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Trademark Appeal Case

著名人名の略称の類否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号平成11年異議第90167号
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4195996号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4195996号商標(以下「本件商標」という。)は、「ITARONEVALENTINO」の文字を標準文字で書してなり、平成9年6月17日登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,毛皮製ストール,帽子,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,ゴルフ靴,乗馬靴」を指定商品として、同10年10月9日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由の要旨

登録異議申立人「バレンチノ グローブ ベスローテン フェンノートシャップ」(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に違反してされたものであり、本件商標の登録は取り消されるべきであると申し立て、その証拠方法として甲第1号証ないし同第62号証(枝番を含む。)を提出した。

3 取消理由の通知(要旨)

(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)の主張の理由及び甲第7号証ないし甲第62号証(枝番号を含む。)によれば、次の事実が認められる。

「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーと呼ばれ国際的なトップデザイナーとして知られている。

我が国においても、ヴァレンティノ ガラヴァーニの名前は1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。

昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴティックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。

以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニは、世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された平成9年6月17日当時には、既に我が国においても著名であったものと認められる。

同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、ファッションに関して「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば同氏を指すものと広く認識されるに至っているというべきである。

(2)当審において調査するに、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「VALENTINO GARAVANI」は、我が国においては、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されていることは、田中千代「服飾辞典」同文書院1981年p550、山田政美「英和商品辞典」(株)研究社1990年p447、金子雄司外「世界人名辞典」岩波書店1997年p84)において裏付けられるばかりでなく、雑誌における表現においても、たとえば、「marie claire」1996年2月1日号、「non−no」1989年 No23号等からも認められる。

(3)以上の(1)及び(2)事実よりすると、申立人は、「VALENTINO」又は「VALENTINO GARAVANI」よりなる商標を婦人服を始めとし、紳士服、アクセサリー、バッグ、香水等の商品に使用しており、その結果、これら商標は、本件商標の登録出願の時には、既に我が国において、取引者、需要者間に広く認識されていたものといえる。

(4)本件商標は、その構成中に「VALENTINO」の文字を有するものであり、その指定商品は、引用商標が使用されている商品と同一又は密接な関係を有する商品を含むものである。

(5)以上によれば、本件商標を、商標権者がその指定商品について使用した場合、取引者、需要者をして、その商品があたかも上記デザイナーあるいは、同人と何らかの関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見(要旨)

(1)本件商標は「ITARONEVALENTINO」の一体文字からなり、新造語であって、本件商標が「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」と非類似であることは、明らかである。本件商標を「ITARONE」と「VALENTINO」に分離して判断しているが、根拠が示されていない。

常識的に判断して、需要者が本件商標を使用した商品と「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」を付した商品との間に出所の混同を来たすおそれはまったくないものと思料する。

(2)「VALENTINO」は、日本でいえば「太郎」あるいは「一郎」に相当し、それ自体、イタリアではありふれた男性の名前を表示するものである。

しかるに、バレンチノ・ガラバーニという服飾ファッションデザイナーの姓名は、世界的に著名なため、「VALENTINO」を単独で使用すれば、バレンチノ・ガラバーニの略称として上記デザイナー名を連想するであろうが、「ITARONEVALENTINO」と商品に付してあれば、これがバレンチノ・ガラバーニに関係するものと異なるということは、上記デザイナーのガラバーニの名称が著名であるがゆえに、一目瞭然である。「VALENTINO」が他の文字と結合した場合、結合した文字が商標の要部であり、「VALENTINO」は、商標の要部を構成しないことは、「VALENTINO」が、上述の如く、それ自体、イタリアではありふれた男性の名前を表示するものであることから、明らかである。

(3)以上述べた理由により、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する需要者が、「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商標を容易に想起するものではなく、その商品があたかも申立人ないしはその関連会社の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を来すおそれがある商標とは認めることはできない。

5 当審の判断

(1)「VALENTINO」標章の著名性について

前記取消理由のとおり、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)は、1967年にファッションのオスカー賞を受賞し、以来、同人のデザインに係る紳士服、婦人服等の商品を製造、販売して、その商品に「VALENTINO GARAVANI」、「VALENTINO」の文字よりなる標章(以下、これらを「VALENTINO標章」という。)を使用しているものである。

