Trademark Appeal Case
著名商標の類否と商品範囲
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2005−90599(T2005−90599/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本件商標
本件登録第4889501号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第25類「 被服,履物,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成17年3月14日に登録出願、同年8月19日に設定登録されたものである。
2 登録異議の申立ての理由
(1)申立人及び申立人関連会社並びに「川崎重工業グループ」
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、船舶、車両、航空機・宇宙関連機械、自動車、二輪自動車、原動機、産業機械器具等の多岐にわたる我が国屈指の重工業メーカーであり、かつ、世界的な総合機械メーカーであり、「川崎重工業」、「川重」、「Kawasaki Heavy Industries」及びそのイニシャルの「KHI」が、申立人の著名商標であることは顕著な事実であると思慮する。
また、平成17年3月現在、国内の申立人関連会社は28社があり、そのほとんどが、社名に「川崎」、「カワサキ」又は「川重」の文字を含むものであり、申立人が定める「CIマーク」の使用に関する規定(甲第4号証の1及び2)に基づき、 「KAWASAKI」及び「Kawasaki」を川崎重工グループであることを表示するものとして広く使用している。
(2)引用商標及びその著名性
申立人は、上記のとおりの広範な事業分野において使用する商標「KAWASAKI 」及び商標「Kawasaki」(以下、これらの商標をまとめて「引用商標」という。)について、申立人及び申立人関連会社を含めた企業グループの「CIマーク」として位置づけ、自己及び申立人関連会社の業務に係る工業用機械、二輪自動車、ヘリコプター等や、大型の工業プラント等の商品及び役務について広く使用しており、その結果、本件商標の出願時(平成17年3月14日)前より、二輪自動車をはじめ、工業用機械や大型プラント等が取り扱われる業界において、申立人及び申立人関連会社の企業グループである「川崎重工グループ」を表示する略称として、我が国の需要者間において広く知られるに至った。
また、商標「Kawasaki」が、我が国において本件商標の出願時に、既に申立人及び申立人関連会社である株式会社カワサキモータースジャパン(以下、両者をまとめて「申立人等」という。)の業務に係る商品「二輪自動車」を表示するものとして、我が国の需要者間において広く知られていたことについては、登録第4465066号商標が、商標法第3条第2項の適用を受けて「二輪自動車」を含む商品について登録されていることからも明らかである(平成13年4月6日登録 甲第7号証)。
そして、申立人等は、二輪自動車乗車用被服や手袋について商標「Kawasaki」を使用しているが、そのような専用品のみならず、日常生活において着用するシャツ、Tシャツ、帽子等の被服類、タオル、バッグ、キーホルダー、マグカップ等についても、商標「Kawasaki」を広く使用している(甲第8号証の1及び2)。
二輪自動車及び上記被服類やタオル等の商品の宣伝広告のために申立人等が過去5年間に投下した宣伝広告費用は、平成12年度が5億4,000万円、平成13年度が6億7,000万円、平成14年度が7億6,000万円、平成15年度が7億5,000万円、平成16年度が5億8,000万円である。
以上を要するに、商標「Kawasaki」は、平成13年4月の時点において、商品「二輪自動車」等について我が国で周知著名であり、現在もその著名性は維持されている。そして申立人等は、商標「Kawasaki」を、商品「被服」、「帽子」、「ベルト」等について使用しており、上記の金額を投入してそれらの宣伝広告を行った。さらに、従来は、二輪自動車運転時の防寒用被服として二輪自動車の需要者(運転手・ライダー)が主に着用していたレザーパンツやレザージャケット等のライダー用被服が、一般のファッションアイテムとして一般需要者に受け入れられて久しく、それまで一部の二輪自動車愛好家のファッションであった、いわゆるライダーズスタイルは現在では一般需要者の間にも深く浸透している。
その結果、商標「Kawasaki」は、遅くとも、本願商標の出願の時には、申立人等の業務に係る商品「被服」、「帽子」、「ベルト」及び「二輪自動車乗車用の被服・手袋・ブーツ」についても、二輪自動車のユーザーや二輪自動車ファンのみならず、我が国の一般需要者間において広く知られた商標となるに至っていたと判断してしかるべきである。
(3) 商標法第4条第1項第8号の該当性
上述したとおり、申立人等及び申立人関連会社は、「KAWASAKI」及び「Kawasaki」を、川崎重工グループを表示するものとして、永年に渡り国内外で広く使用してきた。
その結果、「KAWASAKI」及び「Kawasaki」は、本件商標の出願の時には、申立人を主とする「川崎重工業グループ」を表示する略称として、既に我が国で著名となっている。
そして、申立人及び申立人の関連会社は、本件商標権者に対して、本件商標の登録を承諾していない。
したがって、商標の構成中に「Kawasaki」の文字を含む本件商標は、申立人を主とする「川崎重工業グループ」の著名な略称を含む商標であるから、商標法第4条第1項第8号の規定に違反して登録されたものであると言わざるを得ない。
(4) 商標法第4条第1項第10号の該当性
本件商標の「Yukiko」の部分は、上下左右反転して表示されていることから、需要者等が本件商標を一瞥した場合、該部分を上下左右反転して表示した「Yukiko」であると直ちに把握することは困難である。
ゆえに、本件商標の構成中、需要者等の注意を最も喚起する部分は、普通に表示された「Kawasaki」の部分であると判断すべきであり、これからは、「カワサキ」の称呼が生じる。
