sokuhyo

Trademark Appeal Case

称呼類似と薬剤誤用

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2005−89026(T2005−89026/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4786726号の指定商品中「第5類 薬剤」についての登録を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4786726号商標(以下「本件商標」という。)は、「CALMATE」の欧文字と「カルメイト」の片仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成12年11月15日に登録出願、第1類「化学品」及び第5類「薬剤」を指定商品として、同16年5月17日に登録をすべき旨の審決がなされ、同年7月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用する商標

請求人は、本件商標の登録の無効の理由として、下記の2件の登録商標を引用しており、いずれも、現に有効に存続しているものである。

(a)登録第1465481号商標(以下「引用商標1」という。)は、「カリメート」の片仮名文字と「KALIMATE」の欧文字とを二段に横書きしてなり、昭和45年10月16日に登録出願、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、同56年6月30日に設定登録され、その後、平成13年3月7日に指定商品を第1類「化学品,植物成長調整剤,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」及び第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」とする指定商品の書換登録がされたものである。

(b)登録第1761718号商標(以下「引用商標2」という。)は、「カリメート」の片仮名文字と「Kalimate」の欧文字とを二段に横書きしてなり、昭和57年8月27日に登録出願、第1類「化学品、薬剤、医療補助品」を指定商品として、同60年4月23日に設定登録、その後、平成17年2月16日に指定商品を第1類「化学品,植物成長調整剤類,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。)」及び第5類「薬剤,歯科用材料,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,耳帯,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド」とする指定商品の書換登録がされたものである。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第4号証を提出した。

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標からは「カルメイト」の称呼が生じ、引用商標からは「カリメート」の他、欧文字より「カリメイト」の称呼が生じる。引用商標より「カリメイト」の称呼が生じるのは、「KALIMATE」の「MATE」の部分は日本語では「仲間」を意味する言葉として、普通に「メイト」又は「メート」として、例えば「C1assmate」は「クラスメイト」又は「クラスメート」として称呼され、認識されているからである。

そこで、「カルメイト」と「カリメイト」を比較した場合、両者は、4音を共通とし、差異音である「ル」と「リ」は、同一のラ行に属する類似した音であるから、これらを一連に称呼した場合、その語韻語調も類似するため紛らわしいものとなり、両者間で誤認混同を生じることは必至である。

したがって、本件商標は、引用商標と類似し、その指定商品も引用商標と同一または類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)商標法第4条第1項第15号について

請求人は、引用商標1を本件商標の出願前の昭和50年(1975年)より現在に至るまで、また、引用商標2を平成14年(2002年)より現在に至るまで、継続して商品「高カリウム血症治療薬(血清カリウム抑制剤)」に使用しており、これらは、年間売り上げ約30億円の当該疾病領域では代表的な治療薬となっているものである。

本件商標と引用各商標の医療用薬剤としての使用を考慮するとき、引用各商標を使用している薬剤が適用疾患とする「高カリウム血症」に対し、現実に「高カルシウム血症」なる疾患も存在し、しかも両者は共に消化器症状をも有する疾病であって、本件商標が薬剤の名称として使用された場合に誤用のおそれを否定することはできないものである。

また、本件商標と引用各商標のそれぞれについて、その語源であると認めることができる元素名「カルシウム」と「カリウム」は、原子量40と39の、ともに第4周期に属する典型金属であって、しかも生体必須金属という共通点もあるため、きわめて類似性が高く、総じて言えば化学的にも薬学的にも誤って認識されるおそれがあると思料されるものである。

したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号にも該当する。

(3)結び

以上、引用商標の使用状況を鑑みるとき、商品区分が同一であることは、本件商標が薬剤分野で使用された場合の誤用のおそれを否定することができず、商標法第4条第1項第11号または同第15号に該当するものであるから、本件商標の第5類「薬剤」の登録は、無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第4号証を提出した。

