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Trademark Appeal Case

商標「丸三」の周知性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号無効2005−89071(T2005−89071/J3)
審判種別無効
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4607070号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4607070号商標(以下「本件商標」という。)は、「丸三」の文字を横書きしてなり、平成13年8月22日に登録出願され、第41類「スロットマシン場の提供,ぱちんこホールの提供,ビリヤード場の提供,カラオケ施設の提供,遊技用器具の貸与」を指定役務として、平成14年9月27日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張の要点

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第17号証(枝番を含む。)を提出している。

(1)無効理由1(商標法第4条第1項第10号違反)

ア 請求人の業務とその実情

請求人は、甲第2号証に示すように、「遊技場の経営、同業務に付帯する事業を営むために、昭和58年1月21日に「有限会社丸三」として現在地に設立され、平成16年5月20日に「株式会社丸三」に組織変更して現在に至っている。そして、この間甲第3ないし第4号証に示すように、パチンコ店を主体とするアミューズメント事業やネットカフェ事業等を営み、昭和58年1月以来平成16年迄に、パチンコ店としては島根県内に本件商標の出願日迄に9店舗、山口県萩市内に2店舗、合計11店舗を開店し、山陰地方では最大手の事業者となっている。これらの実情は、平成14年3月に開催された事業所創立20周年記念式典の式次第(甲第5号証)にも明らかであり、さらに[図表1]はこれらの店舗の出店情況を図示したものである。

また、甲第6号証1ないし13は、現存する請求人の各店舗(事業所)開設に関する島根県、山口県の各公安委員会による風俗営業許可証であり、各店舗における営業が適正に許可されたものであることを示している。

イ 請求人の商標の周知性について

(ア)請求人の標章

請求人は、甲第7、第8及び第10号証に示すように、昭和57年の創業以来「有限会社丸三」及び「株式会社丸三」の商号とともに、「丸三」、「丸三○○(店舗名)店」を中心とし、「MARUSAN」、「maRusan」(但し、「MARUSAN」、「maRusan」については大半が社章の一部として)の各標章(以下、これらをまとめて「引用標章」という。)を、島根県の人口の大半を占める島根県東部地方と同県西部地方に属する大田市及びその近郊において継続して使用している。

(イ)甲第7号証について

甲第7号証は、パチンコ店の日常の宣伝集客方法として多用される新聞折込のチラシ配布の事実、配布日、地域、部数等を配布受託業者によって証明された証明書であり、その配布は年間を通じた特定の月、月毎の特定の週、曜日その他集客が最も期待される時を選んで行なわれている。

この証明書によれば、少なくとも平成10年3月以後引用標章が、島根県下の大田市近郊以東の各市町村における多量の集客チラシにおいて使用されている事実、その部数は、本件商標登録出願時である平成13年8月22日迄に12,751,025部に上る。但し、この証明書は、平成16年7月現在請求人の手元にチラシの原本が保存されているものに限って証明されたもので、これ以外のチラシの発行、配布に関しては別途甲第9及び第11号証を提出する。

(ウ)甲第8号証について

甲第8号証1ないし24は、甲第7号証中の平成10ないし13年度中の各年度のチラシNo.1ないし6のチラシの原本であり、部数が多量にわたるため証明書中に示されるその余のチラシの原本については提出を省略した。

(エ)甲第9号証について

甲第9号証は、甲第7号証に示すチラシ以外に島根県内の同地方で新聞折込によって配布したもの(チラシ原本がなく証明の対象とならなかったチラシ)を含む、島根県内で配布したすべての折込チラシに関するチラシ代金請求書であり、請求人宛てに「山陰オリコミ」(有限会社米子広告センター出雲支社)又は「株式会社山陰中央新報セールスセンター」が平成10年1月より同16年9月に発行したものである。

同号証によれば、請求人は、本件商標登録出願日以前に26,082,727部、その後を含めると総計58,787,522部の同種の折込チラシを配布したことが明らかである。

[図表2]は、甲第7号証によって証明された島根県下における折込チラシの配布部数と折込チラシの印刷及び配布の請負業者からの請求書によって明らかにされた実際の配布部数に関し、平成10年以後同16年9月迄を本件商標登録出願日の前後に分けて示したものである。

(オ)甲第10号証について

甲第10号証1ないし5には、それぞれ島根、鳥取両県において、最大発行部数(公称15万部)を持つ日刊地方紙「山陰中央新報」に引用標章等が広告として掲載されていることが明らかである。これらは本件商標登録出願日以前に掲載された広告のうち、請求人の手元に原本が保存された掲載紙のみを提出したものであり、現実には同紙に対し、年間数十回の広告を掲載しているものである。

(カ)甲第11号証について

甲第11号証1ないし18は、山口県萩市及びその近郊において新聞折込により配布した折込チラシで請求人の手元に保存されているもののうち、配布日の明確なもののみを提出したもので、実際には甲第9号証に示すような島根県内での頻度と同様の頻度で配布されたものである。

