sokuhyo

Trademark Appeal Case

指定役務の広範性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号判定2005−60078(T2005−60078/J6)
審判種別記載はありません。
結論other

結論テキスト

役務「温泉施設の提供」に使用するイ号標章は、登録第4520827号商標の商標権の効力の範囲に属する。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4520827号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成12年10月23日に登録出願、第29類、第31類、第32類、第33類及び第41類に属する商標登録原簿記載の商品及び役務並びに第42類「オートキャンプ場・キャンプ場・貸別荘その他の宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,宿泊施設の情報の提供,飲食物の提供,飲食店に関する情報の提供,エステティックその他の美容,着物の着付け,理容,入浴施設の提供,写真の撮影,ビデオカメラによる撮影,オフセット印刷,グラビア印刷,スクリーン印刷,石版印刷,凸版印刷,オフセット印刷・グラビア印刷・はがき印刷・名刺印刷・テレフォンカードの印刷その他の軽印刷の取次ぎ,写植,版下作成,気象情報の提供,求人情報の提供,ファッション情報の提供,新聞記事情報・雑誌記事情報・クイズ情報の提供,インターネットホームページに関する情報の提供,飲食物の嗜好・料理の献立等食品生活に関する情報の提供,交通安全に関する情報の提供,国際情勢に関する情報の提供,宗教儀礼に関する情報の提供,人名・住所に関する情報の提供,政治に関する情報の提供,地図・地理情報の提供,結婚又は交際を希望する者への異性の紹介,婚礼(結婚披露を含む。)・お見合い・七五三・結納・宴会・会食・貸席・ビアガーデンのための施設の提供,結婚披露宴・結婚式の企画・運営又は開催,結婚披露宴・結婚式に関する情報の提供,結婚式場・披露宴会場の予約の仲介又は紹介,婚礼に関する専門的な助言又は指導,葬儀の執行,通夜・葬儀・法要のための施設の提供,通夜・葬儀・法要に関する礼儀作法及び返礼の助言,愛玩動物の葬儀の執行,墓地又は納骨堂の提供,愛玩動物の墓地又は納骨堂の提供,一般廃棄物の収集及び分別,産業廃棄物の収集及び分別,庭園又は花壇の手入れ,庭園樹の植樹,肥料・農薬の散布,雑草の防除,有害動物の防除(農業・園芸又は林業に関するものに限る。),建築物の設計,測量,土木の設計,地質の調査,水質検査,産業用ロボットの設計,自動組立装置の設計,自動搬送装置の設計,通信設備の設計,電子回路の設計,電子計算機の設計,その他の機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらにより構成される設備の設計,ロゴ・デザインの考案,インターネットにおけるホームページの設計・作成又は保守,データ入力その他の電子計算機を用いて行う情報処理,情報処理システム設計に関する指導・診断及び助言,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究,つけ毛・育毛・カツラ・人工毛の相談・検査又は研究,建築又は都市計画に関する研究,公害の防止に関する試験又は研究,電気に関する試験又は研究,土木に関する試験又は研究,農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究,機械器具に関する試験又は研究,衣服・社会風俗その他に関するファッションの研究,高圧ガス容器検査,国内及び輸出国の安全規格に基づく電気製品の試験,コンピュータの部品及び装置の試験又は評価,職業(職種・職務)適性検査,繊維検査,美術品の鑑定,宝石の鑑定,野生生物の分布調査及び生態調査,野生生物の保護管理に関する調査又は研究,特許技術情報その他各種技術情報の提供,法律・判決・判例に関する情報の提供,車検のための申請代行,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,著作権に関する情報の提供,社会保険に関する手続の代理,通訳,電子計算機端末による通信を用いて行う翻訳その他の翻訳,総合保安システムを用いた火災警備・ガス漏れ警備・防犯警備その他の施設の警備,身辺の警備,交通誘導の警備,輸送中の現金・有価証券・貴金属・美術品の警備,盗聴器の探知及び撤去,個人の身元又は行動に関する調査,身の上相談,印相鑑定,運勢鑑定・開運指導・占い,人生相談,姓名判断,あん摩・マッサージ及び指圧,きゅう,柔道整復,はり,整体・カイロプラクティック,気功による治療,療術治療,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,家畜の診療,愛玩動物の一時預かり,愛玩動物の美容,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,在宅療養者に対する介護,身体障害者の養護,健康・医療・介護・社会福祉に関する情報の提供,家事の代行,編み機の貸与,ミシンの貸与,衣服の貸与,植木の貸与,測定用機械器具の貸与,農業用機械器具の貸与,祭壇その他の葬祭用具の貸与,自動販売機の貸与,給茶器の貸与,警報設備・消火設備・避難設備・その他の消防用設備の貸与,検知器・ゲート・電波タグがセットになっている万引き防止装置の貸与,医療用機械器具の貸与,会議室の貸与,展示施設の貸与,会議のための施設の提供,集会のための施設の提供,商品展示用機材の貸与,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。)の貸与,布団その他の寝具類の貸与,ルームクーラーその他の家庭用電熱用品類(冷凍冷蔵庫・冷蔵庫を除く。)・その他の電気機械器具の貸与(他の類に属するものを除く。),理化学機械器具の貸与,カメラの貸与,光学機械器具の貸与,鉱山機械器具の貸与,漁業用機械器具の貸与,印刷機械器具の貸与,動力機械器具の貸与,風水力機械器具の貸与,冷凍機械器具の貸与,暖冷房装置の貸与,美容院用又は理髪店用の機械器具の貸与,業務用調理機械器具の貸与,ガソリンステーション用装置の貸与(自動車の修理又は整備業のものを除く。),芝刈機の貸与,加熱器の貸与,調理台の貸与,流し台の貸与,食器類の貸与,なべ類・湯沸しの貸与,調理用具の貸与,携帯用アイスボックス・魔法瓶の貸与,家具の貸与,カーテン・壁掛け・敷物その他の屋内装置品の貸与,タオル・おしぼり・その他の布製身の回り品の貸与,おむつの貸与,装身具の貸与,製図用具の貸与,かばん類及び袋物の貸与(旅行用のものを除く。),テントの貸与,トレーラーハウスの貸与,靴・下駄・草履類の貸与,傘の貸与,時計の貸与,建造物組立てセットの貸与,観賞魚その他の動物の貸与,記念カップ類の貸与,手動工具の貸与,手動利器の貸与,花の飾りつけ,ホームステイのための宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,書籍・雑誌の企画又は編集,プログラムの操作マニュアルの作成」を指定商品及び指定役務として、同13年11月9日に設定登録されたものである。

