Trademark Appeal Case
極真の周知性・混同
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 異議2004−90365(T2004−90365/J7) |
|---|---|
| 審判種別 | 異議 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本件商標
本件登録第4755605号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成14年10月22日に登録出願、「空手道極真館」の文字を標準文字で書してなり、第16類、第25類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同16年3月12日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由の要点
1.本件商標は、その登録に係る第41類の指定役務中「空手の教授」について、異議申立人(以下、「申立人」という。)が所有する以下の登録商標と類似し、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(1)平成6年5月18日に登録出願され、「極真会館」の文字を横書きしてなり、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年7月11日に設定登録された登録第4027346号商標(以下、引用商標1」という。)
(2)平成6年5月18日に登録出願され、「KYOKUSHIN」の文字を横書きしてなり、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年7月11日に設定登録された登録第4027345号商標(以下、引用商標2」という。)
(3)平成7年2月20日に登録出願され、「極真空手」及び「KYOKUSHIN KARATE」の文字を二段に横書きしてなり、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年8月8日に設定登録された登録第4041083号商標(以下、引用商標3」という。)
(4)平成6年5月18日に登録出願され、別掲のとおりの構成よりなり、第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、同9年7月11に設定登録された登録第4027344号商標(以下、引用商標4」という。)
2.本件商標は、故大山倍達氏によって創出された団体である国際空手道連盟極真会館の業務に係る役務「空手の教授、空手の興行の企画・運営又は開催」及び商品「空手に関する雑誌・パンフレット・情報誌、空手着、Tシャツ」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標「極真」(以下、「引用標章」という。)と類似し、同法第4条第1項第10号に該当する。
3.本件商標は、国際空手道連盟極真会館が「空手の教授」について使用する著名な引用標章を含むものであり、本件商標がその指定役務について使用された場合には、需要者が同会館又は同会館と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品・役務と誤認し出所について混同するおそれがあるから、同法第4条第1項第15号に該当する。
4.国際空手道連盟極真会館は、空手の教授ないし各種空手道選手権大会を主催する団体として有名であり、かつ「極真」が同団体が教授する空手の名称としても著名であるから、「極真」の文字部分は同団体と同一性を認識させる程に著名な略称であるといえる。したがって、本件商標は、「国際空手道連盟極真会館」の著名な略称「極真」を含む商標であり、かつ同人の承諾を得ているものではないから、同法第4条第1項第8号に該当する。
5.「極真」は、空手界における指導的流派として確固たる地位を築いており、それと類似する本件商標を「空手の教授」に使用することは空手界における秩序を乱し害するおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第3 取消理由の通知の要点
「国際空手道連盟極真会館」、「極真会館」、「極真空手」、「極真会」等の「極真」の文字を要部とする標章は、遅くとも大山が死亡した平成6年4月の時点において、少なくとも空手及び格闘技に関心を有する者の間では、大山率いる空手の流派を示すものとして、ひいては空手の教授を示すものとして広く認識されるに至っていたものと認められる。そして、大山死亡後も、その門弟たちによって極真空手が引き継がれ、その周知性は現在も継続しているものと認められる。
