結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2005−89113(T2005−89113/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録4691927号商標(以下「本件商標」という。)は、「アトピック」の片仮名文字を標準文字で表してなり、平成14年7月8日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同15年7月18日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第59号証を提出した。
(1)本件商標を構成する、「アトピック」の文字は、「アトピー(性)の」という意味を有する英単語「atopic」(甲第3号証及び甲第4号証)の音訳である。
しかして、本件商標の指定商品は「薬剤」であるから、例えば、本件商標が「アトピー性の疾患に用いる薬剤」について使用された場合には、本件商標は、単にその商品の品質・用途・効能等を表示するにすぎず、また、前記商品以外の商品に使用するときには、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
(2)「atopy(アトピー)」とは、いわゆるアレルギー体質を意味し、今や国民病とも呼ばれる「アトピー性皮膚炎」やアトピー性の気管支ぜん息等のアレルギー性疾患を表す言葉として、我が国において広く一般に認識されている医学用語である(例えば、広辞苑(甲第5号証)やカタカナ語辞典(甲第6号証)等にも掲載されている)。
ちなみに、「アトピー性皮膚炎」は、英語で「アトピック ダーマティティス(atopic dermatitis)」(甲第4号証)と表され、また、アトピー性皮膚炎に罹患した皮膚の状態を、我が国でも「アトピック ドライ スキン(atopic dry skin)」(甲第7号証及び甲第8号証ないし甲第13号証)あるいは「アトピック スキン(atopic skin)」(甲第4号証、甲第14号証及び甲第15号証)と称している。
また、「atopic/アトピック」という言葉は、その構成中、「ック(−ic)」の語の前にアトピー」の語幹である「アトピ」を伴っているから、たとえ「atopic/アトピック」という形容詞形そのものは知らないとしても、これに接した取引者及び需要者は、そこから「アトピーの」又は「アトピーに関する」という意味を容易に看取し、これが「薬剤」に使用されることとも相俟って、品質(用途・効能)表示として理解されることは明らかである。
すなわち、「−ic(ック)」という欧文字は、「...の、...に関する...的な」の意の形容詞を作る際に使用される接尾辞であり、名詞を形容詞化する機能を有する(甲第16号証及び甲第17号証)。例えば、「academic(学園の学校の)」、「basic(基礎の、基本的な)」等があり、これらは、名詞形「academy(学園)、base(基礎)」等に「ic」を伴って形容詞形となる英単語の一例であり、既に外来語として、我が国においてはその意味内容も十分に理解され、中学生レベルの英語においても多用されている単語である。
したがって、普段「アトピック/atopic」という言葉によく接する医師・薬剤師等が本件商標を「アトピー(性)の」という意味で認識するのはもちろんのこと、一般的な注意力と平均的な英語力を有する患者・一般消費者であっても、医師の処方箋なく入手できる医薬品等に本件商標が付された場合に、やはりこれを「アトピー(性)の」という意味で認識することは経験則上明白というべきである。
なお、本件商標の出願書類によれば、被請求人は、拒絶理由に対し意見書を提出し、本件商標の前身である登録第2430005号商標が「自他商品の識別標識として十分に機能していた」から、商標法第3条第1項第3号には該当しない旨主張している。
しかしながら、本件商標が、「自他商品の識別標章として機能しつづけていた」というような証拠はなく、本件商標は、商標法第3条第2項が適用されて登録されたものでもないから、被請求人の上記主張には理由がない。
(3)「アトピー性皮膚炎」についての我が国の状況を概観してみると、「アトピー(atopy)」とは、もともとギリシャ語の「ATOPOS(strange:奇妙な、とらえどころのない、不思議な)」を語源とし(甲第7号証、甲第18号証及び甲第19号証)、「アトピー性皮膚炎」「アトピー性ぜん息」等のアレルギー疾患に関して我が国において広く使用され認識されていることはすでに述べたとおりである。
特に「アトピー性皮膚炎」についてみると、例えば、厚生省等により作成された「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン」(甲第20号証表紙)によれば、「アトピー性皮膚炎」とは、「増悪・寛解を繰り返す、...湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」と定義されており(甲第20号証)、この病気は、「アトピー体質」という特異な体質が背景にあって起こる湿疹によく似た皮膚炎であり、遺伝性の強い「アトピー体質」は、花粉・汗・ほこり・ダニ等などに過敏に反応し、一種の拒絶反応としてアトピー性皮膚炎を引き起こす。病気の現れ方は、年齢によって特徴があるが、この炎症は、全体的に皮膚の乾燥が目立ち、皮膚が脂気を失い白っぽくかさかさしており、痒みを伴うアレルギー性の皮膚病である(甲第21号証)。
厚生労働省の調べによれば、現在、国民の全人口のおよそ三分の一が何らかのアレルギーを有しており(甲第22号証、甲第23号証及び甲第24号証)、そのうちアトピー性皮膚炎にかかっている人は五百万人以上もいるとされている(甲第25号証及び甲第26号証)。
このように、「アトピー性皮膚炎」は、もはや国民病とまで呼ばれ、一種の社会問題ともいうべきレベルにまで達しており(甲第27号証ないし甲第29号証)、我が国に紹介されて以来40年以上の年月で、我が国においては最も著名な病気の一つになった。
したがって、本件商標の登録査定時においては、医療に携わる関係者及び患者に限らず、国民のほとんどが、「アトピー」という言葉ないし病気を知っていたことが明らかである。
(4)一般社会においても、アトピー性疾患が今や社会問題にまでなっている状況で、「アトピック」の語は、医療機関紙や雑誌等(甲第31号証ないし甲第40号証)において普通に用いられていることはもちろん、皮膚科等においては「アトピックドライスキン」という言葉を用い、患者に対し病状・治療法を説明している事実がある(甲第8号証、甲第9号証、甲第14号証、甲第15号証及び甲第41号証ないし甲第44号証)。したがって、「アトピー」「アトピック」は、一般人においても極めて広く認識されている。
