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Trademark Appeal Case

要部抽出と称呼の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2005−89033(T2005−89033/J3)
審判種別無効
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4367180号商標(以下「本件商標」という。)は、「LIPFUSION」の文字を標準文字で書してなり、平成10年10月28日に登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同12年3月10日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標

請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第1983012号商標(以下「引用商標」という。)は、「フュージョン」の文字と「FUSION」の文字とを二段に書してなり、昭和59年8月24日に登録出願、第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、同62年9月21日に設定登録、その後、平成9年6月3日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

3 請求人の主張の要点

請求人は、「本件商標の指定商品中『化粧品』についての登録を無効にする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第5号証(枝番を含む。)を提出した。

(1)利害関係

請求人は、引用商標の商標権者であるから、本件審判を請求することについて利害関係を有する者である。

(2)請求の理由

ア 商標法第4条第1項第11号

商標の観念及び称呼についてみると、本件商標は、「LIPFUSION」の文字を構成上は一連不可分に表してなるものではあるが、これらの文字からは、例えば、全体として一般に親しまれている一語を形成しているから観念上及び称呼上常に一連不可分のものとしてのみに把握されるべきものである、といったような、これら文字を常に一連不可分のものとしてのみに把握しなければならないとする特段の事情は見出せない。

一方、「LIP」及びこれに通ずる「リップ」の文字は、「唇」を意味する英語及び外来語として広く一般に親しまれているものであるうえに、例えば、「Lipstick」(リップスティック)、「Lip rouge」(リップルージュ)、「Lip color」(リップカラー)、「Lip pencil」(リップペンシル)、「Lip cream」(リップクリーム)、「Lip gloss」(リップグロス)といった例にみられるごとく、唇用化粧品の名称中に使用されているものである(甲第3号証ないし同第5号証)。

してみれば、本件商標がその指定商品中の「唇用化粧品」について使用された場合、これに接する取引者、需要者は本件商標を「LIP」と「FUSION」という二語よりなるものと理解し、「LIP」の文字は、その商品の用途(「唇用」という)を表示しているものと理解するに至るとみるのが相当である。

また、本件商標中の「FUSION」からは、これを自他商品の識別力を有しないものとする理由は見出せないから、本件商標において自他商品の識別標識たり得るのは(すなわち、いわゆる要部は)、「FUSION」の文字というべきである。

そうすると、本件商標は、その構成中の「FUSION」の部分で「フュージョン」と称呼され、かつ、記憶される場合も決して少なくないとみるのが相当である。

−方、引用商標が「フュージョン」と称呼され、「フュージョン」及び「FUSION」の文字よりなるものとして記憶されることは明らかである。

そうすると、本件商標と引用商標は、「フュージョン」の称呼を同じくし、要部として記憶される「FUSION」をも(すなわち観念をも)同じくするものであるから、両者は、その称呼及び観念において紛らわしいものというべきである。

また、本件商標及び引用商標の指定商品は、いずれも「唇用化粧品」を含むものである。

もし、両商標が唇用化粧品に使用された場合には、その称呼及び観念において紛らわしく、本件商標と引用商標を使用した唇用化粧品が出所を異にして流通するという事態を招来させることになるところ、このような場合に、取引者、需要者が、両商品を同一の出所より出たものと認識するおそれがあることは明らかであり、本件商標と引用商標は、その称呼及び観念において紛らわしいものであって、同一の商品について使用するときは、その出所を混同させるおそれがあるものといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、その称呼及び観念において類似の商標というべきである。

以上によると、本件商標の指定商品のうち「唇用化粧品」についての本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してなされたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。

イ 商標法第4条第1項第16号

本件商標をその指定商品中の「唇用化粧品」に使用した場合、その構成中の「LIP」の文字は、その商品の用途(唇用という)を表示したものと理解されるとみるのが相当であることは、前記のとおりである。

