結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2005−89125(T2005−89125/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4788574号(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成15年10月23日に登録出願、第35類「インターネット・ファックス・電話などの通信回線及びダイレクトメールを介しての商品の販売に関する情報の提供・その他の商品の販売に関する情報・企業情報・顧客情報の提供,インターネットによる広告に関する情報の提供,インターネットによる職業のあっせん,インターネットのホームページを利用した広告・商品の販売に関する情報の提供,インターネット上で行う競売の運営その他の競売の運営,コンピューターによるオンラインでの商品の受注事務の代行,コンピュータシステムの操作に関する運行管理,コンピュータデータベースによるファイルの管理,求人情報の提供,競売の運営,経営の診断又は経営に関する助言,経済の情報の提供,市場調査,事業の管理又は運営,事業及び市場の調査,自動販売機の貸与,書類の発送の代行,商品の販売に関する情報の提供,商品の販売促進のための企画及び実行の代理,職業のあっせん,電子メールによる広告の代理,電子計算機データベースを利用した市場調査,電子計算機端末による市場調査,電子情報のファイリング,販売促進のための企画に関する助言」を指定役務として、平成16年7月23日に設定登録されたものである。
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は、次のとおりである。
(1)登録第4640436号商標(以下「第1引用商標」という。)は、「ラブ」の片仮名文字と「LOVE」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、平成14年3月5日に登録出願、第35類「広告」を指定役務として、平成15年1月24日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)登録第542450号商標(以下「第2引用商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、昭和33年8月30日に登録出願、第3類「香料及び他類に属しない化粧品」を指定商品として、同34年9月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(3)登録第1021489号商標(以下「第3引用商標」という。)は、「LOVE」の欧文字を横書きしてなり、昭和46年3月12日に登録出願、第3類「染料、顔料、塗料(電気絶縁塗料を除く)印刷インキ(謄写版用のインキを除く)くつずみ、つや出し剤 」を指定商品として、昭和48年7月2日に設定登録され、その後、平成16年9月22日に指定商品を第1類「陶磁器用釉薬」、第2類「染料,顔料,塗料,印刷インキ(「謄写版用インキ」を除く。)」、第3類「塗料用剥離剤,靴墨,靴クリーム,つや出し剤」及び第4類「靴油,保革油」とする指定商品の書換登録がされたものであり、現に有効に存続しているものである。
(4)登録第2219231号商標(以下「第4引用商標」という。)は、「LOVE」の欧文字を横書きしてなり、昭和46年8月5日に登録出願、第4類「歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、平成2年3月27日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(5)登録第2431617号商標(以下「第5引用商標」という。)は、別掲(3)に示すとおりの構成よりなり、昭和48年5月10日に登録出願、第4類「歯みがき、化粧品、香料類」を指定商品として、平成4年7月31日に設定登録され、その後、平成16年3月3日に指定商品を第3類「歯みがき,化粧品,香料類,薫料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされたものであり、現に有効に存続しているものである。
(6)登録第4522976号商標(以下「第6引用商標」という。)は、「ラブ」の片仮名文字と「LOVE」の欧文字を上下二段に横書きしてなり、平成13年1月9日に登録出願、第3類「歯みがき,化粧品,香料類」を指定商品として、平成13年11月16日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(7)イヴ・サンローラン・パルファン エス・アー(以下、「イヴ・サンローラン」という)が、請求人から許諾を受けて使用をしている「IN」「LOVE」及び「AGAIN」の各欧文字を三段に横書きした商標(以下「第7引用商標」及び「第8引用商標」という。甲第8号証及び同第9号証参照)
(8)株式会社マリークヮントコスメチックスジャパンが請求人から許諾を受けて使用をしている「LOVE STRUCK」の欧文字を横書きにしてなる商標(以下「第9引用商標」という。甲第10号証参照)及び「LOVE TOKEN」の欧文字を横書きにしてなる商標(以下「第10引用商標」という。甲第11号証参照)
(9)登録第1109988号商標(以下「第11引用商標」という。)は、「CLUB COSMETICS」の欧文字を横書きしてなり、昭和45年4月4日に登録出願、第4類「化粧品」を指定商品として、同50年3月10日に設定登録され、その後、平成17年3月2日に指定商品を第3類「化粧品」とする指定商品の書換登録がされたものであり、 現に有効に存続しているものである。
(10)登録第1109989号商標(以下「第12引用商標」という。)は、「クラブ コスメチックス」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和45年4月4日に登録出願、第4類「化粧品」を指定商品として、同50年3月10日に設定登録され、その後、平成17年3月2日に指定商品を第3類「化粧品」とする指定商品の書換登録がされたものであり、 現に有効に存続しているものである。
