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Trademark Appeal Case

周知商標の無効審判

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2004−89095(T2004−89095/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4796138号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4796138号商標(以下「本件商標」という。)は、「AACS」の欧文字を標準文字で表してなり、平成16年2月6日に登録出願、第9類「理化学機械器具,測定機械器具」を指定商品として、同年8月20日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第51号証を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第7号及び同第19号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とされるべきものである。以下、その理由を述べる。

(1)商標法第4条第1項第10号について

(ア)請求人は、1975年に設立された株式会社であり、1988年にはドイツ法人Bran+Luebbe GmbH(以下「Bran社」という。)の機器を販売する日本国内販売会社として活動を開始し、ラボ用自動化学分析装置、オンライン用自動化学分析装置、近赤外分析計及びプロセス機器の販売・アフターサービスを日本において展開してきた。

殊に、請求人が販売する「自動化学分析装置」は、世界有数の技術力に裏打ちされた信頼性の高い製品として、当業界おいて高い評価を受けている。

(イ)甲第1号証は1996年5月22日に環境新聞に掲載された記事であり、ここでは、水中の窒素とリンを一度に分解分析する装置「AACS−II 自動化学分析装置」として紹介されている。

そして、請求人が現在取り扱っている商品は「AACS−III」であり、この名称の自動化学分析装置の販売が開始されたのは、1999年12月である。この「AACS一III」自動化学分析装置は、1995年3月から2000年10月頃までの期間に販売されていた「AACS−II」自動化学分析装置の改良製品であり、更にその原型となった「AACS」自動化学分析装置の販売開始は、遅くとも1993年5月項までに遡ることができる。

このように、製品改良が重ねられても、「AACS」の名称が用いられ続けてきたことから、その名称であり商標でもある「AACS」の自動化学分析装置は、当業界において請求人の業務に係る自動化学分析装置を表示する周知な商標として、高度の業務上の信用が蓄積されているものである。

因みに、「AACS」の商標は、Bran社も使用していない日本独自の商標であり、請求人はその正当な所有者・使用者であって、請求人独自の製品である「AACS」自動化学分析装置につき、長年に亘って宣伝販売活動を行ってきたものである。

(ウ)甲第4号証ないし甲第11号証は、1996年から2003年にかけて発行された「資源環境対策」、「環境と測定技術」、「下水道」、「全国公害研究誌」、「全国環境研会誌」、「計測技術」等の業界雑誌に掲載された「AACS−II」自動化学分析装置に係る広告である。

(エ)請求人は、上記雑誌広告の掲載のみならず、各種の展示会にも出展し、「AACS」自動化学分析装置が如何に優れた商品であるかを顧客やユーザーにアピールしてきた。

甲第12号証は、1988年から請求人が参加してきた展示会の一覧表である。この一覧表から明らかな通り、多くの各種の展示会に参加し出展してきたものである。これら各展示会には、いずれも請求人の「AACS」又は「AACS−II」自動化学分析装置が出品され、見学者に紹介された。

甲第13号証ないし甲第40号証は、1994年から2002年にかけて全国各地で開催された、「インターフェックスジャパン94」、「分析機器展」、「九州科学機器展」、「環境セミナー」、「水質・水処理施設展」、「日本土壌肥料学会」、「日環協・環境セミナー」、「下水道展」、「分析展」、「オートアナライザー研究会の講演」等々への出品、報告などがなされているものである。

このように、研究所、研究施設などにおいて、請求人の「AACS−II」自動化学分析装置は研究や分析に使用されている。

なお、甲第41号証として提出するリストは、請求人の主要顧客のリストである。そして、長年に亘る宣伝広告や展示会の出品活動とも相俟って「AACS」商標は、請求人が販売する自動化学分析装置を表示する商標として、需要者の間では周知著名なものとなっていたことは明らかである。

(オ)他方、本件商標は、「AACS」の欧文字よりなり、第9類「理化学機械器具,測定機械器具」を指定商品とするものであるから、請求人の周知著名な「AACS」商標と同一のものであることは明らかである。

また、請求人が「AACS」商標を使用している自動化学分析装置は、「測定機械器具」の範疇に属すると考えられる商品ではあるが、実験用の理化学機械器具としても使用されるものであるから、本件商標は、同ー又は類似の商品に使用するものである。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第7号について

