Trademark Appeal Case
日本人商標の識別力と公益性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2003−14432(T2003−14432/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「日本人」の文字を標準文字で書してなり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として平成14年10月18日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、本願商標が「日本人」の文字よりなるものであるから、これをその指定商品に使用しても、日本人用の酒、日本人向けに加工された酒であること、すなわち商品の品質、用途等を表示するにすぎないものと認められるので、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する旨認定し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は、上述1のとおり、「日本人」の文字を書してなるところ、1998年11月11日株式会社岩波書店発行「広辞苑 第5版」2039頁の記載によれば、「日本人」とは、「日本国に国籍を有する人。日本国民。」を意味する成語であることが明らかである。
しかして、これをその指定商品中の「日本酒」との関係で見た場合には、「日本酒」が日本固有の文化、歴史、伝統、習慣、儀式等と密接な関係を有し、時代を超えて、日本人に愛されて、たしなまれ、広く浸透し、日本固有の文化等の厳粛さや良さを実感させ、又は、思い起こさせる数少ない商品の一つということができるものであることよりして、原審説示のごとく、本願商標「日本人」は、「日本人用」「日本人向け」(Googleによりインターネットホームページを検索すると、それぞれ2,240,000件及び349,000件ある。)といった商品の品質、用途等を表示したものと認識される場合以外に、時代を経ても変わらない商品「日本酒」の需要者(すなわち、「日本人」)を淡々と表示したにすぎないと認識される場合も多いと見るのが相当である(「日本人 日本酒」を同様に検索すると531,000件ある)。
ところで、商標法第3条第1項各号に列挙の商標を不登録とするのは、これらは通常、商品又は役務を流通過程又は取引過程に置く場合に、必要な表示であるから、何人も使用をする必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであるから、一私人に独占を認めるのは妥当でなく、また、多くの場合にすでに一般的に使用がされ、あるいは、将来必ず一般的に使用がされるものであるから、これらのものに自他商品又は自他役務の識別力を認めることはできないとの理由による。
また、一定の表示が自他商品(役務)識別力のない商標、例えば、品質表示等であるか否かは、取引社会の事情が変遷するにしたがって、変化するものであるから、過去において、識別力があるとして登録されたものでも、現在においては、登録を認め得ないものがあることは当然である。
しかも、上述の商標法第3条第1項各号にいう自他商品(役務)識別力のない商標には、当然に自他商品(役務)識別力のない商標のほか、本来の意味における識別力の有無を問わず、識別力がないと見なして登録されない商標、すなわち、上述の意味の独占適応性のない商標のほかにも、例えば、多数人にその使用を開放しておかなければ、商取引上、不便を生じ、特定人に独占されると多数人に不測の損害を与えるおそれがある商標(すなわち公益上支障のある商標)、あるいは、たまたま当該商品(役務)について何人も使用しておらず、登録査定時に自他商品(役務)識別力が認められるものであっても、何人も自由に使用し得る商標と同一か又はそのような商標と極めて類似するために、それを他人が自由に使用する場合において、識別力がなくなるおそれがある商標、更には、社会通念上商標として登録する価値が認められず、その使用を一般に開放しておくのが適当とされる性格の商標なども含まれており、商標法第3条第1項第6号は、同項各号を補充し、自他商品(役務)識別力のない商標を総括的に規定しているものである。
してみれば、本願指定商品中の「日本酒」と本願商標「日本人」をとりまく前記諸事情を考慮すると、本願商標は、これをその指定商品中の「日本酒」に使用しても、今日、それが商品の出所を表示し、自他商品(役務)識別標識としての機能を発揮する表示であるとは認識されず、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標であるといわざるを得ないから、商標法第3条第1項第6号に該当するものである。
これにつき、原査定では、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する旨認定しているが、上記のとおり、同第6号は、自他商品(役務)識別力を有しない商標の登録を認めない旨定めた同項各号の総括的規定であって、同項各号と同趣旨と解されるから、同第6号に該当すると見るのが相当である。
なお、請求人は、いくつかの事例を挙げ、本願商標も同様に登録されるべき旨述べているが、それらは、本願商標と構成態様を異にするものなどが大半であって、それらの判断を本件に適用すべき合理的な理由は見当たらず、むしろ、本件においては、上述のとおり、判断するのが相当というべきであるから、請求人の主張は、採用することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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