Trademark Appeal Case
「名泉」の品質表示性
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2003−8830(T2003−8830/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
1 本願商標
本願商標は、「日本の名泉」の文字を横書きしてなり、第5類「浴剤」を指定商品として、平成14年4月24日に登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶理由
本願商標は、「日本の名泉」の文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるが、有馬温泉(兵庫)、草津温泉(群馬)、下呂温泉(岐阜)が日本3名泉と称されていることからすると、そのうちの「名泉」の文字部分は、「有名である温泉、効能に優れている温泉、名声がある温泉」等を認識し、指定商品との関係において、日本に所在する効能が高く有名な温泉から採取した成分を加工したものや、そのような温泉の成分を模して製造したもの程度の意味合いを認識させるにすぎず、これをその指定商品に使用しても商品の品質、産地、原材料を誇称表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
なお、新聞記事等(ア.2002.12.04読売新聞西部朝刊29頁の「「にっぽん温泉遺産100」に嬉野 来年の北京発ツアーにも選定」の記事中の「嬉野温泉は、・・・・・古代から名泉として知られていたらしい。」の記載、イ.2002.09.17読売新聞西部朝刊28頁の「日田で筑後川流域温泉をPR 催しに2万人参加」の記事中にある「入場者は靴などを脱いで脚を入れ、名泉のぬくもりを味わっていた。」の記載、ウ.2002.08.02朝日新聞名古屋朝刊16頁の「ウェストンたどり槍ケ岳 北アルプス(元気あるく)」の記事中にある「「3日入ると3年は風邪をひかぬ」ともいわれる名泉だ。」の記載、エ.2002.02.27化学工業日報5頁の「ナワ産業、天然鉱石パウダーを販売、マイナスイオン・遠赤外線を放出」の記事中にある「湯治の名泉で知られる秋田県の玉川温泉などでも、」の記載、オ.2001.07.09 建設通信新聞の「プール,温泉設備の共住は近く施工者決め着手へ/ダイア建設」の記事中にある「名泉「常磐温泉」から天然の湯を直接運び込んだ」の記載)よりして、「名泉」の文字部分が上述のように認識される。
3 請求人の主張(要旨)
本願商標に含まれる「名泉」の語は、主要な日本語国語辞書にも登載されていない語であって、取引者・需要者において、拒絶理由にいうような「有名である温泉、効能に優れている温泉、名声がある温泉」などを認識させる語として定着している語ではないから、本願商標は拒絶理由がいうような意味合いを認識させるものではなく、商品の品質、産地、原材料を誇称表示するものではあり得ない。
原査定の挙げた新聞記事等は極く最近の日付のものばかりであって、「名泉」の語が拒絶理由のいうような意味を認識させる語として取引者・需要者の間に定着し、かつ普通に使用するに至っているということにはなり得ない。また、原査定が挙示する新聞記事等に出てくる温泉には、有名、無名の温泉が混在している上、効能に優れているか否か明らかでない温泉、効能があるとしても、具体的にどのような症状に効能があるのか不明である温泉も混在している。よって、これらの新聞記事等があるからといって、「名泉」の語は、拒絶理由のいうような意味合いを認識させるものでない。
そして、特許庁の商標審査基準、審決例及び東京高裁の判決例によれば、ア.商品の品質等を直接的かつ具体的に表示するものとなっていない商標、及びイ.指定商品を扱う業界において、商品の品質等を表示するものとして普通に使用されている事実がない商標については、仮に商品の品質等を間接的に表示するものであったとしても、商標法第3条第1項第3号に該当しないとしている。
4 当審の判断
(1)本願商標は、前記のとおり「日本の名泉」の文字よりなり、指定商品を「浴剤」とするものであるところ、確かに、請求人(出願人)の提出に係る「広辞苑」(岩波書店発行)、「大辞泉」(小学館発行)及び「日本語大辞典」(講談社発行)に「名泉」の文字を当てたものが掲載されていないこと、請求人(出願人)の述べるとおりである。
しかし、同じく「岩波漢語辞典」(岩波書店発行)の「【泉】」を見出し語とする箇所に「いずみ。地中からわき出る水。水のわき出るもと。「泉水・温泉・鉱泉・霊泉・アルカリ泉」」の記述があり、また、前出広辞苑の「いず-み【泉】」を見出し語とする箇所に「地中から湧き出る水または湯。また、その場所。」の記述及び同「めい【名】」を見出し語とする箇所に「なだかいこと。すぐれていること。評判。「名誉・名器・有名・名利・名選手」」等の記述が認められるものであり、「名泉」の文字は、「名」と「泉」とを結合した複合語として理解され、指定商品との関係からして「効能に優れた温泉、名高い温泉」程の意味合いを生ずるものとみて差し支えない。
そして、本願指定商品「浴剤」は、商品名を「浴用剤」や「入浴剤」としても一般に流通していて、その種類は大きく分けて3つ存在し、天然の植物や漢方薬、温泉成分を取り出したもの及び無機塩類化合物であり、またこれらを組み合わせたものも存在するところである。
(2)請求人(出願人)は、「名泉」の文字について「有名である温泉、効能に優れている温泉」などを認識させるものとして定着している語ではない旨述べているが、原審で示す新聞記事他、例えば「・・・下呂と言えば、温泉が有名だ。高名な儒学者・林羅山が、江戸時代に摂津の有馬温泉、下野の草津温泉、飛騨の下呂温泉を日本三名泉として紹介したことからメジャーになった・・・」(2004.4.27朝日新聞名古屋地方版/岐阜)、「・・・榊原温泉が歴史の舞台に登場するのは今から千年前。「枕草子」の中で、「ななくりの湯」として有馬温泉、玉造温泉とともに名泉に数えられている・・・」(2003.6.13毎日新聞地方版/愛知)、「・・・◇県道蒜山高原線沿線/・・・「沿線には、日本百名泉の塩釜の冷泉や・・・」」(2000.8.27読売新聞大阪朝刊)等の新聞記事及びインターネット上で日本各地の観光案内、温泉の紹介記事等でもしばしば使用されていることが認められ、構成全体の「日本の名泉」の文字からは「日本に所在する(数ある温泉の中でも)すぐれた効能のある温泉、名高い温泉」程の意味合いをもって認識されるとみるのが相当であって、温泉と本願指定商品「浴剤」との関係からしてみれば、上述の意味合いを容易に認識するとみるのが自然である。また、商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質等を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである(平成12年(行ケ)第76号 東京高裁平成12年9月4日判決言渡参照)から、たとい「名泉」の表示をもって使用される商品が現実に存在しなくとも、本願商標が商品の品質等を表すものであるとすることの妨げにはならないというべきである。
(3)してみれば、「日本の名泉」の文字を普通に用いられる方法で書してなるにすぎない本願商標は、これをその指定商品「浴剤」について使用しても、これに接する需要者は、日本に所在するすぐれた効能のある温泉から採取した湯の花、成分を加工したもの或いはこれを模して製造したものであることを強く印象するに止まり、すなわち商品の品質、原材料を表示したものとみる以上に自他商品の識別標識として認識するとはいえないから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるといわなければならない。
したがって、同様の趣旨で本願を拒絶した原査定は妥当なものであり、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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