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Trademark Appeal Case

結合商標の要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2004−89067(T2004−89067/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4741695号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成15年4月24日に登録出願、第25類「 フランス製の被服,フランス製のガーター,フランス製の靴下止め,フランス製のズボンつり,フランス製のバンド,フランス製のベルト,フランス製の履物,フランス製の仮装用衣服,フランス製の運動用特殊衣服,フランス製の運動用特殊靴」を指定商品として、同16年1月23日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

請求人が引用する登録第4479759号商標(以下、「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成12年8月21日に登録出願、 第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同13年6月1日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。

1 請求の理由

(1)本件商標は、引用商標と類似するから、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

(2)本件商標と引用商標との類否

本件商標は、複数の白抜きの横線を入れた黒塗りの円筒形状の図形を上部に表し、その下に、「PARIS」の欧文字を大きく顕著に表してなるが、当該図形部分と「PARIS」の欧文字部分とは、構成上及び観念上の一体性が全くないことから、両部分はそれぞれ分離して認識され得るものである。

そして、本件商標中の「PARIS」部分は、上部の図形部分と同等若しくはそれ以上に大きく顕著に表されており、しかも、通常用いられることのない特異なデザイン態様で表されていることから、たとえ「PARIS」の文字が「フランスの首都パリ」を表す語であり、商品「被服」等との関係において、商品の産地、販売地を表示するものとして、本来的に自他商品識別力が弱い文字であるとしても、取引の実情を考慮すれば、本件商標に接する需要者、取引者は、この「PARIS」部分に着目し、この欧文字部分でもって取引に当たることがあり得るものである。

すなわち、当該「PARIS」部分の構成中、第1文字の「P」及び第3文字の「R」の文字は、それぞれ、左上端部分から細い鉤状の曲線を左上方に延出させてなり、また、第2文字の「A」は、文字中央部の横線を左上方斜めに向けて細い緩やかな曲線で表すとともに、右上端部分からわずかに細い曲線を突出させてなり、また、第4文字の「I」は、文字の上端部分に割目を設け、そこから左右上方に細い鉤状の曲線を延出させてなり、さらに、第5文字の「S」は、文字の両端部分に細い二又の曲線を表してなるものであり、当該「PARIS」部分は、これら各文字に施された細い曲線と、各文字を構成する肉厚の直線及び曲線部分とが相候って、全体として、優雅でかつ華やかな印象を与える特異なデザイン態様からなる文字部分として認識されるものである。

このように、本件商標中の「PARIS」部分は、上部の図形部分とは視覚上明らかに分離して認識され得る位置関係にあるうえ、当該図形部分と同等若しくはそれ以上に大きく顕著に表されており、また、観念においても何ら関連性を有するものではなく、しかも、上述のように、特異なデザイン態様をもって表されていることから、本件商標のかかる構成にあっては、これに接する需要者、取引者は、この「PARIS」部分をもって取引に当たることがあり得るものである。

この点、東京高裁平成元年11月29日判決においても、その理由中において、結合商標を構成する部分が、それのみでは自他商品識別力が弱く、商標法第3条第1項第3号等の規定に該当し、商標登録拒絶理由又は商標登録の無効事由となるような場合であっても、その商標の構成の如何によって、当該部分を含む結合商標を、一般取引者、需要者が観察して、当該部分から生ずる称呼をもって称呼し、取引に当たる可能性があるときには、その称呼をもって他の商標の称呼と対比し、商標の類否を判断しても差し支えないと判示されている(甲第3号証)。

以上より、本件商標は、その構成中「PARIS」部分が分離され認識されて、独立して取引に資され得るものであり、これより「パリス」という称呼を生じ、「フランスの首都パリ」という観念を生じ得るものである。

一方、引用商標は、二重の楕円状輪郭線の内側中央部に「PARIS」の欧文字を大きく顕著に表し、その下に、「accessories for men」の欧文字を小さく表し、かつ、外側輪郭線と内側輪輪郭線の間に 「Massachusetts・NewYork・LosAngels・Chicago・Dallas」及び「Established 1887」の文字を小さく表してなるものである。

そして、その構成中「PARIS」の欧文字部分は、引用商標の中央部に大きく顕著に表されており、また、通常用いられることのない特異なデザイン態様で表されているのに対し、他の文字部分は、上記「PARIS」の文字部分に比べて、普通に用いられる書体で、小さく付記的に表されており、また、各文字部分の間に観念上の一体性も認められないことから、かかる引用商標の構成にあっては、需要者、取引者は、その構成中、中央部に大きく表された特異なデザイン態様からなる「PARIS」部分に着目し、この欧文字部分でもって取引に当たることがあり得るものである。

