結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 取消2005−30084(T2005−30084/J2) |
|---|---|
| 審判種別 | 取消 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第2247338号商標(以下「本件商標」という。)は、「ドライファースト」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和63年5月10日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、平成2年7月30日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べた。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定商品「被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
(2)弁駁の理由
(ア)被請求人は、乙第1号証から乙第6号証を提出して、本件商標が本件審判請求登録前3年以内にその指定商品の一部である被服について使用されていることは間違いのないところである旨主張している。
しかしながら、提出された証拠は、被服ではなく生地についての使用の証拠であると認識でき、本件指定商品に該当する商品の使用の事実は認められないことから、被請求人の主張は、商標の使用についての誤認といわざるを得ない。以下に、その理由を詳述する。
(イ)被請求人は、乙第1号証ないし第3号証において、下げ札及びその注文書を提出している。その下げ札には、表面に「吸水・速乾/着心地/さわやか/加工/ドライファースト/ICHIBO」、裏面に「汗を吸い、すぐ乾く!/ドライファースト/吸水・拡散・乾燥の特性を/より高めるために開発!/抜群の吸水性 すばやく乾燥/優れた拡散性 優れた洗濯耐久性
『綿の持つ水分を吸う特性と一層高めるとともに、繊維間の水分を素早く拡げる働きを加えました。吸水力と乾燥力がともに向上した画期的素材です。』第一紡績株式会社」と記載されている。
この下げ札をみる限りにおいて、表面からは「ドライファースト」が「吸水・速乾加工」の名称であり、裏面からは、「吸水・乾燥機能に優れた綿生地」の名称であることが容易に理解できる。してみると、被請求人が本件商標の使用証拠として提出した下げ札は、「特殊加工処理された綿生地」についての標章の使用の証明であって、「被服、布製身回品、寝具類」における本件商標の使用の証拠にはならない。被請求人が提出した納品書の控は、被請求人からユニチカ通商株式会社(大阪市中央区瓦町2丁目4番5号 以下「ユニチカ通商」という。)への「生地」及び「下げ札」のものであって、被請求人が商標の使用を主張する「下げ札を添付した被服」の納品を示すものは提出されていない。
また、乙第4号証として提出された申述書において、被請求人は、「『ドライファースト加工』と称する特殊加工を開発し、その加工を施した生地(以下「DF生地」といいます。)の販売を事業として行っております。」、「顧客の要求に応じて、『DF生地』を生地の商品として販売しており、自らは衣服の商品として販売しておりません。」、「素材として使用されている生地に感心を持つのが一般的であり、特に本件の特殊加工を施した『DF生地』」と述べている。
商標法第2条第1項「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」及び商標法第3条第1項「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」の規定をみてもわかるように、商標とはその商標を使用する者の業と密接に関連した標章のことであり、「生地」が「被服」の製造必要不可欠な商品であるとはいえ、国際分類第17類(旧分類第16類)に属する商品についての使用をもって、国際分類第25類(旧分類第17類)の商品の使用とするのは、「商標」の定義を逸脱するものである。
(ウ)さらに、通常下げ札は、商品購入時までしか商品に添付されず、着用時には外されてしまうものである。商品そのものに商標を添付することができず、また賞味期限などにより第三者への譲渡を繰り返し行うことのできない食品などと違い、被服はその商品本体に商標を付した状態で第三者に繰り返し譲渡することが可能なことから、包装を外した後に第三者に譲渡された場合にも確実に商標が商品に付随して流通するよう工夫されている。