ウ 本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当する点について

上記甲第1ないし第11号証より明らかなように、請求人が営むパチンコ店の業務に関して、本件商標登録出願日前に使用した引用標章は、島根県大田市及びその近郊以東と山口県萩市及びその近郊の広範囲な地域において、しかも高い頻度と密度で、昭和57年以後現在に至る長期間にわたって使用されて来た結果、当該地域のユーザーであるパチンコ愛好者及びその関連取引業者の間で、請求人の業務を表示するものとして広く知られていたものである。

これに対し、本件商標は、「マルサン」の称呼を生じる引用標章中の「丸三」の標章とは外観及び称呼において、同じく「MARUSAN」、「maRusan」の標章とは称呼においてそれぞれ同一であり、かつ、「スロットマシン場の提供,パチンコホールの提供」という指定役務においても同一又は類似であるから、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。

(2)無効理由2(商標法第4条第1項第19号違反)

ア 請求人の標章の周知性について

上記(1)で述べたように、引用標章は、島根県大田市及びその近郊以東と山口県萩市及びその近郊(日本国内)において、請求人の業務を表示するものとして需要者及び取引者の間で広く知られていること、及び本件商標が引用標章と同一又は類似であり、指定役務についても同一又は類似であることは明らかであるから、その点に関する主張は割愛する。

イ 被請求人が本件商標を不正の目的をもって使用するものである点について

被請求人は、本件商標登録出願を譲り受けて、登録を受けるに当たり、不正の目的をもって使用する意向があったと思料されるので、以下この点について甲第12ないし第17号証に基づいて主張・立証を行なう。

(ア)甲第12号証1ないし11及び甲第13号証1ないし11について

甲第12号証1ないし11は、いずれも本件商標登録出願以外に、平成13年7月18日と同年8月22日の2回に分けて、当初の登録出願人によって登録出願された計11件の商標登録出願の出願・登録商標の内容及び経過を示す特許庁電子図書館の「商標出願・登録情報」データである。そして、これらの登録出願の指定役務には、いずれも第41類「スロットマシン場の提供,パチンコホールの提供」を含んでおり、甲第12号証1ないし11のそれぞれの商標は「ニューセブン」、「マルハチ」、「ユーコーラッキー」、「コロンボ」、「ロッキー」、「ケイズ」、「北大」、「マツヤ」、「ニューダイエー」、「パチンコ天国」、「ニューフレンド」である。

これに対し、甲第13号証1ないし6及び8ないし11(甲第13号証7は欠番)に示す企業は、本件商標の登録出願当時、各地で有力なパチンコ店またはスロットマシン場として一定以上の規模で営業していたものと認められるが、それぞれ被請求人名義の登録出願に係る甲第12号証1ないし6及び8ないし11に示す商標と同一又は類似と解される商標を、各企業にとって有力な商標として使用している事実が看取される。

換言すれば、ここで重要なのは、当初の登録出願人がスロットマシン場、パチンコホールの提供を指定役務として、平成13年7月8日と同年8月22日に分けて、計12件の商標登録出願をしたもののうち、引用標章を含め計11件は、いずれも当時実在していたと解される(但し、それ以後の4年近くの間に廃業、店名変更、新規開店等の可能性は否定できない)パチンコ店等の有力な使用商標と同一又は類似の商標であり、これを何らかの理由で被請求人が後に譲り受けている(甲第14号証)という点である。

被請求人が譲り受けた本件商標以外の出願・登録商標11件と、これに対応する他社の使用商標及び商標使用者の対応関係は[図表3]に示すとおりである。

(イ)甲第14号証について

甲第14号証は、本件商標が他の11件の商標登録出願とともに、当初登録出願人である佐藤秀蔵より被請求人に一括して名義変更される際の提出書類で、ここで特徴的な事実は、甲第14号証1のこの出願人名義変更届に際し、後に請求人との商標権譲渡交渉において「代理人」と称して関与した弁護士でも弁理士でもない「鶴巻郡治」を名乗る者(甲第16号証)が手続きの代理人を務め、甲第14号証2及び3の譲渡証書も委任状も同一スタイルで同一字体の印鑑が使用されていることであり、後の本件商標権移転交渉(甲第17号証)も含め、被請求人は、本件商標及び他の11件の商標の処分や取り扱いに実質上関与していないと解されることである。

(ウ)甲第15ないし第17号証について

甲第15ないし第17号証は、請求人が被請求人に対して本件商標の譲渡申し入れを行い(甲第15号証)、被請求人の「代理人」と称する「鶴巻郡治」氏(甲第16号証)と請求人代理人が譲渡の交渉に関して面談した経過と面談内容を請求人宛て報告した報告書(甲第17号証)である。