よって、引用商標にあっても、その構成中の「PARIS」部分が分離され認識されて、独立して取引に資され得るものであり、これより「パリス」という称呼を生じ、また、「フランスの首都パリ」という観念を生じ得るものである。

しかして、本件商標と引用商標とは、各々、その構成中の「PARIS」部分が分離され認識されて、独立して取引に資され得るところ、本件商標中の「PARIS」部分と、引用商標中の「PARIS」部分とは、特異なデザイン態様からなるにもかかわらず、各文字の書体や細部のデザインの特徴等がほぼ一致するものであり、当該文字部分全体がほとんど同一といってよいほど酷似するものであるから、両商標について、時、処を異にして観察した場合、外観において相紛れるおそれは極めて高く、両者は外観上類似の商標である。

また、本件商標と引用商標とは、いずれも「パリス」という称呼を生じ、「フランスの首都パリ」という観念を生じ得ることから、両者は称呼上及び観念上も類似の商標である。

さらに言うならば、そもそも「PARIS」の文字は、本来的には自他商品識別力の弱い文字であるが、本件商標中の「PARIS」部分及び引用商標中の「PARIS」部分は、いずれも、中央部に大きく顕著に表されており、また、特異なデザイン態様をもって表されていることから、需要者、取引者が、取引においてこの「PARIS」部分に着目し、その特異なデザイン態様をもって把握し、記憶することは当然あり得るものである。しかるに、両商標中の「PARIS」部分は、そのデザイン態様がほとんど同一といってよいほど酷似していることから、両商標をそれぞれその指定商品について使用した場合には、同一の営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれが極めて高く、明らかに商品の出所について誤認混同が生じ得るものであり、取引の実情を考慮すれば、両者は類似の商標というべきものである。

したがって、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念の全てにおいて相紛らわしく、かかる両商標間で商品の出所について誤認混同が生じるおそれは極めて高いことから、両者は類似の商標というべきである。また、その指定商品も、同一又は類似の商品である。

2 答弁に対する弁駁

(1)被請求人は、本件商標の構成中、デザイン化された「PARIS」の文字と、引用商標の構成中、デザイン化された「PARIS」の文字とは、全く同一のデザイン文字からなることを認めている(以下、本件商標と引用商標に共通のデザイン化された「PARIS」の文字を「デザイン化PARIS文字」という。)。

そして、この「デザイン化PARIS文字」は、請求人が主張するように、全体として、優雅で華やかな印象を与える特異なデザイン態様からなるものであり、需要者、取引者により、特別に着目し認識される文字態様であるから、本件商標と引用商標とは、その商標中に大きく表され、看者の目を引く「デザイン化PARIS文字」を共通にする、類似の商標であることを認めている。

(2)一方、被請求人は、、登録第861694号商標(以下、「先願登録商標1」という。)及び登録第4283149号商標(以下、「先願登録商標2」という。)を挙げ、先願登録商標1は、その構成中に、本件商標中の「デザイン化PARIS文字」と極めて類似する「PARIS」の文字を有するものであり、また、先願登録商標2は、その構成中に、本件商標中の「デザイン化PARIS文字」と全く同じ「PARIS」の文字を有するものであり、いずれも、その商標中に「デザイン化PARIS文字」を大きく表してなるから、先願登録商標1及び2と引用商標も互いに類似する商標であると主張する。

そして、引用商標は、先願登録商標1及び2が、同じ指定商品について登録されていたにもかかわらず、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、引用商標こそ登録無効原因を有すると主張する。

(3)しかしながら、本件商標と引用商標とは類似の商標であるが、先願登録商標1及び2と引用商標とが互いに類似の商標であるとは到底いい得ない。

(ア)先願登録商標1は、正方形の黒枠の中に左右から対峙する2頭の獅子の図形を緑色の背景の上に灰色で表すとともに、その上部に、デザイン化した「PARIS」の文字を表してなるものであり、その構成中、黒枠で囲まれた正方形状の図形部分と、その上部に表された「PARIS」の文字部分とは、デザイン的にも色彩的にも相互に関連性を有するものであり、全体として一体的に把握されるものである。