2 イ号標章

被請求人が役務「温泉施設の提供」に使用する標章として請求人が示したイ号標章は、別掲(2)に表示したとおりの構成よりなるものである。

3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第66号証(枝番号を含む。)を提出した。

(1)判定請求の必要性

請求人は、本件商標の商標権者並びに通常使用権者であるが、被請求人が役務「温泉施設の提供」にイ号標章を使用していることについて(甲第7号証ないし甲第11号証)、平成17年6月21日、被請求人に対し本件商標の商標権に抵触する旨の通知を発したところ(甲第3号証)、被請求人は、イ号標章は、「本件商標の商標権の効力の範囲に属するかどうかは一義的に判断できない。」旨、主張するので、特許庁による判定を求める。

(2)イ号標章の説明

被請求人は、イ号標章を、平成17年3月項より、「天然温泉 げんきの郷」(兵庫県神戸市長田区)の開設に伴い、役務「温泉施設の提供」について使用を開始し、その後も使用継続して現在に至っている。

(ア)イ号標章は、別掲(2)に示すとおり、上段に小さく表した「天然温泉」の文字と、下段に大きく表した「げんきの郷」(「の」だけは小さく表している。)の文字を二段横書きにし、下段「の」の上部に「安黒」の篆刻朱印文字を落款風に配置すると共に、下段「の郷」の下部に「Genki no sato」の小さなローマ文字を配した構成からなっている。