一方、本件商標は、その構成中に「極真」の文字を有してなるものであり、かつ、その指定商品及び指定役務には、「極真会館」、「極真空手」、「極真会」等の「極真」の文字を要部とする標章が使用されている役務や商品と少なからぬ関係を有する商品及び役務が含まれているものである。
そうすると、本件商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「極真」の文字に注目し、周知となっている「極真会館」、「極真空手」、「極真会」等の「極真」の文字を要部とする標章を連想、想起し、申立人を始めとする大山が創設した極真空手に携わる者の業務に係る商品又は役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録を取り消すべきものである。
第4 商標権者の意見
商標権者は、以下に述べるように大山が創設した極真空手に継続して携わる者であるから、本件商標は、その指定商品又は指定役務について使用しても、大山が創設した極真空手に携わる者の業務に係る商品又は役務であるものと取引者・需要者に理解・認識されているので、その出所について混同を生ずるような事態は全くないものと思量する。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではないから、その登録を取り消される理由はない。
1.極真空手と商標権者の経緯
商標権者(梅原初雄)は、帰化した国籍上の本名で韓国名を「盧初雄」といい、大山倍達総裁の門弟の一人である。盧初雄は、1963年に極真の前身「大山道場」に15歳で入門し、1964年に国際空手道連盟極真会館の正式発足後正指導員として後輩の指導に当った者である(乙第4号証)。空手への真塾な取組み姿勢と実力が認められ大山総裁より苗字の一字を贈られ、以降「盧山初雄」と名乗ることになった。
商標権者は、1973年第5回全日本空手道選手権大会に初出場で優勝、翌年の第6回大会で3位、そして「地上最強のカラテ」の1975年第1回全世界空手道選手権大会では準優勝者として、映画の一方の主役を務めており、「ローキックの盧山」の名は一躍世界に広がったものです(乙第5号証、乙第6号証)。
大山総裁逝去後、盧山は、一時申立人の極真一会派を支える立場にあったが、申立人が大山総裁存命中の実質的同一性を著しく欠くに至って決別し、「極真空手道連盟極真館」を立上げ、空手の教授をもって極真空手の普及に努め今日に至っている(乙第7号証)。
ここにいう、大山総裁当時との実質的同一性を欠くとは、大山総裁が極端なまでに嫌忌されていた「興業」のための空手、ショー空手(乙第8号証)への移行、すなわち「K−1」(正道会館主催の興業)への参戦を決めたものである。この「K−1」では出ると負けで、極真空手の代名詞であった「地上最強」の形容が全ての雑誌から消え去ってしまい、極真は弱い空手と一般に印象づけてしまった。そこで、商標権者(梅原初男)は、「地上最強のカラテ」の復権を賭けて、「極真空手道連盟極真館」を立ち上げたものである。その呼びかけはロシアを初め、世界の隅々まで浸透しつつある(乙第10号証)。
2.極真空手と申立人の経緯
申立人は、韓国名を「文章圭」空手における通称を「松井章圭」と言い、13歳で大山倍達道場に入門し、1985年の第17回全日本空手道選手権大会などに優勝し、極真空手の本部直轄浅草道場の責任者となっていた。1994年大山倍達総裁の急逝後、その遺言を「松井章圭を二代目館長にする」と詐称し「極真会館」館長に就任したが、該遺言は、裁判所における審理の結果「効力を有しないものである」ことが最高裁判所における特別抗告の却下により確定している。
3.極真空手の構成員による「極真関係商標」の使用
申立人が極真会館の後継者であることの根拠が存在しないことは上記したとおりであるところ、生前の大山倍達総裁から承認を得て、極真関係商標を空手の教授・空手大会の興行等に使用する極真空手構成員は、極真関係商標の周知性の獲得に貢献してきた者というべきであって、継続して当該商標を平穏に使用できるものというべきである。
4.極真関係商標の正当な管理
故大山倍達は、自らが創設した諸団体のうち極真空手関係商標の権利主体の最適任者とした「財団法人極真奨学会」に対する寄付行為として極真関係商標の全てを提供したので、それによって、財団法人極真奨学会は、極真空手に関する商標の全てについてその正当な実質的な権利者になったものである。