すなわち、黒枠で囲まれた正方形状の図形部分は、緑色の背景の上に左右から対峙する2頭の獅子の図形を灰色で表してなるものであり、あたかも一種の紋章のような図柄となっているが、一方、当該図形の上部に表されている「PARIS」の文字部分も、各文字を緑色で表すとともに、各文字の内側に灰色の直線ないし曲線が施されており、正方形状の図形部分と対応する色彩、配色をもってデザイン化されている。

また、各文字の字形は、確かに、引用商標中の「デザイン化PARIS文字」に近似するものともいえるが、先願登録商標1の場合は、各文字から延出されている細い鉤状の曲線が、引用商標よりも遙かに細い曲線をもって描かれ、また、各文字の内側には灰色の直線ないし曲線による装飾が施され、引用商標のような単純な肉厚の直線ないし曲線をもって描かれているものではないことから、全体として引用商標のような優雅で華やかな印象を与えるというよりは、むしろ、装飾性の高い、複雑且つ繊細な印象を与えるデザインとなっている。さらに、黒枠で囲まれた正方形状の図形部分の中にも「PARIS」の文字が弧状に表されていることから、当該「PARIS」の文字を含む正方形状の図形部分と、その上部に表されているデザイン化された「PARIS」の文字部分との対応関係がより一層強調されるものとなっている。

このように、先願登録商標1の構成中、正方形状の図形部分の上部に表されているデザイン化された「PARIS」の文字は、2頭の獅子が対峙する繊細な図柄よりなる正方形状の図形部分と組合わされることにより、デザイン的にも、色彩的にも、当該図形部分とよく調和するものとなっており、当該「PARIS」の文字部分のみが特異なデザイン態様のものとして分離され認識されるというよりは、むしろ、構成全体が一つの完成されたデザインとして、文字部分と図形部分とが一体的に把握されるものである。

換言するならば、先願登録商標1は、その構成中「PARIS」の文字部分が特異なデザイン態様からなるものとして、殊更強調される構成とはなっていないものである。

また、たとえ、当該「PARIS」の文字部分が分離され認識される場合があるとしても、引用商標中の「PARIS」の文字部分とは、デザイン態様並びに看者に与える印象が明らかに異なるものであるから、かかる先願登録商標1と引用商標をそれぞれその指定商品について使用したとしても、商品の出所について混同が生じるとは到底考え難いものである。

(イ)先願登録商標2は、欧文字の「p」及び「q」を互いに向き合わせ接するようにしたような形状の図形を上部に大きく表し、その下に、「MADAME」の文字をやや小さく表し、さらにその下に、デザイン化した「PARIS」の文字を上部の図形部分とほぼ同じ大きさで大きく表してなるものである。

しかしながら、先願登録商標2の構成中、デザイン化された「PARIS」の文字は、確かに、本件商標及び引用商標中の「デザイン化PARIS文字」とほぼ同一のものともいえるが、先願登録商標2の場合は、上部の「p」と「q」を互いに向き合わせたような形状の図形と、「MADAME」の文字、及び、デザイン化された「PARIS」の文字とが、まとまりよく一体的に組合わされており、その構成中「PARIS」の文字部分のみが分離され認識されるとは到底いい得ないものである。

すなわち、先願登録商標2の構成中、「p」と「q」を互いに向き合わせたような形状の図形部分は、デザイン化された「PARIS」の文字部分よりもやや大きく、肉厚の黒線をもって表されているとともに、当該「PARIS」の文字部分に対応するかのように、「p」と思しき図形の左上端部分から細い釣状の曲線が左上方に延出され、また、「q」と思しき図形の右上端部分から細い鈎状の曲線が右上方に延出されており、デザイン的にも共通性を持った当該図形部分と「PARIS」の文字部分とが、「MADAME」の文字を挟んで、バランス良く対置されているものである。

また、先願登録商標2の構成中、二段に表された「MADAME」及び「PARIS」の文字は、文字の書体や大きさ等は異なるものの、上段の「MADAME」の文字は「夫人」、「奥様」、「貴婦人」といった意味を表す良く知られた仏語であり(甲第4号証)、また、下段の「PARIS」の文字は「フランスの首都パリ」の意味を表す極めて良く知られた英語であり、また、人名としてもしばしば採択されていることから、これらの文字を組み合わせた「MADAME/PARIS」の文字全体からは、「パリス夫人」、「パリの貴婦人」といつた意味合いが容易に認識されるものであり、いずれの文字部分も主ないし従の関係に立つことなく、「MADAME/PARIS」の文字全体が一体的に把握されるものである(甲第5号証)。