さらに、医療の分野のみにとどまらず、例えば、美容業界等においても、「『アトピックドライスキン』の人であっても安心して使用できる」スキンケア商品や化粧品等が多数販売広告されており(甲第45号証ないし甲第55号証)、「アトピックドライスキン」について例えば平成11年当時の経済誌においても大きく取り上げられており(甲第10号証)、医療業界を超えた広い範囲で、「アトピック」の語は多用され理解されている。
(5)以上、「アトピック」の言葉は、医療業界において記述的な表示として普通に用いられてきたものであるから、本件商標は「アトピー(性)の」という意味を有し、そのように理解されることは明らかである。また、指定商品「薬剤」との関係においても、実際に、アトピー性疾患を対象とする薬剤や医療品が多数製造・販売されているから(甲第56号証及び甲第57号証)、単に「アトピー(性)の」を意味する本件商標が、これらの薬剤の品質を表示するものであることは明白である。
(6)以上のとおり、本件商標は、「アトピー性」を表す商品の品質表示であるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記商品以外の商品について使用された場合には、「アトピー性疾患を治療するための商品」と誤認するおそれが十分にあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
本件商標は、「ATOPICA」の欧文字と「アトピカ」の片仮名文字とを2段に書してなり、平成12年4月28日に登録出願、第5類「動物用薬剤」を指定商品として、同14年8月9日に設定登録された登録第4593420号商標(以下「引用商標」という。)と同一又は類似であって、かつ、引用商標に係る指定商品と同ー又は類似の商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
本件商標は、その片仮名文字に従って、「アトピック」の称呼が生じるのに対し、引用商標からはその振り仮名に従って、「アトピカ」の称呼が生じることが明らかである。
両者の称呼は、4音中、第1音から第3音までの「アトピ」が同一であり、語尾において「ク」と「力」で相違しているが、この「ク」と「カ」は、後舌面を軟口蓋に接し破裂させて発する無声子音「K」を共通にするばかりでなく、これを結合する母音の「U」と「A」が近似音であるから、「ク」が前方に促音「ッ」を伴ってはいるものの、両者の音質は非常に近似する音といえる。また、両者が称呼上最もアクセントが弱くなる語尾においてのみ相違していることも相俟って、両者は明確に区別し難い。
したがって、本件商標と引用商標とは、それぞれ一連に称呼した場合には、その全体の語調、語感の近似し、両称呼は実際に混同されるおそれが十分にある称呼上類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(1)「アトピック」の文字は、「アトピー(性)の、転位の」の意味を有する英語の「atopic」の音訳であること(甲第3号証及び甲第4号証:「小学館ランダムハウス英和大辞典〈特装版〉」株式会社小学館1973年10月1日発行、「医学英和大辞典」株式会社南山堂1960年2月10日発行)。
(2)「アトピー(atopy)」の文字は、医学用語として「アレルギー体質、アトピー性皮膚炎に罹患した皮膚の状態」を表す用語であること(甲第5号証及び甲第6号証:「広辞苑 第五版」、「コンサイスカタカナ語辞典」株式会社三省堂1999年5月1日発行)。
(3)「アトピー性皮膚炎」の語に関して、書籍、専門クリニック及び皮膚科医院のホームページ、新聞記事中に「...アトピー皮膚(atopic dry skin)という状態を呈してくる、...『アトピー性皮膚炎』の患者さんの皮膚は“アトピックドライスキン”といって、皮膚の一番表面にある角質層が粗くもろくなっていますから、...アトピー性皮膚炎の人で冬に悪化する。乾燥肌(アトピックドライスキン)とも言われます。...俗にアトピック・スキンとも言われます。...」のような使用例があること(甲第7号証ないし甲第15号証)。
(4)語尾における「−ic(ック)」文字は、「...の、...に関する...的な」の意の形容詞を作る際に使用され、例えば、「academic(学園の学校の)」、「basic(基礎の、基本的な)」等のような使用例があること(甲第16号証及び甲第17号証)。
(5)「アトピー性皮膚炎」について、厚生省等により作成された「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン 2002」にて、「増悪・寛解を繰り返す、...湿疹を主病変とする疾患」と定義され、また、「家庭の医学(主婦の友社 平成6年12月20日発行)」中に、症状、原因、治療に関しての記述があり(甲第20号証及び甲第21号証)、「JADPA日本アトピー協会」外のホームページにも「アトピー性皮膚炎」についての説明が掲載されていること(甲第22号証ないし甲第26号証)。
(6)「アトピー皮膚炎 atopic dermatitis」の項目、「体幹および四肢は,atopic skinを呈し...」、「アトピック性皮膚炎は,アトピック性湿疹とも言い,...」及び「アトピックドライスキン」なる記述及び用語が医療機関紙や雑誌等に掲載されていること(甲第27号証ないし甲第40号証)。
(7)小児科あるいは皮膚科の診療所等のホームページ中に「アトピックスキン、アトピックドライスキン」の用語が用いられて説明されていること(甲第41号証ないし甲第55号証及び甲第57号証)。
そうすると、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は、「アトピー(性)の」の意味より、その疾患である「アトピック性皮膚炎を対象とする薬剤」であることを表したものと理解し、自他商品の識別標識とは認識しないものというのが相当であるから、本件商標は、これをその指定商品中「アトピック性皮膚炎を対象とする薬剤」に使用しても、単にその商品の品質、用途を表示するに止まり、また、上記商品以外の商品に使用するときには、商品の品質について誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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