結論テキスト
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成11年審判第30401号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
1.本件商標
本件登録第2358158号の2商標(以下「本件商標」という。)は、「アクア」の文字を書してなり、平成1年3月27日に商標登録出願、平成3年12月25日に設定登録され、その後、平成9年9月8日、第20類「家具,建具,つい立てびょうぶ,ベンチ,葬祭用具」を指定商品として、分割移転の登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
2.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べた。
(1)本件商標は、その指定商品中、「寝台」について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)被請求人は答弁書において、本件登録商標は、分割移転を受け、その分割移転登録がなされた平成9年9月8日より3年を経過していないものであるから、現在、本件登録商標が「寝台」について使用されていない事実は、商標法第50条第2項但書に規定する「その登録商標の使用をしていないことについて正当な理由がある」に該当すると主張している。すなわち、前の権利者の不使用の期間は譲受人である被請求人の不使用の期間に通算されないと主張している。
しかしながら、商標権の移転があった場合、商標権の譲渡人の不使用期間は算入されないものと解さざるを得ないこともあり、もしそのように解するとすれば、たとえば事実上貯蔵商標・防護商標の目的で始めから使用する意志のない商標を登録した法人が、3年未満の期間毎にその役員等に順次名義変更を行うことにより永久に不使用取消を免れることができるので、このような結果となることは本条の立法趣旨に沿うものではないので、譲受後、準備完了次第使用する真摯なる目的を有する場合に限って「正当な理由がある」ものとして解するのが相当である。
そこで、被請求人が本件登録商標を「寝台」について、譲受後、準備完了次第使用する真摯なる目的があったか否かについてみるに、被請求人が提出している証拠は、商品「寝台」とは関係のない「まくら」について商標「アクア」を使用していることを示すパンフレット類及び被請求人と関係のない会社のベッドのパンフレット並びに被請求人と関係のない会社のベッドの構造図であり、また、平成10年5月26日に被請求人から松下工業株式会社へ「蓄冷剤」の見本を5kgを納品した納品書(控)が提出されているものの、これがベッドについて使用されたことについての証明がなされておらず、さらに、本件審判請求日以降に撮られた「ウオーターベッドに使用するヒーターとコントローラー」と称する写真については、何かの部品を単に重ねて撮ったものに過ぎず、本件登録商標が移転登録されて2年が経過しようとしている時点での「試作品」としてはあまりに貧弱であり不自然であるから、被請求人が本件登録商標を譲受後、準備完了次第「寝台」に使用する真摯なる目的があったということは到底言うことができない。
そもそも、商標法第50条第2項但書に規定する「正当理由」とは、商標権者等の責に帰すことができない事情であって、そのような事情としては、次のようなものに限定されるべきである。
・地震、台風その他の天災地変によるもの
・類焼、放火、破壊その他の第三者の故意又は過失によるもの
・法令による全面禁止、許認可手続の遅延その他の公権力の発動によるもの。
以上のように、本件登録商標については、本件審判の請求登録日の以前の3年間について使用されていないことについては被請求人も認めているところであり、かつ、被請求人が準備中であるとして提出した証拠についても「使用していないことについての正当な理由」として到底これを採用することができないものである。
3.被請求人の主張
(1)被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の請求理由に対する答弁を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第19号証を提出した。
(2)被請求人は、長年、枕を中心とした寝具類の製造販売を営み、平成4年、特殊な冷感剤「アクア(商標)」を使用した「アクアピロー」を開発し、以来これを製造販売している(乙第1乃至8号証)。
一方、被請求人は前記冷感剤の特性に着目し、前記冷感剤をクッション材に用いたウオーターベッドへの商品展開を進めてきた。その一環として、「寝台」に対する「アクア」の商標取得を計画し、平成9年9月8日に本商標権を譲り受けるとともに(乙第9号証)、寝台を含む家具と寝具類等を指定商品として、平成9年5月21日に商標登録出願(商願平9−118728号;乙第10号証)した。