すなわち、甲第15号証では、被請求人の本件商標の存在と、被請求人が本件商標を使用するために取得したとは考えられない事実とを知った請求人が、被請求人に、本件商標登録に対して無効審判の請求を行なわざるを得ないことの告知と、常識的な対価で譲渡する意思があるかないかの照会と譲渡交渉の申し入れとを行なった事実を表示しており、その結果、被請求人より譲渡の意思があるとの回答があり、平成16年10月13日に面談することが約束されたものである。

しかし、面談予定日前日に被請求人の「代理人」として、甲第16号証に示す鶴巻郡治氏が請求人代理人と面談させて欲しい旨申し入れがあり、請求人代理人としては同氏が代理人として望ましくない旨を伝えながら、時間的問題もあり被請求人の意向を聞くためにやむを得ず面談した。

その際の面談内容は、甲第17号証に示すとおり、被請求人は少なくとも本件商標及び他の11件の商標を具体的に使用する計画を持っていないこと、第2に、譲渡価格は、通常の不使用商標の価格に比して不当に高額と考えられる300万円を譲れないとしていること等が明らかとなり、その結果譲渡交渉は決裂した。

以上の事実を検討すれば、被請求人は、接渉過程での鶴巻氏の説明内容とは異なり、山陰地方で一定の使用実績を持ち、需要者の間で周知となっている引用標章と、同様に使用実績のある他11件の前記商標を専ら商標権を譲渡して対価を得ることを目的とし、いわゆる「商標ブローカー」的な立場で取得又は譲渡しようとしたものと理解するのが最も自然である。

よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものである。

(3)無効理由3(商標法第3条柱書違反)

上記無効理由(1)において提示した甲第1ないし第11号証の検討の過程と、上記無効理由(2)における甲第12ないし第17号証の検討の過程から明らかなように、被請求人は、本件商標及び甲第12号証に示す指定役務のうち、少なくともスロットマシン場やパチンコホールの提供を業として営む意思や具体的計画があるとは認められない。

したがって、本件商標は、被請求人の業務に係る役務について使用する商標とは認められず、商標法第3条第1項柱書に違反するものである。

(4)まとめ

以上の次第につき、本件商標は、上記無効理由(1)ないし(3)のいずれかに違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。

3 被請求人の答弁

被請求人は、何ら答弁していない。

4 当審の判断

(1)請求人の提出に係る甲号証によれば、以下の事実を認めることができる。

(ア)請求人は、島根県出雲市渡橋町に本店を置き、遊技場の経営事業を主たる目的として、昭和58年1月21日に設立された有限会社を前身とする株式会社であり(甲第2号証)、その設立以来、平成16年までに島根県出雲地区、松江地区、大田地区等の島根県内に9店舗、山口県萩市内に2店舗のパチンコ店を開店し、アミューズメント事業やネットカフェ事業を行っている(甲第3ないし第5号証及び図表1)。

(イ)請求人は、その設立以来、引用標章を会社案内、インターネットのホームページ、店舗の看板等に付して使用すると共に、平成10年3月から同16年9月にかけて、引用標章が掲載された新聞折込チラシを広範に配布し(甲第3ないし第5号証、第7号証、第8号証1ないし24、第9号証及び第11号証1ないし18)、さらに、昭和57年12月から平成13年4月にかけて、引用標章を表示して日刊地方紙「山陰中央新報」に新聞広告を行った(甲第10号証1ないし5)。

(ウ)上記新聞折込チラシは、島根県東部地方・西部(大田市)地方において日刊紙の山陰中央新報、朝日新聞、読売新聞及び毎日新聞に折り込まれて配布された(甲第7及び第9号証)のを始め、山口県萩市及び同近郊においても配布された(甲第11号証1ないし16)。その配布部数は、本件商標の登録出願日までに2,600万部余に達し、その後を含めると5,900万部近くになる(甲第7及び第9号証並びに図表2)。

(2)以上の認定事実によれば、引用標章は、島根県大田市及びその近郊以東並びに山口県萩市及びその近郊の広範囲な地域において、長年使用され、盛大に宣伝広告された結果、本件商標の登録出願時には既に、請求人の業務について使用する商標として、上記地域を中心にして取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきである。

(3)本件商標は、上記1のとおりの構成からなるところ、その構成文字に相応して、「マルサン」の称呼を生ずるものである。

他方、引用標章は、「丸三」、「丸三○○(店舗名)店」、「MARUSAN」又は「maRusan」の文字からなるものであり、いずれも「マルサン」の称呼を生ずるものといえる。しかも、引用標章中の「丸三」は、本件商標と同一の文字からなるものである。

そうすると、本件商標と引用標章とは、その称呼(引用標章の一部は外観及び観念も)を共通にする類似の商標といわなければならない。

そして、本件商標の指定役務は、引用標章が使用されている「パチンコホールの提供」等の役務と同一又は類似のものといえる。

(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、請求人のその余の主張について検討するまでもなく、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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