その文字中、「天然温泉」は、温泉法上に規定する「温泉」の表記に「天然」の文字を付加して、より自然度が高いかのごとく強調して表示したものと思われるが、これを「温泉施設の提供」に使用するときは、これに接する需要者は、温泉を利用した役務であることを理解するに止まるというのが相当である。

つまり、「天然温泉」の文字は、被請求人が提供する役務の質(内容)を表示するものとして理解されるに過ぎず、識別標識としての機能はない。また、「天然温泉」と「げんきの郷」は、文字の大きさが極端に異なるから、自ずから目立ちやすい大書された「げんきの郷」の文字が注視されることは明らかである。さらに、「Genki no sato」のローマ文字は、被請求人がイ号標章の要部が「げんきの郷」にあることを自認していることの証左であり、イ号標章の称呼を「ゲンキノサト」に誘導しようとするものにほかならない。加えて、落款風の「安黒」の文字は、出所表示のための独立した標識であるから、他の構成文字と結合して、一連不可分の観念及び称呼(例えば、「天然温泉 安黒 げんきの郷」)を生じさせるものではない。

したがって、イ号標章は、「げんきの郷」の文字部分が要部として受け止められるため、「げんきの郷」の観念及び「ゲンキノサト」の称呼だけによっても特定されることになる。

(イ)イ号標章の役務「温泉施設の提供」についての使用事実等として、甲第7号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出する。

甲第7号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)は、平成17年5月19日に撮影した被請求人の温泉施設「げんきの郷」と、同24日に撮影した同施設で販売されていた「タオル」の写真である。甲第10号証は、被請求人の温泉施設「げんきの郷」で配布されていた手書きのリーフレット(コピーしたものを配布)。甲第11号証は、同リーフレット「リラクゼーションはいかがですか?」である。

これら、甲第7号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)には、イ号標章と同一のものあるいは表示するスペースや、レイアウトの関係から、イ号標章と同一感を損なわない程度に配列を変化させているに過ぎない、イ号標章と社会通念上同一の標章と認識されるものが使用されている。

(ウ) また、甲第12号証ないし甲第26号証は、被請求人以外の者が被請求人の温泉施設「げんきの郷」を紹介したホームページであるが、これらには、被請求人の温泉施設を、単に「げんきの郷」と略称しているものが含まれている。

(エ)上記のとおり、被請求人は、役務「温泉施設の提供」に、「げんきの郷」の観念で認識され、「ゲンキノサト」の称呼によって特定されるイ号標章及びイ号標章と実質同一視される標章を使用している。

(2)本件商標の説明

請求人は、本件商標を、平成12年12月項より、「あぐりタウン げんきの郷」(愛知県大府市吉田町)の開設に伴い、役務「入浴施設の提供(温泉施設の提供)」について使用を開始し、その後も使用継続して現在に至っている。

(ア)本件商標は、別掲(1)に示すとおり、朱の円内に「あぐりタウン」の小さな白抜き文字を横書きしてなる部分と、その斜め左下に配置した緑の落花生状の長円内に「げんき」と「の郷」の白抜き文字を、右下がりの変形二段で横書きした構成からなる。

この構成文字中「あぐりタウン」の文字は、「農業関連の」の意を表し、多くの場合、複合語として用いられる英語の「agri」が「げんきの郷」の経営母体である請求人あいち知多農業協同組合の組織イメージに合致することから、英語「agri」の平仮名表記「あぐり」に英語「town」の片仮名表記「タウン」を接続して、「農業関連の町」の意を込めたものである。

上記より、「あぐりタウン」の部分は、農協関連の施設であることを軽く印象付ける程度の役割しかないから、請求人は、全体的なバランスにおいても文字の配列を小さく平坦にし、そして、商標の要部として中心的な役割を担う「げんきの郷」とは、異なるカラーパターンを使用し、図形領域(円輪郭)も分離して付記的な印象に止めるように割り付けている。

