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Trademark Appeal Case

虚偽広告による商標不正使用

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2005−30221(T2005−30221/J2)
審判種別取消
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4343270号商標の商標登録は取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

第1 本件商標

本件登録第4343270号商標(以下「本件商標」という。)は、「ヒアロン」の文字と「HYARON」の文字を二段に横書きしてなり、平成10年12月25日に登録出願、第29類「鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を乾燥させて粉状・粒状にした加工食品」を指定商品として、同11年12月10日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第12号証(枝番を含む。)及び参考資料を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、その指定商品について、その通常使用権である有限会社ヒアルロン酸開発研究所(以下「ヒアルロン酸開発」という。)によって使用されたが、広告及び商品説明書の商品に関する記載に偽りがあり、その結果、需要者に商品の品質の誤認を生じさせた。

以下、本件商標の通常使用権者による不正使用の事実を証拠に基づき明らかにする。

(1)通常使用権者による本件商標の使用について

(ア)ヒアルロン酸開発は、平成13年8月1日、本件商標について商標権者から通常使用権の許諾を受けた(甲第3号証の1:平成15年(ワ)第2830号事件(以下「商標権侵害事件」という。)の訴状)。なお、同事件の被告は、株式会社ホワイトリリー(以下「ホワイトリリー」という。)であるが、上記訴状の記載によれば平成13年当時、ホワイトリリーも商標権者から許諾を得た通常使用権者であった。

(イ)ヒアルロン酸開発が本件商標を使用していた事実(甲第4号証ないし甲第7号証)。

(a)甲第4号証の1は、平成13年10月以降(包装用箱側面の賞味期限日(2003.10.23)から逆算)にヒアルロン酸開発が販売した商品「健康食品(複合ムコ多糖含有食品)」(以下「本件商品」という。)の写真であり、甲第4号証の2は、本件商品に添付の商品説明書である。

甲第4号証の2の裏面右下あるQ&Aには、「Q 原材料の安全性は? A “ヒアロン ECMR 105”に使用されているムコ多糖やコラーゲンの原材料は安全性の高い豚や鶏から抽出され厳選された原料のみを使用し、日本国内の工場で生産されています。」と記載されており、本件商品の原料が日本国内で生産されている旨明記している。

(b)甲第5号証の8について

甲第5号証の8は、商品広告用のニュースレター「トサカ物語 第5号」であり、甲第5号証の1(大阪地裁平成15年(ヨ)第20039号事件審尋調書、2頁和解条項1(3))にあるように、ヒアルロン酸開発が作成したものである。同号証3頁「6.Q&Aのコーナー」には、「Q:ECMRは、どうしてヒアルロン酸の含有量が増加したのですか? A:今度の新しいECMRも鶏のトサカよりヒアルロン酸を抽出しています。また、新しいECMRは、角質層、不純物除去のため、まず、植物酵素を加えて取り除き、ヒアルロン酸の含有量の多い真皮層のみにして酵素分解をかけるようにしました。」と記載されており、本件商品の原料が鶏冠であり、鶏冠の角質層を取り除いてから酵素分解する旨の製造方法についても明記されている。

また、甲第5号証の8の3頁左上段に下線を付した部分には、「このECMRは、審査の厳しい米国のFDA(米国食品医薬品局)でも唯一初めて、食用ヒアルロン酸として認められ、輸入、販売が許可されており、より安心して食べることができる健康食品となっています。」と記載され、本件商品の原料は、米国食品医薬品局(以下「米国FDA」という。)の認可を取得した商品であると明言している。

(c)甲第6号証の1及び2について

甲第6号証の1及び2は、インターネット上に掲載された本件商品の広告であり、その1頁には、鶏の全体図が明瞭に描かれ、同2頁の枠内には、「品名:鶏冠抽出加工品 商品名:ヒアロンECMR・105」の記載がある。また、甲第6号証の2の2頁には、「『Hyaron ECMR・105』の原料ヒアルロン酸は、ニワトリの鶏冠から抽出したもので、ECMを含んだ状態で食用として製品化したものです。」と記載されている。

(d)甲第7号証について

甲第7号証は、ホワイトリリーが商標権者から使用の許諾を得て使用していた当時(2002年(平成14年)6月19日)のヒアロンECMRのインターネット広告であるが、その3頁「安全性と品質」の項でも、ヒアロンECMRの原料が鶏冠である旨明記されている。ここに掲載されたヒアロンECMRも前記のようにヒアルロン酸開発が供給していた。

(ウ)以上各書証によれば、ヒアルロン酸開発は、商品「鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を乾燥させて粒状にした健康食品」について、商標「ヒアロン」又は「Hyaron」を使用しており、その商品原料は、日本国内で生産され、米国FDAの認可を取得した安全性の高いものであると宣伝して販売していることが認められる。