そこで、財団法人極真奨学会は、申立人に対して「申立人が所有する全ての商標権についてそれぞれ移転登録手続をせよ」との、商標権移転登録手続請求訴訟を東京地方裁判所に提起している(平成16年(ワ)第23624号)。併せて、財団法人極真奨学会は、申立人に対して申立人が所有する全ての商標権について、譲渡、質権、専用使用権の設定、通常使用権の許諾その他一切の処分を禁止する」処分禁止仮処分申立を行い、東京地方裁
判所より仮処分決定を得ている(乙第38号証、乙第39号証)。
5.まとめ
以上のとおり、本件商標は、指定商品及び指定役務について使用しても大山が創設した極真空手に携わる者の業務に係る商品又は役務であるものと取引者・需要者に理解・認識されているので、何等出所の混同を生じるようなことはないから、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものではない。
第5 当審の判断
1.商標法第4条第1項第15号該当の可否について
商標権者の意見書及び証拠によれば、商標権者(梅原初男)は、韓国名を「盧初雄」といい、1963年に極真の前身「大山道場」に15歳で入門し、1964年に国際空手道連盟極真会館の正式発足後正指導員として後輩の指導に当った大山倍達総裁の門弟の一人である(乙第4号証)。その後、大山総裁より苗字の一字が与えられ、「盧山初雄」と名乗ることになった。大山亡き後、商標権者(梅原初男)は、大山総裁が嫌忌していた興業のための空手、ショー空手へ参戦・敗戦し続けた申立人の運営を嫌って前記極真会館を離脱し、「地上最強のカラテ」の復権を賭けて、「極真空手道連盟極真館」を立ち上げたものである(乙第8号証、同第7号証)。その呼びかけに賛同し、加盟する組織がロシア、ヨルダン、イランを初め、世界の各国に拡がっており(乙第10号証)、極真空手の普及に努めて今日に至っている。以上によれば、商標権者(梅原初男)は、大山が創設した極真空手に携わる者であった、すなわち、大山が創設した極真空手及びそれを運営した前記極真会館と組織的・経済的に関係がある者であったことが認められ、極真会館を離脱後も継続して極真空手に携わっている者であることが認められる。
また、大山亡き後、前記極真会館からいくつもの派が独立し、その名称中に「極真空手」の流れをくむことを表すために「極真」の語をいれて活動し、大会などを運営していることが認められる(乙第4号証、同第乙21号証)。
そうすると、商標権者(梅原初男)は、極真空手及びそれを運営した前記極真会館と組織的・経済的に関係がある者であったことが認められ、極真会館を離脱後も継続して極真空手に携わっている者であるから、本件商標をその指定商品又は指定役務について使用しても、需要者をして、大山が創設した極真空手に携わる者の業務に係る商品又は役務であると認識されるものの、その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
2.商標法第4条第1項第8号及び同第10号該当の可否について
上記1.認定のとおり、本件商標の商標権者(梅原初男)は、大山が創設した極真空手及びそれを運営した前記極真会館と組織的・経済的に関係がある者であったことが認められ、極真会館を離脱後も継続して極真空手に携わっている者であるから、同法第4条第1項第8号及び第10号の「他人」というべきではない。
のみならず、本件商標の商標権者(梅原初男)は、前述のとおり、極真会館を離脱後も「極真空手道連盟極真館」を立ち上げ、その組織は国内はもとより、世界の各国に拡がっていることから、商標権者(梅原初男)が立ち上げた名称は、空手に携わる分野において相当程度知られていると認められる。そうすると、本件商標は、これに接する需要者をして、商標権者(梅原初男)の立ち上げた極真空手を教授する道場等の名称である極真館を表した語として把握され、本件商標の文字全体、又は、その構成中「空手道」の文字を省略した「極真館」の文字全体をもって一体不可分の語と認識されるというべきである。したがって、この点からも同法第4条第1項第8号の「著名な略称を含む」ということができない。
また、本件商標と引用標章「極真」とは、後述4.「商標法第4条第1項第11号該当の可否について」において判断した本件商標と引用商標2とが類似する商標ではないとした理由と同様に類似するものではない。したがって、この点からも、同法第4条第1項第10号の「類似する商標」ということができない
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び第10号に違反して登録されたものではない。
3.商標法第4条第1項第7号該当の可否について
空手、剣道等の武道の分野においては、同属の流派でありながら、考え方の相違等、様々な理由から分派、独立し、別々に活動し、その際、自己の活動の名称中に、各武道の流派名をいれ、かつ、他の派と区別するために、その流派名の前後に他の文字を付加して使用していることは周知なことである。