このように、先願登録商標2は、上部の「p」と「q」を互いに向き合わせたような形状の図形部分が「PARIS」の文字部分と同等若しくはそれ以上に大きく顕著に表され、「PARIS」の文字部分と同様のデザインが施され、「PARIS」の文字部分と対置するようにバランス良く配置されていること、また、「MADAME/PARIS」 の文字部分が「パリス夫人」、「パリの貴婦人」といった意味合いを容易に認識させ、一体的に把握されること等の事情に鑑みれば、その構成中「PARIS」の文字部分が殊更強調される構成とはなっていないものである。

(4)被請求人は、引用商標の無効審判請求書を提出するので、引用商標の無効審決が確定すれば、当然に本件無効審判の無効理由は解消すると主張する。

(ア)しかしながら、引用商標は、先願登録商標1及び2とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではなく、登録無効原因を有するものではない。

(イ)また、被請求人の論理によれば、本件商標も先願登録商標1及び2と類似することになるが、本件商標の登録査定時である平成15年11月18日時点において、先願登録商標2の権利者は、「滝井栄」であって、被請求人ではない。

すなわち、先願登録商標2を引用して、引用商標こそ登録無効原因を有すると主張するが、本件商標にとっても、先願登録商標2は、その登録査定時において「滝井栄」が保有する他人の先願登録商標なのであり、しかも、被請求人は、本件商標と先願登録商標2が互いに類似の商標であることを自ら認めている。

かかる被請求人の論理に従うならば、本件商標は、引用商標及び先願登録商標2が存在しているにもかかわらず、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されていることとなり、引用商標の存在如何に拘らず登録無効原因を有するものである。

よって、引用商標の無効審判を請求するか否かにかかわらず、また、その無効審判の帰趨を問わず、本件商標は無効とされるべきである。

(5)なお、被請求人は、請求人が主張するところの無効理由とは全く無関係の事実を縷々主張しているが、以下この点について反論する。

(ア)被請求人は、そもそも「デザイン化PARIS文字」は、先願登録商標1及び2の出願人であった「瀧井株式会社」及びその社名変更後の「株式会社パリス」が、主としてその社名を表す標章として、また、同社の主要営業品目とする超高級婦人用既製服の商標として使用して、極めて著名となった商標であり、平成元年頃には、我が国の高級婦人服業界、ファッション業界では、「デザイン化PARIS文字」は高級婦人服の極めて著名なブランドとして広く取引者、需要者に認識されていたと主張し、乙第3号証を提示している。

(イ)この乙第3号証は、上記の瀧井株式会社自身が作成した1975(昭和50年)4月発行の創業25周年記念誌であり、1950年(昭和25年)から1975年(昭和50年)までの社歴が、瀧井株式会社自身によって綴られているものであって、PR誌的要素を多分に含むものである。

(ウ)被請求人は、当該記念誌の大多数のページに「デザイン化PARIS文字」を目立つ大きさの文字で、同社の社名を表示する標章として、及び、同社の商品に付した商標として表示されていると主張する。

確かに、上記記念誌には、文章の全般にわたって「デザイン化PARIS文字」が使用されているが、これは、瀧井株式会社が、昭和25年の創業時代から当該記念誌が発行された昭和50年に至るまで、「デザイン化PARIS文字」を一貫して使用していたことを示すものではあり得ない。せいぜい、当該記念誌が作成された昭和50年4月当時に、瀧井株式会社が同社の社名を表示する標章として、あるいは、同社の商品商標として「デザイン化PARIS文字」を使用していたことが推認されるにすぎない。

(エ)現に、この記念誌には、「デザイン化PARIS文字」が同社の社名あるいは商品を表示する商標として実際に使用されるようになったのがいつ頃なのか、また、「デザイン化PARIS文字」を商標として使用した商品がどの程度製造され販売されたのか等については、全く記載されていない。

例えば、当該記念誌の第20頁ないし第37頁には、瀧井株式会社の創業時代から輸出時代(昭和25年から昭和50年)について記載されているが、当時から「デザイン化PARIS文字」が同社の社名あるいは商品を表示する商標として使用されていたような事実は何一つ記載されていない。むしろ、第23頁に掲載されている「創業時代のプレート」の写真、第24頁に掲載されている「旧待兼山向上の門柱プレート」の写真、第32頁に掲載されている「本社ビル正面玄関」の写真等を見る限り、当時「デザイン化PARIS文字」は全く使用されていなかったものと推論される。