(11)登録第1208882号商標(以下「第13引用商標」という。)は、「CLUB COSMETICS」の欧文字を横書きしてなり、昭和45年4月4日に登録出願、第21類「化粧用具」を指定商品として、同51年7月12日に設定登録され、その後、商標登録の取消し審判により、指定商品中「洗面用具入れ」について取り消すべき旨の審決がされ、平成5年5月11日にその確定審決の登録がされたものであり、 現に有効に存続しているものである。
(12)登録第1208883号商標(以下「第14引用商標」という。)は、「クラブ コスメチックス」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和45年4月4日に登録出願、第21類「化粧用具」を指定商品として、同51年7月12日に設定登録され、その後、商標登録の取消し審判により、指定商品中「洗面用具入れ」について取り消すべき旨の審決がされ、平成5年5月11日にその確定審決の登録がされたものであり、 現に有効に存続しているものである。
なお、請求人は、引用商標として「第15引用商標」の表示があるが(審判請求書5頁5行)、具体的にその内容を特定していないので、「第15引用商標」は除くこととする。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第33号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号に該当することについて
(ア)商標の類否
請求人の引用商標は、「ラブ」の称呼が生じる。
一方、本件商標は、文字と図形との結合商標であるところ、「cosmetic」及び「コスメティック」の文字は、「化粧品」の意味合いを有する語句であり、役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物が化粧品であることを需要者及び取引者に想起させる識別力の弱い語句である。したがって、本件商標は、「Love」及び「ラブ」の文字が需要者及び取引者の注意を喚起する要部であり、「ラブ」の称呼が生じる。
よって、引用商標と本件商標からはともに「ラブ」の称呼が生じ、称呼において類似する。
(イ)役務の類否
請求人の第1引用商標は「広告」に、また、本件商標は「インターネットによる広告に関する情報の提供,インターネットのホームページを利用した広告・商品の販売に関する情報の提供,商品の販売促進のための企画及び実行の代理,電子メールによる広告の代理」等に使用するものであって、両者は同一又は類似の役務に使用するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号に該当することについて
(ア)商標の構成の対比
本件商標からは、前述のとおり、「ラブ」の称呼が生じる。
一方、第2ないし第6引用商標からは、その構成より「ラブ」の称呼が生じる。また第7及び第8引用商標については、3段併記からなる商標であるが、中段の「LOVE」の文字が上段の「IN」及び下段の「AGAIN」の2倍以上の大きさで書されてなり、取引者及び需要者の注意を惹くものとなっている。したがって、第7及び第8引用商標から「ラブ」の称呼が生じる。
第9及び第10引用商標については、「LOVE」の文字が語頭であることや、強く印象付けられる文字であること、後続の単語と分断して書されてなることから、当該商標からは、「ラブ」の略称が生じる。
また、第11ないし第14引用商標からは、その構成から「クラブコスメチックス」の称呼が生じる。
(イ)第2ないし第14引用商標が、本件商標登録出願の日前に既に需要者及び取引者の間に広く認識されていることについて
第2ないし第6引用商標は、AIPPI・JAPAN発行の「日本有名商標集」(甲第16号証)に掲載されている商標である。当該「日本有名商標集」は、2004年に発行されたものであることから、少なくとも前年に編集されていることが推測される。したがって、第2ないし第6引用商標が、本件商標登録出願の日前に既に需要者及び取引者の間に広く認識されていたことは明らかである。
第7及び第8引用商標は、香水や化粧品及びファッション等の一流ブランドとして世界的に有名なイヴ・サンローラン・パルファン エス・アー(以下、「イヴ・サンローラン」という)が、請求人から許諾を受けて使用をしている商標である。イヴ・サンローランの「IN/LOVE/AGAIN」は、本件商標の登録出願の日前である、1998年にフレグランス発売40周年を記念して発売された香水であり、イヴ・サンローランの有名な香水の1つである(甲第17号証)。以上より、第7及び第8引用商標が、本件商標の登録出願の日前には既に需要者及び取引者の間で広く認識されていることは明らかである。
さらに、第9及び第10引用商標は、株式会社マリークヮントコスメチックスジャパンが請求人から許諾を受けて使用をしている商標である。同社は、化粧品及びファッション等の一流ブランドとして世界的に有名な商標である「MARY QUANT」ブランドの事業を我が国において展開する企業である。
「LOVE STRUCK」は2000年、「LOVE TOKEN」は2002年から販売開始されており、それぞれ約4,500万円、約1億3,000万円を売り上げている(甲第18号証:売上リスト)。また、「LOVE STRUCK」と「LOVE TOKEN」はともに、「MARYQUANT」ブランドの人気商品である(甲第19号証:ウェブサイトのプリントアウト)。以上より、第9及び第10引用商標が、本件商標の登録出願の日前には既に需要者及び取引者の間で広く認識されていることは明らかである。
第11ないし第14引用商標の商標権者は、請求人の関連会社であり、請求人は、当該商標権者から許諾を得て第11ないし第14引用商標の使用をしている。請求人は、昭和14年11月に設立された会社であり、昭和46年頃から化粧品及び関連する商品について、第11ないし第14引用商標をハウスマークとして長年にわたって大々的に使用しており、また、請求人以外の多くのウェブサイトでも取り上げられている商標である(甲第20号証:ウェブサイトプリントアウト)。さらに、第11及び第12引用商標はAIPPI JAPANが1998年に発行した「日本有名商標集」に掲載されている(甲第22号証)。したがって、上記第11ないし第14引用商標が本件商標の登録出願の日前には既に需要者及び取引者の間で広く認識されていたことは明らかである。