現に、被服の商標は、洗濯などで簡単に外れないように、商標名を印刷又は刺繍した布製又は不織布製ラベルを襟やウエスト部分に縫い付けている。このことを考えると、出所機能及び品質保証機能を有する商標を簡単に取り外せる下げ札にのみ記載し、被服そのものに容易に取り外すことができないような添付はしないという行為は理解できない。このことから、出所・品質保証機能を有した別の商標が商品本体に添付されており、「下げ札」は一種のキャッチコピーとして販売促進のために商品に添付されているので、購入後直ちに取り外せるように簡単に付けられているのだと解することに全く無理は生じない。
この下げ札が添付されていることによって、消費者による商品の「素材に基づく選択肢」が広がることに疑問の余地はなく、また、様々なストレスなどから多種多様なアレルギー疾患が発症している現代社会において、直接肌に触れる被服がどのような素材によって作られたものであるのかについて関心が高まっていることに全く異論はない。しかしながら、取り外すことが目的で商品に添付している下げ札だけに書かれた標章がすなわち商品本体の出所機能及び自他識別機能を示す商標として有効であるいうことについては納得できない。
「素材」の商標がそのまま商品の商標として機能するとなると、縫製技術やデザイン力、色彩力などによって積み上げてきた各メーカーの商標に付加された信頼度は全く意味のないものとなり、その商標は単なる「商号の表示」又は「分類記号」になってしまう。異なるメーカーが同じ素材を使用したことで、同一の商標が市場に氾濫するようなことになれば、商標の機能は失われ、市場に無用の混乱を招きかねない。
(エ)乙第5号証ないし乙第6号証から、被請求人は複数のアパレルメーカーに「ドライファースト生地」を納入していたこと及び納入先のアパレルメーカーがそれを素材として製造した被服の納入先がわかる。このことは、異なるメーカーが製造する商品の素材に被請求人の商品が使われていることを示し、その素材を使って被服が製造されていることを示すものであるが、それはとりもなおさず、各メーカーごとに異なる商標を付した被服が流通していることを示すものである。「ドライファースト生地」を使用した商品の商標として、被請求人の「下げ札」だけが商品に添付されていることを立証する証拠が提出されていないことからみても、別の商標がその商品に付されていると考えることは当然である。
例えば、乙第6号証として提出された設計書には、「伊勢丹様オリジ」の表示がみて取れ、このことから株式会社ワコール(京都市南区吉祥院中島町29、以下「ワコール」という。)が株式会社伊勢丹(以下「伊勢丹」という。)の注文に基く被服を製造するようユニチカ通商に依頼していることがわかる。百貨店からの発注ともなれば、百貨店オリジナル商品を指し示すことは容易に理解できる。伊勢丹店頭において、「伊勢丹」ブランドの被服が本件商標の下げ札を付して販売されていたとしても、自社のブランドイメージを賭けた看板商品ともいえるオリジナル商品において、その出所機能及び自他識別機能として最も有効な自社商標を軽んじ、生地の名称によって自社商品を認識させるような販売促進を行うとは到底考えられず、また消費者においても、特殊加工の生地を使用していると表示している下げ札から、直ちにそれがその商品の商標であるという認識は生じない。
(オ)以上述べたように、被請求人の提出した資料からは、本件商標が被服に使用される特殊加工を施した生地の名称として使用されていることを証明するに留まり、本件商標が「被服、布製身回品、寝具類」に使用されていることを立証するものではない。
したがって、乙各号証は、本件商標の使用の事実を立証するものではないことは明らかであるから、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
よって、請求の趣旨とおりの審決を求める。
被請求人は、「本件審判請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む)を提出した。
(1)答弁理由の要点
被請求人は、平成15年8月に、ユニチカ通商に対し、通常実施権(以下単に「本件使用権」という。)を、指定商品「被服」(以下「被服の商品」という。)について許諾した事実がある。
そして、ユニチカ通商は、本件使用権に基づいて、本件審判が請求された平成17年1月25日前の3年以内である平成16年1月から同年2月にかけて、本件商標を表示した下げ札(以下「本件下げ札」という。)を添付した肌着等の被服の商品をワコールに販売することにより、実際に、日本国内で本件商標を被服の商品に使用した事実がある。