(オ)また、当該記念誌の第38頁には、「ついに『PARIS』の商標登録が認可された」との記載があり、「デザイン化PARIS文字」があたかも商標登録されたかのように記載されているが、当該記念誌の第145頁下段に掲載されている「商標権・意匠登録・実用新案登録の保有」の一覧表によれば、このとき商標登録された登録第564878号商標は、「デザイン化PARIS文字」とは全く異なる態様の「PARIS」の文字を表してなるものであり、しかも、当該「PARIS」の文字自体については権利不要求の記載が付されている(甲第7号証)。

(カ)さらに、当該記念誌の第47頁には、「その年の4月、『PARIS』ブランドは、瀧井株式会社と株式会社ロイヤルニットの共有商標であることが、特許庁によって承認された」との記載があり、あたかも「デザイン化PARIS文字」が瀧井株式会社及び株式会社ロイヤルニットのブランド商標として特許庁に承認されたかのように記載されているが、当該記念誌の第145頁下段に掲載されている「商標権・意匠登録・実用新案登録の保有」の一覧表によれば、これに相当する登録商標は登録第564877号商標であると推論されるが、当該登録商標も「デザイン化PARIS文字」とは全く異なる態様の「PARIS」の文字を表してなるものであり、しかも、当該「PARIS」の文字自体については権利不要求の記載が付されている(甲第7号証)。

(キ)当該記念誌において、「デザイン化PARIS文字」が同社の社名あるいは商品を表示する商標として使用されていた事実が客観的に示されているのは、〔1〕第48頁に掲載されている「昭和42年竣工のロイヤルニット東京社屋」の写真、〔2〕第58頁に掲載されている「ゴルフカーニバル」及び「メルシーパーティー」の写真、〔3〕第60頁に掲載されている商品タグ、〔4〕第61頁に掲載されている昭和49年2月に完成したとされる「ロイヤルニット東京支社」及び昭和49年7月に完成したとされる「瀧井株式会社/本社別館」の写真、〔5〕第67頁ないし第95頁にかけて散見される「瀧井株式会社の社屋、工場、社用車」等の写真、〔6〕第121頁に掲載されている「BoutiquePARIS/Aoyama」店内のジャケットに付された商品タグ、〔7〕第132頁ないし第133頁に掲載されている「BoutiquePARIS/Harajuku,Shibuya,Ashiya,etc.」の写真であると考えられる。

上記〔1〕ないし〔7〕の記載から推論されるのは、せいぜい、昭和42年頃から当該記念誌が発行された昭和50年までの間に、「デザイン化PARIS文字」が瀧井株式会社及びその関連会社の社屋等に使用され(〔1〕、〔4〕、〔5〕、〔7〕)、あるいは、社内行事等で使用されたことがあり(〔2〕)、また、商品タグに使用されていたことがあるという程度の事実にすぎない(〔3〕、〔6〕)。これらの写真並びに記念誌の内容に照らしても、「デザイン化PARIS文字」の商標としての使用開始時期、「デザイン化PARIS文字」を商標として使用した商品の製造・販売数量、広告・宣伝の程度等については、何ら把握することができない。

(ク)以上述べたように、乙第3号証からは、昭和42年頃から昭和50年までの間に、「デザイン化PARIS文字」が、瀧井株式会社によって使用されていた事実が窺われるものの、当該「デザイン化PARIS文字」が、超高級婦人用既製服の商標として極めて著名になったという事実については何ら立証されていなく、ましてや、昭和25年から昭和50年までの社歴が記載されているにすぎない当該記念誌では、平成元年頃に「デザイン化PARIS文字」が、わが国の高級婦人服業界、ファッション業界において、高級婦人服の極めて著名なブランドとして広く取引者、需要者に認識されていたとする被請求人の主張を何ら裏付けるものとなっておらず、そのような事実について推認することすら困難なものである。

被請求人は、「デザイン化PARIS文字」について、昭和42年頃から昭和50年までの間に瀧井株式会社によって使用されていたという、乙第3号証の記念誌から窺われ不確かな事実を根拠に、当該「デザイン化PARIS文字」が平成元年頃には極めて著名になっていたと主張するものであり、このような主張は採用されるべきものではない。

(6)被請求人は、さらに、上記瀧井株式会社は平成12年に自己破産し、破産管財人による会社整理、解散が行われたと主張しているが、上記記念誌が発行された昭和50年以降から瀧井株式会社が自己破産した平成12年迄の間に、「デザイン化PARIS文字」が商標として使用されていたという事実、「デザイン化PARIS文字」が商標として使用された商品の製造・販売数量、売上高、広告・宣伝の程度並びに需要者、取引者への商標の浸透度等々については、上記(5)と同様、何ら立証していない。