(ウ)出所混同のおそれについて
(a)本件商標と第2ないし第10引用商標について
上述のように、第2ないし第10引用商標は、請求人又は請求人から使用許諾を受けた者の業務に係る商品を示す商標として広く認識されている。また、本件商標と第2ないし第10引用商標を対比させると、「Love」の文字が需要者及び取引者の注意を惹くものとなっている点において共通する。したがって、本件商標に接する需要者及び取引者は、本件商標を、請求人又は請求人から使用許諾を受けた者の業務に係る役務または請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同するおそれがある。
(b)本件商標と第11ないし第14引用商標について
本件商標中の「Love cosmetic/ラブコスメティック」から生じる称呼「ラブコスメティック」と第11ないし第14引用商標から生じる称呼「クラブコスメチックス」を対比させると両者は、日本人に馴染みのある英語の結合語である点及び「COSMETIC」との結合語である点で、その基本的構成の発想を同じにする。また、その称呼上の差異は、語頭の「ク」と語尾の「ス」の有無のみである。語尾の「ス」は複数形であることを意味する弱音であり、「ラブコスメティック」と「クラブコスメチックス」の称呼上の差異は、語頭の「ク」の音のみといえる。言い換えれば、両者を一連に称呼すると「ラブコスメティ(チ)ツク」の音を共通にする。さらに、上述のように、第11ないし第14引用商標は、請求人により長年にわたって使用され広く認識されるに至った商標であることから、第11ないし第14引用商標の文字と構成を共通にする本件商標は需要者及び取引者をして請求人の提供する役務に使用する商標であるとの連想が働く。また、仮に第11ないし第14引用商標に係る商品が請求人の商品であることを知らない者がいたとしても、これは長きに渡ってその名声を確立してきたブランドであることから、「CLUB COSMETICS」、「クラブコスメチックス」を知ってさえいれば、それと同じ構成文字を含む本件商標に係る役務が同じ出所によるものであるとの認識が生ずるのは自然なことである。
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)甲第23号証として提出するインターネット検索結果のプリントアウトにみられるように、「Cosmetic」の語句は40万件以上、「コスメティック」の語句は200万件以上のウェブサイトで使用されており、我が国において非常に馴染みのある語句であり、役務の内容を想起させ、識別力が弱いといえる。
(イ)本件商標中の「for two persons who love」の語句は、上段の「Love cosmcetic」や下段の「ラブコスメティック」の半分以下のフォントで書されていること、及び「愛する二人のために」程度の観念が生じ、商品あるいは役務の用途を表したものにすぎない。よって、当該語句は付記的部分であり、本件商標の要部には該当しないことが明らかである。また、植物の葉1枚の図形部分についても、本件商標の上段のありふれた図形にすぎず、本件商標の要部とはいえない。したがって、「LOVE/ラブ」の文字部分が本件商標の要部であり、本件商標から「ラブ」の称呼が生じるのは明らかである。
また、被請求人が言及する登録第4670415号商標は、当該商標は出願前から株式会社資生堂の業務に係る商品又は役務を示すものとしてよく知られた商標である。加えて、当該商標は識別力の弱い語句の結合からなるところ、全体として識別力が認められた例であり、本件とは事案を異にする。
(2)商標法第4条第1項第15号について
(ア)第2ないし第6引用商標について
(a)被請求人が乙第2号証として提出した「日本有名商標集・第3版」の第7頁「Message from the Chairman」では、「(前略)With the objective of protecting famous Japanese trademarks from this protective,AIPPI Japan published Famous Trademarks in Japan in 1970(後略)」と書かれてある。したがって、AIPPI・JAPANが「日本有名商標集」に掲載する商標を有名であると認定したことは明らかである。よって、掲載商標全てが著名とはいえないことから本件商標も著名とはいえないとする被請求人の主張は、客観的なAIPPI・JAPANの判断を無視したものであり失当である。
(b)付言ながら、登録第542450号商標について被請求人は検索用商標が「Lave」であり称呼が「ラベ」であると主張しているが、当該商標は、「Love」を筆記体で書してなるものであることから「ラブ」の称呼が生じる。特許電子図書館の検索用商標及び称呼はいずれもあくまで参考情報であり何らの拘束力を持たないものである。
(イ)第7ないし第10引用商標について
(a)被請求人は、第7ないし第10引用商標に関して、使用許諾を示す証拠が提出されていないと主張しているが、甲第24号証及び甲第25号証として提出する覚書及び契約書写から当該事実が明らかである。被請求人は、イヴ・サンローラン社が商標登録第4203213号を所有していることから請求人が使用許諾しているという主張が成立しないと主張しているが、上記の契約書写や民法の契約自由の原則からこの主張は失当であることは明らかである。
(b)第7及び第8引用商標に関して、そもそも請求人はこの標準文字で表された登録第4203213号商標を引用商標とはしていない。よって、登録第4203213号商標に基づいた被請求人の主張は明らかに失当である。
(c)第9及び第10引用商標については、請求人はこれらの登録商標を引用していないことに加えて、特許電子図書館において付された称呼は、特許庁が認定したわけではなく、あくまで参考情報にすぎず何らの法的拘束力をもたない。
(ウ)第11ないし第14引用商標について
(a)被請求人は本件商標と第11ないし第14引用商標について、「ラブ」と「クラブ」の称呼を対比させただけであって、本件商標から生じる「ラブコスメティック」と第11ないし第14引用商標の称呼を対比させたものではない。