ところが、該「Kawasaki」は、上述したとおり、申立人等の商品「被服,帽子,ベルト,二輪自動車乗車用の被服・手袋・ブーツ」について、二輪自動車のユーザーや二輪自動車ファンをはじめとする我が国の一般需要者間において広く知られた商標「Kawasaki」と同一である。
前記申立人等の業務に係る商品のうち、「被服,帽子,ベルト」は、本件登録商標の指定商品中「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」と同一又は類似するものである。また、二輪自動車乗車用の被服・手袋・ブーツ」については、本件商標の指定商品中「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」と同一又は類似の商品である(甲第9号証)。
すなわち、本件商標は、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして、需要者間において広く認識されている商標と同一の称呼が生じる類似の商標に該当し、前記申立人等の業務に係る商品と同一又は類似の商品について使用するものである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」については、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものであると言わざるを得ない。
(5)商標法第4条第1項第15号の該当性
上述したとおり、「KAWASAKI」及び「Kawasaki」は、申立人及び申立人関連会社の略称として著名であり、また、引用商標は、申立人及び申立人の関連会社の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、我が国で広く知られている著名な商標である。
そして、本件商標の構成中には、商標の要部と認識され得る態様で表示された「Kawasaki」の文字が含まれる。
ゆえに、万一、本件商標が川崎重工グループを表示するものとして、我が国で周知著名な商標「Kawasaki」と非類似であるとしても、本件商標がその指定商品について使用された場合には、その商品があたかも申立人又は申立人の関連会社の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について誤認を生じさせるおそれがあることを否定し得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものである。
(6)まとめ
以上に詳述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の2第1項に該当する。
3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、上記のとおり、左側に「Yukiko」の文字を逆さまにして配し、右側に「Kawasaki」の文字を配してなるところ、「Kawasaki」の文字は、姓氏の一つである「川崎」をローマ字表記したものと理解でき、左側部分は、一見して、逆さまにした「Yukiko」の文字であると看取されるものであって、「由紀子」「幸子」等のようにその字音を「ユキコ」とする名前が多くあることから、構成全体より、観念上、「ユキコカワサキ(カワサキユキコ)」という人名を表したと看取させるものであり、また、これより生ずると認められる「ユキコカワサキ」の称呼は、格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。
そうとすると、本件商標は、構成全体をもって、「ユキコカワサキ」の称呼を生ずる固有の人名からなる商標を表したものと認識し把握されると見るのが相当である。
そうとすれば、本件商標の構成中「Kawasaki」の文字部分が要部となり得ることを前提に、本件商標と「KAWASAKI」若しくは「Kawasaki」の文字からなる引用商標とが、その外観、称呼及び観念において同一又は類似するものとすることはできないし、その他、互いに相紛れるおそれがあるとする共通点は見い出せない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
また、引用商標が、申立人の略称又はその業務に係る商品「二輪自動車、産業機械器具」等の商標として、本件商標の登録出願時には取引者、需要者の間に広く認識されていたことは認められるとしても、該商品は、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品とは認められないし、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品と認められる「被服,帽子,ベルト,二輪自動車乗車用の被服・手袋・ブーツ」について、取引者、需要者の間に広く知られているとまでは認めることができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、上記(1)のとおり、構成文字全体をもって、人名を表す一体不可分のものと認められるから、本件商標を申立人の略称を含むものと認識し把握されることはないものといわざるを得ず、本件商標は、他人の著名な略称を含む商標に該当するものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、引用商標とは類似しないこと前記のとおりである。
また、引用商標が、二輪自動車、産業機械等において、本件商標の登録出願時には、申立人又はその関連会社の使用する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたことは認められるが、その商品と、本件商標の指定商品である「被服」等の商品とは、生産者、需要者、取引系統及び用途等において、明らかに異なるものである。
その他、混同を生ずるとすべき特段の理由も見い出せない。
してみれば、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、第10号及び第15号に違反して登録されたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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