そして、本件商標の出願時である平成9年6月17日までには、VALENTINO標章は、「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標として、またデザイナーのヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)も「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と呼ばれて、紳士服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができ、さらに、該「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の著名性は、前記本件商標の出願時、登録査定時平成10年8月10日及び現在においても継続しているものと認められるものである。

なお、商標権者は、本件商標は、一体文字からなる造語で、「ITARONE」と「VALENTINO」に分離して判断すべきでない旨主張している。

しかしながら、たとえ、本件商標が一体に表されたものであっても、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)のデザインに係り、申立人の取扱いに係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている「VALENTINO」の文字を含む本件商標は、これをその指定商品について使用するときは、その需要者をして、該商品があたかも「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)のデザインに係る商品であるかのように、若しくは申立人、又はこれらと何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものとみるのが相当であり、他に「ITARONE」と「VALENTINO」とを常に一体のものとして把握しなければならない事情は認められず、この点に関する商標権者の主張は、採用することができない。

(2)出所混同のおそれについて

商標権者は、「VALENTINO」は、イタリアではありふれた男性の名前を表示するものであるから、商標の要部とはなり得ないし、本件商標は、「ITARONEVALENTINO」であり、これがヴァレンティノ・ガラヴァーニに関係するものと異なるということは、上記デザイナーのガラヴァーニの名称が著名であるがゆえに、一目瞭然である。したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」の商標を容易に想起するものではなく、その商品があたかも申立人会社ないしはその関連会社の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはない旨主張する。

しかしながら、前記認定のとおり、本件商標の登録出願時には、既に、VALENTINO標章が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標と、また、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」とも呼ばれて、紳士服、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として著名であったことを認めることができる。

そうすると、VALENTINO標章が付される商品「紳士服、婦人服」等と本件商標の指定商品とは、同一の商品を含み、かつ、共にファッション関連の商品を含んでいること等を併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「VALENTINO」の文字部分のみを捉え、著名なVALENTINO標章を連想、想起し、それが「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。

また、この混同を生ずるおそれは、本件商標の登録出願時はもとより、現在においても継続しているものと認められる。

なお、「Valentino」、「VALENTINO」の文字をその構成中に有する登録商標に関して、前記の認定、判断と同様の異議決定又は審決をした案件に対する東京高等裁判所等における行政訴訟事件において、次のとおり判決されているところである。

(a)平成16年(行ケ)第335号事件(異議番号2003-90376 商標登録第4658091号 商標「『SとV』のモノグラム図形/SILVIO VALENTINO」 指定商品第3類「せっけん類,薫料,つけづめ,つけまつ毛,歯磨き,靴クリーム,靴墨」)において、平成17年2月24日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。

(b)平成14年(行ケ)第354号事件(審判番号09-20430 商標登録第2614322号 商標「GIANNI VALENTINO」 指定商品第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」)は、平成15年9月30日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。

(c)平成14年(行ケ)第405号事件(審判番号11-35033 商標登録第2629700号 商標「valentino /orlandi」 指定商品第17類「被服、布製身回品、寝具類」)は、平成15年6月19日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。

(d)平成14年(行ケ)第421号事件(審判番号10-35465 商標登録第2582891号 商標「valentino /orlandi」 指定商品第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」)は、平成15年6月19日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。

(e)平成14年(行ケ)第201号事件(審判番号07-07234 商標登録第2699605号 商標「GIANNI VALENTINO」 指定商品第19類「台所用品、日用品」)は、平成15年9月30日に請求を棄却する旨の判決が言い渡された。

(f)平成15年(行ヒ)353号事件(平成14年(行ケ)第370号請求棄却に対する上告事件) 審判番号08-20103 商標登録第2357409号 商標「RUDOLPH VALENTINO」 指定商品第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く) 」)は、平成17年7月11日に上告を棄却する旨の判決が言い渡された。

(g)平成15年(行ツ)334号事件(平成14年(行ケ)402号請求棄却に対する上告事件) 審判番号09-02833 商標登録第2715313号 商標「Rudolph Valentino/『V』図形」 指定商品第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く) 」)は、平成17年7月11日に上告を棄却する旨の決定がされた。

(3)むすび

以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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