Trademark Appeal Case
「園芸療法士」の公的誤認
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2003−8335(T2003−8335/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「園芸療法士」の文字を横書きしてなり、第41類「教育」を指定役務として、平成14年1月30日に登録出願、その後、指定役務については、当審における同17年9月6日付けの手続補正書により、第41類「園芸療法学を学ぶ者に対する資格の認定・資格の付与」と補正されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、『園芸療法士』の文字を書してなるが、一般に『○○士』は、国家、地方公共団体若しくはこれらの機関等が行う試験に合格した者が取得できる資格を表すものとして使用されているものであるところ、このようなあたかも国家試験に合格した者に与えられたかのような文字を一私人たる出願人が自己の商標として本願指定役務に採択・使用することは、需要者にその役務が該名称の者の取扱いに係るものであるかの如く誤認され、商取引における秩序を乱すおそれがあるものと認められるから、穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
本願商標は、「園芸療法士」の文字よりなるところ、末尾に「士」の付された語の通常の意味は、「広辞苑」第5版(1998年11月11日 岩波書店発行)や「講談社カラー版日本語大辞典」(1992年1月28日発行)によれば、「一定の資格・役割をもった者」、「特別の資格・職業の人」などといったものであり、その用語例の中で、一般国民にとって接する機会が多く、一般国民にとって知られている度合いの大きいものの多くは、「弁護士」、「栄養士」、「公認会計士」、「学士」をはじめ、税理士、建築士、不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士、行政書士など国家資格に係るものである。
そして、国家資格に係るものは、国家が、公共の福祉その他政策上の目的のために、国民の職業選択の自由を制限してでも、一定の能力を有すると判定された者に限って、一定の地位ないし権限を付与する必要があると認めて、法令をもって、そのように定めたものであり、そのために、国家資格に伴う地位ないし権限は、必然的に対世的かつ排他的なものとなる。これに対して、民間資格は、上記のような必要に基づくものでも、法令に根拠を有するものでもなく、対世的かつ排他的な地位ないし権限の付与を伴うものでもない。このように、国家資格と民間資格とでは、一般国民に対して現実に果たしている役割の重要性において比較にならない相違がある。
これらの事情の下では、一般国民は、末尾に「士」の付された名称に接した場合、一定の国家資格を付与された者を表すものと理解することが多いと解するのが相当である。
しかして、「朝日現代用語 知恵蔵 2005」(2005年1月1日 朝日新聞社発行)1032頁には、「園芸療法」について、「植物を育てることで得られる癒し効果を期待して、高齢者の痴呆症状や障害者のリハビリテーション、健やかな子供の発育のための療法の1つ。地方自治体や大学、病院施設でも、園芸療法を取り入れた様々な試みや研究が始まった。日本園芸療法士協会では、園芸療法士の資格認定を行っている。また、兵庫県立淡路景観園芸学校(淡路島)では、2002年から米国園芸療法協会とも連携して、園芸療法士の資格取得に取り組む課程を取り入れている。」との記載がされており、また、「イミダス 2005」(2005年1月1日 株式会社集英社発行)732頁には、「園芸療法」について、「心身に障害を持つ人や高齢者が植物に接することによって、身体的・精神的健康の回復または向上を促す療法。欧米では、19世紀から実施されているといわれ、大学には園芸療法に関連した講座があり、園芸療法士の資格認定制度もある。花や野菜を育てると、育てた喜びと満足感が得られ、精神的効果が大きい。また、作業をすることで腕や指を動かすなどの運動効果、リハビリ効果もある。」との記載がされている。
さらに、株式会社ジー・サーチの、新聞記事情報中の、2005年4月19日 朝日新聞社 大阪朝刊 21頁には、「園芸療法士の資格、学会が独自の制度」、「園芸療法の普及に取り組む『人間・植物関係学会』(会長=松尾英輔・東京農大教授)は今春、学会独自の資格認定制度を設けた。自治体や民間団体の認定する資格はすでにあるが、教える内容や基準がまちまち。そのため、学会が一定の条件を設けることで園芸療法の質向上をめざす。同学会の認定資格は『園芸療法アシスタント』『登録園芸療法士』『高等園芸療法士』の3種類にわかれる。それぞれ認定した講座を一定時間受講するほか、医療や福祉の知識と実務経験も求められる。なかでも高等園芸療法士は、登録園芸療法士の資格を取った後、5年以上の実務経験が必要になる。また、いずれも書類審査があるほか、同学会員であることも必要だ。ただし05、06両年は、移行措置期間として一部の条件が緩和される。現在、植物に触れることで症状などの緩和をはかる園芸療法の分野に国家資格はない。各団体がそれぞれ資格認定をしているため、『レベルがばらばらだ』という指摘があった。松尾会長は『医療や福祉の現場で園芸療法士を求める要望は増えている。雇う方も安心して雇えるような資格にしたい』と話している。問い合わせは兵庫県立淡路景観園芸学校内の同学会事務局」との記載がされており、また、2005年5月21日 朝日新聞社 東京朝刊 21頁には、「専門家を育成 園芸療法の効果的なプログラムを作り、実践できる専門家を育てようという動きも広がってきた。兵庫県立淡路景観園芸学校は02年、公立校として初めて園芸療法士育成課程を設けた。4年制大学か造園・福祉系の短大を卒業した人が対象で、半年間の講義と半年間の現場での実習で県認定の『園芸療法士』の資格が得られる。すでに30人が卒業し、多くが福祉施設や医療機関で働いている。札幌国際短大や大阪の梅花女子短大など6校では、全国大学実務教育協会(JAUCB)の規定した園芸療法の講義があり、必要単位を取ると同協会が『園芸療法士』として認定する。また、日本園芸療法普及協会が級制度を設けているほか、日本園芸療法研修会も独自に講座を開いている。しかし、これらの資格は認定基準がバラバラで、同普及協会の児玉専務理事は『米国のように、資格をきちんと整備し、統一した考え方を確立していくことが普及につながる』と話す。」との記載がされている。
それに加えて、インターネットのホームページの記事情報(http://www.iwad.ac.jp/)によると、IWAD環境福祉専門学校(広島市南区比治山本町14-22 )においても、福祉療法学科(園芸療法コース)の所定の課程を修めれば、「園芸療法士」の資格が取得可能であるとしているところである。
以上の事実を総合勘案すれば、本願商標「園芸療法士」の文字は、地方公共団体である兵庫県の認定する資格(公的資格)と同一名称であり、また、全国大学実務教育協会(請求人が代表者である。)のほか、日本園芸療法士協会及びIWAD環境福祉専門学校の各々の団体等が認定する資格とも同一の名称であるばかりでなく、園芸療法についての日本園芸療法普及協会では、級制度を設けているほか、日本園芸療法研修会も独自に講座を開いているところである。
してみれば、本願商標「園芸療法士」に接する取引者、需要者は、これを兵庫県の認定する公的職業資格であるかのように誤信する場合があることを否定できないから、出願人がこれをその指定役務に使用するときには、公的資格に寄せる一般国民の信頼を損ない、健全な競業秩序維持に反するものといわなければならない。加えて、上記のとおり、請求人(出願人)が代表を務める全国大学実務教育協会のほか、「園芸療法士」の資格は、各種団体の資格名称として付与(使用)されているばかりでなく、そのほかにも、独自の級制度を設けたり、講座を開いている団体等が存在することからすれば、請求人のみが「園芸療法士」の文字を商標として採択し、その指定役務について排他独占的に使用することは、商取引における公正な秩序を乱すおそれがあるものと認められるから、穏当でないものといわざるを得ない。
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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