項目のもと、「伝統銘菓そばぼうろに江戸甘口味噌を練りこみ、香ばしく焼きあげました。味噌が入ることによりいっそう美味しくなっております。他では味わえないこの味をお試し下さい。」(http://store.yahoo.co.jp/sanomiso/b9beb8cdcc.html)との記述。

5 以上よりすれば、(1)本願指定商品中に含まれる「みそ」については、みその産地を表す際に、旧名称を使用することが少なくないこと。(2)みその分類方法のひとつに味による分類方法があり、「米みそ」「麦みそ」の中に「甘口」といわれるものがあること。(3)実際に、「江戸みそ」、「江戸甘みそ」又は「江戸甘口味噌」と称される赤色甘みそが東京及びその付近を主産地として製造され、戦時中は製造中止となっていたが、戦後は戦前に比べて製造量は減ったものの、主に加工用として製造されており、また、最近の嗜好に合わせたものも出ていることが認められる。

6 自他商品・役務の識別標識としての機能を果たし得るものか否かについては、その商標が、査定時若しくは審決時において、我が国において、本願商標が、取引者、需要者においてどのような意味を有するものとして認識され、用いられていたかによって判断されるべきであるところ、戦前に比べ、生産量は減ったものの、実際に「江戸みそ」又は「江戸甘みそ」が製造されていることは前記3及び4から明らかなものであり、また、前記1及び2に示したように「みそ」の産地に旧名称が使われる事例があること及び「みそ」の味による分類方法として「甘口みそ」という分類が存在していることからすれば、仮に、「江戸甘口みそ」と称される「みそ」が現実に製造されていなかったとしても、請求人(出願人)が、本願商標をその指定商品中の「みそ」に使用したときは、これに接する一般の取引者、需要者は、「東京(江戸)付近でつくられた、口当たりの甘いみそ。口当たりの甘い、江戸みそ。」の意味合いを容易に認識するものというのが相当である。

7 また、請求人(出願人)は、「(1)「江戸」の文字は、「みそ」を含む「調味料」について、直接的に産地、品質等を表示するものではないから、これに「甘口」の文字を結合させた本願商標も需要者、取引者が具体的な意味内容を把握できない造語商標である。(2)「江戸みそ」又は「江戸甘みそ」は、戦時中、製造中止となり、一時はほとんど忘れ去られたとの文献の記載があることから、現在において、需要者が、「江戸みそ」又は「江戸甘みそ」の語から「米みそで甘みその一種。名前のとおり東京およびその付近が主産地である。」との意味合いを想起させることはなく、本願商標からも「口当たりの甘い、江戸みそ」との意味合いを想起しない。(3)地域特産品認証事業制度に関する研究等は、請求人(出願人)及びその組合員が行ったものであり、これらに関する文献をもってしては、「江戸(甘口)みそ」の語が普通名称化したことを証する証拠とはなり得ない。」旨主張している。

しかし、前記6のとおりに判断すべきものであり、また、商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである〔平成12年9月4日判決 東京高裁平成12年(行ケ)76号〕から、これらの点についての請求人(出願人)の主張は、採用できない。

8 そうすると、「江戸甘口」の文字よりなる本願商標を、その指定商品中「みそ」について使用しても、これに接する取引者、需要者は、「東京(江戸)付近でつくられた、口当たりの甘いみそ。口当たりの甘い、江戸みそ。」の意味合いを容易に認識、理解するというのが相当であるから、単に商品の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものであり、また、これを本願指定商品中、上記「東京(江戸)付近でつくられた、口当たりの甘いみそ」又は「口当たりの甘い、江戸みそ」以外のみそに使用したときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。

9 まとめ

したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことができない。

なお、請求人(出願人)は、自己の所有に係る登録商標を挙げ、本願商標も直ちに商品の品質等を表示するものではない旨主張しているが、これらと本願商標とはその構成文字を異にするものであり、また、そこから生じる観念も当然相違するものであるから、請求人(出願人)のこの点の主張も採用することはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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