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Trademark Appeal Case

口頭使用許諾の有効性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号取消2005−30626(T2005−30626/J2)
審判種別取消
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4083720号商標(以下「本件商標」という。)は、「リンデ」の文字を書してなり、平成6年10月13日に登録出願、第30類「コーヒー及びココア,茶,菓子及びパン,即席菓子のもと」を指定商品として、同9年11月21日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点

請求人は、「本件商標の第30類の指定商品中『菓子及びパン』についての登録を取り消す」との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨次のように述べた。

(1)請求の理由

本件商標は、その指定商品中「菓子及びパン」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者及び通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。

(2)答弁に対する弁駁の理由(要旨)

ア 使用許諾契約の不存在

被請求人は、株式会社ニュー・ディメンジョン・リサーチ(以下「ニュー・ディメンジョン・リサーチ社」という。旧社名:株式会社イディー)に対し、1996年1月に本件商標の使用を口頭で許諾した旨主張し、被請求人が本件審判請求があったことを知って事後的にニュー・ディメンジョン・リサーチ社との間で作成した「商標使用許諾に関する経過についての確認書」(乙第1号証)を提出する。

被請求人の主張によれば、被請求人は、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社に対し、本件商標の使用を口頭で許諾したものであり、許諾に当たり何らの条件も付していない。

しかしながら、このように商標の使用許諾契約を口頭でのみ行い、何の条件も付さないことは、極めて不自然であり、通常の場合あり得ない。その点を含めた理由は次のとおりである。

(ア)商標の使用を許諾する側としては、無条件での許諾は、当該商標の使用態様や使用する商品の品質・内容等について商標使用者に対し何らの管理も及ばないため、その商標の信用が毀損され、自己の信用が失われることになりかねない。特に、無償での無条件の許諾は、とりわけ被請求人のような資本金77億円以上で従業員570名にもなる大規模な会社の場合(被請求人のホームページより)、極めて不自然である。被請求人が、現在数百件の商標権を所有し、1996年1月の時点でも少なくとも百数十件の商標権を所有していて(特許電子図書館より)、商標法に精通していたと認められることを併せて考えるならば、被請求人がこのような使用許諾契約を締結したという主張は、通常の場合到底信用することはできない。乙第1号証の「2、」に記載された使用許諾理由は、このような使用許諾契約を締結する合理的理由であるとはとても考えられない。

(イ)また、商標の使用許諾を受ける側としても、企業経営上極めて重要な商標使用許諾契約を単に口頭で行って済ませるというのは、通常の常識では考えられず極めて不自然である。特に、乙1号証によれば、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社にとって、商標「リンデ」は、ハウスマーク的に使用されている重要な商標であると認められる。この点において、口頭での使用許諾契約の不自然さは一層強まるものといわざるを得ない。さらに、1996年(平成8年)1月に、「リンデ」を用いたパンを製造販売したいというニュー・ディメンジョン・リサーチ社の申出があったということであるが、乙第2号証によれば、被請求人が主張する1996年(平成8年)1月の商標使用許諾契約時には、株式会社イディーの商業登記簿の目的欄にパンの製造販売は含まれておらず、つじつまが合わない。

(ウ)しかも、使用許諾を証明する書証として提出されているのは、被請求人が本件審判請求があったことを知った後で作成された乙第1号証の確認書のみであり、使用許諾に関する事実の日付についても、年月までの記載しかなく、明確な日付が示されていないので、その証明力は薄弱である。

(エ)また、本件商標の登録より2年近く前に商標の使用許諾をした後、被請求人が本件審判請求があったことを知った後で乙第1号証の確認書が作成されるまでの10年間近くにわたり、使用許諾に関して何も行われておらず、極めて不自然である。

(オ)通常使用権の許諾は、商標権設定登録後に行われる。したがって、許諾者である商標権者としては、被請求人が主張する口頭での無条件の通常使用権許諾を行うと、当該商標の使用態様や使用する商品の品質・内容等について通常使用権者に対し何らの管理も及ばないため、商標法第53条の規定により商標登録全体が取り消されるおそれが生じる。上記のように商標法に精通していたと認められる大規模な会社である被請求人が口頭での無条件の通常使用権許諾契約をニュー・ディメンジョン・リサーチ社と締結したというのは、極めて不自然である。

(カ)一方、本件商標権についての通常使用権の被許諾者としても、契約の成立及び有効な存続が確実でなければ、逆に本件商標権やその他の商標権の侵害となる危険性に直面するのであるから、対象商標「リンデ」がハウスマーク的に使用されている重要な商標であると認められることからしても、通常使用権許諾契約を単に口頭で行って済ませるというのは、これまた通常は考えられず極めて不自然である。