上記の事実は、以下の乙第1号証ないし乙第6号証により明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定に該当するものでないから、本件審判請求は成り立たない。
(ア)乙第1号証ないし乙第3号証は、「本件下げ札」の実物サンプルと印刷業者の納品書及び請求書であり、「本件下げ札」の印刷枚数及び納品枚数と、その時期が明らかにされている。
(イ)乙第4号証は企画開発部部長の申述書であり、乙第5号証はテキスタイル事業部テキスタイル部新素材販売課課長の報告書であって、被請求人とユニチカ通商の間における本件使用権の内容と、被請求人とユニチカ通商との間における本件使用権に基づく商取引の詳細が明らかにされている。
(ウ)乙第6号証は、ユニチカ通商の大阪衣料部部長の陳述書であり、本件使用権に基づく事業内容の詳細が述べられており、ユニチカ通商が製造し、平成16年1月から2月にかけて、ワコールに販売された被服の商品には、被請求人が供給した「本件下げ札」を添付した状態で納品された事実があり、本件商標を使用した事実が明らかにされている。
(2)被請求人の本件使用権に基づく事業
(ア)被請求人は、平成9年1月に自称「ドライファースト加工」と称する特殊加工を開発し、この加工を施した生地(以下「DF生地」という。)の販売を事業として行い、現在に至っている。この加工は、生地に高い吸水性と高い乾燥性をもたせるための特殊加工で、これを施した生地を使用した被服は、着用時の汗を吸収(吸汗)しやすく、また、吸収した汗を素早く乾かす機能を備えているという特長がある(乙第4号証−申述書1項)。
(イ)ところで、このような「DF生地」に関して、被請求人は、顧客の注文に応じて、生地を商品として販売しているが、被服の商品は自ら販売していない。
しかしながら、被請求人から「DF生地」を購入した顧客(以下「アパレルメーカ」という。)は、これを縫製し、被服の商品として販売しており、その際、アパレルメーカは、生地の品質優秀性をピーアールすることにより、被服それ自体の商品について販売促進を図ろうとする。即ち、アパレルメーカにより提供される被服の商品は、商品流通過程における販売者(卸売業者、小売業者)や、更には消費者としてのユーザにおいても、素材として使用されている生地に感心を持つのが一般的である。
そこで、特に、本件の特殊加工を施した「DF生地」の優れた機能をピーアールし、生地のみならず被服の商品としても販売促進を図るため、平成15年から、「DF生地」を購入するアパレルメーカに対して、被請求人から「ドライファースト」の商標を表示した「本件下げ札」を供給するという事業を展開している。蓋し、アパレルメーカにおいて縫製された被服に「本件下げ札」を添付せしめることにより、アパレルメーカから消費者に至るまでの流通過程において、一貫して、本件商標が表示されることになり、生地と被服の両方の商品について販売促進が図れるからである。
被請求人が多くの商標について、指定商品に関し、生地(現行第24類)以外に、被服(旧第17類、現行第25類)について商標登録を保有しているのは、このような理由によるものである。
これにより、アパレルメーカが「DF生地」を縫製し製造した被服の商品は、流通過程において「本件下げ札」を添付することにより、本件商標の下で、被服それ自体の商品として、吸汗性と即乾性に優れた商品であることを表示し、生地のみならず被服の商品の販売促進を図っている(乙第4号証−申述書1項、2項、乙第5号証−報告書1項、乙6号証−陳述書1項)。
(3)本件下げ札
(ア)被請求人の「本件下げ札」は、乙第1号証の実物サンプルに示されるとおり、裏面の「第一紡績株式会社」の文字と表面の「ICHIBO」(注:第一紡績の略称である)の文字によりその出所が被請求人であることを明らかにした上で、表面の「吸水・速乾 着心地 さわやか 加工」の文字の下に「ドライファースト」の文字を白抜きで横書きすると共に、裏面の「汗を吸い、すぐ乾く!」の文字の下に「ドライファースト」の文字を横書きしている。
そして、「ドライファースト」の文字は、縁取りを表すことによりややデザイン化されているが、明らかに本件商標と実質的に同一標章であると認められる。
しかも、「ドライファースト」の標章は、他の文字から独立し、商品のピーアールが図られるように顕在状態で表されており、商標的使用方法であることは明らかである。