次に、本件商標は、公正な取引慣習に反する目的で登録され、当業界における取引秩序を乱す商標である。以下、その理由を詳述する。

(ア)本件商標の商標権者であるビーエルテック株式会社は、2002年7月に、請求人会社の人員削減の方針を受けて、請求人会社の従業員5名を発起人として、解雇された請求人会社の従業員を雇い入れる受け皿会社となることを目的として設立された。

そして、商標権者は、請求人が販売していた各種の自動化学分析装置につき、請求人より販売委託を受け、委託を受けた商品の販売を主たる業務として事業を展開してきた。

(イ)しかしながら、2003年8月項から、商標権者は、請求人の「AACS−III」自動化学分析装置におけるコンソール(機器の外枠部分)を変更して、これを自らが開発した製品であるとして、「AACS4」の名称の下で、その製造・販売を開始した(甲第42号証)。

(ウ)その後の2003年10月6日及び7日に本件商標権者の取締役である川本氏が「AACS4はビーエルテックの製品である。」と発言するに至って、商標権者が請求人の下請的業態から脱して、自らが請求人商品と競合する商品を製造・販売することによって、請求人の事業との競合を図っていたことが明確となった。

(エ)こうした中、請求人と商標権者間の販売委託契約は解消されたが、商標権者は、請求人が長年に亘って使用されてきた「AACS」商標が登録されていないことを奇貨として、本件商標の出願に至ったものである。

これは、請求人による「AACS−III」自動化学分析装置の販売事業を妨害し自らの事業を有利に展開することを目的とするものに他ならない。

現に、商標権者は、請求人に対して、請求人による「AACS」商標の使用が、本件商標に係る商標権を侵害する旨の警告を請求人に送付している(甲第46号証)。

こうした商標権者の行為は、公正な取引慣習に著しく反する行為であって、当業界における取引秩序を著しく乱すものである。そして、本件商標は、そうした公正な取引慣習に著しく反する商標権者による背信的行為の一環として商標登録されたものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第19号について

本件商標は、請求人によって「AACS」商標が登録されていなかったことを奇貨とし、請求人の「AACS」自動化学分析装置に係る事業を妨害することによって商標権者の事業を有利に展開するという不正の目的で登録されたものである。また、商標権者は、本件商標が請求人の業務に係る自動化学分析装置を表示するものとして当業者間において広く認識されていた商標と同一の商標であることを十分に熟知していたものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

2 答弁に対する弁駁

(1)商標法第4条第1項第10号について

(ア)被請求人は、甲第4号証ないし甲第11号証において、「T−N・T−P Auto Analyzer」にマルRの表示があることをもって、請求人が商標として使用してきた文字は「AACS」ではないと主張する。

しかし、かかる主張は理論的でなく根拠にかけるものである。請求人のカタログ(甲第2号証及び甲第3号証)では、「AACS」の文字に「アークス」の読みが付されており、「AACS」の表示態様などよりも、請求人が「AACS」の文字を商標として使用してきたことは明らかである。

マルRが付されているのは、単に米国での表示方法に合わせたことに起因し、商品を日本で販売するに際しては、米国における表示方法をそのまま流用したにすぎない。

(イ)被請求人は、請求人が「AACS−II」又は「ACCS−III」を商標登録出願していなかったことを以て、請求人が「AACS」を商標として認識していなかった、と主張する。

しかしながら、そもそも商標登録出願するか否かは請求人の自由であり、商標出願しなければ商標として使用できないと言うものではない。

(ウ)被請求人は、「AACS−II」及び「AACS−III」の文字は、分析コンソールの型番ないし製造番号である、と述べているが、被請求人の主張は何れも根拠がないものであり、「AACS」の文字が型番・製造番号とする根拠を全く述べていない。

(エ)被請求人は、請求人の販売する自動化学分析装置は、様々な名称で表現されており、名称が統一されていない、と述べる。

しかしながら、「TN−TP」は、「総窒素、総リン」を意味する業界用語であり(乙第49号証)、また被請求人が指摘する「分析計」、「全自動分析装置」等の語は、いずれも如何なる商品であるかを示す記述的用語である。よって、統一して使用されていないという被請求人の主張は失当であり、請求人商標「AACS」の周知著名性を否定する根拠とはなり得ない。