(1)商標法第4条第1項第11号について

本件商標は、上段に「CALMATE」とアルファベット7文字を同書、同大、同間隔で一連に横書きし、下段に「カルメイト」と片仮名5文字を同書、同大、同間隔で一連に横書きしてなるところ、本件商標は、カルシウム(CALCIUM)に由来する「CAL」、「カル」と、「仲間、友」を意味する「MATE」、「メイト」とからなる合成語(造語)であって、全体としては特定の意味を有さないものであるが、その由来からは、云わば「カルシウムを仲間に、友に」を暗示するものである。

一方、引用商標1は、上段に「カリメート」と片仮名5文字を、下段に「KALIMATE」とアルファベット8文字を、それぞれ同書、同大、同間隔に横書きしてなる。そして、引用商標1は、本件商標と同様の由来を推定すれば、カリウム(KALIUM)に由来する「KALI」、「カリ」と、「仲間、友」を意味する「MATE」、「メート」とからなる合成語と解され、全体としては特定の意味を有さないものであるが、その由来からは「カリウムを仲間に、友に」を意味するものと考えられる。

更に、引用商標2は、上段に「カリメート」と片仮名5文字を、下段に「Kalimate」とアルファベット8文字を同間隔で横書きしてなるものであり、引用商標1と同じく、カリウム(Kalium)に由来する「Kali」、「カリ」と、「仲間、友」を意味する「mate」、「メート」とからなる合成語と解され、その意味するところも引用商標1と同様と考えられる。

そこで、本件商標と引用商標1、2とを比較するに、

(ア)外観について

本件商標と引用各商標とは、上記のとおりの構成からなるものであるから、看者をして全く異なった印象を与え、外観上類似しないことは明白である。特に、短い商標中での長音の有無は、全く異なった印象を与えるものである。

(イ)観念について

上記のとおり、本件商標と引用各商標とは、共に造語であるので比較できないが、あえて、両者の由来からすれば、本件商標は、「カルシウムを仲間に、友に」を示唆するのに対し、引用各商標は、「カリウムを仲間に、友に」を示唆するものと考えられる、それらの由来から示唆されるところを比較したとしても、彼此類似しないものである。

(ウ)称呼について

本件商標は、「カルメイト」の称呼が生じ、一方、引用各商標は、「カリメート」の称呼が生じるところ、この両称呼は、第2音において、「ル」と「リ」、第4音において、「イ」と「一(長音)」の2音において異なるものである。

更に、本件商標の「カル」は、「カルシウム」を、また引用各商標の「カリ」は、「カリウム」をそれぞれ示唆するところから、両者は混同されることなく明確に区別され、聴取されるものである。

特に、「カリ」については、乙第1号証、乙第2号証から明かなように、「カリウムの略称」として古くから知られており、このことは、例えば、小学校や中学校においても、肥料の3要素として「窒素、リン酸、カリ」が教えられ、この「カリ」は、「カリウムの略称」として昔から親しんできたことからも明白である。

以上のように、本件商標と引用各商標とは、外観、観念、称呼のいずれにおいても彼此混同の生ずるおそれのないものであり、商標法第4条第1項第11号の規定には該当しないものである。

なお、請求人は、引用各商標の欧文字より、「カリメイト」の称呼が生じるとし、「カルメイト」と「カリメイト」を比較した場合、両者は4音を共通とし、差異音である「ル」と「リ」は同一のラ行に属する類似した音である旨主張している。

しかしながら、「ル」と「リ」は帯有母音を異にするところから、前者は弱く、後者は強く、互いに聴感を全く異にし、しかも、第2音という、語韻語調の中で明確に聴取されるもので、両者の差異は5音の短い音構成中において全体の称呼に及ぼす影響が極めて大である。また、上記した如く、「カリ」が「カリウム」の略称として広く知られていることを考えあわせると、両者は混同されることなく明確に聴取されるものである。