(b)また、第11ないし第14引用商標の後ろから4音目が“ティ”ではなく“チ”であるとしているが、「ティ」と「チ」の音は調音点を同じくする極めて近似の音として聴取され易いものであることは、類似すると判断された審判事件(甲第26号証ないし同第29号証)から明らかである。
(c)さらに、「ラブコスメティック」は8音であるにもかかわらず、一連称呼できるが、第11ないし第14引用商標から生じる「クラブコスメチックス」の称呼は10音であることから相当に長く、イントネーションの上がり下がりが激しいという主張は被請求人の単なる主観に基づくものである。「ラブコスメティック」及び「クラブコスメチックス」の称呼はいずれも特定の箇所にアクセントが置かれることはなく、平坦に発音されるものである。したがって、語頭の「ク」の有無が全体に及ぼす影響は小さい。
(エ)第11ないし第14引用商標の著名性について
(a)請求人である株式会社クラブコスメチックスは、既に提出した「日本有名商標集」以外にも、商標調査会編「日本商標名鑑’97」(甲第30号証)や昭和62年に発行された社団法人発明協会大阪支部の「THE OSAKA BRAND」(甲第31号証)にもその商標を掲載している。また、甲第32号証として提出する有限会社日本商業新聞社の社長である山中肇氏が署名した証明書からも、昭和46年以降から第11ないし第14引用商標が請求人の商品を表示するものとして広く認識された商標であることが明らかである。
(b)以上より、本件商標登録出願の日前から、第11ないし第14引用商標が需要者等に広く認識された商標であり、また請求人が著名であったことは疑いの余地がない。
上述のように、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同法第4条第1項第15号に該当するにもかかわらず登録されたものであるので、同法第46条第1項第1号により無効にすべきである。
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同10第号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号に該当することに対して
商標に含まれる語の識別力の強弱は、当該商標の指定商品又は役務との関係から論じられなければならない。広告の役務において、識別力が無い又は弱いと判断される語は、「広告」や「advertisement」であろう。もし仮に、本件商標中の「Cosmetic(コスメティック)」の語が広告の役務において識別力が弱いのであれば、登録第4670415号商標は「COSMETICS(コスメティックス)」の部分の識別力が弱く、しかも「ギンザ」は著名な地理的名称であるため、商標法第3条第1項第4号に該当し、登録とはならないはずである。しかし、登録第4670415号商標が登録となっている事実は、広告を役務とした商標において「コスメティックス」の文字部分の識別力は弱くなく、「ザ・ギンザ」の部分と組み合わさって、全体として十分な識別力を有することを示している。
同様に、本件商標の「Cosmetic(コスメティック)」の文字部分の識別力は弱くなく、「Love/ラブ」及び「for two persons who love」の文字部分、さらには植物の葉1枚の図形部分が加わった全体の識別力が認められて登録となったといえる。
したがって、本件商標の要部が「Love/ラブ」の文字部分であるとする見解は誤っている。
(2)商標法第4条第1項第15号に該当することに対して
商標法第4条第1項第15号に該当して混同が生じるというためには、ある商標が著名であるために、本来の指定商品・役務ではない商品や役務に当該商標と同一又は類似の商標が使われた場合においても、出所の混同が生じることを立証しなければならない。
しかしながら、請求人が引用した全ての商標は、この商標法第4条第1項第15号の要件を満たさない。まず請求人所有の“LOVE”又は“ラブ”の文字を含む5商標(第2ないし第6引用商標)は、請求人の提出した証拠からは、上記5商標が周知であるか、又は著名であるとの判断はできないため、請求人の主張するような混同が生じるとはいえない。次に、請求人が使用許諾を与えているとするイブ・サンローラン社やマリークヮント社の商標は、使用許諾を示す証拠が提出されておらず、しかも本件商標と類似ではない。したがって請求人のいうような混同が生じているとはいえない。最後に、請求人が使用許諾を得て使用する“CLUB COSMETICS”又は“クラブコスメチックス”の文字を含む4商標(第11ないし第14引用商標)は本件商標と類似ではなく、しかも示された証拠は著名性を証明するに足らず、やはり請求人のいうような混同は生じない。
(ア)請求人所有の“LOVE”又は“ラブ”の文字を含む5商標
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する根拠として、まず、請求人所有の5商標登録(第2ないし第6引用商標、以下、「“LOVE”又は“ラブ”を含む5商標」と称することがある。)を挙げている。
請求人は、「“LOVE”又は“ラブ”を含む5商標」が全て本件商標の登録出願日の前に、需要者及び取引者の間に広く認識されていたとして挙げる「日本有名商標集」(AIPPI・JAPAN発行:甲第16号証)によっては、その根拠とはなり得ない。
上記「日本有名商標集・第3版」は、英語で書かれており、個々の掲載商標の情報として列挙されている項目には、商標の登録番号、区分、指定商品又は役務のほかに、“Contact”という項目があり、権利者の連絡先が記載されている。このような掲載内容に加えて、第7ページには、編纂の目的が書かれており、それは、日本の登録商標の模倣対策である。海外から日本に進出しようとする企業に対し、あらかじめどのような商標がどのような商品又は役務を指定して登録となっているかを知らせ、紛争を未然に防ごうとするものである。
また、そのタイトルは「日本有名商標集」であり、“周知”又は“著名”のいずれの用語も使用していない。これは、請求人がAIPPI・JAPANに確認をとった事項であるが、タイトルに“周知”・“著名”の語を使用せず、あえて“有名”としたのは、掲載商標の選択がAIPPI・JAPAN独自の基準によるものであることを示そうとしたのだそうである。