結果、本件商標の識別標識としての機能を詮索するときには、「げんきの郷」と「あぐりタウン」の文字とは、必ずしも一体の不可欠な構成部としては認識されないのであり、本件商標についても、イ号標章と同様に、自ずから目立ちやすい「げんきの郷」の文字部分が注視されることになり、本件商標は、「げんきの郷」が要部として受け止められ、「げんきの郷」の観念及び「ゲンキノサト」の称呼だけによっても特定されることになる。

(イ)請求人は、役務「温泉施設の提供」についての本件商標等の使用事実等として、甲第27号証ないし甲第31号証及び甲第48号証(枝番号を含む。)を提出する。

甲第27号証の1ないし7は、平成17年10月8日に撮影した請求人の「げんきの郷」の施設の広告板の写真である。甲第28号証の1ないし5は、同「げんきの郷」の温泉施設「めぐみの湯」の写真である。甲第29号証の1ないし3は、平成17年10月11日に撮影した同施設で販売されているタオルの写真である。甲第30号証は、「げんきの郷」の温泉施設「めぐみの湯」で配布されているリーフレット「めぐみかい会員入会のご案内」である。

さらに、甲第31号証及び甲第32号証は、2001年12月5日及び2002年4月26日発行の「Let’sげんきの郷」の創刊号及び同第2号。甲第33号証及び甲第34号証は、2002年11月及び2003年5月発行の「げんきの郷情報」。甲第35号証、甲第37号証及び甲第38号証は、「JAあぐりタウン げんきの郷」。甲第36号証は、「げんきの郷」。甲第39号証は、国土交通省中部地方整備局愛知国道事務所が配布した情報誌「リンリンコミュニケーションvol.44」。甲第40号証は、大府市役所商工労政課が発行した「大府 観光ガイドMAP」。甲第41号証の1は、げんきの郷で配布されているリーフレット「天然温泉 めぐみの湯」。甲第41号証の2は、同リーフレットに折り込まれている価格表。甲第42号証は、株式会社げんきの郷(請求人)が配布したチラシ「天然温泉 めぐみの湯」。甲第43号証は、「あぐりタウン『げんきの郷』誕生」のチラシ。甲第44号証は、「めぐみの湯 春の温泉祭り」のチラシ。甲第45号証の1及び2は、げんきの郷で配布されているリーフレット「天然温泉 めぐみの湯」。甲第46号証は、リーフレット「JAあぐりタウン げんきの郷」。甲第47号証は、げんきの郷で配布されている「バス時刻表」。甲第48号証は、あいち知多農業協同組合(請求人)が、その掲示板や各組合施設等に貼付したポスター「あぐりタウン『げんきの郷』で会いましょう。」。甲第49号証は、請求人が開設したホームページ「JAあぐりタウン げんきの郷」である。

(ウ)甲第50号証ないし甲第64号証は、請求人以外の者が請求人の「げんきの郷」施設を紹介したホームページで、請求人による「げんきの郷」の施設の事業概要を示している。なかには請求人の温泉施設を含めた施設を、単に「げんきの郷」と略称して特定しているものが含まれている。

甲第65号証は、インターネットで、「げんきの郷」を検索条件にして検出した約57,800件の先頭の100件の見出しである。100件のうち、請求人の「げんきの郷」に関するものは74件、被請求人の「げんきの郷」に関するものは16件、どちらに関するかはっきりしないもの、又は、どちらにも該当しないものは10件であった。

これにより、被請求人に比べると請求人の「げんきの郷」の事業展開の方が広く知れ渡っていることが明らかである。そして、これらの見出しを一見するだけでは、何れの「げんきの郷」なのかは容易には区別できないものである。

(エ)「げんきの郷」施設の事業概要は以下のとおり。

「全体買上客数」は、売り場等におけるレシートの発行数。実際の入場者数は、約40%増になっていると思われる。「浴場売上高」は、「めぐみの湯」に加え、館内にある軽食コーナー「夕凪」の売上高を含む。カッコ内は「めぐみの湯」のみの売上高。

