結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2005−89083(T2005−89083/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第4748644号商標(以下「本件商標」という。)は、「紫陽花」の漢字と「あじさい」の平仮名文字とを二段に横書きしてなり、平成15年6月17日に登録出願、第5類「歯科用材料」を指定商品として、同16年1月14日に登録査定がなされ、同年2月20日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録の無効の理由として、請求人が歯科用印象材に属する「寒天印象材」について使用している「FINE HYDROSTICK/紫陽花/あじさい」あるいは「ファインハイドロスティック紫陽花」の文字からなる商標を引用している(以下、これらを纏めて「引用商標」といい、この引用商標を付して使用している「寒天印象材」を「請求人商品」という。)。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第42号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第10号について
(ア)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、上記の構成からなるものであるから、「アジサイ」の称呼及び植物の「紫陽花」の観念を生じると解するのが妥当である。
一方、引用商標は、その構成中の「FINE HYDROSTICK」の文字部分は歯科用印象材の品質ないしは形状を表示すると認められるものであるから、かかる構成においては、「ファインハイドロスティックアジサイ」という全体から生じる称呼の他、「紫陽花」ないしは「あじさい」の文字部分に従って、「アジサイ」の称呼並びに植物の「紫陽花」の観念が生じるとするのが妥当である。
してみれば、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念において同一であり、相互に類似する商標というべきである。
そして、引用商標を付した商品は「歯科用印象材」の中の「寒天印象材」であり、本件商標の指定商品である「歯科用材料」とは、取引者・需要者、流通経路を同じくする同一又は類似の商品である。
(イ)引用商標を付した商品の周知性について
請求人が製造販売する引用商標を付した商品「ファインハイドロスティック 紫陽花」は、甲第5号証ないし甲第22号証に示すとおり、歯科用印象材市場において顕著な市場シェアを有しており、同市場の取引者(歯科用品卸業者)及び需要者(歯科医師)の間で広く認識されるに至っているものである。
加えて、請求人は、宣伝用リーフレットを歯科医療卸業界最大手の株式会社ヨシダを通じて発行し、全国の歯科医師に頒布するとともに(甲第23号証ないし甲第28号証)、「(月刊)アポロニア21」や「DENTAL DIAMOND」といった業界誌に、請求人商品の広告を定期的に掲載し(甲第29号証ないし甲第31号証)、また、社団法人日本歯科商工協会の主催による「日本デンタルショー」にも毎回ブースを設置し、需要者に対し直接プロモーション活動を繰り広げている(甲第32号証ないし甲第35号証)。さらに、株式会社ヨシダが発行する「dpn(dental products news)」の1999年11月号には、「USER INTERVIEW」なる記事に、請求人商品に関する歯科医師のコメントが掲載されており(第36号証)、クインテッセンス出版株式会社発行「中野愛子著 寒天・アルジネート連合印象法」の「主な寒天印象材」なる表には、請求人商品が真っ先に表示されている(第37号証)。
以上のとおり、引用商標は、請求人の取り扱う歯科用印象材を指すものとして、需要者の間において広く認識されていたものである。
したがって、本件商標は、請求人が製造販売し、周知となっている歯科用印象材「ファインハイドロスティック紫陽花」と類似するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
万一、本件商標と引用商標とが非類似との判断に至ったとしても、寒天を用いた歯科用印象材という需要者の特定された特殊な市場であること、前述のとおり請求人の取り扱う「ファインハイドロスティック紫陽花」が主たる需要者たる歯科医師の間において広く認識されていること、さらには、本件商標の商標権者が本件商標を使用するその使用態様に鑑みた場合、実際の取引場面において、具体的な誤認混同を生じるおそれを否定することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号について
