Trademark Appeal Case
故人名の商標登録と公序良俗
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
基本情報
| 審判番号 | 不服2003−18577(T2003−18577/J1) |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理由テキスト
第1 本願商標
本願商標は、「野口英世」の文字を標準文字で書してなり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、平成14年11月13日に登録出願されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「本願商標は、黄熱病の研究で世界的に有名な医学者である故野口英世を認識させる『野口英世』の文字を書してなるものであるから、これを上記の者と関係が定かでない出願人が自己の商標として使用することは、公の秩序を乱すおそれがあるものと認められるから、これを商標として採択・使用することは穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第7号について
「世界的に著名な死者の氏名を遺族と何ら関係を有しない者が遺族等の承諾を得ることなく、商標として登録することは、故人の名声、名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものとして、公の秩序又は善良の風俗を害するものといわざるを得ない。」と解される(東京高裁 平成13年(行ケ)第443号判決 平成14年7月31日判決言渡参照)。
2 これを本件についてみるに、本願商標は、「野口英世」の文字を標準文字で表してなるところ、野口英世は、世界的に有名な細菌学者であり、梅毒スピロヘータの純粋培養に成功したことや黄熱病研究に尽力したこと等で知られる人物であり、近時においては、その業積等を讃えて我が国の通貨(1000円紙幣)に肖像が採用されていることは遍く知られているところである(審査甲第2号証)。
そして、「野口英世」は、野口英世博士の氏名として、我が国の一般世人にも広く知られているものであり、これに止まることなく、世界的にもその業績とともに著名であるといえる。さらに、野口英世博士の業績を讃え、あるいは、その業績や遺志を引き継ぐ事業や団体等が国内外に実在することもまた知られたところである(たとえば、野口英世記念財団(http://www.noguchi-hideyo.com/hideyo/index.html)、野口英世記念館(http://www.noguchihideyo.or.jp/)、野口医学研究所(http://www.noguchi-net.com/)及び審判甲第5号証)ことからも、同人は、世界的に有名な細菌学者として著名な存在であり、その死亡時から査定時及び今日においても、その著名性が継続していると認められる。
3 そこで、本件の請求人(出願人)と前記野口英世博士との関係についてみるに、両者が何らかの関係を有する者であると認め得る証左はなく、また、当該氏名の出願や登録に関して、何らかの承諾等を得た者であるともいえないものであるから、本件の請求人(出願人)は、故野口英世博士とは何ら関係を有することのない者といわざるを得ない。
4 してみれば、本願商標は、指定商品の取引者、需要者に故野口英世博士の氏名を表す文字よりなるものと容易に認識させるものであるから、遺族等の承諾を得ることなく本願商標を指定商品について登録することは、著名な死者の名声に便乗し、指定商品についての使用の独占をもたらすことになり、故人の名声・名誉を傷つけるおそれがあるばかりでなく、公正な取引秩序を乱し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるといわざるを得ないものである。
なお、請求人(出願人)は、登録例を挙げて、本願商標も同様に登録されて然るべきであると主張する。
しかしながら、本号に該当するか否かは、査定時又は審決時において、それぞれ個別具体的に判断されるべきものであり、例えば、請求人(出願人)の主張する登録第4195559号(審判甲第4号証)「福沢諭吉」は、無効審判(無効2004−89021)によって、商標法第4条第1項第7号により無効になっていること、及び登録第2685845号(審査甲第11号証の1)「ダリ DALI」と同様な標章「ダリ DARI」(登録第3370476号商標)が、前述のとおり、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものと判示されていることからも、登録例によって本件の判断を左右され得ないことを窺うことができる。
したがって、請求人(出願人)の主張は採用できない。
5 以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり、審決する。
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