(オ)以上、甲第2号証及び甲第3号証に示す「AACS」商標の使用態様、甲第4号証ないし甲第11号証に示す雑誌などにおける宣伝広告の程度、甲第12号証ないし甲第32号証に示す展示会などへの出展の程度、甲第33号証ないし甲第40号証に示す当業界における講演要旨集において請求人の「AACS」商品が言及されている事実、甲第41号証に示す請求人の顧客リストなどを総合勘案すれば、「AACS」商標が請求人の商品を表示する商標として、当業界において広く認識されていたことは明白である。

(2)商標法第4条第1項第7号について

(ア)被請求人は、「AACS−III」は親会社であるBran社を利用して作られた装置であったが、現在に至っては製造されていない、と述べる。

しかしながら、請求人が「AACS−III」を現在も製造販売しているか否かの事実と、本件商標が公正な取引慣習に反して登録されたものであることとは、全く無関係な議論である。

(イ)被請求人は、「AACS4」は被請求人が自己資金を投じて外観も内部部品も新規開発して製造された自動分析装置である、と述べる。

しかしながら、もともと「AACS4」は、被請求人会社の取締役である川本和信氏及び埜村朋之氏が、請求人会社の技術部長、取締役技術統括部長でもあった立場を利用して、本件請求人の下請け工場に加工・組立を依頼したものである。そして、川本、埜村両氏と西村氏の共謀によって、請求人が登録していないことを奇貨として商標登録を画策したものであり、更に、被請求人による商標登録出願は、請求人会社との業務提携契約の解消前に行っており、商道徳上も看過されるべきものではない。

(ウ)「AACS」は、請求人による長年の営業努力の結果として当業界において周知著名となっている請求人の商標であり、たまたまこれが商標登録されていなかったことを奇貨として、被請求人が、商標登録出願に及んだものである。したがって、我が国における公正な商取引の慣習に反するものであることは明白である。

(3)商標法第4条第1項第19号について

「AACS」は、請求人の商品を表示する商標として、我が国の当業界において周知著名なものであり、被請求人は、請求人の「AACS」自動化学分析装置にかかる事業を妨害することによって、被請求人の事業を有利に展開するという不正の目的で登録されたものである。

(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第7号及び同第19号に該当するから、商標法第46条第1項第1号の規定によりその登録は無効とされるべきものである。

第3 被請求人の主張

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。

1 商標法第4条第1項第10号について

(1)請求人は、同社が販売する自動化学分析装置について、「AACS」なる商標を使用した結果、需要者・取引者の間では周知著名なものとなっている旨主張する。

確かに請求人は、甲第2号証及び甲第3号証に示すように、「AACS−II」及び「AACS−III」なる名称を有する水自動分析装置のカタログを作成している。また、甲第10号証及び甲第11号証には、「オートアナライザーAACS」なる記載がある。

しかしながら、請求人が販売する自動化学分析装置は、「T−N・T−P Auto Analyzer」若しくは「T−N・T−P全自動分析装置」なる商品名であることは明らかである。

これは、請求人が提出した証拠の大半を占める自動化学分析装置の広告において、「T−N・T−P Auto Analyzer」の文字と、登録商標であることを表示する、マルR表示が付されていることからも明らかである(甲第4号証ないし甲第11号証)。

ところが、請求人は、第9類「液体の成分分析機」を指定として「AUTOANALYZER」なる文字を商標登録出願(商願2000−42647)したが、該登録出願は既に拒絶査定が確定している(乙第1号証)。

それにもかかわらず、「T−N・T−P Auto Analyzer」の文字にマルR表示を付するということは、虚偽表示の是非はともかく、少なくとも請求人において、請求人の販売する自動化学分析装置が、「T−N・T−P Auto Analvzer」という文字からなる商品名(商標)を表示するものとしての認識があり、この商標を自動化学分析装置の需要者、取引者の間に広めんとする意図があったということの証明であることは明確である。

請求人が「AACS−II」及び「AACS−III」を商標として認識していたのであれば、前記商標が拒絶された段階、或いは「AUTOANALYZER」商標を出願した段階で「AACS−II」及び「AACS−III」を商標登録出願をしていた筈である。

以上のことより、「AACS−II」や「AACS−III」の文字は、当該自動化学分析装置「T−・T−P Auto Analyzer」における分析コンソールの型番ないし製造番号であると判断されるべきものである。

(2)ところで、甲第12号証及び甲第14号証ないし甲第32号証には、請求人の販売する自動化学分析装置が各種展示会において出展され、見学者に紹介されている旨が示されている。