この点は、第8ページの第2段落に、“the guidelines for listing prepared by AIPPI JAPAN”(=AIPPI・JAPANによって設定された掲載のための指針)とある点からも明白である。このように、「日本有名商標集」はその編纂目的からみても、掲載商標の選択基準からみても、AIPPI・JAPAN独自のものなのである。
「日本有名商標集」掲載商標のうちいくつかが、その指定商品又は役務と非類似の範囲においてまで、同一又は類似の商標の登録を禁止できることを意味する、“著名”商標と重複している可能性はあり得るが、「日本有名商標集」に掲載された商標全てが“著名”であるとはいえないのである。そして、前記5商標が“著名”であることの証明のために、「日本有名商標集」に掲載されたこと以外の事実が示されていないため、“著名”であるとは判断し得ず、したがって本件商標は第4条第1項第15号に該当しない。
最後に、第2引用商標は、称呼が「ラベ」であり、請求人が主張するような称呼類似すら生じていない。
(イ)請求人が使用許諾を与えているとする商標
請求人が、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する根拠としてあげているものの第2番目は、請求人が使用許諾を与えていると述べている4商標である。以下に、その使用者を示す。
第7及び第8引用商標は、イヴ・サンローラン・パルファン・エス・ア一社。
第9引用商標は、マリークヮントコスメチックスジャパン社。
第10引用商標は、マリークヮントコスメチックスジャパン社。
請求人は、これら引用商標の商標公報写し又はIPDLプリントアウトを証拠として提出していないが、被請求人が検索を行ったところ、それぞれに該当する商標登録が見付かったので、以下に列挙する。
第7及び第8引用商標は、登録第4203213号(乙第6号証)
第9引用商標は、登録第4494354号(乙第7号証)
第10引用商標は、登録第4664903号(乙第8号証)
まず、第7及び第8引用商標である商標登録第4203213号「IN LOVE AGAIN」については、権利者がイヴ・サンローラン・パルファンである。請求人の使用許諾をしているという主張が成り立たない。
また、請求人は、「IN LOVE AGAIN」が実際に香水のパッケージに用いられている使用の態様を示し、「IN LOVE AGAIN」においては、“LOVE”のみが他の2語より大きく描かれているゆえに、“LOVE”が当該商標の要部であり、“ラブ”の称呼を生ずるとしている。
しかしながら、IPDL上の登録情報をみると、その称呼は、“インラブアゲイン”だけである。このことは、商標登録第4203213号が全体としてまとまりのよい商標であり、ことさらに“LOVE”だけが要部として認識されるものではないとの、特許庁の判断を示している。
さらに、いかに請求人が“IN”や“AGAIN”に比べて、“LOVE”がわずかに大きめである使用の態様を示し、“LOVE”が当該商標の要部であるとの主張を試みても、その文字の大小の差は、特筆するに価せず、しかも「IN LOVE AGAIN」全体から生ずる観念の雄弁さゆえに、“IN”や“AGAIN”を、“LOVE”に比べて重要でないと主張するには無理がある。「IN LOVE AGAIN」を構成するどの語を失くしても、「再び恋に堕ちて」という観念は表現し得ないことからも、「IN LOVE AGAIN」を構成する3語は、全て重要であり、分割して論じることは妥当ではない。
続いて、第9及び第10引用商標であるが、この2件の商標についても、特許庁の判断は、両商標を全体としてまとまりのよい商標として捉え、その登録情報において、それぞれの称呼は“ラブストラック”と“ラブトークン”という全体称呼であるとされている。
また、「LOVE STRUCK」は“愛に射止められて”という印象の強い意味をもち、前半の“LOVE”と後半の“STRUCK”のいずれを欠いても商標として成立しない。意味の点からいっても、まとまりのよい一続きの商標なのである。同様に、「L0VE TOKEN」は“愛の証し”を意味し、やはり前半の“LOVE”と後半の“TOKEN”が等分に重要な要素であり、まとまりのよい一続きの商標である。
請求人は、本件商標と請求人の各引用商標が混同を生ずるのは、「Love」の文字が需要者及び取引者の注意を惹くものとなっているからだと述べている。
しかしながら、登録第4718372号商標の「Love shower/ラブ シャワー」や登録第4820074号商標の「Love Attraction/ラブ アトラクション」にみられるように、化粧品を指定して、「ラブ+○○」の構成の登録商標が存在し、その登録商標は、請求人の所有する商標ではない。請求人の主張が正しいのであれば、前記商標は、決して登録にはならなかったはずである。
(ウ)請求人が使用許諾を受けている商標
請求人が、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する根拠としてあげているものの第3番目は、請求人が中山太陽堂興産株式会社より使用許諾を得て使用しているとする第11ないし第14引用商標の4商標(以下、「“CLUB COSMETICS”又は“クラブコスメチックス”の4商標」と称することがある。)である。
請求人の見解に対し反論を述べるために、本件商標と「“CLUB COSMETICS”又は“クラブコスメチックス”の4商標」に関し、まず音声の面から考察を加える。まず、本件商標の前半は「ラブ」という2音であり、「“CLUB COSMETICS”又は“クラブコスメチックス”の4商標」は「クラブ」の3語である。比較的音数の少ない語を比べる際に、一方が2音であり、他方が3音であるという相違点は重要である。音数ばかりでなく、語頭に“ク”の音があるかないかの違いは、商標の類比を判断する際には大きな相違であると思われる。“クラブ...”で始まっている商標を需要者や取引者が認識するときに、それが聞き取る場合でも、みて取る場合でも、語頭の“ク”の音を飛ばして、2語目から認識することはほとんどあり得ない。