(a)2000年度(初年度のため2000年12月23日から2001年3月31日)

全体売上高(単位:千円) 651,628

全体買上客数(単位:人) 571,474

浴場売上高(単位:千円) 189,614(135,636)

浴場利用者数(単位:人) 146,999

以下、(b)ないし(f)の単位は、上記と同様である。

(b)2001年度

全体売上高 2,419,066

全体買上客数 2,017,322

浴場売上高 583,211(412,778)

浴場利用者数 524,011

(c)2002年度

全体売上高 2,835,208

全体買上客数 2,143,869

浴場売上高 594,126(432,830)

浴場利用者数 512,096

(d)2003年度

全体売上高 3,097,946

全体買上客数 2,153,994

浴場売上高 544,182(410,831)

浴場利用者数 440,930

(e)2004年度

全体売上高 3,551,993

全体買上客数 2,212,569

浴場売上高 510,691(390,866)

浴場利用者数 427,674

(f)合計

全体売上高 12,555,841

全体買上客数 9,099,228

浴場売上高 2,421,824(1,782,941)

浴場利用者数 2,051,710

(オ)「げんきの郷」の認識に関し、(イ)、(ウ)で示した請求人の「げんきの郷」に関する書証の多くは、請求人施設「JAあぐりタウン げんきの郷」が広く多くの需要者に利用され「げんきの郷」と略されて認識されている事実を明らかにしており、本件商標が、「げんきの郷」と観念され、「ゲンキノサト」と称呼されることは、これらの書証に示す取引事情の中にあって、なおさら確実に定着していったものと思われる。

(3)まとめ

本件商標とイ号標章とは、外観については区別できるところがあるとしても、観念「げんきの郷」及び称呼「ゲンキノサト」は同一又は類似であって、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるため、類似の標章というべきである。

そして、本件商標にかかる指定役務中第42類中「入浴施設の提供」と、イ号標章の使用役務「温泉施設の提供」とは同ー又は類似の役務である。

したがって、イ号標章は、本件商標と類似する標章であり、その使用役務と指定役務も類似する役務であるから、被請求人が役務「温泉施設の提供」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。

4 被請求人の答弁

被請求人は、被請求人が「温泉施設の提供」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない、との判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。

(1)出店の経緯について

まず、現在、被請求人が営業している本件土地について述べる。

本件土地は、神戸市長田区に位置し、阪神大震災においては壊滅的な打撃を受けた地区で、大阪ガス工場跡地にあたる。

神戸市が行なっていた震災復興事業の一環として実施された集客施設用地借受人募集に対し、被請求人が応募し、平成14年11月中旬に、神戸市から集客用施設借受人として決定を受けた。

ここに、被請求人が、温浴施設を経営することとなったものである。上記の通り、そもそも大震災後の震災復興事業の一環として本件計画が実施されたことから、被災した神戸市民らに温泉に入ってもらい元気を出してもらおうと、「天然温泉 げんきの郷」との名称に決定したわけである。

(2)商標使用(営業)の実態について

(ア)被請求人は、「天然温泉 げんきの郷」の呼称で温浴施設を経営している(乙第1号証)。

(イ)他方、請求人は、「JAあぐりタウン げんきの郷」の呼称で下記の店舗や広場、マーケット等の収容する複合施設を経営している(乙第2号証)。

(a)こころの芯まで温まる天然温泉「めぐみの湯」

(b)四季の野菜を生かした食彩処「だんらん亭」

(c)採れたての真心を注ぐ加工施設「できたて館」

(d)農家の顔が見えるファーマーズマーケット「はなまる市」

(e)大地と会話するグリーンセンター「さんハウス四季」

(f)地元の食、近海の幸が一杯「げんき横丁」

(g)話題の癒し空間、足湯「ちゃぷ〜ん」

(h)自然と仲良し、緑の「ふぁみり〜の社」

(i)元気いっぱい遊びの天才を育てる「虹っ子広場」

(j)塔を望み人が集うイベントスペース「ふれあい広場」

(k)こころを解き放つ多目的広場「いこいの広場」

(l)農業の明日が見えてくるあぐりカレッジ「あすなろ舎」

パンフレット(乙第2号証)には、《健康な作物、優良な環境(クリーンエネルギー)、豊富な温水としてそれらを心から楽しめば、大地はさらなる恩恵で応えてくれます。ここ、あぐりタウン「げんきの郷」に英知あふれる恵みが勢揃いしました》と記載されている。