更に、乙第3号証、乙第4号証は、薬剤を指定商品とし、それぞれ「メイト」、「メート」で称呼検索した結果であるところ、この結果から明かなように、「〇〇メイト」、「〇〇メート」の商標はおびただしい数が登録されており、このことから、「メイト」、「メート」の部分は、もはや、商標としての識別性が乏しく、これらの前の部分である「〇〇」の部分にそれぞれ識別性のウエイトがあるといっても差し支えないものである。

この場合は、本件商標の「カル」の部分と引用各商標の「カリ」の部分に識別力のウエイトがあることになり、これらは2語のうちの1語が「ル」と「リ」と異なり、これらは前記の如く帯有母音を異にすることから強弱、聴感を大きく異にするとともに、更に、「カリ」が「カリウム」の略称として周知されていることを勘案するならば、両者は明確に聴され、混同されることはない。

(2)商標法第4条第1項第15号について

第1に、請求人は、引用各商標は、「高カリウム血症治療薬(血清カリウム抑制剤)」に使用されており、当該疾病領域では代表的な治療薬といえるものであると主張しているが、かかる事実は何ら立証されていない。少なくとも、被請求人は、そのような事実を承知していない。

仮に、引用各商標が高カリウム血症治療薬(血清カリウム抑制剤)として代表的であるとしても、「高カリウム血症」と「高カルシウム血症」とは、前者は腎不全等により血清カリウム値が高くなることによる疾患であり、後者は副甲状腺の病気や癌等により血液中のカルシウム濃度が高くなることによる疾患であり、両者は明確に区別され、治療法も前者が陽イオン交換樹脂により腸管中のカリウムを吸着させ低減する方法等であるのに対し、後者は利尿剤、カルシトニン、ステロイド等のカルシウムを低減する作用を有する薬剤を用いる方法等であり、治療法においても全く異なるものである。

第2に、カルシウムは、周期表第IIA族の元素でアルカリ土類金属であり、2価の陽イオンになりやすいのに対し、カリウムは、周期表第IA族の元素でアルカリ金属であり、1価の陽イオンになり、また水溶液は強いアルカリ性を示し、両者は化学的には全く別異の金属として周知され、取り扱われている。

また、「カルシウム」と「カリウム」は、薬学的にも、上述の如く全く異なる金属として取り扱われている。生体必須金属には、カルシウム、カリウムの他、マグネシウム、リン、ナトリウム、鉄、銅、亜鉛、セレン等多くの金属があり、これらは生体必須金属として共通するから混同するとの請求人の主張は暴論であり、到底承服できないものである。

以上のように、「カルシウム」と「カリウム」とは、化学的にも薬学的にも全く別異の金属として周知され、取り扱われているものであり、仮に、百歩譲って、請求人の主張するように、引用各商標が高カリウム血症治療薬(血清カリウム抑制剤)として代表的な治療薬であるとしても、誤認混同のおそれはないものである。

(3)結語

叙上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号又は同法第4条第1項第15号の規定に該当するものではなく、充分に登録適格性を具備するものであるから、本件審判請求は成り立たないものである。

第5 当審の判断

請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号にも該当する旨主張しているので、この点について判断する。

本件商標は、前記のとおり、「CALMATE」の欧文字と「カルメイト」の片仮名文字とを二段に横書きしてなるものであるから、欧文字の読みを表したものと認められる仮名文字部分に相応して、「カルメイト」の称呼を生ずるものと認められる。

他方、引用商標1は、前記のとおり、「カリメート」の片仮名文字と「KALIMATE」の欧文字とを二段に横書きしてなり、また、引用商標2は、前記のとおり、「カリメート」の片仮名文字と「Kalimate」の欧文字とを二段に横書きしてなるものであるから、引用各商標は、いずれも、欧文字の読みを表したものと認められる仮名文字部分に相応して、「カリメート」の称呼を生ずるものと認められる。