したがって、本件商標がその指定商品中の「唇用化粧品」以外の化粧品について使用されたとき、これに接する取引者、需要者が、これをその化粧品が唇用のものではないかとその品質を誤認する場合も少なからずあるといわざるを得ない。

以上によると、本件商標の指定商品のうち唇用化粧品以外の化粧品についての本件商標の登録は、商標法第4条第1項第16号の規定に違反してなされたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきである。

(2)被請求人の答弁に対する弁駁の理由

「LIP」なる英語は、少なくとも中学校の段階で学ぶものであり、「唇」の意味の英語として世上一般に親しまれているものというべきである。

ましてや、各種の唇用化粧品が取引されている化粧品業界の実情に照らすと、化粧品の取引者、需要者が「LIP」が「唇」の意味の英語であることを知らない、などということは到底考えられないところである。

被請求人は、本件商標が「LIP」に「FUSION」を結合させた語であるとしながら、これがいかなる「特殊な意味」をもつ言葉なのか、その特殊な意味の言葉として一般に知られているものであることも何ら明らかにしていないから、被請求人の主張は、単なる一般論、概念論に止まるものといわざるを得ない。

ところで、商標の観察は、言語学や英語の講学の場においてではなく、商標を商品に使用している(する)場において、商標をいかにみるかという具体論であって、取引の場を離れた一般論や概念論で論ぜられるべきことではない。

これを本件商標についてみると、「LIP」が「唇」を意味する英語として英語教育の初期の段階で修得されるものであってみると、本件商標は、この「LIP」に「FUSION」を結合させたものと理解されるというべきである。

しかして、これが全体として特殊な意味をもつ言葉を形成しているといった事情がないことは、前記したとおりであり、本件商標は、「LIP」とこれとその意味において関連性があるとは理解されない「FUSION」よりなるものといわざるを得ない。

そうすると、「唇用の化粧品」のみとの関係においては、「LIPFUSION」における「LIP」は、唇用の化粧品という化粧品の用途を表示しているものと理解される場合も少なからずあるというべきである。

してみれば、唇用の化粧品に本件商標が使用された場合、取引者、需要者が、その構成中の「FUSION」が自他商品の識別力を有する部分と把握し、これを「フュージョン」と称呼して取引に当たる場合もまた、少なからずあるといわざるを得ない。

したがって、本件商標は、「フュージョン」の称呼も生ずるものというべきである。

ところで、例えば、他人の登録商標に他の語を結合させた商標が、特定の意味を有する(理解させる)語を形成するに至っていないものであっても、その構成や称呼が一連不可分のものであるといった理由のみで、当該他人の登録商標とは非類似のものとすると、他人の登録商標に商品の名称や品質等を表示する文字を結合させたにすぎないものであっても、当該商標は当該他人の登録商標とは非類似のものということに帰着するところ、かかる事態が、商品の出所の混同を生じさせることは必至である。

かかる事態は、当該他人の登録商標の権利者にとって到底受容できないことであり、また、取引者、需要者(商標権者はいうに及ばず)に対して、不測の損害を被らせる要因ともなるといわざるを得ない。

かかる意味において、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとして拒絶されるべきものであったというべきである。

4 被請求人の答弁の要点

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第8号証を提出した。(被請求人は、証拠方法として提出した証拠について「甲第1号証」のように甲号証の記号を付しているが、被請求人の提出したものであるから、これを上記のとおり乙号証とした。以下、同じ。)

我が国における英語の教育の中で、「LIP」が「唇」を意味することは初期の段階において学ぶものと認められる。しかし、唇という意味において、この単語を単独で使用する機会は多くなく、単独では日常使用される外国語いわゆる外来語の中に含まれるものではない。しかし、「LIP」は、他の語と結合して外来語として用いられるケースは少なくない。例えば、請求人が掲げるリップ スティック(ロ紅)、リップ クリーム(唇用クリーム)もその例であるが、また、リップ サービス(ロ先だけのお世辞)リップ マイクロホン(小型マイクロホン)リップ リーディング(読唇術)なども日常良く目にする結合外来語である(乙第1号証参照)。