しかしながら、甲第12号証を詳細に判断しても「AACS」なる文字が商標である旨を判断させる根拠は全く見い出せない。つまり「AACS」なる文字は、むしろ、この表示方法から、需要者、取引者の間において、客観的には分析コンソールの型番ないし製造番号として認識されていたと判断されるべきものである。

また、甲第16号証、甲第18号証ないし甲第20号証、甲第22号証ないし甲第24号証の「システム及びモジュール貸出申請書」には、「AACS−II」などの文字が記載されているが、当該記載は、請求人の社員が記載したものと思われるものであり、これらによって、「AACS」が請求人の販売する自動化学分析装置を表示する商標として、その需要者・取引者の間において客観的に認識されていたとは言えないだけでなく、周知になっていると証明することもできない。

さらに、甲第25号証の「稟議書」、甲第26号証の「出品者ガイド」、甲第31号証の「貸出申請書」ほかには、「土壌用AACS」など「AACS」を含む文言が記載されているが、当該記載は、請求人の社員が記載したものと思われるものであり、前記と同様に「AACS」が請求人の販売する自動化学分析装置を表示する商標として、その需要者・取引者の間において客観的に認識されていたとは言えないものである。

(3)請求人の販売する自動化学分析装置は、「AACS TN−TP」、「TN−TP AACS」、「TNTP−AACS」、「土壌用AACS」、「T−N・T−P AutoAnalyzer」、「TN−TP分析計」、「TN−TPオートアナライザー」或いは「TN・T−P全自動分析装置」など、様々な名称で表現されており、請求人の社内においても請求人の販売する自動化学分析装置の名称が統一されていないことは明らかである。

してみれば、請求人においても統一して使用されていない名称のうち「AACS」の文字のみが、請求人が販売する自動化学分析装置を表示する商標として、その需要者、取引者の間において、認識されていたとは言えないだけでなく、まして、自動化学分析装置の需要者、取引者の間で周知となっている筈はない。

(4)請求人は、甲第33号証ないし甲第41号証を挙げて、このように、研究所、研究施設などにおいて、請求人の「AACS−II」自動化学分析装置は研究や分析に使用されているのである、と言及している。

しかしながら、これらの証拠としてあげる講演予稿集における「AAC S−II」の記載は、たとえ、請求人の販売する自動化学分析装置として需要者、取引者において周知となっているとしても、「全窒素・全りん専用自動分析システム」以上の周知性が、「AACS−II」に化体しているとは到底認められないのである。

また、研究者が論文や報告書を書く際に、対象機器を型番や製造番号で特定することは多々あることであり、従って、「AACS」の文字は、請求人が販売する自動化学分析装置を表示する商標として、自動化学分析装置の需要者、取引者の間で周知となっていると証明することはできない。

(5)結局、請求人が販売する自動化学分析装置は、「AACS TN−TP」「TNTP−AACS」「土壌用AACS」など様々な名称で表現されており、統一した名称を使用していないにも拘わらず、「AACS」のみが自動化学分析装置の需要者、取引者間で周知著名となっているとの主張は明らかに失当である。

したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではない。

2 商標法第4条第1項第7号について

請求人は、本件商標は、公正な取引慣習に反する目的で登録され、当業界でおける取引秩序を乱す商標である旨主張するが、審判請求書に書かれた内容は殆ど虚偽であり、到底認容できるものではないので、以下にその理由を述べる。

(1)請求人は、Bran社の子会社であり、請求人独自で商品を開発するには親会社であるBran社の許可が必要であった。そして、2003年に「TRAACS」が製造中止になったことを受けて販売できなくなり、現在に至っては製造されていない。

(2)自動分析装置は、被請求人の会社名である「ビーエルテック」のロゴを記した「AACS4」という自動分析装置として製造され、被請求人は請求人にその販売を認め、その結果、被請求人と請求人の両社がこれを販売していたものであるが、請求人による一方的な契約解除があったものである。

(3)現在、請求人のいうところの「AACS−III」は既に製造中止となっており、「AACS4」は2004年4月までダブルロゴでお互いに販売していたが、請求人による一方的な契約解除のため、4月以降は被請求人のみが「AACS4」を販売していた。なお、被請求人はその後「AACS5」を開発し、現在に至るまで継続して販売している。

