結論テキスト
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 無効2005−89051(T2005−89051/J3) |
|---|---|
| 審判種別 | 無効 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
本件登録第4647277号商標(以下「本件商標」という。)は、「DIRIGO」の文字を標準文字により表してなり、アメリカ合衆国における2001年9月7日の商標登録出願に基づきパリ条約による優先権を主張して平成14年3月7日に登録出願され、第5類「薬剤」を指定商品として平成15年2月21日に設定登録されたものである。
請求人が引用する国際登録第750935号商標(以下「引用商標」という。)は、「CIRIGO」の文字を横書きしてなり、スイス国における2000年12月21日の商標登録出願に基づきパリ条約による優先権を主張して2001年1月18日に国際登録され、第5類「Pharmaceutical preparations」を指定商品として平成13年10月12日に設定登録されたものである。
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第25号証を提出している。
(1)上記1及び2のとおり、引用商標が本件商標よりも先順に係る登録商標であること、両者の指定商品が抵触するものであることは明らかである。
(2)次に、本件商標と引用商標の類似性について考察する。
(ア)本件商標及び引用商標は、上記1及び2のとおりの構成からなるところ、両者は、6文字中1文字目を除く残りの5文字「IRIGO」すべてが共通しており、かつその共通文字の配列も全く同一である。
しかも、唯一相違するアルファベット大文字の「D」と「C」は、26種類あるアルファベット文字の中でもその字形がかなり近似したものである。すなわち、中心を囲うように曲線を用いて書かれ、中央を空洞にするような字形である点で共通する。
このように、本件商標と引用商標は、それぞれに同一の書体、同一の大きさのアルファベット6文字を等間隔で配してまとまりよく一体的に構成されるところ、6文字中1文字が異なるのみであり、相違する1文字はその字形が近似するから、外観上その差異はほとんど目立たない。
ところで、通常の商取引においては、商標は直接並べられて対比されるわけではなく、時と処を異にしてその商標に接した者の暖味な記憶とイメージに基づいて認識・判断されるものであることから、商標の類否の判断はいわゆる隔離的観察によるべきである。
しかして、上記のとおり本件商標と引用商標とは、アルファベット6文字中配列を同じくする5文字が共通しており、相違する1文字もその形状が近似しているため、暖味な記憶とイメージに基づいて時と処を異にして両商標に接した場合には、これらを即座に明確に区別することは極めて困難である。すなわち、両商標は外観上きわめて紛らわしいというべきである。
したがって、本件商標は、外観において、引用商標と類似する商標である。
(イ)次に称呼についてみると、本件商標は、「ディリゴ」と称呼される。しかしながら、本来の日本語の音韻には、欧文字「di」に対応する音は存在しないため、古くからこの欧文字の組合せは「ジ」と発音されるのが普通である。また、逆に、日本語の50音をローマ字で表記する場合には「di」は日本語の「ヂ」を表すものとされている。
さらに、英語で「di」は、「二つの、二倍の、二重の」という意味を表す連結形であり、特に化学の分野では「2原子(分子、基)の」の意味を表す接頭辞として頻繁に用いられているが、わが国では、これを常に「ジ」と発音している(たとえば、「diacetyl(ジアセチル)」「diamide(ジアミド)」「diamine(ジアミン)」「diazine(ジアジン)」「dihydroxyaluminum(ジヒドロキシアルミニウム)」、甲第5号証及び同第6号証)。また、本件指定商品である医薬品の分野においても、たとえば「diacetylmorphine(ジアセチルモルヒネ)」「dicyclomine(ジサイクロミン、ジシクロミン)」「diethanolamine(ジエタノールアミン)」など、欧文字「di」は、一般に「ジ」と発音されている(甲第6号証)。