(イ)被請求人は、企画開発部において厳格に商標管理を行っており、「本件下げ札」も企画開発部が管理している(乙第4号証−申述書)。
企画開発部は、「本件下げ札」の初版に基づく印刷依頼を平成15年(2003年)8月に光陽印刷株式会社(大阪市東成区中道2−10−2 以下「光陽印刷」という。)に発注し、同年同月12日に1万枚の納品を受けた(乙第1号証の1−納品書、乙第1号証の2−請求書)。
その後も、必要に応じて、随時、光陽印刷に印刷を依頼し、納品を受けており、例えば、同年11月11日には9千950枚が納品されている(乙第2号証の1−納品書、乙第2号証の2−請求書)。
(4)被請求人の商標管理と本件使用権の概要
被請求人は、「本件下げ札」を企画開発部において厳格に管理しているため、本件商標権をアパレルメーカに対し使用許諾する際には、次のような社内ルールに基づく手続を経ることを必要としている。
(ア)被請求人の「DF生地」の購入を希望するアパレルメーカは、被請求人との間において、商標使用許諾に関する「取り交わし書」を作成し、取り交わすことが必要である。この「取り交わし書」は、乙第4号証の別紙(a)、乙第6号証の別紙(1)のようなものである。
本件使用権の場合は、前述のように、被請求人からアパレルメーカに対して「本件下げ札」を供給し、アパレルメーカにおいて被服の商品に添付する方法がとられている。
(イ)被請求人からアパレルメーカに与えられる商標使用許諾は、単純な商標権の使用許諾だけではなく、被請求人の商品供給とパッケージとされているため、アパレルメーカは、被請求人の担当営業部に対して、口頭又は書面でその商品内容を説明することが求められる。
そこで、アパレルメーカから説明を受けた被請求人の営業担当者は、供給先と、製品が販売される場所・期間・数量等を明確にした上で、「商標貸与稟議書」を作成の上、社内稟議を起こし、その内容が適切かつ適当であると認められ、受注できると判断されたとき、その旨を顧客に対して返答する。この「商標貸与稟議書」は、乙第4号証の別紙(b)のように書式が定められており、稟議事項の内容と責任者を明らかにした上で、記録保存される。
被請求人がアパレルメーカに商標使用を許諾する形態には、無償の場合もあるが、本件使用権については、アパレルメーカから「本件下げ札」の1枚につき10円の使用料を徴収している。
(ウ)前述のように、被請求人とアパレルメーカの間における取引は、商品取引としての「DF生地」の供給と、本件商標権の使用許諾としての「本件下げ札」の供給との2つが主な内容とされており、前者は、アパレルメーカとの間で、被請求人の担当営業部により行われるが、後者は、アパレルメーカとの間で、次のように、被請求人の担当営業部と企画開発部との協働作業により行われる(乙第4号証−申述書4項)。
(ウー1)アパレルメーカから被請求人の営業担当者に対して、「本件下げ札」の出荷依頼があると(乙第5号証の別紙1、乙第6号証の別紙(2)に示されるように、商品の発注書にメモ書きされるのが通例である)、担当営業部は、「出荷依頼メモ」(乙第4号証の別紙(c)参照)を作成の上、企画開発部に提出する。
(ウー2)担当営業部から出荷依頼を受けた企画開発部は、先に決済された社内稟議を確認の上、依頼された出荷先に依頼枚数の「本件下げ札」を出荷すると共に、「出荷案内書」(乙第4号証の別紙(d)参照)を作成の上、担当営業部に回付する。
(ウー3)その後、担当営業部は出荷された「本件下げ札」に関する「支払申請書」(乙第4号証の別紙(e)参照)を作成の上、経理部に提出する。
「本件下げ札」は、前述のように、企画開発部において、予め所定枚数を光陽印刷に印刷させ、在庫として保管している。このため、出荷された枚数の「本件下げ札」は、担当営業部が在庫から拠出したものとして取り扱われ、「支払申請書」により経理処理される。
(ウー4)「本件下げ札」の対価、即ち、本件使用権の使用料は、商品代金とは別勘定とされ、担当営業部からアパレルメーカに「請求書」(乙第5号証の別紙11参照)が送付される。
(5)本件使用権に基づく本件商標の使用事実
(ア)被請求人は、本件商標権について、アパレルメーカに対し使用許諾することにより本件商標の使用実績を積み重ねているが、上述のように、本件使用権に関しては、ユニチカ通商が「DF生地」を使用した被服の商品を製造し、その商品に「本件下げ札」を添付した状態で、平成16年1月から同年2月にかけて、ワコールに販売した事実について、その事実を裏付ける書面が揃っているので、以下、その詳細を説明する。
