Trademark Appeal Case
著名人名の冒用と公序良俗
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 平成8年審判第16404号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「ピカソ」の片仮名文字と「PICASO」のローマ文字を二段に横書きしてなるもので、第42類「美容、理容、医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究」を指定役務として、平成4年10月7日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶理由
原査定は、「本願商標は、世界的に著名なスペイン生まれの画家名『Picasso』を認識させる『ピカソ』及び『PICASO』の文字を二段に書してなるところ、ピカソの作品は、世界の人々の心に感動を与えるものとして、今なお評価の高いものであり、広く世界中の人々の心底にこの故人の業績を称える気持ちが生き続けているものとみるのが相当である。してみれば、今日の国際社会においてこの故人の名誉と共にこの故人を敬う世界中の人々の心情、ひいては国際信義を考慮すれば、これを商標として特定の個人に登録を認めることは適当でないものと言わざるを得ない。」として、商標法第4条第1項第7号に該当する旨認定判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1) 請求人は、原査定に対して、商標法第4条第1項第7号の適用に当たってはみだりに解釈の幅を広げるべきではなく、本願商標は、審査基準の照らしても公序良俗に違反するものではない旨主張する。
しかしながら、請求人も原審認定の「ピカソ」が世界的著名な画家であったことは争わないところ、「ピカソ」は故人ではあるがその名声はその後も衰えるところなく、しかも、遺族が現存し直接的な遺産を始め彼の署名まで、現に管理していることが認められる。
しかして、我が国において、その名称、氏名又はそれらの略称をもって著名な者と無関係な者が、その承諾なしに前記の名称等からなる商標について登録を受けることは、それが商標法第4条第1項第8号、15号等によって商標登録が受けられない場合に当たらないとしても、当該名称等に係る者の名声を冒用して不正な利益を得るために使用する目的、その他不正目的をもって登録出願されたものと認められる限り、商取引秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する行為と言うべきであるから、同第7号に該当すると解すべきである(平成10年(行ケ)第11号・第12号東京高裁同11年3月24日言渡参照)。
これを本願商標についてみれば、本願商標を登録することはピカソの名声に便乗し、指定役務についての使用の独占を図るものであって不正の目的が認められ、かつ、世界的に著名な画家の名声を一私人たる請求人が、遺族の承諾もなく商取引に使用することは、故人の名声・名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、商取引秩序を乱すものであって、我が国の国際的な信頼も損なうおそれがあると言うべきであり、ひいては国際信義に反するものとして、、公序良俗を害する行為と言わざるを得ないから、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当すると判断するのが相当である。
(2) また、請求人は、「ピカソ」「Pikaso」「PICASO」の文字よりなる商標は多数登録又は出願公告されている旨主張する。
しかしながら、本件審判においては、先登録例に拘束されるものではなく前示の認定、判断を相当とし、また、先登録例は他人の著名な略称との観点から疑問なしとしない上に、過去の登録時点と、商標制度のみならずその運用までが貿易摩擦とされ、商標情報を含めて広範な情報がインターネットを通じて世界各国の間を行き交う昨今とでは同列には論じられないと言うべきである。
そして、登録例として挙げる「セザンヌ/CEZANNE」「写楽」「コロンブス」等と、「ピカソ」とは明らかに事情が異なる。すなわち、後者は、死後30年弱であり、故人ではあるがその名声はその後も衰えるところなく、しかも、遺族が現存して直接的な遺産を始め彼の署名まで、現に管理していることが認められることは前示のとおりである。
また、請求人は、「ピカソ」が有名になる前に「PICASO」等の商標を採用して使用している旨主張し、甲第34号証及び同第35号証を提出するが、その事実が確認できないばかりか、本願商標の出願日は前示のとおりである。
したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。
(3) 以上のとおり、本願商標は商標法第4条第1項第7号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は正当であって、取り消す限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
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