また、現実の医薬品の商標としても、たとえば、特許庁のIPDL商標出願・登録情報検索によれば、本件商標と同じ国際分類第5類「薬剤」に属する商品を指定商品とする商標であって、その語頭に欧文字「di」を配する商標は、たとえば「DIABEN/ヂアベン」 「DIGOSIN/ジゴシン」「ヂサルゲン/DISARGEN」「ヂスパイル/DISPILE」「ジキニン/DICKININ」「ジニン/DININ」「ヂクロピー/DICLOPY」など、その商標を構成する欧文字「di」の綴りを「ヂ」あるいは「ジ」と称呼しているものは枚挙にいとまがない(甲第7号証)。
このように、本件商標の指定商品「薬剤」等の分野において、欧文字「di」は「ジ(ヂ)」という称呼で親しまれているため、本件商標からはきわめて自然に「ジリゴ」の称呼が生ずるものといえる。
なお、特許庁IPDL称呼検索において、称呼に「ジリゴ」を入力して検索したところ、検索結果には本件商標が第一に上がり、同時に引用商標も検索された(甲第8号証)。
これに対し、引用商標が、「シリゴ」又は「チリゴ」と称呼されることは明らかである。
(ウ)そこで、両商標の称呼を比較すると、相違点は語頭の「ジ」と「シ」ないし「ヂ」と「チ」の1音のみであり、それ以外は音、音数、拍数のいずれも同じである。すなわち、2拍目以降の「RIGO」の部分はともに「リゴ」と全く同一であって、相違する1音も、濁音・清音の差異にすぎない。したがって、必然的に、両者は、全体的な語調語感もきわめて近似している。
以上のとおり、本件商標より生ずる「ジ(ヂ)リゴ」と引用商標から生ずる「シリゴ」「チリゴ」とは、わずか1音が濁音・清音の相違を有するのみであって、母音から後の称呼は全く同一であるから、両商標をそれぞれ一連に称呼したときは、称呼上相紛らわしく混同を生ずるおそれが大きい。
したがって、本件商標は、称呼上も引用商標とは類似する商標である。
(エ)なお、仮に本件商標が英語的発音で「ディリゴ」と称呼された場合であっても、依然として引用商標の称呼との類似は免れない。すなわち、「ディリゴ」と「チリゴ」の相違音「ディ」と「チ」は、濁音か清音かの差異はあるものの母音「イ(i)」を共通にする同じタ行の音であり、また、「ディリゴ」と「シリゴ」の相違音「ディ」と「シ」は、共に母音が「イ(i)」であって舌面を歯茎のあたりに移動させて発音する音である点で共通している。
したがって、この場合も、両商標の称呼は全体の音感が近似して聴覚され、称呼上相紛らわしく混同を生ずるおそれがある。
なお、特許庁IPDLで称呼検索してみたところ、「ヂリゴ」「ディリゴ」のいずれを入力した場合にあっても、検索結果に引用商標が抽出された(甲第9号証及び同第10号証)。
(オ)また、称呼上の差異が、語頭音における「ヂ」と「シ」、「ジ」と「シ」あるいは「ジ」と「チ」である商標について、これらを互いに類似すると判断した昭和50年審判第7804号審決(「ヂメドリン/DIMEDRIN」対「SIMEDRIN/シメドリン」)等の審決例がある(甲第11号証ないし同第24号証)。
上記審決例における商標は、その称呼上の差異が語頭における「ヂ」と「シ」、「ジ」と「シ」あるいは「ジ」と「チ」である点で本件商標及び引用商標の場合となんら異なるところはない。したがって、上記審決例からみても、本件商標は引用商標と類似するというべきである。
(カ)以上の諸点からみて、本件商標が引用商標と称呼上類似するものであることは明らかである。
(3)さらに、本件商標と引用商標とは、称呼及び外観上類似するものであるが、両商標の指定商品が「薬剤」であるという商品の特質上、過誤の危険を避けるために本件商標のように出所混同のおそれがある商標は併存させるべきではない。因みに、「薬剤」に属する商品には、処方薬のみならず、薬局で一般消費者が直接購入することができる商品も含まれている。つまり、本件商標と引用商標のように称呼によっても外観によっても両商標を区別することがきわめて困難で、かつ観念(イメージ)で記憶し区別することもできない商標が併存する場合、誤って薬剤が購入され、あるいは使用される危険性は十分にある。
現実に、薬を処方する際に薬の種類を間違えて事故を招くケースが起きており、薬剤の名称が類似していると間違えやすいという点はこれまでも指摘されてきた(甲第25号証)。類似する名称の医薬品は、専門家により薬が処方される場合でさえ、取り違えというミスを誘発しうるのである。
