結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35645号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
I 本件登録商標
本件登録第2613529号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、平成2年10月31日登録出願、第25類「紙類、文房具類」を指定商品として、平成5年12月24日に設定登録されたものである。
II 引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する登録第655209号商標(以下「引用商標」という。)は、別紙に表示したとおりの構成よりなり、昭和36年10月23日登録出願、第26類「印刷物、ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」を指定商品として、昭和39年10月9日に設定登録、その後、平成6年9月29日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
III 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第68号証を提出した。
1.本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
2.引用商標の著名性について
(1)引用商標は、ザ・コンド・ナスト・パブリケーションズ・インコーポレーテッド(以下「コンド・ナスト社」という。)並びにアドバンス・マガジン・パブリッシヤーズ・インコーポレーテッドの所有を経て、現在、請求人が所有する世界的に著名な登録商標である。
当該引用商標を題号とする「VOGUE」誌は、1892年(明治25年)にアメリカで創刊されて以来、現在に至るまでの世界各国において継続的に使用された結果、商品「服飾雑誌」に関し世界的に著名な商標として世界各国において認識され、「VOGUE」と言えば世界的名声と権威を有するファツション雑誌を指すに至っている。また、「VOGUE」誌は、アメリカ版、フランス版を初めとして、現在,世界10カ国において、各国版が発行されており、近々、我が国においても、「VOGUE」日本版が発行される予定である。
(2)引用商標の著名性については、当該商標登録第655209号に22件の防護標章が登録されている事実(とりわけ、防護第3号の指定商品は、本件商標の指定商品と同じ「紙額、文房具類」(旧第25類)である。)(甲第1号証の2)、並びに、後述する一連のいわゆる「VOGUE」判決に照らし、特許庁及び裁判所における顕著な事実であると思料される。
(3)各種事典類、文献類、新聞、雑誌等々における「VOGUE」誌についての記載を紹介することによって、引用商標が本件商標の出願日よりも遥か以前から、わが国において著名性を獲得していた事実を立証する(甲第8号証ないし甲第46号証)。
(4)引用商標の著名性については、東京商工会議所の周知証明書(甲第47号証)においても明確に証明されている。更に、世界各国の超一流企業及び公法人並びにわが国各業界の一流企業及び全国一流書店による周知証明書(甲第48号証の1〜70)によって、一層明確に認識される。
(5)引用商標の著名性については、裁判所の判決においても明確に認定されている(甲第3、第4、第49ないし53号証)。しかも、当該判決が言い渡された翌日の新聞各紙は当該判決を取り上げて(甲第54号証の1〜7)、「VOGUE」事件の関心の高さを示している。
(6)わが国の一流企業が「VOGUE」誌を如何に高く評価しているかを明らかにすることによって、引用商標の著名性を立証する。
即ち、「VOGUE」誌はファッション関係を中心にして各分野における世界一流の粋を集めたものであり、「VOGUE」誌に登場するファッション及びファッションモデル、デザイナー、カメラマン、企業及び政界人、財界人等々は全て一流である。また、「VOGUE」誌に広告を掲載することは、厳選された一流企業のみができるのであり、「VOGUE」誌に広告を掲載できること自体、一流企業の証明となり得る。
従って、わが国の一流企業もこのような「VOGUE」誌の権威性及び著名性を極めて高く評価しており、厳しい基準をクリアして宣伝広告を掲載しているのである。上記事実を立証するため、パリ・ヴオーグ日本支局が発行した「VOGUE」誌への広告掲載主リスト(甲第55号証)及び実際に「VOGUE」誌に掲載されたわが国一流企業の宣伝広告頁(写)(甲第56号証)を提出する。
3.本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標は、「CLEAR NOU VOGUE」の欧文字と「クリアーヌーボー」の片仮名文字を二段に横書きしてなる構成であり、その構成中に著名登録商標「VOGUE」の文字を顕著に有するものである。
一般に、著名登録商標を一部に含む商標において「登録商標の著名度が高い場合には、その著名度の高い部分に世人の注意が集中し、当該著名登録商標の称呼、観念が生じる」ものであることは、商標についての不正競争行為差止請求事件における裁判所の判決等において明確に認定されているところである(昭和39年(ワ)第12182号商標権侵害停止等請求事件)。