(4)結局、被請求人が「AACS」を商標登録したのは、請求人の親会社たるBran社が「AACS」なる文字を自社製品の商標として認めておらず、また、「AACS−III」が製造中止により、もはや存在しないことに起因しているのである。

一方、被請求人は自ら「AACS4」及び「AACS5」を開発して市場に送り出しており、その経緯から見ても被請求人が商標「AACS」を商標登録したことに何ら問題は無い。

従って、本件商標は、公正な商取引の慣習に反するものでないことは明白であり、したがって、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。

3 商標法第4条第1項第19号について

上記のとおり、請求人の販売する自動化学分析装置は、「TN・TP Auto Analyzer」という商品名(商標)を有するものであり、「AACS−II」、「AACS−III」は、当該自動化学分析装置における分析コンソールの型番ないし製造番号であると判断されるべきものである。

また、請求人が販売する自動化学分析装置は、様々な名称で表現されており、統一された名称「AACS」なる文字を使用した結果、自動化学分析装置の需要者、取引者の間では周知著名なものとなっているとの主張は明らかに失当である。

さらに、本件商標が、不正の目的で登録されたものでないことは、上記2のとおりである。

4 請求人の弁駁書に対する答弁(反駁)書

(1)商標法第4条第1項第10号について

(ア)AACSなる文字は、現在においても当業界において請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者に広く認識されておらず、インターネットにも表示されていない。

(イ)請求人は、AACSの文字を商標として使用してきたというが、当該商品を表す商標として認識されていないことは明らかであり、規格や形式を表すにすぎない。

(ウ)請求人は、雑誌などにおける広告、展示会への出展、業界における講演会などに「AACS」商標を使用したことを総合すれば、当業界に広く認識されていたことは明白であると主張するが、乙第4号証ないし乙第10号証の注文書にも明らかなとおり、ブランベール社と密接な関係にある販売代理店にすら品名として認識されていなかったのである。

(エ)結局、「AACS」は、請求人の業務に係る商品として需要者の間に広く認識されている商標ではないばかりか、商標としても使用されていたとは到底認められない。

(2)商標法第4条第1項第7号について

弁駁書における請求人の主張は、事実を知らない新人であった請求人代表及びその関係者が作成した事実無根の作文でしかないと言わざるを得ない。

Bran社が製造する「TRAACS」は、米国会社が開発した自動化学分析装置であり、その製造中止を受け、「TRAACS」及びその日本語AACS型の代わりとして被請求人がデザイン、設計、部品等すべてを含む新製品を開発することとなったのである。なお、請求人は販売会社であり、独自に開発することは予算上許されなかった。

被請求人は、自ら「AACS4」及び「AACS5」を開発して市場に送り出しており、その経緯からみても被請求人が商標「AACS」を商標登録したことは何ら問題がない筈である。

したがって、我が国における公正な商取引の慣習に反するものでないことは明白である。

(3)商標法第4条第1項第19号について

「AACS」は、単なる規格、形式としか認識することができず、請求人の商品を表す商標として周知の域に達しているとは認めることができない。

さらに、本件商標が不正の目的で登録されたものでもないことは前記で述べたとおりである。

5 結論

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第7号及び同第19号に違反してなされたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきではない。

第4 当審の判断

1 商標法第4条第1項第10号について

請求人は、本件商標は請求人の業務に係る「自動化学分析装置」を表示する周知商標と同一であり、かつ、同一又は類似の商品に使用するものであるから商標法第4条第1項第10号に該当する旨主張し、他方、被請求人は、請求人使用の「AACS−II」等は、商標ではなく商品の型番、製造番号であり、かつ、需要者、取引者の間で周知なものとなっているとは認められない旨主張しているので、まず、この点について判断する。

(1)「AACS」商標の周知性

(ア)使用開始時期

請求人の主張によれば、請求人は、1975年に設立された株式会社であり、1988年頃より、ドイツ法人Bran社の機器を販売する販売会社として、自動化学分析装置(水質自動分析装置等の各種自動化学分析装置)を日本国内において販売していたものと推認される。

そして、業界誌である「資源環境対策」1996年1月15日発行、同3月15日発行ほか(甲第4号証)の広告において、商品「全リン・全窒素専用全自動分析システム」に「AACS−II」を付して使用している事実が認められること、及び1996年3月13日から15日まで九州産業大学で開催された「日本水環境学会年会講演集」ほかにも上記と同様の広告が掲載されていること等から、少なくとも1996年1月頃から上記分析装置について、「AACS−II」の使用を開始したことが窺われるものである。