そこで、本件商標から生ずる「カルメイト」の称呼と引用各商標から生ずる「カリメート」の称呼とを比較するに、この両称呼は、第2音において、「ル」と「リ」の音の差異を有し、第4音において、「イ」と「メの長音」の差異を有するものであるところ、第2音における差異音である「ル」と「リ」の音は、いずれも、50音中、同じラ行に属し、舌面を硬口蓋に近づけて、舌の先で上歯茎を弾くようにして発する有声子音(r)を共通にする有声弾音であって、比較的近似した音であり、また、第4音における「イ(i)」と「メ」の長音部分の母音の「エ(e)」の差異にしても、「エ」の音は、「ア」と「イ」の中間の母音であって(岩波書店発行「広辞苑」参照)、発音上、元々「イ」の音にも近い音であるということができる。しかも、「MATE(mate)」の文字部分は、我が国においては、「classmate」の英語を「クラスメイト」と称呼したり、「クラスメート」と称呼したりしている例に見られるように、「メイト」あるいは「メート」と混用されている実情にあるから、第4音における差異も顕著な差異ということはできない。そして、これらの音の差異は、称呼の識別上比較的印象の薄い中間部分における差異である。

そうとすれば、この両称呼は、それぞれを一連に称呼した場合、その語調・語感が似たものとなり、称呼上、相紛れるおそれのある類似の商標といわなければならない。

この点について、被請求人は、両称呼は5音構成中の2音において差異を有するものであり、しかも、本件商標の「カル」は「カルシウム」を、引用各商標の「カリ」は「カリウム」を示唆するばかりでなく、「〇〇メイト」、「〇〇メート」の商標はおびただしい数が登録されていることから、「メイト」、「メート」の部分は、もはや、商標としての識別性が乏しく、これらの前の部分である「〇〇」の部分に識別性のウエイトがあるといっても差し支えないものであるから、両者は、混同されることなく明確に区別され、聴取されるものである旨主張している。

確かに、この両称呼は、5音構成中の2音において差異を有するものではあるが、その差異は、上記したとおり、明瞭な差異とはいい難いものである。そして、本件・引用各商標構成中の「カル」あるいは「カリ」の文字部分から、「カルシウム」あるいは「カリウム」を想起する場合がないとはいえないとしても、本件商標も引用各商標も、同書、同大に構成された造語と認められるものであり、淀みなく一連に称呼されるものであって、その構成上、特に、「カル」あるいは「カリ」の文字部分のみが取引者・需要者に強い印象を与え、その称呼の認識に大きな影響を与えるものということはできない。また、「〇〇メイト」あるいは「〇〇メート」の商標が数多く登録されているからといって、「メイト」あるいは「メート」の部分の識別性が乏しいとはいえず、これを裏付けるに足る証拠も提出されていない。したがって、これらの点についての被請求人の主張は採用できない。

加えて、請求人の提出に係る甲第3号証及び甲第4号証(「カリメート/KALIMATE」の添付文書)によれば、引用商標に係る血清カリウム抑制剤「カリメート/KALIMATE」は、1975年9月に薬価収載され、同年10月には発売が開始された薬剤であり、少なくとも、永年にわたって、高カリウム血症治療薬(血清カリウム抑制剤)として使用されてきた事実が認められるのに対して、本件商標の周知性については、何ら主張・立証されていない。

してみれば、本件商標と引用各商標とは、称呼において相紛らわしい類似の商標であり、外観においては、格別、印象に残る構成上の特徴を有するものではなく、観念においても、いずれも造語と認められるものであって、被請求人が主張している「カルシウムを仲間に、友に」あるいは「カリウムを仲間に、友に」の意味合いも一般的に想起し得る観念ともいえないから、外観、観念における違いを考慮しても、両者は、互いに誤認混同のおそれのある類似の商標といわなければならない。

そして、本件商標の指定商品中の第5類「薬剤」は、引用各商標の指定商品中に包含されているものである。

したがって、本件商標は、その指定商品中の第5類「薬剤」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、第5類「薬剤」についての登録を無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。