請求人(げんきの郷)は、極めて広大な敷地の集合型集客施設を経営しており、その内、温浴施設に関するものは、その複数施設のうち、わずか一部の天然温泉「めぐみの湯」にあたるのみである。

すなわち、温浴施設として営業しているのは、集合型集客施設の一施設である「天然温泉 めぐみの湯」にすぎないのである。

(ウ)なお、この「天然温泉 めぐみの湯」において独自にパンフレットが作成されている(乙第3号証)。

このパンフレットにおいては、「JAあぐりタウン げんきの郷」の表記より、むしろ「天然温泉 めぐみの湯」の表記が前面に押し出されている。

このことから、一般消費者・利用者の感覚とすれば、温浴施設「天然温泉 めぐみの湯」へ訪れるものであり、その所在地が、単にあくまでも「あぐりタウンげんきの郷」内に位置するにすぎないという認識であろう。本件は、集合型施設であり、上記の通り(a)〜(l)の数多くのユニーク、かつ、多彩な特殊性を有する施設が集まっているのである。

(エ)確かに、請求人は、「あぐりタウン げんきの郷」の商標で、役務を「入浴施設の提供」として、商標登録していることは認める。

しかし、その営業の実態として、「入浴施設の提供」の役務を行なっているのは、「天然温泉 めぐみの湯」であり、位置的に「あぐりタウン げんきの郷」内に存するにすぎないものである。

すなわち、かかる集合型複合施設においては、消費者・利用者の感覚・認識とすれば、上記の通り(a)〜(l)の名称の付された各施設に対して直接赴く、例えば、「めぐみの湯」にお風呂に入りに行こうか。「はなまる市」で、美味しい野菜を買い物しよっか。お腹減ったから、ちょっと「だんらん亭」でご飯食べよっか。「虹っ子広場」で子供らを遊ばせよ。となるわけである。

まさに、商標の通り、「タウン」(町)であって、施設の集合体なのである。

(3)商標の表記について

まず、形式的な呼称であるが、請求人は「あぐりタウン げんきの郷」であり、他方、被請求人は「天然温泉 げんきの郷」である。類似性が認められるのは後段のみであり、前段は、語感はもちろんのこと、その意味内容も全く性質の異なるものである。

すなわち、前者は、タウン(町)であって、名称からして集合体・複合施設が前面に押し出されているのに対して、後者は、天然温泉であり、店舗を表記するのは明らかである。

一体としてみれば全く類似性が存しない。

また、商標の文字・形状の点においても、前者は楷書であるのに対して、後者は毛筆体である。

色使いの点でも、前者は、「あぐりタウン」については燈色の白抜きであり、「げんきの郷」は緑色の白抜きで表記しているのに対して、後者は、文字部分が黒色であり、「安黒」については赤色の白抜きの表記となっており、全く異なる。

後者においては、この「安黒」という表記のみならず、「Genki no sato」との表記までも記載されている。全く異なることは一目瞭然である。

5 当審の判断

請求人は、被請求人が「温泉施設の提供」について使用するイ号標章は、本件商標と類似するものであり、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものであると述べ、証拠(甲号証)を提出しているので、以下、その当否について検討する。

(1)本件商標について

本件商標は、別掲(1)のとおり、橙色に着色し「あぐりタウン」の文字を白抜きした円形図を右上部に配し、その左下部に緑色に着色し大書した「げんきの郷」(段違いの二段に書してなる。)の文字を白抜きした周囲にくびれ部分のある楕円形状の図を、上記「あぐりタウン」の円形図との間に間隙をもって配してなるものである。