(キ)ニュー・ディメンジョン・リサーチ社による登録商標「リンデ」の使用を示すための乙号証のいずれにおいても、登録商標の使用であることを意味するものは存在しない。

(ク)仮に、1996年1月に使用許諾があったとしても、通常使用権の許諾が可能となる商標権設定登録が本件商標登録について行われたのは1997年(平成9年)11月であり、1996年(平成8年)1月の時点では通常使用権の許諾についての何らの取り極めも存在しない。その後も、被請求人が本件審判請求があったことを知った後で乙第1号証の確認書が作成されるまで10年間近くにわたり、通常使用権許諾について何も行われていない。このような事実関係の下では、通常使用権許諾契約が成立し、それが有効に存続していたとは認められず、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社が商標「リンデ」を本件請求に係る商品に使用していたとしても、それは本件商標の使用義務を果たす使用とは認められない。

以上の理由により、本件商標権についてニュー・ディメンジョン・リサーチ社に通常使用権を許諾する契約が成立し、その契約が本件審判の請求登録前3年以内に至るまで有効に存続していたとは認められない。

イ 使用権者の不存在

以上のように、被請求人がニュー・ディメンジョン・リサーチ社に商標「リンデ」の使用を許諾する使用許諾契約は存在せず、本件商標権についてニュー・ディメンジョン・リサーチ社に通常使用権を許諾する契約が成立して、その契約が本件審判の請求登録前3年以内に至るまで有効に存続していたとは認められず、専用使用権も存在しないので、本件審判の請求の登録前3年以内において、本件商標権について、専用使用権者及び通常使用権者はいずれも存在しない。

ウ むすび

上述のとおり、被請求人は、本件商標を、本件審判請求に係る指定商品「菓子及びパン」について、本件審判請求登録前3年以内に日本国内において使用しておらず、本件審判請求登録前3年以内に本件商標権についての専用使用権者及び通常使用権者はいずれも存在しないので、商標法第50条第1項の規定により、本件商標登録は取り消されるべきである。

3 被請求人の答弁の要点

被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第16号証を提出した。

(1)商標権者と使用権者の関係

本審判の被請求人である商標権者太陽化学株式会社は、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社の旧社名(株式会社イディー)時の澤田課長と面談し、本件商標の使用を許諾することについて、1996年1月に両社間で合意し、その旨を口頭で澤田課長に連絡した。

今回、合意の事実を明らかとするため、口頭での合意内容について、確認書(乙第1号証)を締結した。

また、株式会社イディーがニュー・ディメンジョン・リサーチ社に社名変更された事実及びニュー・ディメンジョン・リサーチ社の目的として「パン・菓子の製造及び販売」が記載されていることを示すために現在事項全部証明書(乙第3号証)、並びにニュー・ディメンジョン・リサーチ社とドイツパンの店「リンデ」との関係を示す書面として、東京都武蔵野保健所が発行した菓子製造業に関する「営業許可書」(乙第4号証)を提出する。

(2)使用の事実

使用権者であるニュー・ディメンジョン・リサーチ社は、乙第1号証ないし同第16号証に示すように、指定商品中「菓子及びパン」について、本審判請求登録の日以前3年以内に日本国内において本件商標を継続して使用しているものであり、本件審判請求は成り立たないものである。

4 当審の判断

被請求人の提出に係る2005(平成17年)年7月8日付け「商標使用許諾に関する経過についての確認書」(乙第1号証)によれば、1996年(平成8年)1月に、本件商標の商標権者である被請求人は、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社の要望に応じ、口頭による本件商標の使用を許諾し、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社は、その許諾契約に基づき、1997年(平成9年)4月に東京都武蔵野市吉祥寺本町にドイツパン店を開店させてパン及び菓子の製造販売を開始し、その後も継続してパン及び菓子の製造販売を行っていることが認められる。したがって、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社は、本件商標の商標権者である被請求人より使用を許諾された本件商標に係る商標権の通常使用権者であるといわなければならない。

平成16年12月13日発行の現在事項全部証明書(乙第3号証)によれば、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社は、目的の欄8.には、パン・菓子の製造及び販売が記載されていることが認められる。

そして、1997年(平成9年)4月に開店した該ドイツパン店の名称は「リンデ」であって、上記確認書が作成された2005年7月8日においても「リンデ」商標を使用して営業を行っていたことが認められる(上掲確認書、1997年(平成9年)5月27日付け「日経流通新聞」乙第7号証、

及び平成11年10月18日付け東京都武蔵野保健所発行「営業許可証」乙第4号証)。店舗INFORMATION(乙第5号証)には、経営母体の「ニュー・ディメンジョン・リサーチ社」及び「ベッカライカフェ リンデ吉祥寺店」、「同リンデ2号店」が掲載されていることが認められる。

ドイツパン店「リンデ」の「2005年1月7日改定のメニューカタログ」(乙第8号証)には、「ブレツェル」、「カイザー」、「バニラタッシェン」などのパン・菓子を販売しており、そのメニュー中には、「リンデ・クッキー」という商品が記載されている。また、東武百貨店池袋本店において2004年(平成16年)2月26日から行ったパンの催事「パンブティック」において、「ベッカライカフェ リンデ」がドイツパン「プレッツェル」などを販売した記事が掲載されていることが認められる(2004年(平成16年)2月24日付け「日経流通新聞」乙第6号証)。2005年(平成17年)6月7日角川書店発行の東京ウォーカー「Tokyo Walker2005No.13」(乙第9号証)には、船橋に2月にオープンした「パン屋ストリート」に吉祥寺のドイツパンの店「リンデ」が出店し、パンの表面に「Linde」の文字が表されたロッゲンミッシュブロート(乙第10号証)を販売する旨などが記載されている。