この事実から明らかなとおり、「LIP/リップ」は、元来「唇」を意味するものであるが、他の語と結合して、それぞれ特殊な意味をもつ言葉を形成するという使われ方をするのが日本におけるLIPの一般的な使用状況である。

したがって、「LIP」が他の語と結合している場合に、結合してできた単語が一般に化粧品を意味する言葉であると考える慣行ではなく、また、単純に「LIP」の部分を抽出して用途表示であると考える習慣が存在していると認められるものではない。

また、本件商標の残る部分の「FUSION」は、融合、連合という意味をもつ英単語である。nuclear fusion(核融合)、fusion bomb(水素爆弾)、blood fusion(輸血)などの単語が一般に目につくようになったはじまりと考えられる(乙第2ないし同第3号証参照)。最近では、ホンダのバイクの商標や、異なる音楽を融合した音楽を意味する言葉として用いられたりするのが目に付く。しかし、元来は、接頭語と接尾語と一体となって一つの単語を形成することが多い単語で、例えば、affusion(潅水)autotransfusion(自家輸血)confusion(混乱)diffusion(普及)effusion(流出)などがある(乙第2ないし同第9号証参照)。

このように、他の文字を前後に付加して、一つの意味をもつ単語となる傾向が強いのが「fusion」という単語の特徴である。

前述のとおり、我が国における「LIP/リップ」という単語の使われ方及び他の文字と一体となって単語を作る傾向の強い「fusion」という単語からなる本件商標は、これを分断したり、あるいは「LIP」又は「FUSION」のみを抽出する根拠が全く見当たらないほど強く結びついている単語である。本件商標は、また同形、同色、一行に書してなることからも、一連不可分とのみ把握されるべきものということができる。

したがって、請求人の主張は、根拠のないものである。

5 当審の判断

本件商標は、前記のとおり「LIPFUSION」の文字よりなるものであって、各文字が同じ大きさ、同じ書体で外観上一体的に表されていて、その文字数も9文字とその全体をもって一語よりなるとみても何ら不自然なものではない。

また、その全体をもって称呼しても格別冗長というほどのものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであって、たとえ構成中の「LIP」の文字部分が「唇」を意味する平易な英語であるとしても、かかる構成においては、この文字部分を捉えて、商品、例えば唇用化粧品の用途を具体的に表示するものとして直ちに理解されるものとは認め難いところであるから、むしろ構成全体をもって一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが自然であるというべきである。

そうとすれば、本件商標は、その構成文字の全体に相応して「リップフュージョン」の称呼のみを生ずるものといわなければならない。

請求人は、「LIP」及びこれに通ずる「リップ」の文字は、「唇」を意味する英語及び外来語として広く一般に親しまれているものであるうえに、例えば、唇用化粧品の名称中に使用されているものであり、本件商標が「唇用化粧品」に使用された場合、商品の用途を表示しているものと理解するに至る旨主張する。

確かに、「LIP」及び「リップ」の語は、「唇」を意味する英語及び外来語として広く一般に親しまれており、唇用化粧品の名称にも使用されているものであることが認められる。しかしながら、本件商標は、上記のとおり一体不可分の構成よりなるとのみ認識されるものであって、請求人の提出した証拠にも、かかる構成の商標が唇用化粧品等に使用された場合に、取引者・需要者の多くが「LIP」の文字部分を唇用化粧品の用途を表すものと認識すると認めるに足りる証拠はない。

そうとすれば、本件商標より生ずる「リップフュージョン」の称呼と引用商標より生ずる「フュージョン」の称呼とは、構成音数の差異、相違する各音の音質の差異により明らかに聴別し得るものというべきであるから、本件商標と引用商標とは、称呼において類似するものとは認められない。

それぞれの構成よりすれば、両商標は、外観、観念においても類似するものではない。

したがって、本件商標は、その指定商品中「化粧品」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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