sokuhyo

Trademark Appeal Case

著名略称の無断登録

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号異議2003−90701(T2003−90701/J7)
審判種別異議
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

登録第4695642号商標の商標登録を取り消す。

理由テキスト

1 本件商標

本件登録第4695642号商標(以下「本件商標」という。)は、「ペイパル」の文字を横書きしてなり、平成14年11月5日に登録出願、第14類「貴金属」を指定商品として、同15年8月1日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第24号証を提出している。

(1)本件商標は、申立人が提供する役務(ネットワーク上の決済システムの提供)を表示するものとして世界的に周知著名な商標「ペイパル」を盗用するものであって、商取引の信義則及び国際信義に反し、公の秩序を害するおそれがあるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

(2)本件商標は、申立人の周知著名な略称を書してなり、かつ、申立人の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。(3)本件商標は、申立人の役務を表示する商標として需要者の間に広く認識されている商標「ペイパル」と同一又は類似のものであるから、これがその指定商品に使用された場合、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。

(4)本件商標は、申立人の役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標「ペイパル」と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。

3 本件商標に対する取消理由の要旨

当審において、平成16年8月17日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、要旨次のとおりである。

申立人の提出に係る証拠によれば、申立人である米国のペイパル・インクは、1999年10月にオンライン上で個人及び法人が相互に送金できる「ペイパル」サービスを開始し、それ以降利用者が急激に増加していて(甲第3号証及び甲第4号証)、2001年11月27日付け「日経金融新聞」によれば「・・・ネット送金では最大手で独立系のペイパルが千百万人の登録利用者を抱えている・・・」と報じられていることが認められる。また、2001年2月16日付け「日本経済新聞」、「日経産業新聞」、「日経金融新聞」及び「朝日新聞」には、開業を目指しているインターネット専業銀行「イーバンク銀行」が米国の「ペイパル社(ペイパル)」と提携した旨が報じられ、その後も、2001年3月6日付け「日本経済新聞」、同3月7日付け「日経金融新聞」、同6月1日付け「毎日新聞」、同7月17日付け「日経産業新聞」、同8月3日付け「日経金融新聞」、同8月8日付け「日本経済新聞」などにも、同様に「ペイパル社」又は「ペイパル」と記載されて報じられていることが認められる。

以上の事実並びに本件登録異議申立ての理由及び証拠を総合すれば、申立人は、1999年10月以来、オンライン上で送金できるサービス(ネット送金)を行っている業界では米国最大手の会社であって、申立人の略称である「ペイパル社」あるいは「ペイパル」は、本件商標の登録出願の時には、取引者、需要者の間に広く知られ著名であったものと判断するのが相当である。

そして、インターネットの普及に伴い、インターネットを介した各種商品についての商取引も盛んに行われている状況に鑑みれば、その決済手段として利用されるオンライン上で送金できるサービス(ネット送金)と商品との関連性も否定し難いところである。

しかして、本件商標は、上記のとおり「ペイパル」の文字よりなるものであり、申立人の名称の略称として著名な「ペイパル」と同じ文字構成よりなるものである。

したがって、本件商標は、申立人の名称の著名な略称からなる商標であるにもかかわらず、申立人の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。

4 商標権者の意見

上記3の取消理由に対して、商標権者は、要旨次のように意見を述べている。

特許庁は取消理由に「ペイパル」が著名であることを挙げている。しかし、特許庁は平成14年7月17日の時点で申立人であるペイパル社の活動・著名性を把握している(乙第1号証)。これらは申立人が異議申立で述べている内容とほぼ同じである。また、拒絶理由に不正・盗用があるとも述べている(乙第1号証〜乙第3号証)。

特許庁は以上のようなペイパル社の著名性を把握した上で、平成15年に入ってからも「ペイパル」の登録査定を多数本商標権者に与えている(乙第4号証〜乙第15号証)。特に登録番号第4756861号(乙第15号証)はごく最近のものである。特許庁はペイパル社の承認は必要ないと平成16年に入っても公式に表明している。

イーバンク銀行とペイパル社は2001年に提携したようだが、相互接続されていない。「ペイパル」というブランドの送金サービスを今まで提供していない(乙第16号証〜乙第20号証)。しかし、ペイパル社は異議申立でペイパルの送金サービスの提供を行っていると虚偽の事実を述べている(乙第21号証)。

商標権者は「ペイパル」に関して登録を行っている(乙第22号証)。登録されたすべての商標についてペイパル社より異議申立が出ているが、ペイパルの送金サービスを平成13年秋から行っていると虚偽の事実を述べている。

5 当審の判断

(1) 本件商標は、「ペイパル」の文字を書してなるところ、上記3の取消理由で示すとおり、申立人の名称の略称として著名な「ペイパル」と同じ文字構成よりなるものであり、しかも、同人の承諾を得ていないものである。したがって、商標法第4条第1項第8号に違反するとの上記3の取消理由は妥当なものであって、これについて述べる上記4の商標権者の意見は、以下の理由により採用することができない。

(2)商標権者は、「ペイパル」の文字よりなる商標について多数の登録査定を受けていることを指摘し、これらと本件取消理由との判断の齟齬について述べている。

しかしながら、登録後の登録異議申立制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るというものであってみれば、審査における判断の過誤は、いわば当然の前提として、もとより法が予定していることである。そして、適式な登録異議の申立てを契機に、改めて登録処分の適否を審理した結果、取り消すべき理由が存すると認められるからには、商標権者に対し、取消理由を通知することもまた法の定めるところである。この点に関する商標権者の主張は、上記3の取消理由の認定判断を何ら覆すものではないから、採用できない。

(3)また、商標権者は、イーバンク銀行と米国ペイパル社の関係について疑念を呈するとともに、申立人は送金サービスの提供を行っていると虚偽の事実を述べている。とも主張しているが、たとえそのような事情にあるとしても、本件商標がその取消理由で開示した米国ペイパル社の著名な略称に当たるか否かという判断に、直接影響を及ぼすものではない。

そして、このほか述べる商標権者の意見で上記認定判断を左右するに足りるものはない。

(4)したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。