(2)商品原料の不実記載について

(ア)ヒアルロン酸開発は、本件商品の原料について「鶏の鶏冠」であると宣伝し販売していたが、真の商品原料は「豚の皮」である(甲第3号証の2、甲第8号証及び甲第9号証)。

(a)甲第3号証の2は、商標権侵害事件の原告準備書面(4)であり、その3頁9及び10行に、「3 通常使用権者(※請求人注:ヒアルロン酸開発のことである。)は、豚の皮から抽出したヒアルロン酸を使用している商品に・・」と記載し、ヒアルロン酸開発の商品原料が「豚皮」である事実を商標権者自身が認めている。

(b)甲第8号証の1は、本件審判の請求人が保有する特許第2787254号(発明の名称「ヒアルロン酸吸収用食品及びその食品の製造方法」)の権利侵害を理由に、株式会社メディカライズ(以下「メディカライズ」という。)を被告として名古屋地裁に提訴した平成13年(ワ)第5322号事件(以下「特許権侵害事件」という。)の被告準備書面(4)の一部であり、また、甲第8号証の2は、同事件の被告証拠説明書の一部である。甲第8号証の1の5頁H項には、「H.二号物件(※請求人注:本件商品である。)の原料組成はハ号物件と略同じで配合割合が異なるのみで、ECMRはヒアデルムコスの別名である。従って、二号物件も結論として本件発明の構成を具備しない。ECMRのみが被告の製品であるとの平成14年6月10日付け準備書面3での主張は錯誤により撤回する。ECMRは、ECMR105も含め被告のOEM製品である。」とあり、また、同3頁C項に「C.ヒアデルムコス(HA・DSCS)の一原料である食用ヒアルロン酸原末は・・ヒアルロン酸95.4%、水4.7g/100g、蛋白質0%からなり、蛋白質は勿論【ペプタイド蛋白】は一切含まない。因みに、この精製ヒアルロン酸の原材料は豚皮である。」とある。

(c)甲第9号証は、2001年(平成13年)8月15日付け健康産業新聞の写しであり、その記事には「ヒアデルムコスの原料が子豚の皮や腸である」旨記載されている。

(イ)以上の事実から、ヒアルロン酸開発の本件商品の原料は、メディカライズが製造する「ヒアデルムコス」そのものであり、豚皮から製造されていることになる。

よって、ヒアルロン酸開発は、本件商品の原料を偽って宣伝し、その結果、需要者に品質の誤認を生じさせた。商品原料に関する表示は、需要者、取引者が注視する重要事項であり、体質的な事情や思想信条に基づき特定の原料を排除しようとする需要者にとって商品選択のよりどころである。したがって、豚皮由来食品を鶏冠由来食品と偽って販売するヒアルロン酸開発の行為は、原料表示の信頼性を揺るがす極めて悪質なものであり、需要者保護の観点から到底許されない。

(3)生産地の不実記載について

(ア)ヒアルロン酸開発は、甲第4号証の2(商品説明書裏面)のQ&Aにおいて、本件商品の原料が日本国内の工場で生産されていると明記しているが、前記製造メーカーの主張によれば、本件商品の原料は、中国内の工場で生産されている(甲第8号証の3及び甲第10号証)。

(a)甲第8号証の3は、特許権侵害事件において検証物として提出された豚皮製造工程ビデオの内容を部分的に撮影した写真(写し)である。同訴訟において、メディカライズ側は、豚皮製造工程ビデオの撮影場所について詳細を公表しなかったものの、中国にあるいずれかの工場であることを明らかにした。そこで、このビデオの撮影場所が中国国内であることを裏付けるべく当該ビデオ映像から作成した資料が甲第10号証(作成者は請求人代理人)である。

(b)甲第10号証は、前記ビデオ映像の一部を静止画として抽出しプリントしたものである。写真番号1ないし6は、甲第8号証の3と対比するため、ほぼ同じ場面を抽出したものである。ビデオは、これらの場面に続いて倉庫に保管されている商品原料を映し出していた。その様子が写真番号7ないし9である。写真番号9は、商品原料を入れた缶容器のラベルであり、そのラベルの生産者欄から「山○○○込生物化工有限公司」という中国法人の名称が読みとれる。また、写真10は、ビデオの冒頭部分に撮影されていた飼料倉庫外観(甲第8号証の3のパノラマ写真に施設名が記載されている。)、写真11は、ビデオに撮影されていた工場内の一部であり、工場の壁面に描かれた漢字からその場所が中国であることが推認できる。

(イ)以上のように、本件商品の原料の生産地は、上記訴訟事件で製造メーカーが提出した証拠より中国であると判断されるのであり、ヒアルロン酸開発は、本件商品の原料の生産地を偽り、需要者を欺いた。いうまでもなく、商品の生産地は、需要者が商品の品質を判断するための重要な要素であり、それを偽る行為は需要者保護の観点から到底許されない。