(7)被請求人は、さらに、瀧井株式会社が自己破産し、破産管財人による会社整理、解散が行われた際、裁判所の許可を得て、破産管財人より同社及び同社の関連会社が所有する商標のほとんどを業務と共に譲り受け、譲り受けた「PARIS」の高級婦人服事業を引き続き現在まで行っており、株式会社パリスが確立した、「デザイン化PARIS文字」に化体された高級婦人服の商標としての信用を、被請求人がそのまま引き継いで維持発展させていると主張する。

しかし、被請求人は、被請求人が瀧井株式会社及びその関連会社の業務まで譲り受けたという事実を何ら立証しておらず、また、被請求人が平成12年から現在に至るまで「デザイン化PARIS文字」を高級婦人服の商標として引き続き使用しているという事実についても何ら立証していない。

(8)被請求人の主張は、要するに、瀧井株式会社及びその社名変更後の株式会社パリスによって昭和42年頃から昭和50年の間に使用されていたことが確認される「デザイン化PARIS文字」について、何ら客観的事実による裏付けもないまま、平成元年頃には著名になっていたと主張するものであり、さらには、上記株式会社パリスは平成12年に自己破産により会社整理、解散しているにもかかわらず、また、以後の被請求人自身の使用事実等を何ら立証することもなく、「デザイン化PARIS文字」には依然として高級婦人服の商標としての信用が化体しており、被請求人がその信用をそのまま引き継いで維持発展させていると主張するものであり、このような事実であるかどうかも定かでない被請求人の主張は採用されるべきものではない。

被請求人は、請求人が「デザイン化PARIS文字」に化体した信用にただ乗りすべく、「デザイン化PARIS文字」を含む引用商標の商標登録を得て、あたかも「株式会社パリス」あるいは被請求人と何らかの関係があるかのように、「デザイン化PARIS文字」を付して被服の販売活動を行っていると主張するが、その主張を客観的事実をもって立証すべきである。

3 むすび

以上、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)本件商標中のデザイン化された「PARIS」の文字と引用商標中のデザイン化された「PARIS」の文字は全く同一のデザイン文字よりなる。

「デザイン化PARIS文字」は、請求人の主張のように、全体として、優雅で華やかな印象を与える特異なデザイン態様からなり、アルファベット文字として、普通に用いられることのない特異なデザイン態様で表されており、需要者、取引者により、特別に着目し認識される文字態様である。

したがって、本願商標と引用商標は、その商標中に大きく表されて、看者の目を引く「デザイン化PARIS文字」を共通にするから、本件請求人が主張するとおり、本願商標と引用商標は互いに類似する商標であることについては、異論はない。

(2)しかしながら、先願登録商標1は、「デザイン化PARIS文字」に極めて類似する「PARIS」の文字を緑色で表し、その下に正方形の黒枠の中に左右から対峙する2頭の獅子の図形を緑色の背景の上に薄緑色で表し、その2頭の獅子の中央に、赤色で「X」の文字の上に横棒を付加した図形を表し、さらにその下に「PARIS」の文字を小さく弧状に記してなり、昭和35年法の第17類、「被服、布製身回品」を指定商品とする。

先願登録商標1は、昭和42年1月17日に、大阪市東区今橋1丁目11番地、瀧井株式会社の名義で登録出願され、昭和45年6月20日に設定登録された。その設定登録時の指定商品は第17類、「被服、布製身回品、寝具類」であった。その後、指定商品中「寝具類」を昭和49年6月12日に一部放棄した。

先願登録商標1は、昭和56年2月27日、平成2年6月27日及び同12年3月21日にそれぞれ商標権存続期間の更新登録がされている。

その間、昭和45年6月29日付で登録名義人の社名を「株式会社パリス」に変更する登録名義人の表示変更登録がなされ、昭和55年10月20日付で株式会社パリスの関連会社、「瀧井開発株式会社」に商標権の譲渡による移転登録がされ、平成8年12月2日付で登録名義人の社名を「ケイワン企画株式会社」に変更する登録名義人の表示変更登録がなされ、同12年1月25日付で本件被請求人に商標権の譲渡による移転登録がされて、現在本件被請求人が先願登録商標1の商標権を所有する。