さらに、株式会社東急ストア向け「商品カード」平成15年2月10日付け」(乙第12号証)には、取引先名ニュー・ディメンジョン・リサーチ社と担当者名及び商品名の欄に「リンデ・クッキー(大)(小)」が記載されていることが認められる。東武百貨店への催事販売申込書(乙第13号証)には、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社の担当者名、商品名の欄に「リンデクッキー(大)」、賞味期限「05 03 31」、製造者「ニュー・ディメンジョン・リサーチ社」が記載されていることが認められる。株式会社ジェイアール東海高島屋からの発注書のFAX(乙第14号証)には、それぞれの発注書に「ベッカライフカフェ リンデ」、(改2004/11/1)発注日1月17日、納品日1月23日及び発注日3月21日、納品日3月27日、商品名「リンデクッキー」が記載されていることが認められる。 松屋銀座店の2004年9月19日付けFAX(乙第15号証)には、送信先にリンデ及び担当者名及び第2頁に「リンデ シュトーレン ¥3990」が記載されていることが認められる。株式会社伊勢丹への2004年6月18日付けFAX(乙第16号証)には、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社及び「リンデブレッド」が記載されていることが認められる。

以上のように「リンデ」は、平成15年から同17年にかけて株式会社東急ストア、株式会社東武百貨店、株式会社ジェイアール東海高島屋、松屋銀座店、株式会社伊勢丹においても、「リンデクッキー」、「リンデブレッド」、「リンデシュトーレン」を販売し、あるいは販売を予定していたことが認められる(乙第12号証ないし同第16号証)。

以上、認定した各事実によれば、本件商標に係る商標権の通常使用権者と認められるニュー・ディメンジョン・リサーチ社は、平成9年4月にドイツパン店「リンデ」を開店させ、以降平成17年7月にかけて継続して営業を行っており、同店においては、本件商標と社会通念上同一と認められる商標をパン及び菓子に使用し販売していた事実が認められる。

請求人は、「本件商標の1996年(平成8年)1月に使用許諾契約を口頭で行い、何の条件も付さないことは極めて不自然であり、通常あり得ない。また、本件商標は、1997年(平成9年)11月に登録されたものであり、上記時点では通常使用権の許諾についての何らの取決めも存在せず、その後、確認書が作成されるまでの10年間近くにわたり通常使用権について何も行われていない。したがって、本件商標についてニュー・ディメンジョン・リサーチ社に通常使用権を許諾する契約が成立し、その契約が本件審判の請求の登録の3年以内に至るまで有効に存続していたものとは認められない。」旨主張する。

しかしながら、契約は、当事者間の申込みと承諾という二つの意思表示の合致(合意)により成立し、それにより相互間に権利・義務が発生するものであって、その契約が口頭によるか書面によるか、何らかの条件を付するか、付さないかは当事者の自由であるということができる。そして、「商標使用許諾に関する経過についての確認書」(乙第1号証)には、両当事者の代表者の記名・捺印がされ、本件商標の許諾契約時の当事者の氏名が明記されているものであって、この確認書に記載されたドイツパン店の開店時期も新聞報道と合致し(乙第7号証)、その後も該ドイツパン店は、所轄保健所から「リンデ」の名称を用いた菓子製造の営業許可を得て(乙第4号証「営業許可書」は平成11年10月から平成18年10月31日までのもの)、有名百貨店に出店するなどして本件商標「リンデ」を使用して10年近くにわたり営業を継続しており(乙第6号証等)、これらの事実関係に照らせば、何の条件も付されずに口頭でなされたことをもって、被請求人とニュー・ディメンジョン・リサーチ社間において確認された上記使用許諾契約が成立していなかったということはできない。

また、その契約時である1996年(平成8年)1月には、本件商標の登録はされていなかったことが認められるが、本件商標は、既に登録出願されていた時期であり、それが登録されることを前提に使用許諾契約を行うことも、当事者の自由であるといわなければならず、この点をもっても、該契約が成立していなかったということはできない。

そうすると、1996年(平成8年)1月に、被請求人とニュー・ディメンジョン・リサーチ社間において本件商標についての使用許諾の合意がされ、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社は、その契約のもと、2005年(平成17年)7月においても本件商標を継続して使用していることが両当事者間で確認されているのであるから、少なくとも、上記期間は、該使用許諾契約は存続していたものであり、ニュー・ディメンジョン・リサーチ社は、該契約に基づく通常使用権者であったといわなければならない。したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。

してみれば、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に、日本国内において通常使用権者により請求に係る指定商品について使用されていたものといわなければならない。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中の請求に係る商品についての登録を取り消すべき限りでない。

よって、結論のとおり審決する。

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