(4)商品原料の認可取得に関する不実記載について

ヒアルロン酸開発は、甲第5号証の8に、本件商品の原料について、米国FDAの認可を取得したと表記して商品を販売している。

しかしながら、請求人が知る限り、本件商品の原料が米国FDAの認可を取得した事実はなく、未だかつてそれを証明する証拠が提出されていない。したがって、本件商品の原料について、米国FDAの認可を取得したとする表示は虚偽である疑いが濃厚であり、この点でも需要者に対し品質を誤認させている。

2 答弁に対する弁駁

(1)被請求人は、本件商標の指定商品を「鶏の鶏冠から抽出された」としたのは、その出願当時、ヒアルロン酸は鶏の鶏冠からのみ抽出されるものであったためである旨主張する。

しかし、ヒアルロン酸の原料には鶏冠以外に少なくとも臍の緒、眼球、皮膚などが存在するのであって、そのことは本件商標の登録出願前から知られていた(甲第11号証の1ないし3)。したがって、上記被請求人の主張は失当である。

(2)被請求人は、甲第5号証の8について、錯誤により生じたものであり、これ以降、使用権者は該記載は行っていない旨主張する。

しかしながら、甲第5号証の8では、「ヒアロンECMR」の説明について、例えば、「鶏冠の角質層を除去する」というような具体的な製造方法が記載され、現実の原材料とは似ても似つかぬでたらめな製造方法を創作して記載した行為が、錯誤などであろうはずはない。

また、錯誤に気づいて訂正記事を掲載したというような証明もなされていないことからすれば、需要者はそれ以降ヒアロンECMRが鶏冠抽出物であると信じ込まされていたことになるし、新規の需要者に対しては、ホワイトリリー(甲第7号証)やイズミシステム技研(甲第6号証の2)が販売窓口となり、そこにはヒアロンが鶏冠抽出物である、という偽りの情報が掲載され続けているのである。

よって、被請求人の「錯誤」とする主張も、また、「それ以降記載していない」とする主張のいずれもが不正使用の要件を判断する上で参酌すべき事情に当たらない。

(3)被請求人は、甲第6号証の1及び2について、販売店のイズミシステム技研の広告であり、使用権者の作成によるものでない旨主張する。

しかし、販売店は、使用権者に代わってインターネットに商品情報を掲載しているのであり、実質的に使用権者の行為と異ならない。

(4)被請求人は、ホワイトリリーによるインターネット広告の日付は平成14年6月19日である(甲第7号証)が、平成14年6月5日以降、ホワイトリリーは使用権者でなく、したがって、甲第7号証は使用権者による使用とはいえない旨主張する。

しかし、商取引の一般常識からすれば、商品の購入は需要を予測し、在庫切れにならぬよう前もって発注し、その在庫を調整しながら販売するであろうから、平成14年6月5日に、ホワイトリリーが購入した商品の実際の販売時期はそれより後のはずであり、平成14年6月19日の時点で販売している商品は、紛れもなく使用権者から購入した商品である。このことは前記商標権侵害事件において、損害賠償の発生時期を平成14年8月から、としていることでも裏付けられる(甲第3号証の1、5頁)。したがって、平成14年6月19日の時点で、ホワイトリリーは、被請求人から許諾を受けた使用権者であり、甲第7号証は、使用権者による不正使用の事実を立証する証拠に相違ない。

(5)被請求人は、出発原料の相違に関して、ヒアルロン酸そのものに原材料の差異による差はなく、ヒアルロン酸として抽出されていれば、出発原料の相違は問題ない旨主張する。

しかしながら、ある原料からヒアルロン酸を抽出する場合、純度100%にすることは現在の技術では不可能であって何らかの不純物が残存するから、鶏冠由来の原料を使用した商品と、豚皮由来の原料を使用した商品の品質は決して同一でない。なにより鶏冠抽出物を含まぬ商品に鶏冠抽出物を含む商品であるかのごとき不実を表示することは、鶏冠抽出物であることを購入の動機付けとした需要者の期待を裏切り、需要者に多大な迷惑を及ぼすことになるため許されない。ヒアルロン酸に関する出発原料の表示の要不要がどうであろうと、鶏冠抽出物と表示したからには鶏冠抽出物であるべきは至極当然である。

(6)被請求人は、ヒアルロン酸が中国の工場で抽出されている事実は認めながらも、本件の場合、中国で抽出された原材料を日本国内の工場で衛生・品質管理体制の下、最終商品に加工しているのであるから、甲第4号証の2の商品説明の記載に誤りがあるとはいえない旨主張する。

しかし、甲第4号証の2の記載は、そのうちの「日本国内の工場で生産されています」という部分は、原材料にかかるのであって、「原材料は日本国内の工場で生産されています」と解するのが自然である。ムコ多糖の原材料たるヒアルロン酸の原産国は、被請求人も認めるとおり中国であるから、商品説明の記載は、原産国を偽っているとしか理解できない。

(7)被請求人は、原材料の生産地の記載行為については、指定商品又は類似の商品についての登録商標の使用とはいえず、本件商標とは無関係な行為であるから、商標法第53条の規定には該当せず、本件商標の取消事由とはなり得ない旨主張する。