(3)前記商品開発は、ウオーターベッドメーカーから製品カタログ(乙第11号および第12号証)を取り寄せ、また前記乙第12号証所載のシリンダー式ウオーターベッドのシリンダー納入業者(松下工業(株))に対し、被請求人の前記冷感剤を平成10年5月26日にシリンダー用畜冷剤として納入(乙第13号証)し、ウオーターベッドの製作に向けて冷感剤の実績と信頼性を得るとともに、当該冷感剤の加熱試験を依頼した。
(4)また、被請求人は、顧客ないし利用者側であるホテル業者から、既設のウオーターベッドの構造および形状寸法に関する情報を平成11年3月11日に得るとともに(乙第14号証)、前記松下工業(株)を通じて、ウオーターベッドの部品メーカー(テクノエレメント(株))から、ウォーターマットおよびヒーター並びにそのコントローラに関する情報を平成11年5月20日に入手(乙第15号証)した。
更に、被請求人は、前記試験結果を平成11年4月13日に得(乙第16号証)、この試験結果によれば、被請求人の納入した前記冷感剤は、前記シリンダー式ウオーターベッド(WCM15)のシリンダーに用いられている水と略同等の作用効果と安全性が得られることが確認され、ウオーターベッドへの実用的なメドが得られた。
(5)これらの情報を基に、前記冷感剤の性状、製法、形状寸法および寝台枠の形状寸法を決定し、ウオーターマットおよびヒーター並びにそのコントローラヒーター等の構成部品を採択し(乙第17乃至第19号証)、これらを組み立てて近々試作品を完成し、これをモニターとして平成11年8月中に前記ホテル業者等へ納入する予定になっている。
(6)被請求人は、未だ商品の開発途上であり、現在のところ本件商標の使用に至っていない。その最大の理由は、本件商標の分割移転より日が浅いことに尽きるが、現状の商品開発ベースからすれば、前記分割移転より3年を経過する時期には前記開発が完了し、本件商標の使用が可能になる予定である。被請求人はその使用に向けて真摯かつ着実に実行している。
4.当審の判断
本件商標について、被請求人が本件審判請求の登録前3年以内にその指定商品に使用していないことは、被請求人も認めている。
そして、被請求人は、本件商標の不使用の理由を「本件商標の分割移転より日が浅く、未だ商品の開発途上であり、本件商標の使用に至っていない」と述べている。
そこで、前記の理由が不使用の正当な理由として認められるかどうかについて以下検討する。
商標制度は、商標を使用するものの業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とし、設定された商標権を通じて、商品流通の過程、競争関係に一定の秩序をもたらそうとするものである。そして、商標権が設定された後でも、この目的ないし要請に積極的に応えるに足りない事実、例えば、当該商標の一定期間の継続した不使用の事実が、現にあればこの事実によって、その商標権は、商標制度の趣旨に添わず、かえって、他人による同一又は類似の商標の使用を阻み、ひいては、他人の流通秩序への寄与を妨げることになり、消極的な意味しか有しないものとして否定されるべきものとするのが、現行の不使用による商標登録取消制度の趣旨と解される。
したがって、商標権を譲り受ける場合には、その商標の従前の使用状況について、例えば、指定商品の一部又は全部について一定の期間使用されていない事実があるときには、その事実自体は、消滅するはずのものではないから、当該商標権に当然伴うものとして、譲受人もまた、そのような事実に伴い、ないしはそのような状況下にある商標権を承継し、したがって、当該商標権譲り受けにより、譲渡前の不使用の事実が不問に付され、不使用の期間が譲受人との関係で新たに起算されるというようなものでないことは、商標法第50条第1項、第2項の規定の前示の趣旨に鑑み明らかである。
してみれば、商標権の移転があった場合にも、商標法第50条第2項の「3年以内」とは、商標登録の取消しの審判請求の登録の日から起算されるとみるのが相当である。
そうとすれば、「本件商標の分割移転より日が浅いこと」及び「現状の商品開発ベースからすれば、本件商標の分割移転より3年を経過する時期には、商品開発が完了し、本件商標の使用が可能になる」ことを登録商標の不使用についての正当な理由であるという被請求人の主張は、採用することができない。
したがって、被請求人が本件商標をその指定商品の「寝台」について、本件審判請求前3年以内に使用していたものとは認められず、かつ、本件商標をその指定商品について使用していないことについて正当の理由があるとは認められないものであるから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定によりその指定商品中の「寝台」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論の通りに審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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