歯科用印象材は、薬事法の規制下にある商品であり、薬事法上、「医療機器」の範疇に含まれる商品である(甲第38号証)。医療機器の製造販売に当たっては、所定の項目を記載した添付文書の添付が義務付けられており、また、医薬品(上記「医療機器」を包含する概念である)の製造販売業者には、当該医薬品に関し適正使用のために必要な情報を提供する努力義務が課されており、インターネット等を通じた通信販売がこの努力義務に沿った販売形態とはいえないことは自明のことであり、良識ある製造販売業者としては対面販売を旨とするのが通常である。
にもかかわらず、被請求人においては、請求人が取り扱う商品「ファインハイドロスティック紫陽花」と紛らわしいパッケージにて(本件商標と同一の商標は使用されておらず、その代わりに「アジサイカラー」なる商標が付されている。)、かつ、出所が明確にならず、必ずしも情報提供を十分に履行し得るとはいえないネット販売という手法を用いて商品販売を行なっている(甲第39号証ないし甲第42号証参照)。
かかる行為からは、被請求人が請求人の築き上げた信用にフリーライドをしようとする意図がみて取れ、仮にそうでないとするならば、こうした薬事法の趣旨に沿わない販売行為が請求人と何らかの関係があるかのような状況を作出することにより、間接的に、請求人の信用を貶めようとする意図が推認できるものであり、不正の目的をもって使用をするものに該当するというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、前述のとおり、請求人の信用へのフリーライドを意図したものであり、ましてその販売態様に鑑みれば、薬事法の規定に沿わない販売形態での営業行為を行なっており、遵法精神に著しく悖るものといえ、公序良俗の観点からも到底是認されるべきものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号、同第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。
被請求人は、請求人の上記主張に対し、答弁していない。
請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号にも該当する旨主張しているので、この点について判断する。
(1)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、前記したとおり、「紫陽花」の漢字と「あじさい」の平仮名文字とを二段に書してなるものであるから、「アジサイ」の称呼及び植物の「紫陽花」の観念を生ずるものである。
一方、請求人の使用に係る引用商標は、「FINE HYDROSTICK/紫陽花/あじさい」あるいは、欧文字を片仮名表記にした「ファインハイドロスティック紫陽花」の構成からなるところ、その構成中の「FINE」の語は「品質の優れた、上質の」といった意味を表し、「HYDRO」は「水の、水素の」といった意味を持つ接頭辞であって、引用商標が使用されている歯科用印象材の性状ないし形状を表す「水性コロイド(HYDROCOLOID)」の略称として需要者たる歯科医師等には理解・認識し得るものと認められる語であり、また、「STICK」は「棒状のもの」という商品の形状を表すものである。
そうとすれば、引用商標が歯科用印象材(寒天印象材)に使用された場合、これに接する取引者・需要者は、前半の「FINE HYDROSTICK/ファインハイドロスティック」の文字部分をその商品の品質、形状を表示したにすぎないものとして理解し、後半の「紫陽花(あじさい)」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たすものと認識して、これより生ずる称呼をもって取引に当たる場合も決して少なくないと判断するのが相当である。加えて、後述のように、甲第23号証等の請求人商品の宣伝用リーフレットによれば、「紫陽花」の文字が大きく表されており、「FINE HYDROSTICK」あるいは「ファインハイドロスティック」の文字は右上等に小さく表示されているにすぎないものである。
してみれば、引用商標は、その構成文字全体に相応して、「ファインハイドロスティックアジサイ」の一連の称呼を生ずるほか、「紫陽花(あじさい)」の文字部分に相応して、単に「アジサイ」の称呼及び植物の「紫陽花」の観念をも生ずるものといわなければならない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、「アジサイ」の称呼及び「紫陽花」の観念を共通にする類似の商標である。