しかし、商標法第53条は、使用権者の使用により商標権者の商品より劣悪な商品を提供して需要者の期待を裏切った場合にも適用されるのであり(工業所有権法逐条解説)、この場合、劣悪な商品を提供する行為と、指定商品についての登録商標の使用とは次元の違う話である。原材料の生産地の記載行為と、指定商品についての登録商標の使用も同様に解釈でき、要は、指定商品について、登録商標の使用をしたその商品の品質を誤認させる行為があったか否かであり、指定商品にヒアロンを付した商品について原産地に関する不実記載を行い、その結果品質を誤認させ需要者の期待を裏切ったという使用権者の行為は、明らかに商標法第53条の規定に該当する。

(8)被請求人は、本件商標の米国FDAの認可に関する不実記載についても同様の主張をするが、この点についても上記の反論が当てはまる。ここで重要な点は、答弁書で、米国FDAの認可を取得した事実が立証されないことであり、その反対解釈として、米国FDAの認可に関する不実記載が証明された。

(9)被請求人は、商標法第53条について、登録商標をその登録形態から逸脱して、著名商標に類似せしめ、需要者に出所誤認混同若しくは品質の誤認を生じせしめる商標の使用に対する懲罰規定である旨述べているが、そうでないことは、前記した工業所有権法逐条解説や学説(甲第12号証)などより明らかである。

3 まとめ

以上のように、本件商標は、通常使用権者が、見掛け上、指定商品又は類似商品についての登録商標又はこれに類似する商標の使用をした結果、需要者に対し、第一に、原料に関して、豚皮抽出品であるものを鶏冠抽出品であるかのように装って品質の誤認を生ぜしめ、第二に、外国産であるものを国内産であるかのように装って品質の誤認を生ぜしめ、第三に、特定機関の認可を取得した商品であるかのように装って品質の誤認を生ぜしめたこと明白であり、これらの行為が使用許諾直後から行われているにもかかわらず、商標権者は通常使用権者の監督を怠った。

したがって、本件商標は、商標法第53条第1項の規定に該当し、その登録を取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、「本件審判は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。

1 商標権者は、本件商標が付された本件商品(甲第4号証の1)について、その原材料の一つであるヒアルロン酸が豚皮から抽出されていることを認める。商標権者が本件商標の指定商品を「鶏の鶏冠から抽出された」としたのは、本件商標の登録出願当時、ヒアルロン酸は鶏の鶏冠からのみ抽出されるものであったためである。

2 甲各号証について

(1)甲第4号証の1について

本件商品の包装箱の底面に記載の商品名、名称、原材料名にはそれぞれ、「ECMR・105」、「美容健康食品(複合ムコ多糖含有食品)」、「ヒアルロン酸ムコ多糖・デルマタン硫酸ムコ多糖・・」等とあり、消費者に品質の誤認を与える記載は見当たらず、請求人の主張は認められない。

(2)甲第4号証の2について

「使用されているムコ多糖やコラーゲンの原材料は安全性の高い豚や鶏から抽出され」とあり、消費者に品質の誤認を与える記載は見当たらず、請求人の主張は認められない。

(3)甲第5号証の2及び3について

甲第5号証の1は、菊池誠氏個人の作成にかかるもので、ヒアルロン酸開発の作成によるものではなく、かつ、商標の使用(商標法第2条第3項)ではないから、請求人の主張は認められない。

(4)甲第5号証の4ないし7について

いずれも発行が1999年及び2000年であり、本件商標の使用権設定時(平成13年(2001年)8月)以前のものであるから、通常使用権者の使用ではなく、請求人の主張は認められない。

(5)甲第5号証の8について

商標法第2条第3項第8号において、商標の使用とは「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付けて展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」と定められており、甲第5号証の8の「今度の新しいECMRも鶏のトサカよりヒアルロン酸を抽出しています。」という記載は、記述的態様と認められ、商標的使用とはいい難く、請求人の主張は認められない。

仮に該行為が商標的使用に該当するとしても、その記載は、ヒアルロン酸開発の商品原料について過去の錯誤により生じたものであり、これ以降、ヒアルロン酸開発による行為において、該記載は一切行っておらず、いずれにしても請求人の主張は認められない。

(6)甲第5号証の9について

需要者に商品の品質の誤認を与える記載は見当たらず、かつ、この刊行物は、商標的使用態様ではなく、請求人の主張は認められない。

(7)甲第6号証の1及び2について

販売店のイズミシステム技研の作成にかかるインターネットの広告であり、ヒアルロン酸開発の作成によるものでないから、ヒアルロン酸開発の不当な使用とはいえず、商標権者の管理義務範囲とはいい難い。