また、本件商標全体は8音であり、やや長めの商標といえるが、発音するに大変なほどではない。しかし、「“CLUB COSMETICS”又は“クラブコスメチックス”の4商標」は、全体で10音数であり、声に出して言ってみると、相当に長いという感想を持つ上に、イントネーションの上がり下がりも激しいことが分かる。加えて、「“CLUB COSMETICS”又は“クラブコスメチックス”の4商標」のうちカタカナで表記されたものでは、後ろから4音目が、“ティ”ではなく、“チ”であり、レトロな印象を醸し出している点も、本件商標との相違点である。
「ラブ」と「クラブ」の意味の違いも重要である。両者が英文字で表記されていても、カタカナで表記されていても、両者のように既に日本語になってしまっているような単語の意味を、本件商標の登録出願時において、需要者・取引者が見間違えることはあり得ない。いうまでもなく、「ラブ」は広義の「愛」であり、「クラブ」は「ある活動を共にする者の集団」といった意味である。このような重要な観念の相違が需要者・取引者によって見過ごされることはあり得ない。
また、請求人は、甲第20号証を提出しているが、その内容は会社概要、現在の販売商品紹介、社史、関連会社紹介などであり、プリントアウトの日付は、 2005年9月12日である。甲第20号証は、「“CLUB COSMETICS”又は“クラブコスメチックス”の4商標」が本件商標登録出願の時点(2003年10月23日)において、“著名”であったことを示す資料ではない。同様に、甲第21号証も、インターネットにおいて“クラブコスメチックス”の語をキーワードとした場合の検索結果であるが、これも日付が2005年9月9日であり、本件商標の登録出願時における“著名”性を示すものではない。加えて、第11及び第14引用商標が「日本有名商標集」に掲載されたからといって、“著名”であるとはいえない。
(3)まとめ
上述のとおり、請求人の提出した証拠はいずれも本件商標が無効であることを証明していないから、請求人の請求はしりぞけられるべきである。
請求人は、第1引用商標をあげて、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当すると主張しているので判断するに、本件商標は、別掲(1)のとおり、アンダーラインを挟んで「Love cosmetic」及び「for two persones who love」の欧文字を二段に表し、その下部に「ラブコスメティック」の片仮名文字を横書きし、さらに前記「Love cosmetic」の「m」と「e」の文字間の上部に図形を配してなるところ、各欧文字及び図形が常に一体不可分のものとして把握されるとは限らず、大きく表された「Love cosmetic」の欧文字と「ラブコスメティック」の片仮名文字が、他の欧文字及び図形と独立して自他商品の識別標識として機能を果たし得るものである。
ところで、「Love cosmetic」の欧文字とその読みを片仮名文字で表したと認められる「ラブコスメティック」についてみるに、「Love cosmetic」の一連の語は既成語とは認め難いものの、「Love」の文字が「愛、愛情、愛する」等の意味を、また、「cosmetic」の文字が「化粧品」の意味を、それぞれ有する平易な英語であって、日常親しまれて使用されている語であることからすると、全体として「愛する化粧品、愛情のこもった化粧品」等の意味合いを容易に理解し得るものである。しかも、上記文字より生ずる「ラブコスメティック」及び「ラブコスメチック」(なお、「cosmetic」の文字は、しばしば、「コスメチック」とも表示されて使用されているので、全体として「ラブコスメチック」の称呼をも生ずると認める。)の称呼も格別冗長ではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであり、また、外観上も同じ書体、同じ大きさで(前記片仮名文字はさらに、同じ間隔で)表されていて、かつ、「Love cosmetic」の文字の直下にアンダーラインが引かれていることから、外観上もまとまりよく一体的に把握し得るものである。
そうすると、上記「Love cosmetic」の欧文字と「ラブコスメティック」の片仮名文字は、「Love」と「cosmetic」及び「ラブ」と「コスメティック」に分離されることなく全体をもって一体不可分の語を表したものと把握し、認識されるとみるのが自然である。
してみれば、本件商標は、「Love cosmetic」の欧文字と「ラブコスメティック」の片仮名文字については、当該文字に相応して「ラブコスメティック」及び「ラブコスメチック」の一連の称呼のみを生じ、また、前記意味合いを容易に理解しうるものであるから、「愛する化粧品、愛情のこもった化粧品」の観念を生ずるというべきある。
他方、第1引用商標は、「ラブ」の片仮名文字と「LOVE」の欧文字を上下二段に横書きしてなるところ、「LOVE」の文字及びその読みである「ラブ」の片仮名文字は、前記同様、「愛、愛情、愛する」等の意味を有する平易な英語及び外来語であって、日常親しまれて使用されている語であるから、これより「ラブ」の称呼、「愛、愛情」の観念を生ずるものである。
そこで、前記両商標を比較するに、本件商標から生ずる「ラブコスメティック」及び「ラブコスメチック」の称呼と「ラブ」とは、「コスメティック」または「コスメチック」の有無により明瞭に区別し得るものである。また、両商標から生ずる「愛する化粧品、愛情のこもった化粧品」と「愛、愛情」の観念は、「化粧品」の有無により明瞭に区別し得るものである。さらに、両商標の構成に照らし、外観上も容易に区別し得るものである。
してみれば、本件商標と第1引用商標とは、称呼、観念及び外観いずれの点においても類似しないものである。
請求人は、本件商標中の「cosmetic」、「コスメティック」の語は、我が国において非常に馴染みがあり、役務の内容を想起させ、識別力が弱い旨主張しているが、当該語が、我が国において非常に馴染みがあるものと認められるものの、指定役務との関係で直ちに役務の内容を表示するものとは認め難いものである上に、上記で判断したとおり、「Love cosmetic」の欧文字と「ラブコスメティック」の片仮名文字は、観念、称呼及び外観のいずれの点からしても全体をもって一体不可分の語を表したものと把握し、認識されるとみるのが自然であるから、その主張は採用できない。