なお、名称が紛らわしいとして日本病院薬剤師会が注意を呼びかけている、いわゆる類似名称医薬品には、たとえば、「アマリール」と「アルマール」、「アロテック」と「アレロック」、「ウテメリン」と「メテナリン」、「プレドニン」と「プルゼニド」などがある(甲第25号証)。また、薬剤の名称は、音感の類似もさることながら、処方箋は性急に書かれることが多いことから、スペルなど外観上の類似が判読ミスを招く危険があることも多いと考えられている。
この点、本件商標と引用商標は、上述のように、称呼のみならず、外観もきわめて近似している。したがって、本件商標と引用商標のように、称呼、外観及び観念のいずれによっても両者を区別することができない商標を併存させる場合、薬の処方ミス、購入ミスが起こる危険性は否定できない。
このように、本件商標は、その指定商品の特殊性からも、その登録は維持されるべきではない。
(4)以上詳述したとおり、本件商標は、引用商標と外観及び称呼上類似する商標であり、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条の規定によりその登録を無効にすべきものである。
被請求人は、何ら答弁していない。
(1)本件商標と引用商標との類否について検討するに、両商標は、上記1及び2のとおりの構成からなるところ、語頭の「D」及び「C」の文字が相違するのみで、他の文字及びその配列を同じくするものであるとしても、この相違は、最も看者の注意を惹き記憶に残る語頭におけるものであることに加え、相違する「D」と「C」とは、字形が明らかに異なることから、この差異が全体に与える影響は大きく、全体として視覚上別異の印象を与えるものであって、両商標は外観において相紛れるおそれはないものというべきである。
また、両商標は、それぞれの構成文字に相応して、本件商標は「ディリゴ」、「ジリゴ」又は「ダイリゴ」の称呼を生じ、引用商標は「シリゴ」又は「チリゴ」の称呼を生ずるものといえる。
しかして、本件商標から生ずる「ディリゴ」の称呼と引用商標から生ずる「シリゴ」又は「チリゴ」の称呼とを比較するに、いずれも3音という短い音構成からなるものであり、称呼の識別上重要な要素を占める語頭音が「ディ」と「シ」又は「チ」と相違するばかりでなく、相違する各音はいずれも明瞭に強く発音されるものであるから、それぞれを一連に称呼するときは全体の音感音調が明らかに異なり、互いに紛れることなく区別し得るものというべきである。同様に、「ジリゴ」の称呼と「シリゴ」又は「チリゴ」の称呼にしても、3音という短い音構成における語頭音における「ジ」と「シ」又は「チ」の相違が全体に及ぼす影響は大きく、互いに紛れることなく区別し得るものというべきである。また、「ダイリゴ」の称呼と「シリゴ」又は「チリゴ」の称呼とは、構成音数が異なるばかりでなく、語頭音部分において「ダイ」と「シ」又は「チ」と相違することから、なお一層、紛れることなく区別し得るものである。
さらに、本件商標と引用商標は、いずれも特定の親しまれた既成の観念を有する語を表したものともいえないから、観念上、両者は比較することができない。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
(2)請求人は、本件商標及び引用商標の指定商品が「薬剤」であることから、処方ミス、購入ミス等の過誤の危険性を避けるためにも両商標を併存させるべきでなく、本件商標の登録は維持されるべきでない旨主張している。
しかしながら、上記(1)のとおり、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものであるから、たとえ両者が同じ薬剤について使用されたとしても、彼此誤認混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、請求人の主張は採用することができない。
(3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、その登録を無効にすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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