(イ)この事業は、ワコールのファミリーウエア営業部から、「DF生地」(被請求人の品番CMFB8040DF、品番CMFH4017DFの生地)を使用した子供用の被服、具体的には、ランニングシャツ(ワコールの品番LRX101)、半袖シャツ(同品番LRV101)、トランクス(同品番LNX101)、ランジュ(同品番LIX101)、ショーツ(同品番LOX101)の製造について、ユニチカ通商の大阪衣料部に取引の話があり、現実に、事業が遂行されたものである。
(ウ)本件使用権に関して、平成15年8月9日付で、被請求人とユニチカ通商の間において「取り交わし書」(乙第4号証の別紙(a)、乙第6号証の別紙(1))が取り交わされた。即ち、被請求人の特殊加工を施した「DF生地」をユニチカ通商が購入するに際し、被請求人から「本件下げ札」を供給し、「本件下げ札」を被服の商品に添付する限りにおいて、本件商標の使用許諾が行われるものである。
そこで、被請求人においては、テキスタイル事業部テキスタイル部新素材販売課長(以下「新素材販売課長」という。)が営業担当者として、商標使用許諾に関する社内稟議のため、平成15年8月19日付の「商標貸与稟議書」(乙第4号証の別紙(b))を提出し、社内決済を得た。
(エ)前述のように、被請求人がユニチカ通商に提供する事業は、「DF生地」の供給と、「本件下げ札」の供給の2つが含まれているので、以下、それぞれの供給に関する事実をわけて説明する。
なお、この事業に直接関与した者は、被請求人においては、新素材販売課長とその部下(以下「新素材販売課長の部下」という。)、企画開発部長とその部下(以下「企画開発部長の部下」という。)であり、ユニチカ通商においては、大阪衣料部衣料1課係長である。
(A)「DF生地」の供給
(A−1)平成15年12月8日に、ユニチカ通商の大阪衣料部衣料1課係長から被請求人の新素材販売課長と新素材販売課長の部下に、「編物加工依頼書・発注書」がファックスにより送付され、被請求人の「DF生地」(品番CMFB8040DFを31反、品番CMFH4017DFを3反)の発注がなされ、同時に「本件下げ札」5千600枚の発注がなされた(乙第5号証−報告書3項(1)及び乙号証の別紙1、乙第6号証−陳述書4項(1)及び乙号証の別紙(2))。
これに対して、同年同月12日に、被請求人の新素材販売課長からユニチカ通商の大阪衣料部衣料1課係長宛に、「売約定書」が送付された。これにより、被請求人は、ユニチカ通商の発注を受注し、契約が成立した(乙第5号証−報告書3項(3)及び乙号証の別紙1ないし5、乙第6号証−陳述書4項(2)及び乙号証の別紙(3)ないし(5))。
(Aー2)引き続いて、平成15年12月18日に、ユニチカ通商の大阪衣料部衣料1課係長から被請求人の新素材販売課長の部下宛に、「出荷依頼書」がファックスにより送付され、前述の発注した「DF生地」に関して、この同出荷依頼書に従って、ユニチカ通商の下請け縫製業者である(有)三協とスドー縫製にそれぞれ出荷するよう依頼された(乙第5号証−報告書3項(4)及び乙号証の別紙6、乙第6号証−陳述書4項(3)及び乙号証の別紙(6))。
(Aー3)前記の出荷依頼に従い、被請求人は、平成15年12月19日に、受注した「DF生地」をそれぞれ(有)三協とスドー縫製に出荷すると共に、被請求人の新素材販売課長からユニチカ通商の大阪衣料部衣料1課係長宛に、請求書が送付された(乙第5号証−報告書3項(5)及び乙号証の別紙7ないし10、乙第6号証−陳述書4項(4)及び乙号証の(7)ないし(10))。
(A−4)ユニチカ通商は、ワコールから前述の肌着等の被服の商品を受注していたので、被請求人から供給された「DF生地」に基づいて(有)三協及びスドー縫製に縫製を行わせ、それぞれが縫製した被服の商品を平成16年1月から2月にかけてワコールに納品した。因みに、ワコールに納品された商品は、百貨店の伊勢丹に納入され、店舗で販売された(乙第6号証−陳述書5項及び乙号証の別紙(13)ないし(38))。
(B)「本件下げ札」の供給
(Bー1)前述のとおり、ユニチカ通商の大阪衣料部衣料1課係長から新素材販売課長とその部下宛に送付された「編物加工依頼書・発注書」(乙第5号証の別紙1、乙第6号証の別紙(2))には、同時に「本件下げ札」5千600枚が発注されていたので、被請求人の新素材販売課長は、平成15年12月10日に「出荷依頼メモ」(乙第4号証の別紙(c))を作成し、被請求人の企画開発部長の部下に提出することにより、「本件下げ札」をユニチカ通商の大阪衣料部衣料1課係長宛に出荷するよう依頼した(乙第4号証−申述書5項(3))。