次に、請求人は、第2ないし第14引用商標をあげて、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当すると主張しているので、以下、判断する。
(1)本件商標は、その構成中の「Love cosmetic」の欧文字と「ラブコスメティック」の片仮名文字が、前述のとおり、観念、称呼及び外観のいずれの点からしても全体をもって一体不可分の語を表したものと把握し、認識されるとみるのが自然であり、これより、「ラブコスメティック」の一連の称呼のみを、また、「愛する化粧品、愛情のこもった化粧品」の観念を生ずるものである。
他方、第2ないし第6引用商標は、その構成前記のとおりであり、当該文字より「ラブ」の称呼、「愛、愛情」の観念を生ずるものである。なお、第2引用商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、該文字から直ちにどの言語に基づいて表示された既成語であるか不明なところがあり、その後半部をみると、「’」が有り、これが欧文字「i」の上部に付す点に当たるのか、それともアクサン記号なのか(アクサン記号とすればその位置で良いのか疑問は残るが。)定かではないものの、この「’」を除けば、上記のように日常親しまれて使用されている英語「Love」の筆記体に符合することから、これをあえて称呼するときは英語風の読みで「ラブ」又はアクサン記号とみた場合の「ラベ」の称呼をもって取引に資することがあるというべきである。
次に、第7ないし第10引用商標は、その構成前記のとおりであり、第7及び第8引用商標は3段に、かつ「LOVE」の文字が他の文字より大きく表されているものの、また、第8ないし第10引用商標は半文字程度の空間があるものの、それぞれの文字が、外観上もまとまりよく一体的に把握し得るものであり、かつ、第7引用商標から順次生ずる「インラブアゲイン」「アブストラック」「ラブトークン」の称呼も格別冗長ではなくよどみなく一連に称呼し得るものであるから、それぞれ一連の称呼のみを、また、いずれも特定の意味合いを有しない造語と認識させるものである。
さらに、第11ないし第14引用商標は、その構成前記のとおりであり、それぞれの文字に相応して「クラブコスメチックス」の称呼を、第11及び第13引用商標については、その構成中の「COSMETICS」の文字が「コスメティックス」とも表示されて使用されているので、全体として「クラブコスメティックス」の称呼をも生ずるものであり、いずれも特定の意味合いを有しない造語と認識させるものである。
そこで、本件商標と、前記引用商標を比較するに、まず、本件商標と第2ないし第6引用商標とは、第1引用商標との比較した理由と同様に、称呼、観念及び外観いずれの点においても類似しない。
次に、本件商標と第7ないし第10引用商標を比較するに、本件商標中の「Love cosmetic」の欧文字と「ラブコスメティック」の片仮名文字より生ずる「ラブコスメティック」及び「ラブコスメチック」の称呼と、第7ないし第10引用商標から生ずる「インラブアゲイン」「アブストラック」「ラブトークン」とは、その音構成において顕著な差異があるから明瞭に区別し得るものであり、観念については、第7ないし第10引用商標はいずれも特定の意味合いを有しない造語と認識させるものであるから、比較すべくもない。また、両商標の構成に照らし、外観上も容易に区別し得るものである。そうすると、両商標は、称呼、観念及び外観いずれの点においても類似しない。
さらに、本件商標と第11ないし第14引用商標を比較するに、本件商標中の「Love cosmetic」の欧文字と「ラブコスメティック」の片仮名文字より生ずる「ラブコスメティック」及び「ラブコスメチック」の称呼と、第11ないし第14引用商標から生ずる「クラブコスメチックス」及び「クラブコスメティックス」の称呼とは、前者が8音、後者が10音からなり、「ラブコスメティ(チ)ック」の音を共通にし、語頭音の「ク」と語尾音「ス」の有無に差異があるものである。
しかして、「ク」の音は、後舌面と軟口蓋につけて封鎖し、呼気をとめた後にその封鎖を破って発せられる破裂音で、力の入る強い音といえるものであるばかりでなく、称呼識別上重要な要素をしめる語頭音にあるため聴者に与える印象が強いものである。加えて、両称呼における語頭部の「ラブ」が「愛、愛情」等を、「クラブ」の音が「共通の目的のために活動する団体」等をそれぞれ意味する外来語として親しまれて使用されていることから、該音に対する注意力が一層喚起されることにより語頭部の「ラブ」、「クラブ」の音が明瞭に聴取され得るものである。
そうすると、音数、語尾音「ス」の有無の差異ばかりでなく、語頭音「ク」の音の有無の差異が両称呼に与える影響は大きく、両称呼全体をそれぞれ一連に称呼しても、その語感が相違し、互いに聴き誤るおそれはないと判断するのが相当である。観念については、第11ないし第14引用商標はいずれも特定の意味合いを有しない造語と認識させるものであるから、比較すべくもない。また、両商標の構成に照らし、外観上も容易に区別し得るものである。そうすると、両商標は、称呼、観念及び外観いずれの点においても類似しない。
してみれば、本件商標は、第2ないし第14引用商標と、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても類似しない別異な商標である。
(2)請求人は、第2ないし第14引用商標が、本件商標の登録出願の日前に既に需要者及び取引者の間に広く認識されている旨主張し、その証拠として甲第16号証ないし同第22号証及び同第30号証ないし同第33号証を提出している。
そこで、各証拠をみるに、甲第16号証は、「LOVE」(第2ないし第6引用商標)の商標が掲載されているAIPPI JAPANが2004年に発行した「日本有名商標集」であるが、その発行が本件商標の登録出願後である。
甲第17号証は、2005年9月7日に印刷された「IN/LOVE/AGAIN」(第7及び第8引用商標)に関するウェブサイトであるが、プリントアウトされたのは本件商標の登録出願後である。また、掲載内容から、「IN/LOVE/AGAIN」(第7及び第8引用商標)は「インラブアゲイン」として紹介されているものの、「LOVE」と略称されて紹介されているものではない。