従って、取引者・需要者の注意が集中する本件商標の「VOGUE」の部分から「ヴォーグ」の称呼が生ずるとともに、世界的に著名なファッション雑誌である「VOGUE」誌が想起されることは明らかである。
仮に、本件商標の「VOGUE」の部分から世界的ファション雑誌である「VOGUE」誌が想起されない場合があるとすれば、それは、本件商標の構成文字が有機的に結合することによって、全体として特定の語義を有する等、本件商標が一体不可分のものとして認識される場合に限られるものと解される。
そこで、この点について検討してみると、本件商標の欧文字部分中「CLEAR」は、「はっきりした、明晰な、明るい」等の語義を有する英語であり、「NOU」は、語義不明の単語であり、「VOGUE」は、世界的ファション雑誌である「VOGUE」誌を想起させるとともに、「流行、はやり」等の語義を有する英語、仏語であるが、これらの単語は有機的に結合することによって全体として特定の語義を有するものではない。
また、その他にも、本件商標の欧文字部分を一体不可分のものとして観察すべき特段の事情は見いだせない。
従って、取引者・需要者は、本件商標の欧文字部分を一体不可分のものとは理解しないと考えるのが妥当である。
そうであれば、本件商標の欧文字部分中「VOGUE」が世界的に著名なファッション雑誌の題号として取引者・需要者間に広く知られているのに対して、「CLEAR」と「NOU」は、そのような格別の事情を有していないのであるから、取引者・需要者の注意が「VOGUE」の部分に集中することは明らかである。
また、逆に言えば、取引者・需要者の注意が集中する本件商標の「VOGUE」の部分から「ヴオーグ」の称呼が生ずるとともに、世界的に著名なファッション雑誌である「VOGUE」誌が想起されることは明らかである。
本件商標の欧文字部分は、アラビア語やスワヒリ語のように、通常の日本人にとって、読み方が全くわからない類の言語で構成されているものではなく、「CLEAR」は比較的簡単な英単語であるから「クリアー」と無理なく称呼され、「NOU」は「ノウ」とローマ字読みでき、「VOGUE」は著名商標であることとも相侯って、「ヴォーグ(ボーグ)」以外の読みは出てこないものであるから、全体で「クリアーノウヴォーグ」と称呼されることは明らかである。
従って、本件商標は、欧文字部分から「クリアーノウヴォーグ」及び「ヴォーグ」の称呼が、片仮名文字部分から「クリアーヌーボー」の称呼が生ずるものである。
(2)次に、本件商標と引用商標の指定商品を対比してみると、本件商標の指定商品は「紙類、文房具類」であるのに対して、引用商標の指定商品は「印刷物 ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」であって、引用商標は「ファッション雑誌」に使用することによって著名性を獲得したものである。
而して、本件商標の指定商品である「文房具」等は、近年ファッション化が著しく進んでおり、今日においては、ファッション関連商品として把握されるべきものである。
即ち、本件商標の指定商品である万年筆を含む「文房具」等のファッション関連商品とファッション雑誌「VOGUE」とは密接な関係を有するものであり、また、「文房具」と「雑誌」は同一店において販売される場合も多いことに鑑みれば、それぞれの購買者層もファッションに関心のある女性層を中心としてクロスオーバーするものである。
従って、本件商標に係る商品の需要者は、世界第一のファッション雑誌である「VOGUE」誌の著名性を十分に認識していると考えるのが妥当である。
そうであれば、「VOGUE」の文字を含む本件商標をその指定商品に使用した場合、それに接する取引者・需要者は、「VOGUE」の文字に着目し、該商品があたかも世界的に著名なファッション雑誌「VOGUE」の発行主体又はこれと何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。
(3)更に、「具体的出所混同のおそれ」については、東京商工会議所の周知証明書(甲第47号証)に証明されている。
(4)請求人のような出版社と多角経営の関係については、わが国においても多くの実績が示されている。この実態から判断しても世界的な出版社である請求人が、経営の多角化を展開していく可能性について、取引者・需要者は、何らの違和感も有しないものと考えられる。上記事実に照らしても、本件商標をその指定商品に使用すれば、あたかも請求人の取扱いに係る商品であるかの如く、取引者、需要者をして、商品の出所の混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。
IV 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求に対し、何ら答弁していない。
V 当審の判断
1.引用商標の著名性について
(1)甲第5号証、甲第6号証、甲第9号証ないし甲第29号証によれば、「VOGUE」誌は、1892年アメリカで創刊され、1909年からは、コンド・ナスト社により発行され、ファッション雑誌として本件商標の出願当時(平成2年10月)において、アメリカ、フランス、イギリス等で出版、発売され、世界的な権威を持ったファッション雑誌として世界的に広く知られていることが認められる。