(Bー2)これを受けた企画開発部長の部下は、同日、宅配業者により「本件下げ札」5千600枚をユニチカ通商の大阪衣料部衣料1課係長宛に発送すると共に、同日付で「出荷案内書」(乙第4号証の別紙(d))を新素材販売課長に提出することにより報告した(乙第4号証−申述書5項(4)、乙第5号証−報告書3項(2))。
(Bー3)被請求人における上述の社内処理のため、拠出された「本件下げ札」5千600枚について、「支払申請書」(乙第4号証の別紙(e))が作成され、経理処理された(乙第4号証−申述書4項(5))。
(Bー4)ユニチカ通商に対する「本件下げ札」の出荷に伴い、被請求人の新素材販売課長は、平成15年12月10日付の「請求書」(乙第5号証の別紙11、乙第6号証の別紙(11))をユニチカ通商の大阪衣料部衣料1課係長宛に送付した(乙第5号証−報告書3項(6)、乙第6号証−陳述書4項(5))。
(オ)被請求人からユニチカ通商に供給された「本件下げ札」は、乙第1号証に示される実物サンプルと同一のものである(乙第4号証−申述書6項及び乙号証の別紙(f)、乙第5号証−報告書3項(7)及び乙号証の別紙12、乙第6号証−陳述書4項(6)及び乙号証の別紙(12))。
(カ)ユニチカ通商は、供給された「本件下げ札」の所要枚数を下請け縫製業者の(有)三協及びスドー縫製に送り、それぞれ縫製した被服の商品に添付するように指示し、現に、(有)三協及びスドー縫製から出荷される被服の商品には指示されたとおり「本件下げ札」が添付され、その状態で、平成16年1月から2月にかけてワコールに納品された(乙第6号証−陳述書5項及び乙号証の別紙(13)ないし(38))。
(6)被請求人の主張
以上によれば、次の事実が明らかに立証されている。
(ア)本件審判請求前3年以内の平成16年1月及び2月に、ユニチカ通商が「本件下げ札」を添付した被服の商品をワコールに販売した事実がある。
(イ)「本件下げ札」は、本件商標と実質的に同一の標章を印刷し、商標として表示しているから、前記ユニチカ通商が「本件下げ札」を添付した状態で被服の商品をワコールに販売したことは、被服の商品に関する本件商標の使用に相当する。
(ウ)ユニチカ通商の商標使用は、被請求人の許諾に基づくものであり、したがって、ユニチカ通商は、本件商標権の通常使用権者に相当する。
(エ)したがって、本件商標は、商標法50条1項の規定により取消されるべきものではないので、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。
被請求人は、前記3で記載したとおり、被請求人(本件商標権者)から許諾を受けた通常使用権者(ユニチカ通商)により、実際に日本国内で本件商標を肌着などの被服の商品に使用した事実がある旨答弁している。
そこで検討するに、被請求人より提出された乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む)をみるに、乙第1号証は、本件商標を使用した下げ札(以下「本件下げ札」という。)の実物サンプル。乙第2号証の1は、印刷会社から被請求人宛ての2003年8月12日付けの「本件下げ札」に関する納品書(写し)。乙第2号証の2は、該印刷会社から被請求人宛ての2003年8月締め切り分の「本件下げ札」に関する請求書(写し)。乙第3号証の1は、印刷会社から被請求人宛ての2003年11月11日付けの「本件下げ札」に関する納品書(写し)。乙第3号証の2は、該印刷会社から被請求人宛ての2003年11月30日締め切り分の「本件下げ札」に関する請求書(写し)とそれぞれ認められるものである。
また、乙第4号証は、被請求人(会社)の企画開発部長の申述書。乙第5号証は、同じく被請求人(会社)の新素材販売課長の報告書。と題した書面であって、被請求人と通常使用権者と認め得るユニチカ通商の間における本件使用権の内容及び本件使用権に基づく商取引の詳細が記述されている。そして、乙第6号証は、ユニチカ通商の大阪衣料部長の陳述書。と題した書面であり、本件使用権に基づく事業内容の詳細が述べられており、ユニチカ通商が製造して平成16年1月から2月にかけて、ワコールに販売された被服の商品には被請求人から供給された「本件下げ札」を添付した状態で納品された事実があり、本件商標を使用した事実が明らかである旨が記述されていることが認められる。