しかして、上記構成からみて、「あぐりタウン」及び「げんきの郷」の両文字は、視覚上、分離して認識し得るばかりでなく、両文字全体より生ずる「アグリタウンゲンキノサト」の称呼もやや冗長であり、また、両文字は分離しては認識し難い程に不可分な観念上まとまりのある意味合いを有するものとも認められないから、商取引の実際においては、これに接する者は、構成中、大書して見やすい「げんきの郷」の文字部分に着目し、該文字部分をもって取引に資する場合も決して少なくないというのが相当である。

そして、「げんきの郷」の文字部分は、「げんき」の文字が「元気」の漢字を平仮名で表したものであることは容易に理解し得るところであり、また、「郷」の文字は「むらざと、いなか、ふるさと」(三省堂国語辞典)といった意味合いを有する語として親しまれた語であるから、これよりは「元気の出る(ある)郷」といった程度の意味合いを看取させるものである。

そうすると、本件商標よりは、その構成文字に相応して「アグリタウンゲンキノサト」、「アグリタウン」の称呼を生ずるほか、「げんきの郷」の文字部分より、単に「ゲンキノサト」(元気の出る(ある)郷)の称呼、観念をも生ずるというべきである。

なお、請求人の提出したインターネットホームページによれば、例えば下記のとおり、本件商標が、「げんきの郷」の文字のみをもって略称され、同人の業務に係る役務(入浴施設を含む複合施設の提供)を表示する標章として一般に認識し、使用されている事実があることを推認することができる。

(ア)http://page.freett.com/yop/genkisa.htm(甲第50号証)

「げんきの郷」の見出しのもと、本件商標の表示とともに、「美味しい、楽しい、あたたかい。」、擬人化した三匹の鳥の図形及び時計台の図形等が掲載されている。

(イ)http://www.crec.jp/katudou/project/project146.htm(甲第51号証)

「金沢市民芸術村」の見出しのもと、「魅力的な圏域づくりをめざして推進される中部圏のさまざまなプロジェクトの中から、計画が具体的に動いているものを選んで、概要や関係者のインタビューを交えてご紹介します。」「社団法人中部開発センター客員研究員 青山征人」の記事とともに、「げんきの郷」の文字及びげんきの郷の位置図が掲載されている。

(ウ)http://www.iaf.or.ip/area/cb/cb_leisure.htm(甲第53号証)

「【レジャー施設関連】中部・東海」の見出しのもと、「お得で楽しい『げんきの郷』」の文字とともに、同施設の利用方法等を掲載した記事が紹介されている。

(エ)http://event.yahoo.co.ip/gw2005/smohigari/3/24_5.html(甲第56号証)

「げんきの郷めぐみの湯」の見出しのもと、「JAあいち知多が建設した『げんきの郷』の一施設。浴場は和風の『どぶ〜ん』と洋風の『ザブ〜ン』があり、週替わりで男女が交代する。・・・」の記事が掲載されている。

(オ)http://www.medias.ne.ip/- milk/rink/rink.htm (甲第57号証)

「げんきの郷」の見出しのもと、「げんきの郷さんのホームページ。当社からすぐ近く。めぐみの湯の売店・・・お風呂上がりに・・・一本どうぞ。」の記事が掲載されている。

(カ)http://www.etokbc.ip/topics/038/(甲第64号証)

「【知多バス】JA「げんきの郷」へバス乗り入れ開始&佐布里線経路変更」の見出しのもと、「知多乗合(知多バス)では、2001年2月1日から愛知県知多郡東浦町にある『アグリタウンげんきの郷<さと>』へのバス乗り入れを開始しました。・・・」の記事が掲載されている。