さらに、先願登録商標2は、「デザイン化PARIS文字」と全く同じ「PARIS」の文字を大きく横書きにし、その上に小さく「MADAME」の文字を横書きにし、さらにその上に「p」及び「q」の文字を互いに接して向き合わせて表した形状の図形を表示してなり、第18類、「フランス製の皮革,フランス製のかばん類,フランス製の袋物,フランス製の携帯用化粧道具入れ,フランス製のかばん金具,フランス製のがま口口金,フランス製の傘,フランス製のステッキ,フランス製のつえ,フランス製のつえ金具,フランス製のつえの柄,フランス製の乗馬用具,フランス製の愛玩動物用被服類」及び第25類「フランス製の被服,フランス製のガーター,フランス製の靴下止め,フランス製のズボンつり,フランス製のバンド,フランス製のベルト,フランス製の履物,フランス製の仮装用衣服,フランス製の運動用特殊衣服,フランス製の運動用特殊靴」を指定商品とする。

先願登録商標2は、平成9年9月3日、大阪市中央区今橋1丁目 6番19号地、株式会社パリスの名義で登録出願され、同11年6月11日設定登録された。その後、同12年4月14日付で本件被請求人に商標権の譲渡による移転登録がされて、さらに同12年10月31日付で、兵庫県宝塚市山元南2丁目9番地13号 センチュリーコート宝塚102号「滝井 栄」に商標権の譲渡による移転登録がされている。

3 上記先願登録商標1及び2はいずれも、その商標中に「デザイン化PARIS文字」を大きく表してなり、本件の引用商標の登録出願時には既に登録されており、その指定商品はいずれも同一の指定商品を含むものである。先願登録商標1及び2並びに引用商標中に大きく記された「デザイン化PARIS文字」は極めて顕著な特徴があり、本件請求人の本件商標と引用商標が互いに類似するという主張が成り立つならば、これらとほとんど同じ関係にある、先願登録商標1及び2と引用商標も互いに類似する商標であるといわざるを得ない。

したがって、引用商標は、これと極めて類似する先願登録商標1及び2が同じ指定商品について登録されていたにもかかわらず、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、引用商標こそ登録無効原因を有するものである。

4 被請求人は別途、引用商標の無効審判請求書を提出するので、その引用商標の無効審決が確定すれば、当然に本件審判の無効理由は解消する。したがって、引用商標の無効審判の無効審決の確定を待って、本件無効審判の請求は成り立たない旨の審決されたい。もし本件の無効審決が確定した後に、引用商標の無効審決が確定した場合は、引用商標は登録時に遡って無効となり、本来、本件審判請求は成り立たなかったにもかかわらず、本件商標は無効とされることとなり、極めて不合理な結果となるので、本件審判の無効審決をするならば、引用商標の無効審判の審決の確定を待って、審決をすべきである。

5 そもそも「デザイン化PARIS文字」は先願登録商標1及び2の出願人であった「瀧井株式会社」及びその社名変更後の「株式会社パリス」が、主としてその社名を表す標章として、そして同社の主要営業品目とする超高級婦人用既製服の商標として使用して、極めて著名となった商標である。同社の前身である株式会社瀧井商店は昭和25年に創業され、平成元年頃には、我が国の高級婦人服業界、ファッション業界では、「デザイン化PARIS文字」は高級婦人服の極めて著名なブランドとして広く取引者、需要者に認識されていた。乙第3号証として提示する「瀧井株式会社」の創業25周年記念誌には、その大多数のページに、「デザイン化PARIS文字」を目立つ大きさの文字で、同社の社名を表示する標章として、及び同社の商品に付した商標として表示されており、その記念誌の内容から、如何にこの「デザイン化PARIS文字」が広く認識されるに至っていたかが読み取れるであろう。

しかしながら、平成5年頃からの、所謂バブルの崩壊による繊維不況の波を被り、同社も経営不振に陥り、平成12年には、自己破産により、破産管財人による会社整理、解散をせざるを得なくなった。その際に従来よりアパレル事業を行っており、同社の社長と幼少より親交のあった被請求人会社の社長が、裁判所の許可を得て、破産管財人より、同社及び同社の関連会社の所有する商標のほとんどを、業務と共に譲り受け、乙第1号証の1及び乙第2号証の1に示すとおり、商標権の移転登録をすると共に、譲り受けた「PARIS」の高級婦人服事業を引き続き現在まで行っているのである。

したがって、株式会社パリスが確立した「デザイン化PARIS文字」に化体された高級婦人服の商標としての信用を、被請求人がそのまま引き継いで、維持発展させているのである。