甲第18号証及び同第19号証は、「LOVE STRUCK」、「LOVE TOKEN」(第9及び第10引用商標)の年毎の売上リストと2005年9月7日にプリントアウトされたウェブサイトであるが、売上総額が明示されているものの、本件商標の登録出願日以前の各年の売上額が確認できるのは2000年以降2003年までの4年間のみである。さらに、該ウェブサイトによれば、「LOVE STRUCK」、「LOVE TOKEN」(第9及び第10引用商標)は「ラブストラック」「ラブトークン」として紹介されているものの、「LOVE」と略称されて紹介されているものではない。
甲第20号証は、2005年9月12日にプリントアウトされた請求人のウェブサイトであるところ、昭和46年に現社名(株式会社クラブコスメチックス)に変更され、少なくともそれ以降、第11ないし14引用商標が、社名の略称として、また、商標として採択、使用されてきたと認められ(この点は、社名変更される前年に商標登録出願していることからも伺える。)、甲第21号証のインターネットサーチェンジンの検索結果によれば、該証拠が本件商標の登録出願後のプリントアウトではあるものの、相当数のウェブサイトで取り上げられていることが認められる。
甲第22号証は、「クラブ コスメチックス」「CLUB COSMETICS」の商標が掲載されているAIPPI JAPANが1998年に発行した「日本有名商標集」であり、同第16号証の旧版と認められるところ、その新版(甲第16号証)であるところの被請求人の提出した乙第4号証及び同第5号証(「日本有名商標集・第3版」2004年AIPPI JAPAN発行)の8頁「In Compiling This Edition」の見出し及びその日本語訳「この版の編集に当たって」)によれば、「AIPPI・JAPANにより設定された掲載のための指針に沿って・・・」との記述がなされていることから、本件甲第22号証が、旧版でありながら新版である甲第16号証と同様に、AIPPI JAPANによる独自の指針で編集したものと推認することができ、これに反する証拠はない。
さらに、前記記述(乙第4号証及び同第5号証の8頁)に続いて、「商標所有者が、需要者、取引者に広く知られるようになったという商標権者自身の判断に基づき、・・・掲載を希望した商標である。」旨の記述からすると、掲載候補としてまず選定したのは掲載を希望した商標権者であり、その者の認識度によるところが大きく、その信憑性が必ずしも高いとはいえない。
また、この「日本有名商標集」に掲載された商標に係る商品の販売数量、広告宣伝、使用期間等を具体的に証明する証拠の提出がないから、掲載を希望した商標権者が、あるいは最終的に掲載したAIPPI・JAPANがどのような実績に基づいて選定したのか定かでない。この「どのような実績に基づいて選定したのか定かでない。」点は、後掲の証拠(甲第30号証、同第31号証)についても同じことがいえる。
そうすると、該証拠(甲第22号証)によっては、化粧品の分野における需要者及び取引者の間に一定程度知られていると推認することができるものの、需要者及び取引者の間に広く認識されるに至っていたと認定するには充分ではない。
甲第30号証は、平成9年10月1日に商標調査会によって発行された「日本商標名鑑’97」であるが、掲載されている商標は、隅丸四角形内に「CLUB」の文字を上段に大きく表し、アンダラインを介して、下段に「cosmeticsCO,.LTD」の文字を表示されているものであり、第11ないし第14引用商標とは異なる商標である。
甲第31号証は、昭和62年3月30日に社団法人発明協会大阪支部が発行した「THE OSAKA BRAND」であるが、社名として「株式会社クラブコスメチックス」の表示があるものの、掲載されている商標は、「CLUB」の欧文字、「クラブ」の片仮名文字及び2人の婦人を主要とする図形の3商標であり、いずれも第11ないし第14引用商標とは異なる商標である。
甲第32号証及び同第33号証は、有限会社日本商業新聞社社長の証明書及び関連ウェブサイトプリントアウトであるが、証明者がいかなる根拠に基づいて該商標が需要者の間に広く認識されていることを証明したのか、その証明の判断の客観的な過程が明らかではない。
以上、請求人が提出した前記甲号証では、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品の商標として、第2ないし第10引用商標が、化粧品の分野における取引者・需要者間に広く認識されていたとは認めることができない。また、同じく、第11ないし第14引用商標は、化粧品の分野における需要者及び取引者の間に一定程度知られていると推認することができるものの、需要者及び取引者の間に広く認識されているとまでは認めることができない。
(3)以上の点を総合すると、本件商標は、第2ないし第14引用商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれの点においても類似しない別異な商標であるばかりでなく、第2ないし第10引用商標は、その取引者・需要者間に広く認識されていたとは認めることがでず(さらに、第7ないし第10引用商標が「LOVE」と略称されて取引者・需要者間に広く認識されていたとも認めることがでない。)また、第11ないし第14引用商標とは、化粧品の分野における需要者及び取引者の間に一定程度知られていると推認することができるものの、需要者及び取引者の間に広く認識されているとまでは認めることができないから、これをその指定役務に使用しても、前記引用商標を直ちに連想又は想起するとは認められず、その役務が請求人又は請求人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、役務の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものということはできないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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