そして、請求人が引用商標を使用している「寒天印象材」は、甲第4号証(クインテッセンス出版株式会社発行「中野愛子著 寒天・アルジネート連合印象法」)によれば、歯科用印象材の中でも、局部義歯補綴、クラウン、ブリッジ、さらには技工所における複模型作製などに広く使用されている歯科用材料であって、永年にわたり歯科医師ないし歯科技工士の間で行なわれている寒天印象法なる施術に用いられている歯科用材料であり、本件商標の指定商品である「歯科用材料」に包含される商品であり、本件商標の指定商品とは、取引者・需要者、流通経路等を同じくする同一又は類似の商品である。
(2)引用商標の周知性について
(ア)請求人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(a)売上実績について
請求人の主張によれば、請求人は、歯科用印象材をはじめとする歯科治療用商品の製造・販売を主たる業としている会社であり、1991年から請求人商品の販売を現在に至るまで継続して行なっており、請求人商品の販売金額は、甲第11号証ないし甲第14号証の請求明細書及び甲第15号証の出荷数一覧表によれば、平成13年においては116,988千円、平成14年においては134,474千円、平成15年においては125,587千円、平成16年においては132,125千円となっている。
一方、厚生省健康政策局(現厚生労働省医政局)編集の「薬事工業生産動態統計年報」(甲第5号証ないし甲第10号証)によれば、「寒天印象材」の国内年間出荷額の推移は、平成13年において426,990千円、平成14年において549,401千円、平成15年において572,817千円となっている。
上記した両数値を対比すれば、「寒天印象材」の国内年間出荷額のうち、請求人商品の占めるシェアは、平成13年においては27.40%、平成14年においては24.48%、平成15年においては21.92%となっていることが認められる(なお、平成16年のシェアについては上記年報の数字が不詳のため定かではない。)。
また、1991年2月から12月までの請求人商品の販売状況は、甲第17号証及び甲第18号証によれば、発売当初においても年間54,990千円の売上げを計上しており、1992年から2000年までの各11月時の請求人商品の販売状況をみても、年次により多少の上下動はあるものの、10百万円から24百万円となっている(甲第19号証及び甲第20号証)。さらに、2005年における請求人商品の販売状況をみても、月平均11百万円を下らない額の売上をあげていることを認めることができる(甲第21号証及び甲第22号証)。
(b)広告・宣伝状況について
甲第23号証から甲第26号証は、請求人商品の宣伝用リーフレットと認められるものであり、請求人の主張によれば、歯科医療卸業界最大手の卸業者である株式会社ヨシダを通じて全国の歯科医師に頒布することを目的として発行されており、甲第17号証(1991年2月時の請求明細)によれば、約4500部のリーフレットが卸業者を通じて全国に頒布されている。
そして、該リーフレットによれば、「オムニコ(請求人)は創業以来、寒天印象材の分野において常にさらなる上質を求めて研究開発を重ね・・・今日までユーザーの皆様から高い評価と強い信頼をいただいております。これからも寒天印象材のリーディングカンパニーの名に恥じないよう・・・」、「オムニコは寒天印象材の代名詞」等の記載があり、また、「ファインハイドロスティック紫陽花」の商品説明として、「機能を極めた新しい精密印象材。/すぐれた流動性と接着性の向上により、細部まで精密な印象採得を可能にした、新しいファインハイドロスティック[紫陽花]。どんなアルジネートとも良く馴染み、しかも石膏面の肌荒れや撤去時の剥離がないなど、ハイレベルな多くの特徴を備えています。」等と記載されており、製品の包装箱の写真には、「紫陽花」の文字が大きく表示され、「FINE HYDRO STICK」の文字は右上に小さく表されている。
また、甲第27号証は、株式会社ヨシダが発行する「dpn(dental products news)」と題する広告宣伝用リーフレットと認められるものであり、その72頁において、「ゆく年・くる年大感謝セール」の対象商品として請求人商品が大々的に取り上げられており、甲第28号証も同じく株式会社ヨシダが発行する「ゆく年・くる年感謝セール(2002→2003)」なる広告宣伝用リーフレットと認められるものであり、ここにおいても、請求人商品が冒頭の最も目立つ箇所に掲載されていることが認められる。
(c)業界誌における広告掲載状況について