しかるに請求人は、他人が築き上げた「デザイン化PARIS文字」に化体された信用にただ乗りすべく、「デザイン化PARIS文字」を含む引用商標の商標登録を得て、他人の築き上げた信用にただ乗りして、あたかも「株式会社パリス」あるいは本件被請求人会社と何らかの関係があるかのように、「デザイン化PARIS文字」を付して被服の販売活動を行うだけでなく、本件無効審判請求を行うことにより、他人の築き上げた信用を横領しようとするが如き行為は、到底容認することはできない。

第5 当審の判断

1 本件商標は、別掲(1)のとおり、複数の白抜きの横線を入れた黒塗りの円筒形状の図形を上部に表し、その下に、「PARIS」の欧文字を書してなるものである。

しかして、上記構成にあって、円筒形状の図形は、特異な形態の幾何図形の一種であり、看者の注意を惹き記憶に残り得るものといえる。そして、「PARIS」の欧文字は、その構成各文字をそれぞれやや図案化してなるものであるが、この構成に徴すれば、「フランスの首都パリ」を意味する英語と容易に理解されるものである。

ところで、被服等の取引業界にあって、商品に関するファッションをリードする地の一としてフランスのパリ(paris)が一般に認識されていること、事業者の取り扱う商品がフランス製であることを表したり、当該事業者の本店等が首都パリに所在する等の事情を示すために、出所表示標識とともに、「PARIS」の欧文字を併記することが盛んに行われていることは、顕著な取引上の実情である。加えて、本件商標は、フランス製の商品のみを指定商品とするものである。

そうしてみれば、フランス製の指定商品に本件商標を使用したとき、これに接する一般取引者、需要者は、当該「PARIS」の文字部分を商品の属性にかかわる表示、つまり、当該商品がフランスあるいはパリにかかわりがある旨の表記として捉えるというのが相当であり、一般取引者、需要者が観察して、当該部分から生ずる称呼をもって称呼し、取引に当たる可能性があるとはいい難いものである。

この点、「PARIS」の各文字が肉厚の直線や曲線及び細線によって図案化されているとしても、それによって、上記一般取引者、需要者の認識を凌駕する程度に至っているものであるともいえない。

してみれば、本件商標は、図形部分を主要な部分とした商標というべきであって、文字部分より、取引上で商品の出所を識別するための称呼及び観念、「パリス」(フランスの首都パリ)は生じないというのが相当である。

2 他方、引用商標は、別掲(2)のとおり、二重の楕円状輪郭線の内側中央部に「PARIS」の欧文字を表し、その下に、「accessories for men」の欧文字を小さく表し、かつ、外側輪郭線と内側輪郭線の間に 「Massachusetts・NewYork・LosAngels・Chicago・Dallas」及び左右に小さな図形を配して「Established 1887」の文字を小さく表してなるものである。

そして、「Massachusetts」「NewYork」「Losangels」「Chicago」「Dallas」の他の文字が、いずれも我が国において一般によく知られた地名を表したものであることからすれば、中央に大きく表されたものであるとしても、当該「PARIS」も他と同様に地名を表したとの認識をもって把握されるものとみるべきである。

そうとすれば、大きさと図案化によって、ことさらに当該文字のみが看者に他の文字と別異の認識を与えるものともいい難く、当該文字部分から商品の出所を識別するための称呼及び観念は生じないというのが相当である。

しかして、引用商標は、構成全体が密接に結合した一種固有の識別標識というべきものである。

3 以上よりすれば、本件商標は、その図形部分と文字との結合した商標であって、ことさらに、文字部分のみが分離抽出されて取引場裏で着目されるとはいい難く、むしろ、図形部分を主要なものというべきものであって、二重の楕円状輪郭線及びその内側に配された各文字と図形の結合した引用商標とは、その構成において著しい差異を有するから、両者は、外観において相紛らわしいものとはいえない。

また、両商標は、上記のとおり特定の称呼、観念を生ずるものではないから、称呼及び観念において、相紛らわしいものともいえない。

したがって、本件商標は、外観、称呼及び観念よりみて、引用商標に類似する商標とはいい難いものである。

4 被請求人は、本願商標と引用商標は互いに類似する商標であることに異論はない旨答弁しているが、両商標の類否については上記のとおり判断されるものであり、類否判断については上記答弁に拘束されないというべきである(昭和57年(行ケ)第217号東京高裁昭和58年3月31日判決、参照)。

さらに、被請求人は、引用商標の無効審判請求書を提出するので、当該無効審判の審決の確定を待って、本件審判の審決をすべき旨主張するが、上記のとおり、本件については審理し結論を得ることができるので、上記主張は採用しない。

5 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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