(2)イ号標章について

イ号標章は、別掲(2)のとおり、毛筆体で「げんきの郷」(「の」の文字は、「げんき」及び「郷」の文字に比し小さい。)の文字を中央に大きく表し、該「げんきの郷」の文字中「の」の文字の上部に、小さく、篆刻印様に「安黒」の文字を赤地に白抜きして配し、これら「げんきの郷」及び「安黒」の文字の上部に毛筆体で「天然温泉」の文字及び「げんきの郷」の下段右下に「の郷」の文字幅程度の大きさで、「Genki no sato」の欧文字を配してなるものである。

しかして、構成中、「天然温泉」の文字部分は、「人為の加わらぬ自然のままの状態」(広辞苑第5版)を意味する「天然」の文字に「温泉」の文字を結合したものであるから、該文字は、被請求人の提供する役務(温泉施設の提供)との関係においては、提供する温泉の質(天然の温泉)を表し、自他役務の識別標識としては機能し得ない部分と認められ、また、「安黒」の文字部分は、篆刻印様の特徴をもって、小さく目に止まりにくい大きさで、外観上分離して表示してなる構成からみて、イ号標章にあって、該文字部分は他の構成文字とともに常に一体のものとして捉え把握されるとはいえないものである。

そうすると、イ号標章は、商取引の実際においては、これに接する者は、構成中、独立して自他役務の識別標識として機能するものと認められる「げんきの郷」の文字及びその下段に記した「Genki no sato」の文字部分に着目し、該文字部分をもって取引に資することも決して少なくないものといわなければならない。

しかして、「げんきの郷」(Genki no sato)の文字部分の意味合いは、上記(1)と同様であるから、これよりは「元気の出る(ある)郷」といった意味合いを看取させるものである。

してみれば、イ号標章よりは、その構成文字に相応して「テンネンオンセンアンコクゲンキノサト」、「テンネンオンセンゲンキノサト」の称呼を生ずるほか、「げんきの郷」(Genki no sato)の文字部分より、単に「ゲンキノサト」(元気の出る(ある)郷)の称呼、観念をも生ずるというべきである。

なお、請求人の提出したインターネットホームページによれば、例えば下記のとおり、イ号標章が「げんきの郷」の文字のみをもって略称され、被請求人の業務に係る役務(温泉施設の提供)を表示する標章として一般に認識し、使用されている事実があることを推認することができる。

(ア)http://furodasu.hp.mfoseek.co.ip/page175.html(甲第16号証)

「げんきの郷」の見出しのもと、被請求人の温泉施設が4枚の写真及びその施設の紹介記事とともに掲載されている。

(イ)http://www.ne.ip/asahi/world/hopper/onsen/hyogo/genki/genki.htm(甲第17号証)

「天然温泉 安黒 げんきの郷」の見出しのもと、「げんきの郷」の文字とともに、1枚の写真及び被請求人の温泉施設の紹介記事が掲載されている。

(ウ)http://www7a.biglobe.ne.ip/susume/onsen.htm(甲第22号証)

「8月20日 げんきの郷 850円」の見出しのもと、「天然温泉げんきの郷 体験記」の文字及び温泉施設の写真とともに、体験談が掲載されている。

(3)まとめ

上記(1)及び(2)の本件商標とイ号標章の認定並びに一般における認識等を勘案すれば、両者は、外観上の相違を考慮しても、構成中、「げんきの郷」の文字部分より生ずる「ゲンキノサト」(元気の出る(ある)郷)の称呼、観念を同じくする互いに類似の商標であり、また、イ号標章の使用する「温泉施設の提供」と、本件商標の指定役務中の「入浴施設の提供」とは同一又は類似のものである。

したがって、「温泉施設の提供」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属するものといわなければならない。

なお、被請求人は、本件商標は、請求人の経営する温泉施設を含む多様な施設が集まった集合型複合施設について使用しているものであり、請求人が温泉施設について使用している商標は「めぐみの湯」である等々主張するところあるが、本件は、イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するか否かが判断されるべきであり、同主張はその論点において首肯し得ないから、かかる被請求人の主張は採用できない。

このほか、被請求人の述べる意見は、いずれも妥当性を欠くものであって、採用できない。

よって、結論のとおり判定する。

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