以上の証拠からすると、「本件下げ札」には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「ドライファースト」が表示され、また、被請求人(会社)を表示したと認め得る「ICHIBO」の欧文字が表示されているが、該下げ札には「吸水・速乾」「着心地さわやか加工」等と表示されていることは認められるが、この下げ札が本件商標の指定商品である「被服、布製身回品、寝具類」の商標として使用されているものとは認められない。
また、納品書・請求書によれば、その品名欄には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標「ドライファースト」が表示され、また、被請求人(会社)が表示されてあるが、これら納品書・請求書は「本件下げ札」に関するものであり、本件商標の指定商品である「被服、布製身回品、寝具類」の商標として使用されていたことを証するものとは認められない。
さらに、上記した乙第4号証ないし乙第6号証は、いずれも被請求人又は通常使用権者と認められるユニチカ通商の関係部署の責任者等の陳述書というべきものであり、本件商標の使用を客観的に立証するものとは認め得ないものであるが、たとえ、これら書面に記述されたことが事実に基づくものであるとしても、例えば、申述書(乙第4号証)における、「弊社(被請求人会社)では、顧客の要求に応じて『DF生地』(「ドライファースト加工」を施した生地。)を生地の商品として販売しており、自らは衣服の商品として販売しておりません。」、「......『DF生地』は、...販売促進を図るため、『DF生地』を購入戴く顧客には、要望に応じて、『ドライファースト』の商標を表示した『本件下げ札』を弊社から供給し、衣服の商品に添付して戴くことにしております。」との記述があり、報告書(乙第5号証)における、「弊社は、本件商標を『被服』の商品には使用しておりませんが、弊社が得意先の依頼により、特殊加工を施した『DF生地』を供給する際に、その商品名を『ドライファースト』と命名し、このDF生地の供給を受けた得意先が被服を縫製した後、末端の小売店に至るまでの流通経路において一貫して、その被服の商品に弊社が供給する、『ドライファースト』の商標を表示した『本件下げ札』を添付して頂くという事業を展開しております。」との記載がある。
そして、陳述書(乙第6号証)における、「前述のとおり、第一紡績の『DF生地』を使用した被服については、弊社(ユニチカ通商)大阪衣料部で製品化した後、末端の小売店に至るまでの流通経路において一貫して、『本件下げ札』を添付する取決めとされておりますので、本件事業に先立ち、平成15年8月19日に弊社大阪衣料部と第一紡績との間で本件商標に関する『取り交わし書』が取り交わされております。別紙(1)は、その写です。」、「弊社大阪衣料部が第一紡績に発注した『DF生地』は、別紙(2)に記載されているとおり、『出荷品番:CMFB8040DF 品名:ドライファースト 巾:175 長さ:36乱』、『出荷品番:CMFH4017DF 品名:ドライファースト 巾;43.5 長さ:80乱』、『色別明細 色名:サラシ 数量:明細(1)31反 明細(2)3反』でした。」との記載がそれぞれされていることが認められる。
そうとすると、被請求人が本件商標の使用を立証するものとして提出した乙号各証をもっては、本件商標「ドライファースト」が商品「被服」等の出所表示を示すものとして使用されていたものとはいえないものである。
以上のことを総合すると、被請求人が述べるところの「本件商標が通常使用権者により被服について使用されている。」旨を答弁している点(実際)は、本件商標が、いずれも被服に使用された「素材(生地)」のみを示す識別標識として使用されているものとみるのが相当であり、本件審判請求に係る指定商品に含まれる「被服」等について使用されていたものとはいえないものである。
他に、乙第4号証ないし乙第6号証に添付されている別紙(取引書類)等によっても、上記の認定・判断に影響を及ぼすものとは認められない。
してみれば、被請求人(商標権者)及び通常使用権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を指定商品について使用をしていたものとはえないものである。
また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品に使用しないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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