(2)日本における引用商標の著名性について
甲第8号証の1、2によれば、1949年に「VOUGE」誌が10年ぶりに輸入されたこと及びそれが社会的事件として新聞報道されたことが認められる。
甲第9号証ないし甲第25号証によれば、1955年8月30日平凡社発行の「世界大百科事典3」、1970年8月25日平凡社発行の「アポロ百科事典3」、1971年3月15日小学館発行の「大日本百科事典ジャポニカ−16」、1973年2月1日平凡社発行の「小百科事典」、1974年8月1日集英社発行の「外国からきた新語辞典」、1981年4月20日平凡社発行の「世界大百科事典3」、1981年7月16日講談社発行の「写真大百科事典1」、1983年1月10日小学館発行の「最新英語情報辞典」、1983年5月25日講談社発行の「大事典desk」、1986年4月20日名著普及会発行の「アメリカ州別文化事典」、1986年8月20日平凡社発行の「アメリカを知る事典」、1959年9月10日自由国民社発行の「現代用語の基礎知識1959年版」、1980年1月1日自由国民社発行の「現代用語の基礎知識1980年版」、服飾関係の辞典類では、1968年5月20日婦人画報社発行の「服飾事典(34版)」、1973年4月25日同文書院発行の「田中千代 服飾事典(増補)」、1979年3月5日文化出版局発行の「服飾辞典」、1980年10月5日雄山閣発行の「総合服飾史事典」には、「ヴォーグ」或いは「ボーグ」、「Vogue」の項にファッション雑誌であることを解説した記載が認められる。
甲第26号証及び甲第27号証によれば、1967年10月6日発行の朝日新聞、1967年10月21日発行の「週間新潮」に1967年の「VOGUE」誌の日本取材についての記事およびボーグ誌が世界的なファッション誌であることに言及した記載が認められる。
その他、甲第28号証及び甲第29号証によれば、1984年4月20日講談社発行の「アメリカ情報コレクション」、1985年11月20日講談社発行の「気になるアメリカ雑誌」にヴォーグ誌についての記載が認められる。
甲第30号証ないし甲第33号証によれば、1977年2月8日発行の「週間女性」、1977年1月19日発行の読売新聞、1977年1月20日発行の朝日新聞1977年4月1日文化出版局発行の「ハイファッション」にフランス・ヴォーグ誌美容担当編集長フランソワーズ・モー氏の来日及びインタビュー(対談)についての記事が認められる。
甲第34号証ないし甲第43号証によれば、英国版「VOGUE」の創刊60周年を記念してわが国で開かれた「ヴォーグ60年展」について、1980年3月1日新潮社発行の「藝術新潮」、1980年3月7日発行の日本経済新聞(夕刊)、1980年3月8日発行の読売新聞、1980年3月13日発行の朝日新聞、1980年4月7日モード・エ・モード社発行の「MODE et MODE No195」に同展に関する記事が掲載されていることが認められ、1980年3月6日発行の朝日新聞(夕刊)、1980年3月6日発行の読売新聞(夕刊)、1980年3月6日発行の毎日新聞(夕刊)、1980年3月14日発行の朝日新聞(夕刊)に同展の広告が掲載されたことが認められる。
以上の事実を総合すると、引用商標は、本件商標の出願日である平成2年10月31日には、すでにわが国において、コンド・ナスト社の発行している世界的に有名なファッション雑誌である「VOGUE」誌の題号として、広く知られていたものと認められる。
2.混同を生ずるおそれについて
本件商標は、「CLEAR NOU VOGUE」の欧文字と「クリアヌーボー」の片仮名文字を二段に横書きしてなるものである。そして、「CLEAR」は「はっきりした」等の語義を有する英語であり、「NOU」の文字は、英語、仏語の辞書に存しない単語であり、「VOGUE」の文字は、「流行」等の語義を有し、「ヴォーグ」と発音される英語、仏語である。
また、本件商標の上段の文字は、わが国において一般的な英語読み風に「クリアーノウヴォーグ」と発音されるものと認められ、下段の「クリアヌーボー」の片仮名文字が、欧文字の読みを特定するものと認められない。
してみれば、本件商標中、「VOGUE」の文字部分が1つの語句に吸収されて埋没しているものではなく、かつ、全体として特別の観念を示すものとして一般に広く認識されているものとも言い難いものである。
また、本件商標の指定商品は、旧第25類「紙類、文房具類」であるところ、万年筆を含む文房具は、近年ファッション化が著しく進んでおり、ファッション雑誌とは、購買者層も重複しているといえるものである。
そうとすると、本件商標をその指定商品である文房具等に使用した場合には、前記実情からして、これに接する需要者、取引者は、その構成中の「VOGUE」の文字に注目し、前記著名になっている「VOGUE」誌を想起し、該商品が同誌の発行主体又は、これと何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づきその登録を無効とすべきである。
よって結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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