(イ)使用期間

上記のとおり、「AACS−II」は1996年1月頃から使用が開始され、その後、業界誌関係では、公害対策技術同友会発行の「資源環境対策」’96年1月、’97年1月、’98年1月、’99年1月、2000年1月、2001年1月、2002年3月、2003年5月、11月ほかの各月号、社団法人日本下水道協会発行の「下水道」1998年2月、1999年5月、2000年2月、2001年1月、2002年1月、2003年2月及び5月ないし12月の各月号、日本分析化学会発行の「分析化学」1997年10月、1998年6月、2000年10月ほかの各月号、全国公害研究会誌事務局発行の「季刊 全国公害研究誌」2000年6月、2001年6月の各月号ほかにおいて、その商品「全リン・全窒素専用全自動分析システム」の広告に「AACS−II」を付して使用していることが認められる。

また、講演会・展覧会等においても、たとえば、1996年9月に幕張メッセで開催の「’96分析機器展」、1996年3月に九州産業大学で開催の「第30回 日本水環境学会年会講演集」、1998年3月に千葉工業大学で開催の「第32回 日本水環境学会年会講演集」、1999年10月に(社)日本環境測定分析協会・九州支部で主催の「平成11年度 技術研究発表会」、2000年3月に京都大学で開催の「第34回 日本水環境学会年会講演集」、2001年3月に岐阜大学で開催の「第35回 日本水環境学会年会講演集」、2002年3月に岡山大学で開催の「第36回 日本水環境学会年会講演集」、平成15年10月に箱根で開催された「第15回 日環協関東支部環境セミナー」などにおいて、商品「全リン・全窒素専用全自動分析システム」が出展または紹介され、当該商品に「AACS−II」を付して使用していることが認られる。

そうすると、少なくとも、1996年1月頃から2003年12月頃まで継続して、上記自動分析システムに「AACS−II」を使用していたものと言わなければならない。

(ウ)使用に係る商標及び商品

請求人は、前記(イ)で示したとおり、業界誌、講演会・展覧会等において、窒素とリンの分解・分析が連続的に行うことのできる「全リン・全窒素専用全自動分析システム(装置)」の広告を行っており、該広告によれば、上記自動分析装置の前面左上部に「AACS−II」の文字を付して使用していることを認めることができる。

そして、上記のとおり、当該分析装置の目につきやすい前面左上部に「AACS−II」の文字を付してなることから、これに接する取引者、需要者は、該文字部分も独立して自他商品の識別標識としての機能を果たす部分として理解、認識するものとみるのが相当である。

次に、請求人の使用に係る商品は、前記のとおり、主に「全リン・全窒素専用全自動分析装置」であるが、その他、環境水・飲料水の多項目自動分析システムである「水質自動分析装置」(甲第2号証及び甲第3号証)など、多項目の分析が可能な分析装置と認められる。

(エ)以上を総合勘案すれば、請求人は、1996年1月頃から商標「AACS−II」等を商品「全リン・全窒素専用全自動分析装置」等について、業界誌、講演会及び展覧会等の広告において、2003年12月頃まで継続して使用していることが認められ、かつ、毎年、相当の量の広告がなされていることが窺われるものである。

また、上記商品の需要者、取引者は、専門家・専門業者等が対象と認められるから、上記広告の期間、量、内容等をみれば、請求人の使用に係る「AACS−II」及び「AACS−III」は、既に本件商標の出願時(平成16年2月6日)には、需要者、取引者に広く認識されていたものとみるのが相当であり、その周知性は、登録査定時(同年8月20日)においても継続していたものというべきである。

(オ)他方、被請求人は、(A)甲第10号証及び甲第11号証に「オートアナライザーAACS」なる記載があること、(B)証拠の大半を占める自動化学分析装置の広告において、「T−N・T−P Auto Analyzer」の文字と登録商標であることを表示するマルR表示が付されていること、(C)請求人は、第9類「液体の成分分析機」を指定商品として「AUTOANALYZER」なる文字を商標登録出願し、既に拒絶査定が確定しているにもかかわらず、「AACS−II」及び「AACS−III」は商標登録出願をしていないこと等から、「AACS−II」等は、当該自動化学分析装置「T−・T−P Auto Analyzer」における分析コンソールの型番ないし製造番号であり、需要者、取引者の間においても、その型番ないし製造番号として認識されていたと判断されるべきであって、商標とは認められない旨主張している。