(8)甲第7号証について

ホワイトリリーは、甲第3号証の1(4頁)のとおり、平成14年6月5日以降、ヒアルロン酸開発からの商品購入を中止したにもかかわらず、本件商標を使用していたことから、商標権者は、現在該会社に対して、商標権侵害事件を請求中であり、甲第7号証は、ヒアルロン酸開発による使用とはいえず、請求人の主張は認められない。

3 前記2より、ヒアルロン酸開発による需要者に品質の誤認混同を与える行為は認められない。たとえ甲第5号証の8をもってその行為になり得るとしても、前記2(5)のとおり、これ以降はヒアルロン酸開発による該記載は一切行われていない。

したがって、需要者に品質の誤認を与える継続的行為はなく、錯誤によるただ一度の行為のみにより本件商標を取消されるのは過剰制裁というべきである。

また、出発原料の相違に関して、ヒアルロン酸そのものに原材料の差異による差はなく、ヒアルロン酸として抽出されていれば、出発原料の相違は問題ない。ヒアルロン酸は、多糖類の一種であり、D−グルコロン酸とN−アセチル−D−グルコサミンが結合したものであるが(乙第2号証)、ムコ多糖類である点及びD−グルコロン酸を含む基本構造からなる点から、ヒアルロン酸と類似物質である、例えば、医薬品のヘパリン(乙第3号証)について、乙第4号証にあるように、その組成は「本剤は健康な食用獣(ウシ又はブタ)の腸粘膜から得たヘパリンナトリウムの製剤で」とあり、厚生省もその出発原料がウシであるかブタであるかの明示を求めていない。ヒアルロン酸においても、鶏由来と豚由来で出発原料が相違しても、ヒアルロン酸の品質に違いはなく、化学成分も同一であり、厚生省もその出発原料の明示を求めていない。本件商標の使用として認められる商品説明書(甲第4号証の2)中においても、「原材料は安全性の高いブタや鶏から抽出され」と記載をしており、ヒアルロン酸の品質の誤認を生じさせることはしていない。かつ、ヒアルロン酸開発が消費者に商標権者の商品より劣悪な商品を提供するものでもなく、優劣の誤認を生じさせることはしていない。よって、ヒアルロン酸開発が本件商標を不当に使用しているとはいえない。

4 ヒアルロン酸開発の商品の原材料の一つであるヒアルロン酸が中国の工場で抽出されている事実は認める。

しかしながら、生産国とは本来「実質的な変更をもたらす行為」が行われた国のことを指し、本件の場合、中国で抽出された原材料を日本国内の工場で衛生・品質管理体制の下、最終商品に加工しているのであるから、甲第4号証の2の「抽出され厳選された原料のみを使用し、日本国内の工場で生産」という商品説明の記載に誤りがあるとはいえない。

5 商標法第53条は、通常使用権者が指定商品若しくはこれに類似する商品についての登録商標の使用であって、商品の品質の誤認を生ずるものをしたときについて当該商標を取り消されると規定しており、登録商標とは本来的には無関係な行為を理由として取り消されるべきものでない。

したがって、原材料の生産地の記載行為については、指定商品又は類似の商品についての登録商標の使用とはいえず、本件商標とは無関係な行為であるから、商標法第53条の規定には該当しないものであり、また、本件商品原料が米国FDAの認可を取得したとする記載について、ヒアルロン酸開発による該広告は、指定商品又は類似の商品についての登録商標の使用とはいえず、本件商標とは無関係な行為であるから、商標法第53条の規定に該当しない。

6 まとめ

以上、請求人の提出する証拠は、本件商標の使用権者の使用として認められないものや商標権者の監督義務の範囲外のものであり、また、出発原料の相違に関して、抽出されるヒアルロン酸そのものに差はなく、本件商標の使用として認められる商品説明書の記載にも問題はない。

また、元来商標法第53条は、「ELLE Marine」事件(東京地裁平成8年(ワ)23034号)のように、登録商標をその登録形態から逸脱して、著名商標に類似せしめ、需要者に出所誤認混同若しくは品質の誤認を生じせしめる商標の使用に対する懲罰規定であって、本件は、この立法趣旨と異にし、商標法第53条の規定による取消事由には該当しない。

したがって、通常使用権者による本件商標の使用は、需要者に品質の誤認及び優劣の誤認を与えているとはいえず、商標法第53条の規定には該当しないものであり、本件商標の登録は取り消されるべきではない。

第4 当審の判断

1 当事者間に争いのない事実

(1)被請求人(本件商標権者)は、平成13年8月1日に、ヒアルロン酸開発との間で、本件商標について、「第29類 鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を乾燥させて粉状、粒状にした加工食料品」を使用商品とする独占的通常使用権及び再使用権を許諾する契約を締結したこと、上記契約の有効期間は、契約締結日から2年間であり、ヒアルロン酸開発より契約更新の請求があった場合は、協議によりさらに1年間更新することができるとするものであること(乙第1号証)。