これを本件商標についてみるに、本件商標権者(梅原初男)は、前述のとおり、大山が創設した極真空手及びそれを運営した前記極真会館の関係者であったものであるから、大山亡き後、前記極真会館から分派、独立し、活動する際の名称中に「極真空手」の流れをくむことを表すために「極真」の語をいれ、これに他の文字を付加した「空手道極真館」の名称を採択使用することは、その活動上必要性があるというべきである。現に、前述のとおり、前記極真会館からいくつもの派が独立し、その名称中に「極真」の語をいれて活動し、大会などを運営していることが認められる。
また、本件商標「空手道極真館」が、「極真会館」あるいは、その空手の流派名である「極真」それのみではないから、申立人の主張及び証拠によっても、独り本件商標権者が「極真」の語を商標として独占するために登録出願したともいうことができない。
そうすると、本件商標権者が、本件商標を自己の取り扱う商品、役務の商標として、登録出願をし、登録を受けることは不当であるとはいえず、かつ、本件商標を登録し、使用することが直ちに空手界における秩序を乱し、害するおそれがあるともいえない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
4.商標法第4条第1項第11号該当の可否について
本件商標は、「空手道極真館」の文字を標準文字で書してなるところ、その構成中「空手道」の文字は、指定役務「空手の教授」との関係では、役務の内容を表示するものであるから、自他役務の識別標識としての機能を有する部分は「極真館」の文字にあり、「空手道極真館」全体から生ずる「カラテドウキョクシンカン」の称呼の他に、「極真館」の文字に相応して「キョクシンカン」の称呼をも生ずるものである。また、本件商標の全体より、「極真空手を教授する道場等の名称である極真館」の観念を生ずるとみるのが相当である。
他方、引用各商標は、前記構成よりなるところ、各文字に相応して、引用商標1より「キョクシンカイカン」の称呼及び「極真空手を教授する道場等の名称である極真会館」の観念を、引用商標2より「キョクシン」の称呼及び「空手の流派名である極真」の観念を、引用商標3より「キョクシンカラテ」、「キョクシン」の称呼及び「空手の流派名である極真空手」の観念を、引用商標4より「キョクシンカイ」の称呼及び「極真空手を教授する道場等の名称である極真会」の観念を生ずるものである。
そこで、本件商標から生ずる「キョクシンカン」の称呼と引用商標1ないし3より生ずる「キョクシンカイカン」「キョクシン」「キョクシンカラテ」の称呼とは、「カイ」「カン」及び「カラテ」の音の有無により十分聴別し得るものである。
また、本件商標から生ずる「キョクシンカン」の称呼と引用商標4より生ずる「キョクシンカイ」称呼とは、語尾の「ン」と「イ」の違いのみといえども、簡潔な称呼である上に、極真空手からいくつもの派が独立し、その名称中に「極真」の語をいれて活動し、大会などを運営しているという取引の実情と両商標の観念(極真空手を教授する道場等の名称である「極真館」と同「極真会」)が相違することから、需要者をして商標中の「極真」以外の文字部分や少しの音の違いに注意が向けられているというべきであり、前記の違いをもって聞き誤ることのないというのが相当である。
また、本件商標から生ずる「カラテドウキョクシンカン」と引用各商標から生ずる称呼とは、聴別し得ること明らかである。
さらに、本件商標と引用各商標とは、前述の観念を生ずるものであるから、観念上紛れるおそれもない。
また、本件商標と引用各商標とは、前記したそれぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得るものである。
したがって、本件商標と引用各商標とは、その称呼、外観及び観念のいずれの点においても相紛らわしいところがなく類似する商標ではないから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
3.以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第10号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものではないから、本件商標の登録は、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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