たしかに、欧文字の1字又は2字及びこれらと数字等をハイフンで結合した構成からなる文字は、分析機械をはじめ機械分野において、商品の型番、規格等を表す記号、符号として一般に使用されている事実は否定できない。

しかしながら、請求人の使用に係る文字は、ハイフンを介して欧文字4字とローマ数字とを結合した「AACS−II」等であるから、上記型番、規格等を表す文字とは異なる構成態様からなるものであって、これに接する取引者、需要者は、請求人の商品と他人の商品とを識別するための標識(商標)として理解、認識する場合も決して少なくないものというべきである。

そうとすれば、該表示が型番ないし製造番号としてのみ認識されていたとする被請求人の主張は当たらないといわなければならない。

また、前記雑誌の広告等に「T−N・T−P Auto Analyzer」の文字が掲載され、かつ、登録商標であることを表す「マルR」の文字があるとしても、該表示があることのみをもって、直ちに「AACS−II」等の文字が商標でないということもできない。

さらに、請求人が「AACS−II」等を商標登録出願しなかったからといって、該文字が商標として否定される理由ともなり得ないというべきである。

したがって、上記被請求人の主張は何れも採用することができない。

(2)本件商標と請求人の使用商標の類否について

本件商標は、「AACS」の欧文字からなるから、「エイエイシーエス」

の称呼を生ずるものであり、特定の観念を有しない造語と認められる。

これに対し、使用商標は「AACS−II」、「AACS−III」の各文字からなるところ、その構成中、ハイフンを介して結合されたローマ数字の「II」又は「III」は、商品の規格、型式、品番等を表す記号、符号として一般的に使用されているところから、自他商品の識別標識としての機能を果たす文字部分は「AACS」にあり、よって、該構成文字に相応して「エイエイシーエス」の称呼をも生ずるものとみるのが相当である。

してみれば、両商標は、共に「エイエイシーエス」の称呼を共通にする称呼上類似する商標といわなければならない。

(3)本件商標の指定商品と請求人の使用に係る商品の類否について

次に、本件商標の指定商品の「理化学機械器具、測定機械器具」と、請求人の使用に係る商品「全リン・全窒素専用全自動分析装置」及び「水質自動分析装置」との類否について判断する。

「理化学機械器具」とは、「特許庁商標課編 『商標及び役務区分解説』1996年12月25日 社団法人 発明協会発行」によれば、「主として自然科学の研究用又は実験用に専ら使用される機械器具が含まれる。」ものとされている。

そして、請求人の使用に係る商品は、いわゆる「自動化学分析装置」であって、たとえば、「日本分析学会」、「日本水環境学会年会講演会」、「下水道研究発表会講演集」などの広告にも掲載又は出展されていることから、専ら化学分析の研究用又は実験用にも使用される商品ということができ、そうとすれば、該商品は「理化学機械器具」の概念に含まれる商品と解しても差し支えないものというべきである。

また、「AACS−III」を付した「環境水・飲料水の多項目自動分析システム」である「水質自動分析装置」は、河川、海水等の栄養塩の分析・測定、飲料水の硬度、濁度、PH等を分析・測定するものであるから、「測定機械器具」の範疇に属する商品ということができる。

したがって、請求人の使用に係る上記商品は、「理化学機械器具及び測定器械器具」に属する商品と認められるから、本件商標の指定商品とは、同一又は類似する商品といわなければならない。

(4)結語

以上のことから、本件商標は、その出願前に広く認識された請求人の使用に係る商標と類似の商標であって、その指定商品も同一又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当するものといわざるを得ない。

なお、請求人は、「AACS」なる文字は、現在、インターネットにも表示されておらず、当業界において請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者に広く認識されていない旨主張するが、商標法第4条第1項第10号の適用については、その出願時に該当すること(同法第4条第3項)、及び登録査定時にも該当することをもって足りると解するのが相当であって、上記期間の周知性の判断については前述のとおりであるから、上記請求人の主張は採用できない。

したがって、請求人のその余の理由について判断するまでもなく、本件商標は商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項により、無効とすべきものである。

よって、結論のとおり、審決する。

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