(2)本件商品(甲第4号証の1)は、その原材料の一つであるヒアルロン酸が、鶏の鶏冠から抽出されたものではなく、豚皮から抽出されたものであり(6.答弁の内容(2)取消事由の認否)、その製造年月日は、平成13年10月であること。また、本件商品の包装外箱及び包装容器並びに広告に表示された「Hyaron」が本件商標に類似する商標であること。

2 被請求人とヒアルロン酸開発との間で締結した前記使用許諾契約の日である平成13年8月1日以降に作成又は発行されたと認め得る甲第4号証の1及び2、甲第5号証の8、甲第6号証の1及び2、甲第8号証の1及び2並びに甲第9号証によれば、以下の事実が認められる。

(1)本件商品(甲第4号証の1)の包装外箱の上面には、「Hyaron」と「ECMR・105」の各文字が二段に横書きされ、同底面には、「商品名:ECMR・105」、「名称:美容健康食品(複合ムコ多糖含有食品)」、「原材料名:ECMR・105(ヒアルロン酸ムコ多糖・デルマタン硫酸ムコ多糖・コンドロイチン硫酸ムコ多糖・アミノ酸)・・・」、「総発売元:ヒアルロン酸開発研究所」などの文字が、また、同正面には、「ヒアロン ECMR・105」、「Hyaron ECMR・105」などの文字が記載されていること。また、包装容器の正面には、「Hyaron」と「ECMR・105」の各文字が二段に横書きされていること。さらに、本件商品の説明書(甲第4号証の2)の表面の最上段に、包装外箱の上面と同様、「Hyaron」と「ECMR・105」の各文字が二段に横書きされ、同裏面の右下には、「“ヒアロン ECMR 105”に使用されているムコ多糖やコラーゲンの原材料は安全性の高い豚や鶏から抽出され厳選された原料のみを使用し、日本国内の工場で生産されています。」と記載されていること。

(2)ヒアルロン酸開発が作成した本件商品の広告と認められる「トサカ物語 第5号」(2001年9月発行:甲第5号証の8)の3頁の「6.Q&Aのコーナー」には、「A:今度の新しいECMRも鶏のトサカよりヒアルロン酸を抽出しています。」と記載されていること。

(3)インターネット上に掲載された本件商品の広告(2002年6月19日及び2003年7月28日検索:甲第6号証の1及び2)には、1頁上部枠内に、鶏の図形と横書きにした「Hyaron ECMR 105」の文字及び本件商品の包装外箱と包装容器の写真が掲載されていること。また、同下部枠内には、本件商品の包装外箱と包装容器の写真が掲載され、さらに、同2頁には、「『Hyaron ECM・E』の原料ヒアルロン酸は、ニワトリの鶏冠から抽出したもので、EMCを含んだ状態で食用として製品化し・・」(但し、甲第6号証の2は、上記『Hyaron ECM・E』の部分が『Hyaron ECMR・105』となっている点において相違する。)とあり、その下の枠内には、「品名:鶏冠抽出加工品」、「商品名:ヒアロンECMR・105」、「販売:ヒアルロン酸開発研究所」、「製造:ヒアルロン酸開発研究所」、「販売店:イズミシステム技研」などの文字が記載されていること。

(4)メディカライズの製造に係る「ECMR」は、ヒアデルムコスの別名であって、ヒアデルムコスの一原料である食用ヒアルロン酸の原材料は、豚皮であること。そして、上記「ECMR」は、「ECMR105」も含め、OEM製品であること(甲第8号証の1及び2、甲第9号証)。

3 被請求人を原告とし、ホワイトリリーを被告とする商標権侵害事件の判決(参考資料)によれば、おおむね以下の事実が認められる。

(1)本件請求人の代表者である林成次は、昭和58年ころ、鶏冠からヒアルロン酸を抽出する方法の研究を開始し、平成3年ころ、鶏冠から抽出したヒアルロン酸について、発明の名称を食品及びその食品の製造方法として特許出願をし、該特許出願は、平成10年6月に特許されたこと。

(2)林成次は、自己の開発した鶏冠から抽出したヒアルロン酸を使用した健康食品(以下「請求人商品」という。)に、「ヒアロン」との名称を付すことを発案し、請求人商品の販売準備のための会合の中で、請求人商品の名称を「ヒアロン」とする予定であると告げていたこと。また、林成次は、菊池誠に対し、「ヒアロンECME」という名称で請求人商品を販売することを承諾したこと。

(3)菊池誠は、請求人商品を販売するため、平成11年1月19日、ヒアルロン酸開発を設立したこと。そして、ヒアルロン酸開発は、以後、請求人から請求人商品を購入し、「ヒアロンECME」の名称を付して販売したこと。また、ヒアルロン酸開発は、請求人との間で、請求人商品について、請求人の直系販売代理店となるための販売代理店契約を締結したこと。