請求人の主張によれば、歯科医師業界の業界誌の代表的なものとしては、「(月刊)アポロニア21」(日本歯科新聞社発行)と「DENTAL DIAMOND」(株式会社デンタルダイヤモンド社発行)があり、甲第29号証の「月刊あぽろにあ21/1995年5月1日発行 通巻17号」、甲第30号証の「アポロニア21/2004年11月1日発行 通巻131号」及び甲第31号証の「DENTAL DIAMOND 2004年10月1日発行 第29巻第13号」のいずれにも請求人商品の広告が掲載されていることを認めることができる。
(d)日本デンタルショーにおける広報活動について
請求人の主張によれば、「日本デンタルショー」とは、社団法人日本歯科商工協会の主催によるもので、4年毎に開催の日本歯科医学会総会の併催行事として同一会期で開催され、歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士を含む多数の歯科関係者が参加する歯科用機器・材料・薬剤・図書等の展示会であるところ、甲第32号証ないし甲第35号証は、1991年、1995年、2000年(通常4年毎であるが、1年順延したため2000年開催となっている)及び2004年に開催された各「日本デンタルショー」のガイドブックであり、各社の展示ブース及びそこで展示されているアイテムの紹介がされているが、請求人も毎回ブースを設置し、需要者に対し直接プロモーション活動を行っており、請求人の商品の中でも、「ファイン・ハイドロスティック 紫陽花」は、常に請求人会社の出展内容のトップに掲載されていることを認めることができる。
(e)その他の事実について
甲第36号証は、株式会社ヨシダが発行する「dpn」の1999年11月号であり、「USER INTERVIEW」なる記事に請求人商品に関する歯科医師のコメントが掲載されている。これによれば、「・・・『紫陽花』は『弾力性』があるため、撤去時にちぎれることもなく、アンダーカット部分も『正確に戻る』ため、再現性にも優れています。また、アルギン酸との境部分の寒天が非常に薄くなってしまったような場合でも、『紫陽花』ならばアルギン酸から寒天が剥離することもなく、正確な石膏模型を製作することができます・・・正確な印象を採ることが補綴物作製の第一歩であり、高品質の材料を使用すること、形成・印象テクニックを身につけることが大切だと思います。」旨、記載されている。
また、甲第37号証は、クインテッセンス出版株式会社発行の「中野愛子著 寒天・アルジネート連合印象法」であり、その23頁下部の「表3 主な寒天印象材」なる表の最上部に、請求人商品である「紫陽花」が記載されており、具体的な説明の箇所において挿入されている図にも、請求人商品の写真が掲載されていることを認めることができる。
(イ)上記において認定した甲各号証に請求人の主張を総合してみれば、請求人は、歯科用印象材をはじめとする歯科治療用商品の製造・販売を主たる業としている会社であり、歯科用印象材市場において高い占有率を占めてきたことを認めることができる。そして、「FINE HYDROSTICK/紫陽花/あじさい」あるいは「ファインハイドロスティック紫陽花」なる引用商標を付した「寒天印象材」は、1991年に製造・販売を開始して以来、請求人が取り扱う歯科用印象材の中でも中心的な位置付けの商品となり、歯科用印象材という需要者の限定された特殊な市場であることに鑑みれば、引用商標は、請求人の業務に係る「寒天印象材」を表す商標として、本件商標の登録出願時(平成15年6月17日)においては既に、我が国におけるこの種商品の取引者・需要者(歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士を含む歯科関係者)の間において広く知られていたものということができ、その周知性は、その後、登録査定時(同16年1月14日)を経て今日に至るまで継続しているものと認められる。
(3)以上、総合してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者(歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士を含む歯科関係者)の間において広く認識されている商標に類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用をするものといわなければならない。
そして、上記各諸点に関して、被請求人は、何ら答弁するところがない。
(4)むすび
したがって、本件商標の登録は、請求人のその余の主張について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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