請求人は、ヒアルロン酸開発に対し、平成11年2月1日、請求人商品について、「ヒアロンECME」の名称を使用することを許可する旨の覚書を交付したこと。

(4)被請求人が平成10年12月25日に登録出願した本件商標が、平成11年12月10日に登録された後、被請求人は、平成13年8月1日にヒアルロン酸開発との間で、前記認定の本件商標の使用許諾契約を締結し、ヒアルロン酸開発は、請求人に対し、平成13年7月4日ころ、請求人商品についての販売代理店契約を解除する旨の意思表示をしたこと。

(5)以前より請求人との間で、請求人商品についての取引のあったホワイトリリーは、平成13年8月以降、ヒアルロン酸開発から、メディカライズが製造した健康食品を購入して販売したところ、顧客から、メデイカライズが製造した健康食品の効果について苦情を受けることがあったので、メディカライズに対し、同健康食品の成分を尋ねたところ、鶏冠ではなく豚皮から抽出されたヒアルロン酸が使用されているとの説明を受けたこと。その後、ホワイトリリーは、ヒアルロン酸開発との間の取引を打ち切り、平成14年6月5日より、請求人から請求人商品を購入したこと。

4 前記1ないし3を総合すると、本件商標の通常使用権者であるヒアルロン酸開発は、平成13年8月1日に、被請求人より、「第29類 鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を乾燥させて粉状、粒状にした加工食料品」について、本件商標の使用権を許諾され、それまでに取引のあった請求人商品に替わって、メディカライズの製造に係る「豚皮から抽出されたヒアルロン酸を原材料とした健康食品」(本件商品)に、本件商標に類似する「Hyaron」を使用していたものと認めることができ、該事実は、被請求人も熟知していたものである。

そして、ヒアルロン酸開発の取扱いに係る上記「豚皮から抽出されたヒアルロン酸を原材料とした健康食品」は、本件商標の指定商品である「鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を乾燥させて粉状・粒状にした加工食品」と、商品の生産者、需要者、取引系統等を共通にする場合が多い類似の商品と認められる。

ところで、本件商標の指定商品である、いわゆる健康食品は、健康を向上させ、あるいは持続させるために摂取するのが一般的であり、その需要者は、自己の体質等に適合する原材料が使用されているか否かなど、当該健康食品の原材料については、きわめて強い関心を持っているというべきである。

そうすると、上記認定のとおり、本件商標の通常使用権者が行った本件商品の宣伝広告である「トサカ物語 第5号」(甲第5号証の8)に、「今度の新しいECMRも鶏のトサカよりヒアルロン酸を抽出しています。」と記載し、また、インターネットの広告記事(甲第6号証の1及び2)に、「Hyaron ECMR・105」又は「Hyaron ECM・E」の原料ヒアルロン酸が鶏の鶏冠から抽出したものである旨を記載し、さらに、同広告記事には、「品名:鶏冠抽出加工品」、「商品名:ヒアロンECMR・105」と記載したことは、本件商品が豚皮から抽出されたヒアルロン酸を原材料とした商品であるにもかかわらず、これらの広告を見た一般の消費者をして、鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を原材料とした商品であるかのように、商品の品質について誤認を生じさせたというべきである。

5 被請求人の主張について

(1)被請求人は、甲第4号証の1及び2について、消費者に品質の誤認を与える記載は見当たらない旨を、甲第5号証の8について、商標的使用ではなく、仮に商標的使用に該当するとしても、その記載は、ヒアルロン酸開発の商品原料について過去の錯誤により生じたものである旨を、また、甲第6号証の1及び2について、販売店のイズミシステム技研の作成にかかるものであるから、ヒアルロン酸開発の不当な使用とはいえず、商標権者の管理義務範囲とはいい難い旨を主張する。

しかしながら、本件商品の説明書(甲第4号証の2)によれば、「“ヒアロン ECMR 105”に使用されているムコ多糖やコラーゲンの原材料は安全性の高い豚や鶏から抽出され」との記載があり、この記載は、一般の消費者に本件商品の原材料の一つであるヒアルロン酸が豚皮のみで製造されたものではなく、あたかも鶏から抽出された原材料をも含んでいるかのような印象を与えるものであり、上記のような記載をすることによって、本件商品の原材料の一つが豚皮から抽出されたヒアルロン酸であることを曖昧にし、一般の消費者に原材料について誤認を生じさせたものである。また、広告的使用(商標法第2条第3項第8号参照)といえる甲第5号証の8、甲第6号証の1及び2においては、本件商品の原材料について、現実のものと異なる記載があり、その品質の誤認を生じさせるものであることは明らかである。

さらに、ヒアルロン酸開発は、平成13年7月4日に、請求人との販売代理店契約を解除する意思表示をしており、遅くとも被請求人との間でした本件商標の使用許諾契約を締結した平成13年8月1日以降においては、ヒアルロン酸開発が販売した本件商品は、メディカライズの製造に係るものと認められることや前記2の経緯からみれば、ヒアルロン酸開発が「トサカ物語 第5号」(甲第5号証の8)に、本件商品の原材料を錯誤により記載したものとは到底認めることはできない。

また、インターネットの広告記事には、「品名:鶏冠抽出加工品」、「商品名:ヒアロンECMR・105」等の文字と共に、「販売:ヒアルロン酸開発研究所」、「製造:ヒアルロン酸開発研究所」が記載されているところから、ヒアルロン酸開発は、本件商品の販売の総元締めであって、イズミシステム技研は、本件商品の販売店の一つにすぎないものと認められる。

(2)被請求人は、本件商品の原材料の一つであるヒアルロン酸について、ヒアルロン酸として抽出されていれば、鶏由来と豚由来で出発原料が相違しても、ヒアルロン酸の品質に違いはなく、化学成分も同一であり、厚生省もその出発原料の明示を求めていないのであって、ヒアルロン酸の品質の誤認を生じさせることはしていない旨主張する。

しかし、ヒアルロン酸の出発原料が鶏由来であるか、あるいは豚由来であるかは、ヒアルロン酸であること自体においては、変わりがないとしても、通常使用権者は、本件商標の指定商品である「鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を乾燥させて粉状、粒状にした加工食品」についての使用権を許諾されたのであり、その使用権に基づいて通常使用権者が販売する本件商品は、通常使用権者が宣伝広告したように、「鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を原材料とした商品」でなければならないところ、実際は、豚皮から抽出されたヒアルロン酸を原材料とした健康食品であったのであるから、商品の品質の優劣の問題はさておいても、通常使用権者の上記使用は、鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を原材料とした健康食品を求める消費者に対し、商品の品質の誤認を生じさせ、かつ、その期待を裏切る行為というべきものである。

(3)被請求人は、商標法第53条は、登録商標をその登録形態から逸脱して、著名商標に類似せしめ、需要者に出所誤認混同若しくは品質の誤認を生じせしめる商標の使用に対する懲罰規定であって、本件は、この立法趣旨と異にするものであり、通常使用権者による本件商標の使用は、需要者に品質の誤認及び優劣の誤認を与えているとはいえず、商標法第53条の規定には該当しないものであり、本件商標は取り消されるべきではない旨主張する。

ところで、商標法第53条にいう「商品の品質の誤認を生ずるものをしたとき」とは、「商標の構成等からして、その商標がその商標の使用されている商品と別個の商品を示すものであるかのように世人をして誤認をさせる場合、すなわち商標と商品一般との関係からして生ずる品質の誤認をも意味するもの」(甲第12号証)を含むと解されるところ、前記認定のとおり、本件商標は、「ヒアロン」の片仮名文字と「HYARON」の欧文字を二段に横書きしてなるものであり、指定商品を「鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を乾燥させて粉状、粒状にした加工食品」とするものである。

そして、本件商標を構成する文字は、全体として特定の意味を持たない造語よりなるものであって、該文字からは、その指定商品の産地を表す(又は想起させる)文字や米国FDAの認可を取得したものであることを表す文字が含まれていないから、本件商標に接する需要者は、その使用に係る商品が中国産の商品であるか、あるいは日本産の商品であるかについて、商品の品質について誤認を生ずる余地はなく、また、同様に、米国FDAの認可を取得した商品であるか否かについても、商品の品質について誤認を生ずる余地はないというのが相当である。

しかしながら、前記のとおり、本件商標の通常使用権者は、本件商標の指定商品である「鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を乾燥させて粉状、粒状にした加工食品」(但し、前記認定のとおり、商標使用許諾契約書(乙第1号証)には、「第29類 鶏の鶏冠から抽出したヒアルロン酸を乾燥させて粉状、粒状にした加工食料品」と記載されている。)についての使用許諾を得ていながら、本件商品が「豚皮から抽出されたヒアルロン酸を原材料とした健康食品」であることを知りつつ、これを販売していたものである。

そして、商標法第53条は、「何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる」と規定しており、この趣旨は、商標の不当な使用によって、商品の出所の混同を生じたり、品質の誤認を生ずるなどの一般公衆の利益が害されるような事態が発生することを防止し、かつ、そのような場合に当該商標権者に制裁を課すことにより、需要者を保護するという公益的性格を有するものであると解されるから、本件商標の通常使用権者による本件商品についての使用は、需要者をして商品の品質の誤認を生じさせるものであって、かつ、需要者の期待を裏切る行為というべきものであるから、商標法第53条の規定に該当するものといわなければならない。

(4)したがって、上記(1)ないし(3)に関する被請求人の主張はいずれも採用することができない。

6 むすび

以上のとおり、本件商標の通常使用権者が指定商品に類似する商品「豚皮から抽出されたヒアルロン酸を原材料とした健康食品」についての本件商標と類似する「Hyaron」の使用は、商品の品質の誤認を生じさせるものであって、この点について、本件商標権者は、熟知していたものであり、注意義務を怠ったものというほかはなく、本件商標の登録は、商標法第53条の規定により、取り消すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

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